「世界ポスタートリエンナーレトヤマ2012」

永井一正「第10回世界ポスタートリエンナーレトヤマ2012」開催ポスター

永井一正「第10回世界ポスタートリエンナーレトヤマ2012」開催ポスター

福島治「オイディプス王」(第10回展グランプリ)

福島治「オイディプス王」(第10回展グランプリ)

 富山県立近代美術館が主催する「世界ポスタートリエンナーレトヤマ」(以下、IPT)は、世界のポスターデザインの現況と成果を概観するため、最新のポスターデザインを公募し、審査・選抜展示するポスターデザインの領域では日本で唯一の国際公募展です。1985年から3年に1度開催しているIPTは、今回の公募で第10回を迎えました。
 IPTの作品募集は、実際に印刷発表されたポスターを対象としたA部門、未発表のオリジナル自主制作ポスターを対象としたB部門の2部門で行われます。第10回展には世界53の国と地域からA、B部門あわせて4,622点の応募があり、その中から入選作品を決定する第一次審査には、永井一正、勝井三雄、松永真、佐藤晃一、浅葉克己、中島英樹という錚々(そうそう)たるグラフィックデザイナー各氏と当館副館長があたりました。
 第一次審査によって選出された入選398点から、グランプリを筆頭に金賞、銀賞、銅賞を決定する第二次審査には、アラン・ル・ケルネ(フランス)、カリ・ピッポ(フィンランド)、永井一正、松永真の4氏があたりました。上位作品が僅差(きんさ)で肉迫するなか、グランプリに選ばれたのは、福島治(日本)による演劇公演のポスター「オイディプス王」です。独自のタイポグラフィや骸骨のオブジェといった要素が、劇場空間を感じさせる構成のなかに凝縮され、このギリシャ悲劇を端的に表現しています。
 ポスターは時代を映す鏡と言われます。今回のIPTでは、優れたコマーシャルポスター、展覧会や演劇の告知のために制作された作品はもとより、環境問題、人権、食糧危機、金融危機、そして東日本大震災に関連したテーマなど、世界が今直面している様々な問題が映し出された作品が数多く見られました。9月3日まで富山県立近代美術館で開催中の展覧会では、全入選作品・受賞作品と審査員作品を合わせた422点を展示しています。

(富山県立近代美術館 学芸課 稲塚展子)

<展覧会情報>

  • 「第10回世界ポスタートリエンナーレトヤマ2012」
  • 2012年6月9日(土)~9月3日(月)

■富山県立近代美術館ico_link

  • 所在地 富山市西中野町1-16-12
  • TEL 076-421-7111
  • 休館日 月曜日(祝日と8月13日、9月3日は開館)、祝日の翌日

<次回展覧会予定>

  • デザインとしての椅子 アートとしての椅子
  • 2012年9月8日(土)~11月4日(日)

その他、詳細は富山県立近代美術館Webサイトico_linkでご覧ください。


「奈良美智:君や 僕に ちょっと似ている」展

「ちょっと意地悪」 白銅/153×125×135cm/2012 (C)NARA Yoshitomo 撮影:森本美絵

「ちょっと意地悪」 白銅/153×125×135cm/2012 撮影:森本美絵

■高校美術3 教科書表紙
(本展覧会には出品されておりません)

「Daydreamer」 パステル、アクリル、色鉛筆/紙/154.9×134.6cm/2003 Photo:Joshua White Courtesy:Blum & Poe,LA/Tomio Koyama Gallery,Tokyo

「Daydreamer」 パステル、アクリル、色鉛筆/紙/154.9×134.6cm/2003 Photo:Joshua White Courtesy:Blum & Poe,LA/Tomio Koyama Gallery,Tokyo

