学び!と社会

学び!と社会

こんなときどうしよう?② 子どもに興味・関心をもたせるにはどうすればよい?
2021.12.28
学び!と社会 <Vol.04>
こんなときどうしよう?② 子どもに興味・関心をもたせるにはどうすればよい?
東京都葛飾区立上小松小学校 田辺留美子

(1)はじめに

 みなさんは、社会科の授業をしていて楽しいですか?わたしは、社会科の授業がとても楽しいです。「今日は、社会科の授業がある」と思うと、朝からウキウキします。それは、社会科の授業を受けている子どもたちが楽しそうに、主体的に学習に取り組んでいるからです。そしてわたし自身も、子どもたちの学習態度や発言からたくさんの刺激をもらい、自分自身の授業改善につなげているからです。授業が変わると、子どもたちの反応も変わります。子どもたちの反応から手ごたえをつかむと、さらに授業を改善しようという教師の向上心もうまれます。楽しい社会科授業は、子どもにとっても教師にとってもプラス効果が生まれるのです。ではどうしたら、子どもも教師も楽しくて主体的に学べる社会科授業をおこなうことができるのでしょうか。

(2)導入、資料提示の工夫 ~3年生、6年生の実践例から~

 社会科の授業で大切なことは、子どもたちに、調べてみたいというワクワク感や必要感をもたせることだと思います。そのためには、興味・関心をもたせる導入や資料提示の工夫が重要です。わたしは、単元の導入だけでなく、毎時間の導入でも興味・関心をもたせることを大切にしています。

1.小単元の導入の工夫

 それでは、3年生の「地域に見られる生産」の単元の授業を例に考えてみましょう。児童が「自分たちの住む区には野菜の生産に関する仕事をしている人がおり、安定しておいしい小松菜を生産するためにさまざまな工夫をしていることや、区の人々の生活と関わりがあること」を理解できる事例として、本小単元では、東京近郊で盛んに生産されている小松菜農家を取り上げることとしました。
 わたしが勤務する区は東京23区の中でも、農業が存続している数少ない区の一つです。その中でも、小松菜は、江戸時代から生産が始まった野菜であり、年間を通して栽培されており、収穫量も都内でもトップクラスです。また、区内で生産された小松菜は学校給食にも使われるととともに、区内各地にある直売所において販売されるなど、児童にとっても身近であり、地域の人々の生活と密接な関わりをもっていることを具体的に理解できる教材だといえます。それぞれの地域において、取り扱う事例は異なると思いますが、みなさんは、小単元の導入で、どのように子どもたちに興味・関心をもたせますか。
 以下は、以前にわたしがおこなった小単元の導入です。
 まず子どもたちに次のような資料を提示し、「一番多く作られているAの野菜は何だろう。」という問いを提示しました。そしてAからEまでの野菜の写真を見せました。

※縦軸の単位はt

 その後、この問いを解決するために、以下の①②③の資料を提示しました。

資料① 野菜の収穫時期

資料② Aの野菜が入っている給食のメニュー

資料③ Aの野菜が入っている商品

 これらの資料から、子どもたちは、Aの野菜は一年中収穫できることや、給食でも使用されていること、さまざまな食べ物に使われていることを読み取りました。そして写真の野菜と資料を見比べながら、Aの野菜は小松菜であることがわかりました。ちなみに他の野菜は、Bキャベツ、Cだいこん、Dえだまめ、Eねぎとなっています。(2位以下の野菜は、統計年度により変動があります。)
 このような導入の工夫をすると、教師から「小松菜の学習をします」と提示するよりも、子どもたちは小松菜に興味・関心をもち、もっと調べてみたいという意欲をもつようになります。今回活用した収穫量や収穫時期のグラフは、副読本にのっているものです。給食の写真は、栄養士さんに提供していただきました。小松菜を使用した商品は、区市町村や農協等のホームページに紹介されているものです。わずかな準備で、興味・関心をもたせる資料を用意することができますので、導入の工夫の参考にしていただけるとうれしいです。

2.資料提示の工夫

 次に、毎時間の資料提示の工夫について考えてみましょう。6年生の江戸文化「浮世絵」の学習です。学習指導要領解説(社会編)には、「実際の指導に当たっては、例えば、歌舞伎や浮世絵を楽しむ人々の様子から、それらが町人の間に広がったことを調べたり(後略)」と書かれています。では、どのような資料を提示すれば、浮世絵が町人の間に広がったことを調べることができるのでしょうか。以前におこなった授業の様子を紹介します。
 授業の導入では、江戸時代の代表的な浮世絵を提示します。そして浮世絵は、当時の様子を題材にした多色刷りの版画であることや、歌川広重、葛飾北斎などの浮世絵師の名前を紹介しました。そのうえで、「浮世絵は、なぜ、江戸時代の人々に人気があったのだろう。」という問いを提示しました。複数の資料を関連付けながら、子どもたちがその謎を解いていくという学習展開を考えました。
 実際に子どもたちに提示した資料は、次のものです。

資料④ 浮世絵ができるまで

資料⑤ 浮世絵の値段(一文は約20円)

・「二八蕎麦」…16文(かけ蕎麦一杯が約320円)
・普通サイズの浮世絵(縦39cm×横26.5cm)…20文
・小さいサイズの役者絵(縦33cm×横15cm)…8文

資料⑥ 絵草紙屋の店内の写真(東京都江戸東京博物館/DNPartcom)

 ④の資料からは浮世絵は大量生産できたこと、⑤の資料からは手が届く値段だったこと、⑥の資料からは町人でも手軽に買えたことがわかります。そして、最初に提示した役者絵、風景画、美人画と関連付けて、人々の生活にゆとりが出てきて、浮世絵などの楽しみを求めるようになったことや、流行の髪型や服装などを知る手段として、浮世絵は人気があったことに迫ることができます。
 子どもたち一人一人で考えたあと、グループで話し合う時間を設定すると、子どもたちは自分の考えを積極的に伝え合い、考えが深まります。「わたしはこう思う」「なるほど」「そうか」というつぶやきが、教室のあちこちから聞こえてくると思います。また、タブレット端末を活用して資料を配布すると、子どもたちは写真を拡大して細部まで注目することができます。
 このように、何のために調べるのかという目的を明確にして、ねらいにそった資料を提示することで、子どもたちは主体的に学ぶようになります。タブレット端末も効果的に活用して、主体的に問題解決ができるような授業を考えると、楽しい社会科授業になるのではないかと思います。

(3)おわりに

 今回、紹介した導入や資料提示の工夫は、一つの実践例にすぎません。この導入が最もよい、このようにすべきだと、考えているわけではありません。これを読んで、「この小単元では、このような導入をおこなってみよう」「このような資料を用意してみよう」というきっかけになればと思い、実践を紹介させていただきました。わたし自身も、まだまだ勉強中です。どのような導入がよいのか、どんな資料がよいのか、日々、試行錯誤しています。これからも多くの先生方と共に学び、共に考え、よりよい社会科授業をつくっていきたいと思います。