こんなときどうしよう?⑦ 見学活動ができないときはどうしたらいい?

(1)現地での見学ができない場合の方法

 「社会科が好き・楽しい」という児童の多くは、「見学できるから」、「体験できるから」という理由をあげています。フィールドワークは児童の意欲を高め、より主体的に、そしてアクティブに学習を展開することができます。
 主体的・対話的で深い学びを実現していくためにも、見学や調査・聞き取りなどの体験的な学習にできるだけ多く取り組ませたいと願う教師は多いと思います。
 しかしながら、学ぶべき内容が盛りだくさんなのに比べて、指導時間数が限られていること、感染症対策等のために行動が制限されていることなど、現地での見学・体験的な学習ができないことが現状です。

 では、現地での見学活動ができないときはどうすればよいのでしょう。ここにいくつかの方法を紹介します。
 ただし、どの方法にもあてはまることですが、その場での思いつきでの活動や時間つなぎの活動にならないようにしましょう。指導計画を作成し、授業のどの段階・場面で、何を目的として、どのような内容を取り上げるのかを明確にするなど、学習を意図的・計画的に進めることが大切です。また、学習内容や時間設定など見学先との連絡・調整をしっかりとしておく必要があります。そして、お礼の手紙や成果物を送付するなど、受入側にも「協力してよかった」と感じていただけるような心がけを忘れないようにしましょう。

1.自主教材の作成(事前取材・撮影など)

 教師の世代交代が進み、デジタルカメラやスマートフォンを自在に使うことのできる人が増えています。鮮明な映像や音声が記録できるだけでなく、簡単に編集することができるなど、高性能で使いやすくなり、授業に活用している方も多いのではないでしょうか。
 学習への動機づけや知的好奇心を高めるためにも、また、とらえさせたい内容や認識を深めるためにも、教師が意図的に作成した写真資料や動画は大きな力を発揮します。見学先と十分な連絡・調整が必要ですが、事前に教師が取材し、目的に応じた写真や動画などを撮影し、授業で活用しましょう。授業者の意図に沿った取材ですので、比較的短時間で資料を作成することができます。とはいえ、時間のゆとりは必要ですから、長期休業日や学年研修の時間などを利用しましょう。
 取材のときに、児童向けのパンフレットやポスターなどをもらっておくと、授業に役立てることができます。また、見学を受け入れている企業の多くは、オリエンテーション用に動画資料を作成しています。これまでの受け入れ経験から児童向けに作成されているので、そのデータを授業でも活用できるようお願いしてみましょう。双方の時間の節約にもなります。
 ところで、教師が個々に取材したり動画を編集したりすることは、いくら簡単にできるようになったとはいえ、研究授業でもない限り気軽にできるものではありません。また、大きな市町では、見学先の担当される方には相当な負担となります。そのような場合、特に3・4年生の地域学習においては、隣接する学校や地域の社会科担当者会などで協力して作成されることをおすすめします。
 姫路市小学校社会科教育研究会(以下姫小社研)では、Googleサイトに姫小社研のコンテンツ(姫路市教育委員会内限定のサイト)をつくり、そこに副読本「資料ひめじ」に掲載している写真をアップしています。児童はタブレットを用いて教室や家庭などからアクセスし、学習に活用することができます。そのコンテンツの中に、例年であれば見学に行くことのできていた姫路市内の施設について、姫小社研のメンバーが分担して取材し、児童が実際に見学に行っているかのように撮影した動画がアップされています。

姫小社研がアップしているコンテンツ例
3年生:「わたしたちの住んでいるところ」「かまぼこ工場のしごと」「スーパーマーケットのしごと」
4年生:「ごみのしょりと活用」「くらしをささえる水」

2.バーチャル見学

 教科書に掲載されているような企業は、児童向けの広報活動にも力を入れています。
 見学したい企業のホームページを見てみましょう。「バーチャル見学」「こどもサイト」などのグローバルナビやコンテンツが見つかります。適切なサイトが見つからない場合は、「バーチャル工場見学 企業名」などで検索し、目的にあったサイトを見つけましょう。多くの企業が魅力的な動画を掲載しています。また、動画ではありませんが、写真資料で丁寧に説明しているものもあります。(ただし、期待するサイトが閉じられている可能性もあります。)

例)
機械工業:トヨタ自動車、三菱自動車、HONDA、日産自動車など
食品工業:ヤマサ蒲鉾、ロッテ、森永製菓、カゴメなど

 その他、市役所・水道・消防署などについて調べる場合、自分たちの市町村のホームページに目的とするものはなかなか見つけることはできません。しかしこの場合、どこの市町村であっても内容はほぼ共通しているので、目的にあったサイトを見つけて活用することができます。

例)
市役所:よなごキッズページ
https://www.city.yonago.lg.jp/kids/
水 道:和歌山市キッズページ
http://www.city.wakayama.wakayama.jp/suido/1032420/1033063/index.html
消 防:大阪市中央消防署 キッズルーム
https://www.city.osaka.lg.jp/shobo_chuo/category/3968-0-0-0-0-0-0-0-0-0.html

 バーチャル見学を授業で活用する場合、教師はあらかじめ動画を視聴し、内容と時間を確認しておきましょう。そして、どの場面をどのように視聴させると効果的かを考えましょう。また、動画の多くは「どのように作られているのか」「どのような仕事をしているのか」などが紹介されていることが多く、「なんのために」「どんなことに気をつけているのか」などには触れられていないことがあります。それも含めて、児童から出てくるであろう疑問や質問について、どうすればよいかを考えておきましょう。
 例えば、企業のホームページの「企業理念」「社会貢献」などを閲覧し、関係するページや問いに対応する回答に該当する記述を把握しておきましょう。また、ホームページへの問い合わせが可能か、その場合どれくらいで回答がいただけるか、もしくは、質問事項をあらかじめ問い合わせておくことができるかなど、担当の方と確認できればなおいいですね。

3.リモート見学

 展示物の見学が主な歴史博物館や民俗資料館などの場合、学芸員の方にライブ映像を送っていただきながら、必要に応じて質疑応答ができると、学習が深まります。もちろん、生産工場やごみ処理場など一般的な見学でも高い学習効果が期待できます。
 この活動の最大のメリットは、案内する方との距離によって説明が聞こえる、聞こえないという差がないことです。一般的な見学では、前方の児童は説明をうなずきながら聞いているけれど、後ろの児童はただぞろぞろついて歩いているだけという状況が課題ではないでしょうか。個々人で視聴できるタブレットを活用したこの方法であれば、見学する人数に関係なく、どの児童も同じレベルで説明を聞くことができます。また、実際に見学地を移動するのは案内する方一人で、見学先の関係者ですから、普段の見学では入れないような場所も見学することができるかもしれません。
 しかし、なんと言っても見学先の担当者の方の協力が必要です。学校と近ければ、教師が事前に見学し、授業に即した見学ができるように打ち合わせておきたいものです。学校から遠くて実際に伺うことができない場合は、授業のねらいや見学したい場面、知りたい内容などを丁寧に伝えるなど、しっかりと打ち合わせをしておきたいものです。
 そしてこの場合、担当の方の手間と時間を多くいただくのですから、児童の対応が大切となります。もちろん、本コラムで紹介しているどの方法をとったとしても大切なことですが、気持ちのよい挨拶やていねいな言葉づかいができるように、事前指導をしっかりとしておきましょう。できれば、後日、お礼の手紙や成果物を届けるなどすると、授業へ協力したことの喜びを味わっていただけます。