 白銅の彫刻「ちょっと意地悪」は誰に似ているでしょう。自分の幼いころ? 友達の子ども? それとも昔どこかで会った誰か? ちょっと遠くを見つめる眼差で、何を考えているのでしょう。でも、この作品にモデルはいません。
 人のかたちをするものは、しばしば誰かに似ることがあります。「君や 僕に ちょっと似ている」と題した展覧会に出品されるのは、人の顔を描いた絵画や彫刻です。奈良美智は「子ども」を代表的なモチーフに描いてきました。ただし作品制作の過程で特定のモデルは介在しません。それどころか作家は、作品は全て自画像なのだと語っています(ちなみに奈良美智は大人の男性です)。奈良の絵画は、すべて下描き無しに絵具を塗り重ねてゆくことでかたちを得ていきます。そしてこの彫刻も、1tに及ぶ土粘土の巨大な塊と格闘する中で、作家の手から自然と生まれ出たものです。それにも関わらず、君や僕、あるいは誰かにどこか似ている「顔」とはどういう意味なのでしょう。
 美術の歴史について語るとき、さまざまな局面で作品は特定の個人と結びつけられます。作り手は誰? 描かれているのは誰? 誰のためのもの? 表現の独自性はどこにある? オリジナリティが求められる世界で、「似ている」という言葉は、ときに負の意味を持つことすらあります。
 一方で何かに感動するとき、私たちはそこに何を見ているのでしょう。悲しみ、喜び、秘密。他人と何かを共有できたとき、私たちは一体感とともにうれしさを覚えます。感動とは、自分と「似ている」何かを見つけることではないでしょうか。これら二つの「似ている」には、美術作品を批評的に分析することと、体験・鑑賞することとの違いが対照的に表れてきます。
 「君や 僕に ちょっと似ている」。この言葉には、感動の本質が隠されているのです。

(横浜美術館主任学芸員 木村絵理子)

<展覧会情報>

  • 「奈良美智:君や 僕に ちょっと似ている」展
  • 横浜美術館 2012年7月14日(土)~9月23日(日)
    巡回:青森県立美術館 2012年10月6日(土)~2013年1月14日(月・祝)
    熊本市現代美術館 2013年1月26日(土)~2013年4月14日(日)
  • 休館日:木曜日(木曜日が祝・休日の場合はその翌日)
  • 展覧会概要
    現代美術家、奈良美智。奈良の作り出す作品たちは、ときに挑戦的であり、またあるときは瞑想しているかのような憂いを帯びた多彩な表情を見せてくれます。本展は作家にとって初の挑戦となる大型金属彫刻をはじめ、絵画やドローイングなどの新作が発表されます。

■横浜美術館ico_link

  • 所在地 神奈川県横浜市西区みなとみらい3-4-1
  • TEL 045-221-0300

<次期開催の展覧会>

  • 「はじまりは国芳 -江戸スピリットのゆくえ」展
    2012年11月3日(土・祝)~2013年1月14日(月・祝)
  • 横浜美術館コレクション展Ⅲ
    2012年11月3日(土・祝)~2013年3月24日(日)

その他、詳細は横浜美術館Webサイトico_linkでご覧ください。


マウリッツハイス美術館展 オランダ・フランドル絵画の至宝

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「笑う少年」 油彩/板/直径(最大)30.4cm/1625頃

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「真珠の耳飾りの少女(青いターバンの少女)」 油彩/キャンヴァス/44.5×39cm/1665頃

 17世紀オランダは、「黄金時代」と呼ばれるほど多くの優れた画家を生み出しました。フランス・ハルスとフェルメールは、まさにこの時代に活躍した画家です。
 ハルスの「笑う少年」は、屈託のない笑顔が描かれた魅力的な作品です。素早い筆遣いで描かれたくしゃくしゃの髪や、勢いよく描かれた白い襟など、表情に合わせた生き生きとした描写が全体にあふれています。ハルスは肖像画を得意とし、同時代の人々からも高い評価を受けました。
 フェルメールの「真珠の耳飾りの少女」は、振り返ってこちらを向く少女の一瞬の表情が捉えられています。高価なウルトラマリンで描かれた青いターバンは、当時の少女が普段から身につけていたものではないことから、本作品が肖像画のように特定の人物に似せて描かれたものではないことがわかります。少女の耳には、鈍く輝く非常に大きな真珠が飾られています。この作品が描かれた頃、真珠が大流行していました。本物なのか、ガラスにニスを塗った模造品なのか、画家が創造力を駆使して描いたのかは定かではありません。また、作品の左上にフェルメールの署名が見えますでしょうか。あまりにも有名な作品ですが、デジタルの画面や印刷した紙面では見えにくい部分もあります。色彩や筆跡なども本物でぜひ確認してみてください。
 オランダのデルフトで活躍したフェルメールの作品は、現在では世界中で30数点しかありません。穏やかな光の入る室内の女性を描いた静かな作品がよく知られ、特に日本では絶大な人気を誇る画家です。「真珠の耳飾りの少女」はフェルメールの作品の中でも、世界で最も有名な1点と言えるでしょう。

