中教審「学校段階間の連携・接続等に関する作業部会」報告書から ~特例の緩和を生かして一貫教育の推進を~

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1.はじめに

 筆者は、12年間の大阪府の公立中学校の校長を経験する中で、今日の児童生徒の成長・発達の状況と学校教育の現状を見る中で、小中一貫教育にその展望を見出したいと考えてきた。戦後の教育改革の中で、わが国が手本としたアメリカにおいては、6・3制の義務教育制度を続けている州は数%に過ぎない。他の先進国しかりである。
 小中連携、一貫教育の問題は、今後のわが国の行く末を左右する重要課題である。中央教育審議会の動きを追いながら、私見を述べてみたい。

2.中教審作業部会の報告

 本年7月13日、中央教育審議会初等中等教育分科会の「学校段階間の連携・接続等に関する作業部会」が昨年10月から審議してきた内容を「小中連携、一貫教育に関する主な意見等の整理」(以下「報告書」)としてまとめ、分科会に報告した。
 報告書によると、懸案となっていた義務教育学校の制度創設は、「慎重な審議が必要」ということで将来の検討課題とした。その主な理由は、人間関係の固定化・学びの接点の減少・複線化への懸念の3点である。継続審議になったことは、平成17年10月の中教審答申「新しい時代の義務教育を創造する」に立ち戻った感がし、残念である。ここで改めて、小中一貫教育の出発点となった17年答申の中の「義務教育に関する制度の見直し」の項を見ておきたい。
 『義務教育を中心とする学校種間の連携・接続の在り方に大きな課題があることがかねてから指摘されている。また、義務教育に関する意識調査では、学校の楽しさや教科の好き嫌いなどについて、従来から言われている中学校1 年生時点のほかに、小学校5年生時点で変化が見られ、小学校の4~5年生段階で発達上の段差があることがうかがわれる。研究開発学校や構造改革特別区域などにおける小中一貫教育などの取組の成果を踏まえつつ、例えば、設置者の判断で9年制の義務教育学校を設置することの可能性やカリキュラム区分の弾力化など、学校種間の連携・接続を改善するための仕組みについて種々の観点に配慮しつつ十分に検討する必要がある。(下線は筆者) 』
 その後、平成20年1月の答申「学習指導要領の改善について」の中で、「発達の段階に応じた学校段階間の円滑な接続」という項を立て、幼少の教育課程の工夫により小1プロブレムへの対応を図ることや小学校の教育内容を中学校教育の視点で再度指導するといった工夫を求めている。
 この間、平成18年から19年にかけて、教育基本法と学校教育法をはじめとする教育3法が改正され、新たに義務教育の目的・目標が規定された。その結果、小・中学校における教育の継続性が確保され、小中連携、一貫教育の土台が固まり、全国の半数以上の地方自治体が取り組む状況が生まれた。また、「骨太の方針」(平成15年、閣議決定)を受けて、構造改革特別区域における小中一貫特区が文部科学省の「特別の教育課程を編成して教育を実施できる学校(教育課程特例校)」に移行したことも、小中一貫教育の推進の追い風になった。 

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小中一貫教育全国サミット2011 共同宣言(抜粋)

 先の報告書の中で評価すべき点は「国としては、学校、市町村において積極的に小中一貫教育を推進できるよう、現行の小・中学校制度を基本としつつ、設置者の判断に基づき、一定の教育課程基準の特例を活用できることについて検討することが望ましい」としていることである。特例を緩和することで、小中一貫教育全国サミットに集う区市町村をはじめとして小中一貫教育を進めていこうとする自治体にとっては大きな後ろ盾となる。

3.小中一貫教育の課題

 ここで、改めて小中一貫教育とは何かを確認しておきたい。京都産業大学西川信廣教授は、小中一貫教育を「小学校教育と中学校教育の独自性と連続性を踏まえた一貫性のある教育」と定義している。また、サミットの中心メンバーである広島県呉市は、具体的に次のように定義づけている。
 『小中学校の教職員が義務教育9年間で児童生徒を育てるという意識を持ち、児童生徒の成長・発達の状況に即した教育課程を編成・実施することによって、知・徳・体のバランスのとれた、義務教育を修了するにふさわしい学力と人間関係の力等を育成するとともに、児童生徒の学びへの不安の解消と自尊心の向上を図る。』
 小中一貫教育の推進に当たって、施設一体型か施設分離型(連携型)かということが政争の具になりがちである。児童生徒の育ちと学びの視点から教育論で対処されることを強く望むものである。