4.デジタル教科書・教材の活用

 例えば、日本文教出版のデジタル教科書・教材には、アイコンをクリックすると動画が視聴できる資料などが掲載されています。また、ホームページにデジタルコンテンツが掲載されています。(https://www21.nichibun-g.co.jp/2020dc/sha/
 3・4年生は、それぞれの地域教材を学習するので、そのままでは授業に使えないことが多いのですが、自分たちの地域と比較したり、見学の視点づくりに活用したりすることができます。
 5・6年生では、日本の産業や国土の様子、政治や歴史事象など、タイムリーに動画資料を活用することで、児童の学習意欲を高めたり、理解を深めたりすることが期待できます。

○日本文教出版の場合(令和2年度版『小学社会』指導者用デジタル教科書(教材)より抜粋)

5年生

6年生

サトウキビの収穫の様子
稲作の様子と生産者の話
自動車工場での生産の様子 など

三内丸山遺跡の出土物など
大正時代の東京のにぎわい
1964年東京オリンピックの入場行進などの様子 など

5.「NHK for school」などの学習サイトの活用

 見学してみたい企業や見たい産地そのものを検索できないこともあります。その場合、同じような企業の生産活動を見ながら、類推したり一般化したりすることが可能です。(ただし、期待するサイトが閉じられている可能性もあります。)
 文部科学省の学習支援コンテンツポータルサイト(子供の学び応援サイト)の「小学校 各教科」から「小学校社会における学習支援コンテンツ」(https://www.mext.go.jp/a_menu/ikusei/gakusyushien/mext_00041.html)では、学習指導要領の内容項目や使用している教科書に応じた「NHK for school ばんぐみ一覧」へと進むことができます。
 また、国立研究開発法人 科学技術振興機構のScience Portalサイトの中にも製造業の動画が収録されています。(https://scienceportal.jst.go.jp/featured/channel_kids.html)「THE MAKING 企業名(または製品名など)」で検索し、目的のものを探すことができます。
 ただし、コンテンツによって放映時間の長短があります。また、同じ素材を取り上げている番組が複数ある場合があります。あらかじめ、どの動画を視聴するか、何をとらえさせるかを明確にしておく必要があります。
 授業形態としては、電子黒板に投影して一斉に視聴し、意見を交換したりまとめたりする活動に向いています。また、教師が視聴する動画を指定し、児童が個別に視聴した上で考えをまとめ、その後、意見交流をしながら考えを深めていく活動も効果的です。

6.出前講座・教室、ゲストティーチャー

 例えば、姫路市では、市政や市民生活上の身近な問題などについて、市の職員を講師として派遣しています。小学生に向けては、「『ごみ』から『資源』へ」「みんなで減らそう 『食品ロス』」「クイズで学ぼう!『下水道のはたらき』」「水道教室 ~安全でおいしい水道水~」などの出前講座が用意されています。これらを学習場面に応じて活用することは、見学と同じように有意義な学習活動となります。また、電力会社やガス会社など、出前教室を実施している企業もありますので、それらを適宜活用したいものです。
 また、地域の方や専門家にゲストティーチャーを依頼してみましょう。3・4年生は地域素材の学習ですから、身近な人から教えられることもたくさんあります。5・6年生も、単元によってはふさわしい方がおられるかもしれません。学校や市町村によっては、学習を支援するための人材バンクを備えているところもありますので、学校の社会科担当や生活科担当などに確認してみましょう。
 さらに、Google‐MeetやZoomなどを活用することで、遠く離れたところのゲストティーチャーと繋がることも可能です。例えば、姫路市立城陽小学校では、5年生「情報を生かして発展する産業」の単元(令和3年2月)で、東京の「羽田市場株式会社」の担当の方とライブでやり取りをして、考えを確かめたり深めたりする実践もおこなわれました。

 さて、出前講座やゲストティーチャーなどに依頼する場合には、以下のことに留意してください。

1 学習のねらいや協力いただくことの意義や効果をきちんと伝えましょう。

2 学習の内容や指導計画について、ポイントを整理して伝えましょう

3 お話いただく内容や時間配分について、十分に打ち合わせておきましょう。

4 「皆さんのために」「喜んで」でも「お忙しい中」来てくださっていることを、児童にしっかりと意識させましょう。

5 学習を終えたら、お手紙や成果物などで感謝の気持ちを伝えましょう。

(2)まとめとして

 おおまかに六つのアイデアを紹介しましたが、どの方法がいいのか、どの段階で取り入れるのかなどについて、同僚に相談したり先輩のアドバイスをもらったりしましょう。そして、校長や教頭にも相談してみましょう。これまでの経験からの示唆はもとより、立場上培った幅広い人間関係もありますので、地域の人材やより専門性をもった人ともつながることができるかもしれません。
 また、実際に見学に行く場合は、児童に「見学する必然性をもたせる」「見たいこと・聞きたいことをはっきりさせる」など、事前指導を丁寧に行っています。同じように、諸事情により見学に代わる活動をとる場合においても、「何のために」「何を調べるのか」などの事前指導は重要です。そうすることで、社会的事象の見方や考え方を身につける問題解決的な学習とすることができます。
 そして何よりも大切にしてほしいこと。それは、児童の意欲を高めたい、楽しくて魅力的な授業にしていきたいなどの思いをもってこのサイトを見ておられるあなたの熱意です。思いをもつことは成長の第一歩です。そしてその思いは、自然と児童にも伝わります。児童の確かな学びを目指して前向きに頑張っておられるあなたは、素敵な先生です。

連載してきました「こんなときどうしよう?」は、今回で終了となります。次回の連載もお楽しみに!

こんなときどうしよう?⑥ 「主体的に学習に取り組む態度」はどうやって評価したらいい?

(1)主体的に学習に取り組む態度の評価は「難しい」?

 「これは難しい!」
 多くの人の感想ではないでしょうか。
 『「指導と評価の一体化」のための学習評価に関する参考資料 小学校社会』(東洋館出版 国立教育政策研究所、以下『参考資料』と表記)を読んだ時に感じたことです。
 社会科を極めている先生は「できる!」「なるほど!」と感じるのかもしれませんが、初任者、いや経験年数の長い先生にとっても、これは「難しい!」のではないでしょうか。
 何が、難しいのか?それは『参考資料』の事例に掲載されている二つの授業場面です。

1 「予想や学習計画を立て、解決の見通しをもっているか」
 指導に生かす評価場面とするか記録に残す評価場面とするか、事例によって違いはありますが、どれもこの場面を「主体的に学習に取り組む態度」の評価として扱っています。主体的に学習に取り組むには、自分なりの予想をもっておくことは大切です。しかし、現実問題として、学習問題を立てる場面は社会科を専門とする教師にしても、簡単にはできません。まして、若手教員にとって、子どもが「このことを本気で調べてみたい!」と思わせる学習問題に導くことは至難の業です。この「本気の調べたい」に至っていない状態で予想を立てても、それは、ここで目指している「主体的に学習に取り組む態度」につながるのか、難しいところです。
2 「学習を振り返り、さらに調べるべきことを見出し、見通しをもって追究しようとしているか」
 これを実現するには、まず、指導計画自体に「見直す」時間を設定しておく必要があります。加えて、子どもにある程度学びのハンドル(調べる内容や方法)を任せておかなければ、評価することができません。クラス全体で、教師の指導の下、一斉の追究活動をしていた場合、この評価は全員同一になってしまいます。つまり、子どもの学びの評価ではなく、教師の授業評価となってしまいかねないのです。
 では、誰にでもできる評価として、これらの課題をどう解決していけばよいのでしょうか。事例を基に考えていきます。

(2)これならできる!「主体的に学習に取り組む態度」の評価

1.「1時間ごとのめあてに対する」振り返り

図① 実際の授業場面における板書(左側「メタ認知」と表記された下が、振り返りの内容です。)