(東京都美術館事業係学芸員 大橋菜都子)

<展覧会情報>

  • マウリッツハイス美術館展 オランダ・フランドル絵画の至宝
  • 2012年6月30日(土)~9月17日(月・祝)
    巡回:神戸市立博物館 2012年9月29日(土)~2013年1月6日(日)
  • 休室日:月曜日(ただし7月2・16日、9月17日は開室。7月17日は休室)

展覧会概要

  • 本展では、17世紀のオランダやフランドル絵画の世界的コレクションで知られるオランダ・ハーグのマウリッツハイス美術館から、フェルメールやレンブラントなど、西洋絵画の巨匠たちの名品約50点を紹介します。

■東京都美術館ico_link

  • 所在地 東京都台東区上野公園8-36
  • TEL 03-5777-8600(ハローダイヤル)

<同時期開催の展覧会>

  • 「Arts&Life:生きるための家」展
  • 「東京都美術館ものがたり」展
  • 2012年7月15日(日)~9月30日(日)

その他、詳細は東京都美術館Webサイトico_linkでご覧ください。


「白貂を抱く貴婦人の肖像」 レオナルド・ダ・ヴィンチ作

油彩/板/54.8×40.3cm/1485-90頃

油彩/板/54.8×40.3cm/1485-90頃

 レオナルド・ダ・ヴィンチは、パリのルーヴル美術館に所蔵されている「モナ・リザ」の作者として、歴史上もっともよく名前の知られている画家の一人ですが、残されている彼のタブロー作品(テンペラ画や油彩画)の数は大変に少なく、わずかに12~3点にしかすぎません。そのなかにあって、この「白貂を抱く貴婦人の肖像」は、レオナルドが実際に接見して描き上げた女性の肖像画として、モデルとされた人物、制作を依頼した人物、これを所蔵した人物、それらが誰であったということが、かなり正確にわかっている大変めずらしく貴重な例です。モデルとなっている貴婦人の名前はチェチリア・ガレラーニ(1473-1536)。ミラノ公国の宮廷にあって最も美しく知的に洗練されていた貴婦人として知られていた彼女は、その公国の君主の地位に就くこととなるルドヴィコ・スフォルツァと相愛の仲でしたが、高位の貴族の結婚は政略的に行われた時代であったことから、二人の愛は結婚にまで至りませんでした。しかしルドヴィコは愛の記念として、レオナルドにチェチリアの肖像画を描かせ、彼女にそれを与えたのです。チェチリアが抱いている白貂は「貞潔」や「美徳」の象徴とされていますが、この動物の仲間はギリシャ語では「ガレー(galée)」と呼ばれるため、チェチリア・ガレラーニを暗示することとなり、そこから、この肖像画と実在のモデルとが結びつく証拠の一つが生じます。画家レオナルドは美しいチェチリアのことを「私の愛する女神」と呼んだとも伝えられていますが、彼女の着衣が聖母マリアの定式の着衣と同じ赤(愛)と青(神聖)からなっているところは、チェチリアに対するレオナルドの敬愛を示しているのかもしれません。丁寧に描き出されているその顔は、「モナ・リザ」とも共通する、理想の顔立ちの均衡を持っていて、当時の貴婦人に求められた「優雅」と「貞節」の美しさの典型を示しています。

(美術評論家 木島俊介)

木島俊介
1939年鳥取県生まれ。慶応義塾大学卒。フィレンツェ大学、ニューヨーク大学大学院、同美術史研究所に学ぶ。共立女子大学名誉教授、群馬県立近代美術館館長、群馬県立館林美術館館長、東急文化村プロデューサー。1970年創立の万国博美術館(現・国立国際美術館)をプロデュースして以来、数多くの美術館設立と美術展の企画・開催、カタログの制作・執筆に携わる。2011年より静岡市美術館、福岡市美術館、Bunkamuraザ・ミュージアム(2012/6/10まで開催)を巡回した「レオナルド・ダ・ヴィンチ 美の理想」展の日本側監修者を務める。著書に『名画が愛した女たち 画家とモデルの物語』『美しき時祷書の世界』『女たちが変えたピカソ』など。新版「高校美術1」教科書(日本文教出版)監修。


マウリッツハイス美術館展 オランダ・フランドル絵画の至宝

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「真珠の耳飾りの少女」 油彩/キャンヴァス/44.5×39cm/1665頃

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「笑う少年」 油彩/板/直径(最大)30.4cm/1625頃

 平成25年度から使用される、新版高校美術Ⅰ教科書(「高校美術1」「Art and You」)のご案内が始まりました。新しい教科書への期待も高まる頃です。
 そんな中、長年使用されてきた「高校美術1」教科書の表紙を飾る「真珠の耳飾りの少女」と、オリエンテーションで紹介する「笑う少年」が、日本にやって来ます。オランダのマウリッツハイス美術館に所蔵され、国内ではなかなか見ることができない作品たち。教科書で見る作品の「本物」に出会える貴重な展覧会を、どうぞお見逃しなくご覧ください。
※「真珠の耳飾りの少女」は、新版「Art and You」P.13にも掲載されます。

<展覧会情報>

  • マウリッツハイス美術館展 オランダ・フランドル絵画の至宝
  • 2012年6月30日(土)~9月17日(月・祝)
    巡回:神戸市立博物館 2012年9月29日(土)~2013年1月6日(日)
  • 休室日:月曜日(ただし7月2・16日、9月17日は開室。7月17日は休室)

展覧会概要
本展では、17世紀のオランダやフランドル絵画の世界的コレクションで知られるオランダ・ハーグのマウリッツハイス美術館から、フェルメールやレンブラントなど、西洋絵画の巨匠たちの名品約50点を紹介します。

■東京都美術館ico_link

  • 所在地 東京都台東区上野公園8-36
  • TEL 03-5777-8600(ハローダイヤル)

<同時期開催の展覧会>

  • 「Arts&Life:生きるための家」
  • 2012年7月15日(日)~9月30日(日)

その他、詳細は東京都美術館Webサイトico_linkでご覧ください。

<次号予告>

マウリッツハイス美術館展を担当する東京都美術館学芸員 大橋菜都子氏が出品作品について読み解きます。


「ハート」 アンガス・サティ作

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陶土/52×57×22cm/1991

 イギリスの陶芸は、バーナード・リーチの流れを汲む伝統的な壺や皿の形の作品から、1970年代に入り、造形的な陶芸作品へと領域を広げてきました。イギリスの陶芸界では、伝統的なうつわの形が陶芸であるという考え方が主軸にあり、陶土が彫刻素材として認められるのには、他の国に比べて時間を要しました。そのため、前衛的な作家たちはうつわや壺、ティーポットを原形としながら、造形性を高めた芸術としての陶芸を追求してきました。アンガス・サティは、このような新しい動きをリードしてきた代表的作家のひとりです。サティの作品は、造形的な形をしていますが、実用の焼き物であるティーポットの「注ぎ口」、「取っ手」といったパーツを作品に組み込んでいます。それは、実際に使うためではなく、そのパーツを組み込むことで造形をより豊かにし、陶芸であることの必然性を得ようとしているのです。「ハート」では、ティーポットの形は姿を消し、造形的な作品にみずからのイメージの世界を構築しています。この作品は、この頃の作品としてはめずらしく明るい色彩を用い、ほのぼのとした雰囲気をうかがわせるサティの心象風景を表現した作品です。
 サティは、自分の作品について次のように記しています。「世の中は全てを機能性だけで評価しようとしている。しかし人生とは、もっと豊かなもののはずだ。私の作品は、こういった風潮に対する反発である。だから私は、しきたり事を見つめながらも、機能性を一切排除しているのだ。」(1)サティの言葉からは、伝統的な発想から新しい陶芸を切り開いていこうとする強い信念が伺えます。

(1)London/Amsterdam: New Art Objects from Britain and Holland, Crafts Council Gallery, Galerie Ra  Galerie De Witte Voet, 1988.