 単元のどの段階であっても1時間ごとに「めあて」を立てることでしょう。その「めあて」に対して、振り返りをするのです。何を振り返るのか、それは次の3点です。

① めあてに対して、何が分かったのか(できたのか)
② なぜ、分かったのか(できたのか)
③ 次に生かせそうなこと

 ①は「めあて」が提示されている授業で、獲得した知識・技能があれば書けるでしょう。
 ②は難しいですが、もし書ければ、その学習活動で働かせた「見方・考え方」の自覚にもつながります。
 ③は、学習内容、学習方法の両面からのアプローチが考えられます。また、生かす場面として、以後の社会科学習、他教科、今の自分の生活や今後の人生など様々な場面が考えられます。

2.児童の振り返り記述と指導コメント

 実際の授業で、どのような振り返り記述があり、それを教師がどのようにコメントしていったのか、3年生の第1単元「自分たちの市のようす」の例で見ていきましょう。

学習活動

児童の振り返り記述

指導者のコメント

教師の意図

 学区域の周囲の様子について、分布に着目して調べる。

 なぜ、駅の所に商店がいっぱいあって、なぜ●●小のあたりに住宅が多いのかのところがむずかしかったけれど、友達や先生に教えてもらってわかってうれしかった。

 難しくてもあきらめずに考えたから分かったのですね。(波下線は、それを強調するため)

 分かった理由やあきらめない姿勢という「プラス面」の学びの状況を価値付けた。

 学習問題について、予想を立てる。

 予想を書くのがちょっと失敗しちゃったけれど、楽しかったです。

 「教室は間違う所」。初めからできる人はいません。次の予想で頑張りましょう。

 人は誰でも失敗する中で成長していくことを伝え、励ました。

 鉄道の分布に着目し、集中している理由を考える。

 「なぜ、そうなのか」のところの理由がうまくできたと思いました。

 せっかく素晴らしい考えが書けていたのに、発表してもらうのを忘れてしまいました。ごめんなさい。

 友達の見本になる素晴らしい考えであることを伝え、自信を醸成させたかった。

 商店の分布に着目して調べ、なぜ、そこに多いのかを考える。

 「なぜ、そうなのか」がすごくいっぱいかけて嬉しかったです。なぜ、そうなのかがちょっと簡単でした。なぜ、かんたんだったかというと、前にやってやり方が分かって、前の学習をふり返ったから、かんたんでした。

 いろいろな立場をよーく考えていますね。また、「人が笑顔になる」という考え方が素晴らしい!人は何のために生きているかにも繋がる大切な考え方です!!

 多い理由を店経営の視点からも捉えたこと、及び双方の幸せにつながるという「まとめ」に感動したことを伝えた。

図② 表「自分たちの市のようす」 ある児童の振り返り記述の抜粋
※抽出児:振り返りをしっかり行い、思考力も態度も大きく進歩したと考えられる児童

 取り上げた児童以外の振り返り記述で、①~③を表している例を紹介します。
①めあてに対して何が分かったか(できたのか)

  • 自分のまとめはよくできたかはわかんないけど、まとめはさいごまでかけた。
  • みんなで使う場所の所に人が多いとか、何があるか予想をつけて考えて、何があるかどこに人が多いか考えることも大事だと知った。

②なぜ、分かったのか(できたのか)

  • 「なせ、そうなのか」がこんなにできたのは、実さいに商店の人になって書いたから書けた。
  • 分布に目をつけたから、どこに多いのかわかった。

③次に生かせそうなこと

  • はじめて地図ちょうを使えてうれしかったです。また、使いたいです。
  • なぜ、できたのかは、前に勉強したことをふりかえったからです。もっと書きたくなって、いっぱい書いた。また、こういうことをやりたいです。
3.1時間ごとなら「難しくない!」➡いずれ、単元のまとまりで

 1時間単位の「振り返り」を書かせ、それを価値付け、広めることが「主体的に学習に取り組む態度」を育てる指導に当たります。それを毎回繰り返していけば、徐々に書けるようになります。「全てを自分でできなくても、ここまでは、できた」と振り返ることで「自らの学習状況を把握」(メタ認知)することができていると言えます。「できない」ではなく「できた」方にフォーカスして振り返れば、自己肯定感も向上しますから、プラスのスパイラルに入っていき、書くことにも前向きになります。これを継続的に行うことで、成長のプロセスも見取ることができます。これなら、多くの先生方が「できる!」のではないでしょうか。

 『初等教育資料』(東洋館出版 令和3年1月号)は、「見通しと振り返りを生かした指導の工夫」の特集でした。掲載されていた国語、社会、算数の子どものノート記述を類型化してみると(理科は、子どものノート例は掲載されていません)、「何が分かったか(できたか)」、「なぜ、分かったのか(できたのか)」、「次に生かせそうなことは」の三つに分けられます。先の実践例の有効性が確認されたと言えます。
 これらのことから、社会科に限らず、1時間単位の振り返りを書かせることは、誰にでもできる「主体的に学習に取り組む態度」の評価の一例として挙げることができます。これらを続ける中で、単元の学習問題をうまくつくることができたら、参考資料の例のように、予想する場面で評価できるようにしていきましょう。また、学びのハンドルを子どもたちに任せることができるようになった段階で、調べたことが十分かどうか見直すことにもチャレンジしていきましょう。大切なことは、指導者の授業状況や児童の学習実態に応じた評価を行っていくことです。

こんなときどうしよう?⑤ 自らの学びを調整するとは?

(1)教室で見える主体的に学ぶ子どもの姿

 ある学校の6年社会科の授業風景です。
 黒板には「聖武天皇の大仏づくりは、どのように進められたのだろうか」と本時の問いが書かれています。「では、始めなさい」。簡潔な教師の指示で、子どもたちは一斉に調べ始めました。この後、静かになった教室で、実に興味深い光景が展開されました。
 教科書で調べる子、資料集で調べる子、タブレット端末を用いてインターネットで調べる子……。一人一人異なった方法で調べ始めました。子どもたちは集中し、しばらくして調べたことをノートにまとめ始めました。これまた一人一人まとめ方が違うのです。クラゲチャート、コンセプトマップ、ウェビングマップ、関係図……。それまで学習してきた様々な思考ツール を用いて、自分なりに考え、子どもたちはまとめていました。

図1 さまざまな思考ツールを用いてまとめたノート

 これらの姿から、子どもたちは学習の課題(問題)をしっかり把握し、何をどうやって調べれば課題(問題)を解決することができるのか、見通しをもって学んでいることがよくわかります。
 この教室で展開された子どもの姿は、まさに「主体的に学ぶ」子どもの姿です。

(2)「主体的な学び」と問題解決的な学習

 ここで、「主体的な学び」について考えてみます。
 「主体的な学び」とよく言われますが、みなさんはこの言葉にどのようなイメージをおもちでしょうか。多くの方は、「主体的」=「興味・関心・意欲」でしょう。しかし、「主体的」は興味・関心・意欲だけではありません。平成28年12月の中教審答申 では、「主体的な学び」について、次の四つについて言及しています。

① 興味や関心をもっている。
② 見通しをもっている。
③ 粘り強く取り組んでいる。
④ 自らの学びの振り返りができる。

 これら四つは、バラバラに存在しているのではありません。一連の問題解決的な学習の中で互いに関連しあって存在しているのです。興味・関心をもったある課題(問題)に対して、解決のための見通しをもち、それに基づいて調べたり実験したり試したりして、その課題(問題)を解決していく。つまり、問題解決的な学習に取り組むことが、「主体的な学び」になるのです。

(3)「主体的な学び」の中にある「自らの学びを調整する力」

 最近、学校内外のあちこちで「自己調整」「自己調整力」という言葉を耳にします。今まで小学校教育には身近になかった言葉だけに戸惑われている方も多いことでしょう。いったい「自己調整力」とは何なのでしょうか。
 やや遠回りしますが、「自己調整力」という言葉が出てきた背景から説明します。
 学習指導要領の改訂により、観点別学習状況の評価がこれまでの4観点から3観点に変わりました。それは「知識・技能」「思考・判断・表現」「主体的に学習に取り組む態度」の三つです。
 この中の「主体的に学習に取り組む態度」について、文科省は次の二つの側面を評価するよう強調しています。

① 知識及び技能を獲得したり、思考力、判断力、表現力等を身に付けたりすることに向けた粘り強い取組を行おうとしている側面
② ①の粘り強い取組を行う中で、自らの学習を調整しようとする側面
という二つの側面を評価することが求められる。
〈文部科学省 国立教育政策研究所 教育課程研究センター『「指導と評価の一体化」のための学習評価に関する参考資料』東洋館出版社・P.10〉

 よく言われる「自己調整」の本来の意味は、上記②にある「自らの学習を調整しようとする」という言葉です。しかも大事なことは、「自らの学習を調整しようとする」活動は「粘り強い取組を行う中で」実行するということです。
 その「粘り強い取組」をあえて一言でいえば、問題解決的な学習、主体的な学びということになります。つまり、問題解決的な学習の過程の中で、主体的な学びをしていけば、子どもたちは自らの学びを調整するようになるということです。
 この「自らの学びの調整」は問題解決的な学習の過程では、二つの段階で考えられます。
 一つは、調べ学習の段階。もう一つは、学びの振り返りの段階です。前者は、見通しをもって調べている子どもが、これでは課題(問題)が解決しないと考え、別の調べ方やまとめ方をするなどした場合です。後者は、単元全体を振り返り、今後の学習の改善に生かす場合です。

図2 問題解決的な学習の中の「学びの調整」

(4)自らの学びを調整する子どもの姿

 冒頭の6年生の授業に戻ります。
 担任の先生は、授業後、このような話をされました。
 「最初、ベン図でまとめていた子が、ベン図は適さないと判断し、コンセプトマップに書き直しました。また、今まで学んだ思考ツールは自分には合わないと考え、全部文章にした子もいました」
 ベン図は適さないと判断しコンセプトマップに変更した子。このような姿こそ、課題(問題)解決の見通しをもって学習し、自らの学びを調整した子といえるでしょう。

こんなときどうしよう?④ コロナ禍でどうやって話し合い活動をおこなえばいいの?

1 コロナ禍での話し合い活動の模索

 2020年度、新型コロナウイルス感染症による感染拡大を防止するため、全国の公立小中学校が一斉に休校しました。それが明けてしばらくしたある日、区教育委員会から問い合わせがありました。
 「今年度研究指定校の2年目ですが、研究発表を行いますか?それとも、来年度に回しますか?」と。私は、今年度のメンバー(教職員)で発表までもっていかないと、研究の内容がまとまらなくなる可能性があることを懸念して、校長に相談し、「今年度行います」と回答しました。研究主題は「未来社会を見据えた『協調的な学び』の創造」です。話し合い活動の活発化による「深い学び」への到達をねらいとしており、話し合い活動をすることが前提です。しかし、グループでの話し合い活動は当時のガイドラインではあまり好まれない状況でした。どうすればよいか。私たちは大変悩みました。
 指導主事から、「濃厚接触にあたらなければ、活動できます」とのご助言がありました。そこで、マスクを着用して、15分未満の話し合い活動を計画しました。
 また、全校児童に一人一台ずつのタブレット端末が配布される前ですが、80台のタブレット端末と各担任に指導者用タブレット端末がありました。それらを活用した新しい形の話し合い活動ができないか。つまり、情報共有を可能とするアプリを駆使してまるで模造紙にみんなで書き込むようにして、話し合い活動にあたる情報の交流ができないかと考えました。

2 濃厚接触にさせない話し合い活動の工夫

1.話し合い活動の意義は

・「周りの人たちと共に考え、学び、新しい発見や豊かな発想が生まれる授業に」
どのように授業改善を図るかを述べた文部科学省の「主体的・対話的で深い学びの視点からの授業改善」より

・「子供同士の協働、教職員や地域の人との対話、先哲の考え方を手掛かりに考えること等を通じ、自己の考えを広げ深める『対話的な学び』が実現できているか。」
『対話的な学び』について説明した文部科学省資料「新しい学習指導要領の考え方―中央教育審議会における議論から改訂そして実施へ―」より

 対話的な学びとは、友達と話し合ったり、協働作業をしたりすることで、自分の考えを広げ、深めていくための教育活動を指しています。
 グローバル化の進展や絶え間ない技術革新等により、社会構造や雇用環境が大きく変化する、予測困難な時代を生きる児童にとって、「何を学ぶか」だけではなく、「どのように学ぶか」が必要となります。そして、一つひとつの学びを大切にし、各教科等を通じて得た力が将来にもつながるように、学ばせなくてはいけません。これからの時代を生きる上で、児童にとって必要なものの一つが話し合い活動なのです。

2.従来の話し合い活動をする際の工夫

 コロナ禍において、どのようにすれば話し合い活動ができるのでしょうか。指導主事からの助言を踏まえ考えました。濃厚接触者を作らなければ、話し合い活動は実施できるので、次のように校内での取り決めを行い、話し合い活動を増やしました。

<図1 従来の話し合い活動をする際の工夫>

①話し合い活動は15分未満とする。

・指導計画に表した。

②少人数のグループ活動の際、机(イス)の配置を工夫する。
※右図のように飛沫が相手にかからないように机の配置を工夫する。原則、机の幅の分を離れるようにした。

③ノートでの交流

・付箋を用いて、感想を伝え合ったり、助言したりした。

④思考を可視化するツールの活用(話し合う際などに、効率よく意見を交流し、考え等を整理する際に活用した。)

・イメージマップ→意見や考えを広げる際に有効
・ピラミッドチャート→具体化、構造化
・Yチャート→多角的に見る、分類  など
※これらについては、https://www.nichibun-g.co.jp/tools/c-sha_thinking/もあわせてご覧ください。

⑤知識構成型ジグソー法(*1)の活用

・本校の研究の肝となる学習方法だった。
(時間の制限のある中、より深い学びにつなぐため)

3.ICT機器の活用

 その当時の本校の環境としては、全校で2クラス分(80台)のタブレット端末がありました。また、各学級に指導者用タブレット端末や電子黒板、実物投影機が配られていました。そこで、情報教育推進リーダーを中心に、できそうなものを情報共有し、できる人から挑戦し、それを校内研究会の実証授業の際に報告しました。ここで活用したのが、図2①のJamboardでした。

<図2 本校で情報共有を可能とするアプリ(ソフト)>

ソフト

概要・特徴

操作ロック
・一覧表示

料金

URL

①Google Jamboard

デジタルホワイトボード。描画や付箋、図形、Google画像貼付等の機能。50名まで共同編集可能。
※50名まで可能な場合もあるが、動作不安定になる可能性がある。

×

無料

https://jamboard.google.com

②スカイメニュークラウド

学習活動端末支援Webシステム。発表ノートやグループワーク、ポジショニング(※1)、QRコード、教材・作品共有、シングルサインオン(※2)、健康観察等の機能。
※1:自分の意見がどこにあるかを色の点などで表現し、意見の分布などを一覧可能。
※2:Googleアカウントなどでログイン情報を連携。