(滋賀県立陶芸の森 主任学芸員 三浦弘子)

■滋賀県立陶芸の森 陶芸館ico_link

  • 所在地 滋賀県甲賀市信楽町勅旨2188-7
  • TEL 0748-83-0909
  • 休館日 月曜日(4月30日は開館)

<展覧会情報>

  • 特別展「陶芸の魅力×アートのドキドキ」
  • 2012年3月3日(土)~7月6日(金)

展覧会概要

  • ミロやピカソ、岡本太郎、奈良美智ら代表的な芸術家の陶芸作品とアートと結び付いた日本、海外の陶芸家たちの作品約80点を展示します。

<次回展覧会予定>

  • 「明治・大正時代の日本陶磁―産業と工芸美術」
  • 2012年7月14日(土)~8月26日(日)

その他、詳細は滋賀県立陶芸の森Webサイトico_linkでご覧ください。


「尖底深鉢 押型文(せんていふかばち おしがたもん)土器」

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出土地:卯ノ木(うのき)遺跡(新潟県中魚沼郡津南町)/時期:縄文時代早期(約9,000年前)/高さ:23cm

 今から約12,000年前に始まる縄文時代には、日本列島の各地でさまざまな土器がつくられました。土器は粘土をこねて容器の形をつくり、それを焼いて水に溶けないように化学変化させたもので、この発明により縄文人たちは生活技術を大きく発展させます。
 縄文時代早期の中ごろになると、棒に楕円形や山形などの意匠を彫り込み、器面に回転させて押し付けた押型文土器が東日本の各地で流行しました。この種の土器は、長野県を中心とする中部高地方面の影響を受けたもので、新潟県内では、特に信濃川上流域や上越地方の妙高山麓(さんろく)周辺で発見されています。
 信濃川上流域に位置する卯ノ木遺跡からは、山形と楕円形の二つのパターンの文様を、交互に施した深鉢が出土しました。縄文時代早期に特有な尖(とが)り底につくられています。おそらく炉の中に埋めこんで煮炊きに使ったものでしょう。この時期の土器には、完全な形に復元できるものがきわめて少ないこともあって、この尖底深鉢は押型文土器文化を代表する貴重な資料となっています。

(長岡市立科学博物館学芸係長/馬高縄文館館長 小熊博史)

■長岡市馬高縄文館ico_link

  • 所在地 新潟県長岡市関原町1丁目3060-1
  • TEL 0258-46-0601
  • 休館日 毎週月曜日(休日の場合はその翌日)および12/28~1/4

<展覧会情報>

  • 企画展「縄文土器の変遷」
  • 2011年11月19日(土)~2012年3月20日(火・祝)まで

展覧会概要
国指定重要文化財の小瀬ヶ沢(こせがさわ)洞窟、室谷(むろや)洞窟遺跡出土品ほか、縄文時代につくられたさまざまな土器の優品などを、長岡市立科学博物館考古部門の所蔵資料を時期別に紹介します。今回紹介した「尖底深鉢 押型文土器」も、この期間に限って展示・公開中です。

<次回展覧会予定>

  • 企画展「縄文石器の変遷」
  • 2012年4月14日(土)~7月8日(日)(予定)