有料

https://www.skymenu.net

③コラボノートEX

協同学習支援ツール。個別学習・共同学習切り替えやシングルサインオン等の機能。思考ツール等のテンプレート多数。

有料

https://www.collabonote.com

④ロイロノート

クラウド型授業支援アプリ。カードの共有・蓄積やテスト・アンケート、Webフィルタリング等の機能。思考ツール等のテンプレート多数。

有料

https://n.loilo.tv

⑤Googleスライド

プレゼンテーション作成ツール。オフィスのパワーポイント同じように使用できる。100名まで共同編集可能。
※ファイルごとの権限設定による。

×

無料

https://docs.google.com/presentation

⑥Googleドキュメント

文書作成ツール。オフィスのワードと同じように使用できる。100名まで同時編集可能。
※ファイルごとの権限設定による。

×

無料

https://docs.google.com/document

⑦Googleスプレッドシート

表計算作成ツール。オフィスのエクセルと同じように使用できる。100名まで同時編集可能。
※ファイルごとの権限設定による。

×

無料

https://docs.google.com/spreadsheets

2021年11月1日現在

 4年生は、社会科の水の学習を終えた後、総合的な学習の時間「わたしたちの水~水からつながる世界」の学習で、世界では水が得がたい存在であることなど、水自体についてや、世界の水事情などの各自が調べたい内容について調べました。その後、調べる内容が同じメンバーで集まりグループを構成しました。そのグループでJamboardにまとめました。最後は、探究したことをGoogleスライドで作品を作成し、電子黒板に投影して発表しました。教員は、指導用タブレット端末で、Googleドライブに格納してある作品を点検し、指導内容があれば、付箋の機能を用いて修正をさせました。この単元を校内研究会の実証授業で情報共有し、他の学年にも広がっていきました。

3 一人一台タブレット端末が配布された以降の取り組み

 4月以降、区教育委員会よりiPadが全校児童に貸与されました。情報教育推進リーダーは校内のiPadの活用事例を、「iPadを活用した校内事例」としてまとめ、活用の推進を図りました。その中で、情報共有を可能とするアプリ(校内事例では「コラボレーションツール」としている)として、①や②、④などを挙げています。下図はその一例です。

アプリ

内容

①Jamboard

4年生 総合的な学習の時間「わたしたちの水」

②コラボノートEX

2年生 生活科 野菜の観察記録
・児童が写真を撮り、教員が用意したシートに貼って、一般化を図る際の資料とした。

④Googleスライド

2年生 図画工作「おおきく そだて、びっくりやさい」作品ポートフォリオ
・児童が撮った写真を貼り付け、ポートフォリオとしてまとめた。

 まとめた事例には社会科がありませんが、4年生で「自然災害からくらしを守る」において、妙正寺川の普段の様子と台風時の濁流となっている様子をGoogleスライドに貼り付け、学習問題作りに活用したり、6年生「長く続いた戦争と人々のくらし」で、焼け野原の東京と復興した東京を比べる際に用いたりする予定です。また、知識構成型ジグソー法(*1)を行うため、三つの内容に合わせた資料をGoogle Classroomに貼り付け、エキスパート活動(*2)で、Jamboardやコラボノートで情報を整理し、それを基にジグソー活動(*3)で情報を交流させて、クロストーク(*4)で学習問題に対する考えを話し合うこともできます。
 一人一台のタブレット端末を活用すれば、手元で、カラーで、必要に応じて拡大もできることから資料提示にはとても有効だと思います。また、話し合いの時間を十二分に取りたいときは、話し合いの様子を教員が板書にまとめ、それを撮影し、印刷・配布したものを貼らせることも可能です。
 一方で、学習に見合う情報共有を可能とするアプリの適切な使用場面や使用方法がイメージできていないと、無駄な時間が生まれたり、ICT機器を活用することが目的化してしまったりすることがあります。

4 最後に

 教員の仕事は、終わりがなく、いくらでも仕事が見つかります。まじめな教員ほどそうです。特に、若手教員は、学級事務や校務分掌、生活指導などやることが多く、教材研究を行うので精一杯かもしれません。本校の教員もよく頑張るなという場面を見かけます。しかし、多少余裕のある長期休業日や計画的に仕事を行うことで生み出した時間を使って、<図2 情報共有を可能とするアプリ(ソフト)>などを研究し、トライアンドエラーを繰り返しつつ、習熟を図れたら、授業が充実してくると思います。そして、情報共有を可能とするアプリのよりよい活用場面を見いだし、「深い学び」に到達できるよう授業改善を支えていきたいと考えています。

*1:本校の昨年度の研究の内容、その手だての一つである学習方法である。「人に伝えたい状況」や「自分の考えが相手に受け入れられる状況」、「友達と考え、自分の考えが良くなる状況」が設定されるため、「協調的な学び」(*5)を教員が引き出すために有効な方法。
*2:元々のグループからテーマを選択して、専門的に個々に学ぶ。その後、同じテーマで学んだ人同士で情報を共有、詳しく説明できるようにする活動のこと。
*3:エキスパート活動で詳しくなった学びについて元々のグループで交換、統合する活動。
*4:3の段階で得た内容を学級などの全体で情報共有、学習問題に対する考えを出し合う活動。
*5:互いに考えを伝え合うことで、グループだけでなく、一人ひとりの考えが、よりよい考えになっていく学習のこと。「主体的・対話的で深い学び」につながるものと捉えている。

令和元・2年度 中野区教育委員会「学校教育向上事業」研究指定校 研究主題「未来社会を見据えた『協調的な学び』の創造」リーフレットより

こんなときどうしよう?③ 見方・考え方を働かせるって?

(1)見方・考え方を働かせた姿

 平成29年告示の学習指導要領では、全ての教科目標に「見方・考え方」が入りました。では社会科における見方・考え方を働かせた姿とは、子どものどんな姿をいうのでしょう。それは例えば…

というように、単元を通して学習してきたことからどんなことが分かったのかということです。いわゆる他のところでも同じように使っていくことができる知識(汎用性のある知識)といえます。これを、概念的知識といったり、深い学びといったりします。それでは、どうしたら深い学びになっていくのでしょうか。そこには、「見方・考え方」が関係してきます。それでは第5学年「日本の国土と人々のくらし」の単元を例にして進めたいと思います。

(2)「見方・考え方」を働かせた実践例

【寒い土地のくらしー北海道旭川市―】

 「2月の北海道旭川市のようす」の写真を見て、このような問いが生まれました。

図1 2月の北海道旭川市のようす

 これらに着目して調べていくと、社会的事象の意味や本質に迫ることができるということです。見方・考え方とは、社会的事象の事実をきちんと読み取ることができるということです。このような視点で見ていくと、例えば地域を見る見方ができ、子どもたちは、他の地域を見るときに、その見方を使って自分で学びを進めていくことができるようになります。その次の段階では、捉えた事実を比較・分類したり総合させたりしていきます。

○旭川市の人々は、気候に合わせて、どのようなくらしをしているのだろう。
○旭川市では、気候を生かしてどのような農業をおこなっているのだろう。
○旭川市は、なぜ冬でも多くの観光客がおとずれるのだろう。

 この段階では捉えた社会的事象を比較・関連付け、総合などして、あるいは地域の人々や国民の生活、つまり社会と関連付けて社会的事象の特色や意味に迫ります。

(3)「見方・考え方」とは?