その他、詳細は長岡市馬高縄文館Webサイトico_linkでご覧ください。


「那智瀧図」

絹本着色/159×57.8cm/13世紀末

絹本着色/159×57.8cm/13世紀末

 紀伊半島の南端、熊野・那智山にある瀧を描いた絵画。日本では、古くから山や瀧、樹木や岩などに聖霊が宿ると考えられ、高さ133メートルを一気に落下する那智瀧も神聖なものとみなされていました。その後、仏教が普及するにしたがい、日本古来の神々は、実はインドの仏さまが、日本人のために姿を変えて現れたと考える神仏習合(しんぶつしゅうごう)の思想が広まります。それゆえ、神聖な那智瀧も、仏教の千手(せんじゅ)観音が姿を変えたものとみなされるようになります。ですから、この絵は、たんなる風景画ではなく、神でもあり仏でもある瀧を描いた宗教絵画なのです。
 絵の上の方では、崖の上には紅葉した木々が茂り、金色の月がのぞいています。暗い色の崖を白い瀧は一直線に落下し、途中の岩壁に当たって幅を広げ、やがて岩場に落ちて三方向に流れてゆきます。まっすぐに落ちてゆく瀧の、神々しい姿を描いていると言えるでしょう。下の方には、緑の葉を茂らせた杉の木立や、瀧を礼拝するために建てられた拝殿の屋根(赤茶色の部分)が見えます。
 誰が、何のためにこの絵を描いたのかは、記録が無いため明らかではありません。しかし、拝殿の向かって左側に描かれた大きな碑は、弘安4年(1281)にこの地に詣でた亀山上皇(1249‐1305)が、参拝の記念に建てたと考えられており、このことから、熊野御幸(くまのごこう)から帰ったのち、13世紀末から14世紀初めのころ、上皇が、京にいながらにして、はるか遠くの那智瀧を礼拝できるよう描かせたのではないかと推測されています。
 日本人の自然に対する敬虔な思いや日本独自の宗教観を、一筋の瀧の姿に表したこの絵は、日本の宗教絵画を代表する作品の一つにあげられています。

(根津美術館 学芸部 白原由起子)

■根津美術館ico_link

  • 所在地 東京都港区南青山6-5-1
  • TEL 03-3400-2536
  • 休館日 月曜日(月曜日が祝日の場合は、翌火曜日)・展示替え期間・年末年始

<展覧会情報>

  • 特別展 虎屋のお雛様
  • 2012年2月25日(土)~4月8日(日)

展覧会概要
和菓子の老舗「虎屋」に伝わる雛人形と極小雛道具約270点を展示します。雛人形は,きらびやかな衣装と端正な面差しの京雛。雛道具は,極小でありながら細部にまで蒔絵をほどこしたものなど,華やかな品々が並びます。

<次回展覧会予定>

  • KORIN展 -国宝「燕子花図」とメトロポリタン美術館所蔵「八橋図」-
  • 2012年4月21日(土)~5月20日(日)

その他、詳細は根津美術館Webサイトico_linkでご覧ください。


「彫刻と女」 松本竣介作

油彩/キャンヴァス/117×91.2㎝/1948

油彩/キャンヴァス/117×91.2㎝/1948

 描かれたモチーフはどれも、西洋美術の伝統を踏まえたものだと考えられます。彫刻は言うまでもなく、女性の豊かな髪や衣服を透ける体の線は、ギリシャ神話から抜け出して来たかのように堂々としており、画面右下の斜めに傾いたサインは、空間の奥行きを示す線遠近法に則っているように見えます。しかしそれらはどれも、少しずつちぐはぐです。女の手足はちょっと大きすぎるようですし、線遠近法は徹底していません。彫像を載せる台は、奇妙に足の長い電話台のようではありませんか。それでいてこの作品には中途半端な印象はかけらもなく、どこか胸が痛くなるようなひたむきさを感じさせるのです。なぜでしょう。
 女と彫像の間の白い部分に注目して下さい。絵の正面に立つと、必ず目に入るのがここです。女とこの部分の青白い色は、上から色を重ねずに残された地塗りの色です。塗り重ねるのではなく塗り残すことで表現されたこの色は、「彫刻と女」の謎めいた特徴をよく表しています。淡紅色の上塗りが施された女の上半身と比べ、彫像との間はひときわ白く、光っているように見えます。「光」と呼ぶにはあまりに儚(はかな)い表現にも見えますが、作者はそのことを承知していたでしょう。なぜなら決して応えはしない彫像に触れるという女の行為もまた、「かたち」を表す線の内側に閉じ込めることのできない「光」を描くようなことだからです。触れて確かめることのできない遥かな世界への憧れが、この絵には託されているのかもしれません。
 作者の松本竣介(1912-1948)は、東京で活動した画家です。少年期の病気が元で聴覚を失っていた松本は、徴兵を免れたために第二次大戦中も東京に留まり、重要な作品を制作しました。「彫刻と女」は終戦から3年後、彼が36歳の若さで病没する直前に完成し、遺作となった3点の油彩画の内の1点です。