 学習指導要領によると、「社会的事象の見方・考え方」は、次のように捉えています。

図2 社会的事象の見方・考え方

 つまり、位置や空間的な広がり(地理的環境と人々の生活)、時期や時間の経過(歴史と人々の生活)、事象や人々の相互関係(現代社会の仕組みや働きと人々の生活)に着目して問いを立てて考えることです。例えば、先ほどの第5学年「日本の国土と人々のくらし(寒い土地のくらし)」を例にします。この単元は、地理的環境と人々の生活になるので、「位置や空間的な広がり」の視点を中心に時間や相互関係も活用して問題解決をおこなっていくことが考えられます。

(4)見方・考え方を支えるには「問いを工夫すること」

 これまで見方・考え方について紹介してきましたが、次は、その見方・考え方を使って、深い学び=汎用性のある知識にしていくには、どうしたらよいのか考えていきましょう。
 (2)の「寒い土地のくらし」の例では、位置や空間的な広がりに関する問いの解決を積み重ね、その後、解決した内容を人々の生活等と関連付けて社会事象の本質や意味に迫りました。このことから問いが重要な役割を果たしていることが分かると思います。次は、問いについて考えていきましょう。
 「問い」は、児童が自らもつようになれば理想的ですが、いきなりできるようになることは期待できません。初めは、教師から問いかけることも必要です。また、単元を通す「学習問題」や本時の課題も含め、すべて「問い」と考えることができると「学習指導要領解説 社会編」にも示されています。
 (3)の図2で示した図に合わせて、問いの例を考えてみましょう。
○位置や空間的な広がり(「場所」「分布」「範囲」)に着目して
 「どのような場所にあるか?」
 「どのように広がっているか?」
○時期や時間的な経過(「起源」「継承」「変化」)に着目して
 「なぜ始まったのか?」
 「どのように変わってきたのか?」
○事象や人々の相互関係(「工夫・努力」「関わり」「協力」)に着目して
 「なぜこのような工夫をしているのか?」
 「~はどのようなくらしをしているか?」
 社会的事象の様子や仕組みなどを捉えるように、意図的に問いを構成して授業をおこなうことが大切です。

 また、問いは「事実を問う問い」と「意味を問う問い」に分けることができます。

位置や空間的な広がり・
時期や時間的な経過

事象や人々の相互関係

「事実」
を問う
問い

・~はどのような場所にあるか?
・~はどのように広がっているのだろう?
・~はいつか?
・~はどのように変わったか?

・~はどのようなくらしをしているか?
・~はどのような~をしているか?

「意味」
を問う
問い

・なぜそこにあるのだろう?
・なぜ広まっているのか?
・なぜ始まったか?
・なぜ変わったか?

・なぜ~しているのだろうか?
・なぜ工夫するようになったか?
・なぜ協力が必要なのか?

図3 旭川市をおとずれる観光客数
(2018年 旭川市役所資料)
 例えば、「北海道旭川市は、どのようなところなのだろう。」と事実を問うことで、「月別平均気温が0度を下まわる月が4か月ある」「雪がふる月が8か月あり、80cmの雪が積もる日がある」ということが分かります。さまざまな事実を調べた後に、「旭川市をおとずれる観光客数」のグラフを見せ、「なぜ冬でも観光客がおとずれるのだろうか?」と意味を問うと、寒い気候や雪がふることを生かして観光客を増やそうとしていることや、気候や地形を生かして人々が生活していることに気が付きます。
 このように教師が「問い」を大切にして授業を設計していくことで、児童が「見方・考え方」を働かせて、主体的に追究し、汎用性のある知識(=深い学び)に達することが期待できます。

こんなときどうしよう?② 子どもに興味・関心をもたせるにはどうすればよい?

(1)はじめに

 みなさんは、社会科の授業をしていて楽しいですか?わたしは、社会科の授業がとても楽しいです。「今日は、社会科の授業がある」と思うと、朝からウキウキします。それは、社会科の授業を受けている子どもたちが楽しそうに、主体的に学習に取り組んでいるからです。そしてわたし自身も、子どもたちの学習態度や発言からたくさんの刺激をもらい、自分自身の授業改善につなげているからです。授業が変わると、子どもたちの反応も変わります。子どもたちの反応から手ごたえをつかむと、さらに授業を改善しようという教師の向上心もうまれます。楽しい社会科授業は、子どもにとっても教師にとってもプラス効果が生まれるのです。ではどうしたら、子どもも教師も楽しくて主体的に学べる社会科授業をおこなうことができるのでしょうか。

(2)導入、資料提示の工夫 ~3年生、6年生の実践例から~

 社会科の授業で大切なことは、子どもたちに、調べてみたいというワクワク感や必要感をもたせることだと思います。そのためには、興味・関心をもたせる導入や資料提示の工夫が重要です。わたしは、単元の導入だけでなく、毎時間の導入でも興味・関心をもたせることを大切にしています。

1.小単元の導入の工夫

 それでは、3年生の「地域に見られる生産」の単元の授業を例に考えてみましょう。児童が「自分たちの住む区には野菜の生産に関する仕事をしている人がおり、安定しておいしい小松菜を生産するためにさまざまな工夫をしていることや、区の人々の生活と関わりがあること」を理解できる事例として、本小単元では、東京近郊で盛んに生産されている小松菜農家を取り上げることとしました。
 わたしが勤務する区は東京23区の中でも、農業が存続している数少ない区の一つです。その中でも、小松菜は、江戸時代から生産が始まった野菜であり、年間を通して栽培されており、収穫量も都内でもトップクラスです。また、区内で生産された小松菜は学校給食にも使われるととともに、区内各地にある直売所において販売されるなど、児童にとっても身近であり、地域の人々の生活と密接な関わりをもっていることを具体的に理解できる教材だといえます。それぞれの地域において、取り扱う事例は異なると思いますが、みなさんは、小単元の導入で、どのように子どもたちに興味・関心をもたせますか。
 以下は、以前にわたしがおこなった小単元の導入です。
 まず子どもたちに次のような資料を提示し、「一番多く作られているAの野菜は何だろう。」という問いを提示しました。そしてAからEまでの野菜の写真を見せました。

※縦軸の単位はt

 その後、この問いを解決するために、以下の①②③の資料を提示しました。

資料① 野菜の収穫時期

資料② Aの野菜が入っている給食のメニュー

資料③ Aの野菜が入っている商品

 これらの資料から、子どもたちは、Aの野菜は一年中収穫できることや、給食でも使用されていること、さまざまな食べ物に使われていることを読み取りました。そして写真の野菜と資料を見比べながら、Aの野菜は小松菜であることがわかりました。ちなみに他の野菜は、Bキャベツ、Cだいこん、Dえだまめ、Eねぎとなっています。(2位以下の野菜は、統計年度により変動があります。)
 このような導入の工夫をすると、教師から「小松菜の学習をします」と提示するよりも、子どもたちは小松菜に興味・関心をもち、もっと調べてみたいという意欲をもつようになります。今回活用した収穫量や収穫時期のグラフは、副読本にのっているものです。給食の写真は、栄養士さんに提供していただきました。小松菜を使用した商品は、区市町村や農協等のホームページに紹介されているものです。わずかな準備で、興味・関心をもたせる資料を用意することができますので、導入の工夫の参考にしていただけるとうれしいです。

2.資料提示の工夫

 次に、毎時間の資料提示の工夫について考えてみましょう。6年生の江戸文化「浮世絵」の学習です。学習指導要領解説(社会編)には、「実際の指導に当たっては、例えば、歌舞伎や浮世絵を楽しむ人々の様子から、それらが町人の間に広がったことを調べたり(後略)」と書かれています。では、どのような資料を提示すれば、浮世絵が町人の間に広がったことを調べることができるのでしょうか。以前におこなった授業の様子を紹介します。
 授業の導入では、江戸時代の代表的な浮世絵を提示します。そして浮世絵は、当時の様子を題材にした多色刷りの版画であることや、歌川広重、葛飾北斎などの浮世絵師の名前を紹介しました。そのうえで、「浮世絵は、なぜ、江戸時代の人々に人気があったのだろう。」という問いを提示しました。複数の資料を関連付けながら、子どもたちがその謎を解いていくという学習展開を考えました。
 実際に子どもたちに提示した資料は、次のものです。

資料④ 浮世絵ができるまで

資料⑤ 浮世絵の値段(一文は約20円)