(福岡市美術館 学芸課 吉田暁子)

■福岡市美術館ico_link

  • 所在地 福岡市中央区大濠公園1-6
  • TEL 092-714-6051
  • 休館日 月曜日(月曜日が祝・休日の場合は開館し、次の最初の平日が休館)、12月28日~1月4日

<展覧会情報>

  • 企画展 レオナルド・ダ・ヴィンチ美の理想 展
  • 2012年1月5日(木)~3月4日(日) 特別展示室A

展覧会概要

レオナルド・ダ・ヴィンチ(1452-1519)の貴重な習作、弟子やレオナルド派による絵画など日本初公開を数多く含む作品約75点を紹介し、レオナルドが生涯をかけて追求した「美」とその系譜をたどります。※会期中一部展示替えがあります。

  • 常設企画展 第10回21世紀の作家-福岡 鈴木 淳 展
    なにもない、ということもない
  • 2012年1月5日(木)~3月25日(日) 2F常設展示室内企画展示室

<次回展覧会予定>

  • 第46回福岡市美術 展
  • 2012年3月13日(火)~3月25日(日)

その他、詳細は福岡市美術館Webサイトico_linkでご覧ください。


「三等船室」 アルフレッド・スティーグリッツ作

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1907

 アルフレッド・スティーグリッツ(1864-1946)は、芸術としての写真を高らかにうたい挙げ、近代写真の父と称されました。1902年に先進的な写真グループ「フォト・セセッション」を結成し、翌年には機関誌『カメラ・ワーク』を創刊。1905年に通称「291」と呼ばれた画廊をニューヨークに開設しました。この機関誌と画廊は写真表現に決定的な影響を及ぼすとともに、ロダン、ピカソなどヨーロッパの前衛美術を紹介し、アメリカにおける近代芸術の出発点ともなりました。
 「三等船室」は、スティーグリッツの代表作であると同時に、近代写真を代表する1点です。1907年にニューヨークからヨーロッパに向かう最新型の船の一等船室に乗り込んだスティーグリッツは、その気取った雰囲気に嫌悪を抱いて三等船室の方へ向かい、この光景を目にしました。「丸い麦わら帽、左に傾いた煙突と右に傾いている階段、鎖の手すりのある真白な橋、階下の男の背中に交差している白いズボン吊」(1)。互いに関連した様々な形と、そこにある人生をしばらく魅せられたように眺め、急いでカメラを取りに行ってただ一枚あったネガに撮影したのが、この写真です。分割された空間に、断片化した様々な形が絡み合い、写真におけるキュビスムと称されました。
 この時スティーグリッツは、写真美学の重要な転換期にいました。撮影から4年後の1911年にはじめて発表したこの写真によって、絵画への追従であったピクトリアリズムと決別して、写真本来のシャープな画像を焼き付けていくストレート・フォトグラフィーへ向かい、写真独自の美学を希求していきました。

(1)Alfred Stieglitz,“How The Steerage Happened”,Twice a Year(8-9),1942, pp.175-178.より訳出。

(島根県立美術館学芸グループ課長 蔦谷典子)

■島根県立美術館ico_link

  • 所在地 島根県松江市袖師町1-5
  • TEL 0852-55-4700
  • 休館日 火曜日、年末年始
    ※ただし企画展の開催日程等にあわせ休館日を変更する場合があります。

<次回展覧会予定>

  • 第58回 日本伝統工芸展 ~人間国宝から新進作家まで~
  • 2011年12月7日(水)~12月25日(日)

<展覧会情報>

  • 新春特別企画 没後40年 伊東深水展
  • 2012年1月2日(月・祝)~2月13日(月)

展覧会概要

  • 美人画家として不動の人気をほこる伊東深水の作品は、今なお華やかな女性像で見る人を魅了します。美人画を代表する作品を世に遺し、いわゆる「深水型美人」として親しまれている、伊東深水の画業を紹介します。

その他、詳細は島根県立美術館Webサイトico_linkでご覧ください。