・「二八蕎麦」…16文(かけ蕎麦一杯が約320円)
・普通サイズの浮世絵(縦39cm×横26.5cm)…20文
・小さいサイズの役者絵(縦33cm×横15cm)…8文

資料⑥ 絵草紙屋の店内の写真(東京都江戸東京博物館/DNPartcom)

 ④の資料からは浮世絵は大量生産できたこと、⑤の資料からは手が届く値段だったこと、⑥の資料からは町人でも手軽に買えたことがわかります。そして、最初に提示した役者絵、風景画、美人画と関連付けて、人々の生活にゆとりが出てきて、浮世絵などの楽しみを求めるようになったことや、流行の髪型や服装などを知る手段として、浮世絵は人気があったことに迫ることができます。
 子どもたち一人一人で考えたあと、グループで話し合う時間を設定すると、子どもたちは自分の考えを積極的に伝え合い、考えが深まります。「わたしはこう思う」「なるほど」「そうか」というつぶやきが、教室のあちこちから聞こえてくると思います。また、タブレット端末を活用して資料を配布すると、子どもたちは写真を拡大して細部まで注目することができます。
 このように、何のために調べるのかという目的を明確にして、ねらいにそった資料を提示することで、子どもたちは主体的に学ぶようになります。タブレット端末も効果的に活用して、主体的に問題解決ができるような授業を考えると、楽しい社会科授業になるのではないかと思います。

(3)おわりに

 今回、紹介した導入や資料提示の工夫は、一つの実践例にすぎません。この導入が最もよい、このようにすべきだと、考えているわけではありません。これを読んで、「この小単元では、このような導入をおこなってみよう」「このような資料を用意してみよう」というきっかけになればと思い、実践を紹介させていただきました。わたし自身も、まだまだ勉強中です。どのような導入がよいのか、どんな資料がよいのか、日々、試行錯誤しています。これからも多くの先生方と共に学び、共に考え、よりよい社会科授業をつくっていきたいと思います。

こんなときどうしよう?① 地域教材が見つからない!

今回から、先生方が普段社会科をご指導されるうえでの素朴な疑問やお困りごと解決をテーマに、「こんなときどうしよう?」を連載いたします。

(1)地域教材開発への意欲と地域素材の調査

 最近、中学年の教材について、「地域教材が見つからない」といった声を耳にすることがよくあります。平成29年告示の学習指導要領において、第3学年内容(4)、第4学年内容(3)、同内容(4)、同内容(5)などの内容が新しく示されことによって、地域副読本の作成や学習での地域の資料活用において地域教材が必要になってきたことが、大きな要因であろうと考えられます。
 学習指導要領の内容には、その内容を根拠づけて説明する具体的な資料は示されておらず、地図や統計グラフ、写真、実物、かかわった人の話など、地域の資料が必要になります。これらの資料の発掘は、地域教材の教材化にとっての一番の問題になっています。
 地域教材を教材化するにあたっては、教師自身が新たな資料・教材を発見・開発しようとする意識をもち、地域社会に向き合うことが第一歩です。そして、地域の土地や産業、人々の様子を見て歩き、地域の人の話を聞くことによって、学習指導要領の内容とかかわる地域の事象を自分の目でとらえることができ、地域教材の開発が進むと考えられます。
 こうした意識をもち、まずは過去の副読本やその指導書に目を通すことが大切です。現行の学習指導要領に示された内容と全く同じではなくとも、似た内容で教材化された地域教材があります。それをヒントに改善を図り、現行学習指導要領の趣旨にそった教材にすることができます。また、市町村史や都道府県史を調べて素材を発掘することや、地域にある博物館や資料館の人たちに聞くことなども考えられます。いずれの場合にも、自らの五感を通し、足で地域教材の教材化に向けた努力をしていかなければなりません。

(2)素材となる統計資料や地図などの発掘と教材化

 教科書に掲載されているグラフや地図などの資料を参考に、地域教材の素材となる資料を見つけることが、地域教材の開発にとって大きな問題となります。
 都道府県や市町村では、毎年それぞれの統計書を発行しています。その中には、地域の人口や産業、安全など、中学年に関わる単元の大部分の統計資料(素材)が掲載され、地方自治体の図書館やインターネットで閲覧することができます。また、明治期における都道府県や郡などの古い統計資料は、国立国会図書館のデジタルコレクションで多くの統計書がインターネットで見られるようになっています。その他に、水やごみ、消防、警察に関する資料は、それぞれの管内の白書や年報が該当当局から毎年発行されています。
 地図資料については、地方自治体と国土地理院などが作成したものがあります。国土地理院の地図は、明治時代から現在までの縮尺の異なった多くの地形図や土地利用図などが作成されていて、インターネットで閲覧、購入も可能になっています。
 地域や県内の災害や祭り・先人などを紹介する本やパンフレットなどについては、図書館やインターネットなどで多くのものを閲覧することができます。
 この他にも、地域の調査で、土地や産業の特色や記念碑などに気づいたり、地域の人から話を聞いたりして、素材を見つけることもできます。また、子どもたちに資料収集への関心をもたせておくと、子どもたち自身が家の人に話を聞いたり、図書館などに行って、新聞記事や本などの素材となる資料を集めたりすることもできます。
 しかし、これらの資料のほとんどは、素材であって、学習にそのまま使用できる教材ではないことに注意しなければなりません。例えば、グラフ資料であれば、グラフの種類や数量の単位、割合(%)、地図では、情報量が多い地図から必要な内容を取り出すことなど、子どもたちの発達の段階や単元の内容を考え、素材を加工し教材化することが大切です。

(3)高学年における地域教材の教材化

 高学年においての教科書事例は、学習指導要領の内容や着目点に準拠し、全国的な視点から典型的で重要だと見なされる地域の事例を取り上げていることから、高学年における地域教材の教材化には限界があると考えます。
 5年の産業や災害、情報の単元や6年の政治のはたらきの単元などで、自分たちの地域の事例を学習指導要領にあった内容に教材化されれば取り上げることも可能かと思います。
 6年の歴史単元においては、地域の歴史的事象の小単元全体の教材化は難しいところです。しかし、日本の歴史に関係の深い地域の事象や人物との出来事を、教材化することは大切なことだと考えています。例えば、地域の縄文・弥生の遺跡、地域としての奈良・京都・鎌倉・江戸の遺跡、地域での蘭学や自由民権運動の広がり、戦争中の人々のくらし、また、行基、千利休、伊能忠敬、与謝野晶子などの地域での出来事をもとに、歴史学習のねらいに即し教材化された資料を活用し、授業を展開することは、子どもたちに歴史に興味もたせることからも教材化の推進が期待されます。
 高学年における地域教材のいずれの教材化においても、中学年で述べた地域教材発掘への姿勢と調査、素材資料の教材化、そして、学習指導要領の内容に準拠し全国的・典型的な視点からの教材化がかなめになると考えます。

授業のスキル 2 資料活用の指導

1.資料活用の意義

 社会科における資料活用についてですが、新学習指導要領解説では「社会的事象等について調べまとめる技能」に位置付けられています。具体的には、問題解決に必要な社会的事象に関する情報を集める技能、収集した情報を社会的な見方・考え方によって読み取る技能、読み取った情報を問題解決に沿ってまとめる技能であり、児童生徒自身が身に付けられるように繰り返し指導することが大切となります。

 対象となる資料は以下の通りです。

○第3学年及び第4学年…地図帳や各種の具体的資料

○第5学年…地図帳や地球儀、統計などの各種の基礎的資料

○第6学年…地図帳や地球儀、統計や年表などの各種の基礎的資料

 ここでポイントとなるのが、社会認識力を育むためには資料(事実)に基づいて考える力を育てることが重要となります。想像だけで話し合うのでは意見がかみ合わず、論理的な思考力が育ちません。資料活用が子どもの思考を促し、判断させる力を身に付ける上で重要となります。

 以下に紹介する活用法を参考に子どもたちの実態を踏まえ、必要に応じて意図的・計画的に指導していくことが大切となります。

2.資料活用の方法

 資料活用と指導のポイントを「グラフ」「地図」「写真」に分けて紹介します。

(1)グラフの読み取り方

 小学校でよく出てくるグラフには、棒グラフ、折れ線グラフ、帯グラフ、円グラフがあります。グラフなど統計資料は「基本情報⇒全体⇒細部」の順で進めます。初期に扱う棒グラフ・折れ線グラフを例に読み取りのポイントを説明します。

①「表題」及び「年度」や「出典」から何を表したグラフか。

②縦軸、横軸の「単位」は何か。

③「数値や変化」を読み取る。

④「数値や変化」のわけを考え、調べる。

 ③の「変化」の読み取りで大切なことは、まず増加や減少という大きな傾向を読み取ることです。次に大きく変化しているところに着目します。二つのグラフが併記されている時は、共通点や相違点を探すことが大切です。そして④の、なぜ、そのような変化があるのかを調べ、理由を考えていきます。そのことで、単に資料活用だけで終わるのではなく、考える力を育てることができます。

(2)地図の読み取り方

 社会科の教科書では地図がよく出てきますが、地図の活用には大きく二つあります。

 一つ目は場所の様子を表す活用法で、地形図や土地利用など主題図と呼ばれる地図の読み取りです。特定の課題について読み取ることができるので、地域の全体像がわかりやすくなります。地図を読み取る際に欠かすことのできない基本情報としては「タイトル」「凡例」「方位記号」「縮尺」の確認です。

 二つ目はいくつかの主題図の比較から発見し考察する活用法です。例えば、県の様子を表す三つの主題図(地形、土地利用、交通)を関連付けて読み取る場合です。地形図と土地利用図から平野部は水田に利用されていること、また、交通図との関連から住宅が集まっている地域は交通が発達していることを読み取ります。ここから「どうして水田は平野部に広がっているのだろう。」「交通が便利なところに住宅地が集まっているのはなぜだろう。」と考えるようになります。

 このように、地図に着目することで発見したり関連付けから考察に繋げたりすることができるようになります。

(3)写真の読み取り方

 景観や様子をとらえる写真の読み取りについても、グラフと同様に「基本情報⇒全体⇒細部」の順で進めます。指導のポイントは以下の通りです。

①写真の活用を通して修得させたい教師側の意図やねらいを事前に明確にしておく。

②子どもが写真を読み取る上で欠かすことのできない基本情報を確認する。

③写真全体からとらえられる事柄や傾向を読み取る

④写真の細部に目を向け、見つけた事実からそのわけを考え、調べる

 なお、②の写真が撮影された場所の位置、時期、資料のタイトルや解説文などの確認が①の教師の指導の意図やねらいと繋がっていることがポイントになります。

3.地図帳の積極的・効果的な活用

 新学習指導要領では、これまで4年生で配布されていた地図帳が3年生に繰り上がります。その趣旨は、地図帳が社会的事象の見方・考え方の一つである「空間的な見方・考え方」を育てる上で欠かせない資料だからです。地図帳の積極的な活用には教師が事前に地図帳の活用場面を知る必要があり、子どもたちが地図帳に慣れ親しむ指導にこれまで以上に力を入れていくことが大切となります。指導のポイントとしては以下の通りです。

○地図帳を配布したときや各学年の年度初めに、地図帳の構成や使い方を指導する。

○地図帳に掲載されている「索引の見方」について、実際に地名の位置を探す活動を通して具体的に指導する。

○方位、距離と縮尺、土地の高さ、地図記号など、地図を読むときの約束ごとを、必要に応じて指導する。

○地図からその場所のイメージをふくらませる力を養う。

○地図から必要な情報を読み取る技能を指導する。

○土地の高低を読み取る技能について具体的に指導する。

○縮尺で距離を調べる技能を指導する。

【新連載スタート!】授業のスキル 1 観察・調査の指導

1.調査の意義

 社会科における調査とは、問題解決的な学習において、学習問題を追究・解決し、社会的事象に関する基礎的・基本的な知識や概念を習得するために必要な、見たり聞いたり体験したりして調べるための技能のことです。各学年段階に応じて系統的に育てなければならない技能であり、思考力・判断力・表現力を養う上でも必要な能力であるといえます。

2.調査への興味・関心を育成

 子どもたちが意欲をもって調査に臨むためには、まず、子どもたちにとって身近なことからスタートして、調査する内容に興味をもたせることが大切です。
 3年生の冒頭、「わたしたちの住んでいるところ」という大単元は、まず、自分たちが住んでいるまちを調べる単元があり、次に、自分たちの市(区)町村を学習する単元が続きます。この大単元こそ、子どもたちにとって社会科との出合いになります。
 今回の学習指導要領の改訂で、従前のように授業時間を割くことはできなくなりますが、地図をつくる・地図を読むといった、最も社会科らしい学習が展開できます。

 3年生に進級したばかりの子どもたちは、自分の知っていることには高い関心を示します。そこで、学校のまわりで知っていることを発表し合うことは有効な活動となります。しかし、見えないことは分からない、見えるけれどよく知らないなどの疑問が生まれてきます。こうした疑問を、教師が子どもたちから上手に引き出し、観点をもたせて調査活動につなげていくのです。

 また、子どもたちに興味・関心をもたせる方法としては、初めからまとめの段階の作品づくりを具体的に示すことが考えられます。例えば、「わたしたちの学校のまわりは、どうなっているか調べて、3年○組マップを作ろう。」などはどうでしょうか。

3.インタビューによる質問や調査の方法

 4年生の「県の人々のくらし」という単元を例にします。ここでは、自然環境、伝統や文化などの地域の資源を保護・活用している地域を取り上げます。

 まず教室で、写真をはじめ、その他の資料を活用して、その地域に観光客が集まる様子や、伝統・文化について学習し、「地域の人々は特色を生かしてどのようなくらしをしているのだろうか。」という学習問題を立てます。そして、学習問題の答えを予想し、学習計画を立てます。学習計画は、調査する内容と調査する方法の2点で構成します。

 調査する内容としては、地域の人々はどのようなことをしているのか、大変なことや嬉しいことは何かなどが考えられます。これらを調査する方法としては、副読本を活用したり、資料を取り寄せたり、インターネットで調べたりすれば分かるものと、実際にインタビューしなければ分からないものとに分類します。

 「インタビューのしかた」は、教科書にある「学び方・調べ方コーナー」を参考にするとよいでしょう。「こんにちは。○○小学校の○年生です。今、~について調べています。質問したいことがあるのですが、今聞いてもよいですか。」というように、話し方をカードに書いて配付し、教室で練習してから出かけるとよいと思います。その際に、相手の方には事前に指導者が日時、内容等について連絡をとっておくこと、事後にお礼を言うことも、当然ですが大切なことです。

 また、電話のかけ方も指導する必要があります。電話は相手の方が見えない分、難しさがあります。しかし、インタビューの仕方が身に付いていれば大丈夫です。具体的に話すことを文章化したカードなどを用意し、教室で実際に電話をかけるつもりで事前に練習しておくとよいと思います。ここでも、指導者の事前のお願いは必要です。

 最後に、インタビューのほか、必要な資料の探し方についてふれます。資料調査というと、つい、インターネットに頼りがちになることがあるかもしれません。しかし、学年が上がってくると、学校図書館や地域の図書館の活用も、必要な資料収集の技能になります。図書館のレファレンス機能やコンピューター検索を活用すること、分類番号を頼りに探すこと、地域資料室を活用することなどは、是非とも子どもたちに身に付けさせたい能力です。