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教科や活動の時間の好き嫌い(学年別)

 最後に、社会科の課題に触れたい。
 上のグラフは「義務教育に関する意識調査」(文部科学省, 平成17年度)である。児童生徒の社会科の「とても好き、まあ好き」のピークは中1の53.2%で最低は中3の37.9%である。中3に至っては、6割を越す生徒が社会科が嫌いということになる。公民的資質の育成を使命とする社会科の現状を打破するためにも、小中一貫教育の視点から今一度社会科のカリキュラムを見直したい。例えば、中学校の教員は、小学校・高等学校の教科書、学習指導要領を座右に置き、単元計画を再検討して欲しい。義務教育9年間、さらにその後の3年間を見通したカリキュラムを編成することが、児童生徒が社会科の学びに向かう大前提ではなかろうか。

丹松 美代志(たんまつ みよし)
専攻分野/教科教育学(社会)、「学びの共同体」論
主な論文/「大阪府における中学校社会科教育研究の現状と課題」(『大阪教育大学社会科教育学研究』第9号)
その他/「学びの共同体」スーパーバイザー


身近な暮らしと政治  ~税金のはたらきとわたしたちの暮らし~(第6学年)

※本実践は平成20年度版学習指導要領に基づく実践です。

1.単元名

「身近な暮らしと政治 ~税金のはたらきとわたしたちの暮らし~」

2.目 標

 身近な地域の施設の建設やまちづくりについて調べ,住民の願いやそれを実現していくための政治の働きについて理解を深めさせる。

3.評価規準

○社会的事象への関心・意欲・態度
 住民の願いとそれを実現する政治の働きについて,関心をもって調べようとしている。

○社会的な思考・判断・表現
 身近な制度や公共施設ができるまでの過程について学習問題を見いだして調べ,住民の願いとそれを実現する政治の働きを具体的に考え,適切に表現する。

○観察・資料活用の技能
 身近な人から話を聞いたり,役所に問い合わせたりして,身近な暮らしと政治のかかわりについて調べている。

○社会的事象についての知識・理解
 身近な制度や公共施設に住民の願いがどのような形でいかされているのかや,地方公共団体がどのようにかかわっているのかを理解している。

4.本単元の指導にあたって

 本単元は,身近な政治を手がかりとして,国や地方公共団体のしくみや働きについて理解を深めていくことが目標である。その上,自分も社会を構成する一員として自覚をもたせ,普段の自分たちの生活に学んだことを生かすことが大切になる。
 しかし,6年生の後半で学ぶため,時間があまり十分にとれずに学習を進めてしまうことが多かった。また一般的に,暮らしと政治のかかわりは,具体的な形となって表れにくく,抽象的でわかりにくいことがらも多い。子どもたちにとってのなじみも薄く,興味・関心が弱くなりがちである。本学級の児童もその傾向が大きかった。
 国民の「政治離れ」がいわれて久しいなか,政治の働きについて理解を深め,自分たちが社会を構成する一員であることを自覚させることはとても大切である。そこで,興味・関心をもって自ら学びを進めていくにはどうしたらよいかと考え,東日本大震災の市や府,県,国などによる災害復旧の取り組みについて学習していくことにした。大震災が発生して1年足らずであるため,児童の関心もまだとても高く,意欲的に学習を進めることができた。そして,最後に自分たちの住んでいる地方公共団体が行っている災害に対する取り組みと,自分たち自身ができることについて考えた。この学習を通して,政治の働きの重要性を理解し,自分たちがよりよい社会を作り上げていく大切な一員であることを忘れずに成長してくれることを願っている。

5.単元の指導計画

学習のねらい

子どもの活動と内容

評価規準の具体例

東日本大震災の写真や映像,新聞記事などから被害の状況について知り,学習問題をつくる。

①東日本大震災の映像(津波被害を中心に)を見る。
・インターネットや新聞の記事映像を見る。
②被害の様子について知っていることを書く。
・1万人以上の人が亡くなった。
・大津波が被害を拡大させた。
・各地から支援物資が届いた。
・日本政府の働きが見えづらい。
③被害の様子を見て,感じたことを発表する。
・「現実とは思えない」
・「自分たちが住んでいるこの地でもいつ起こるかわからないから,しっかり知っておかないといけない」
④復旧に向けて,だれが,どのような取り組みをしたのか考える。

【思考・判断・表現】
写真や映像から,被害の深刻さや,復旧に対する住民の願いを考えることができる。


本時

震災後の復旧に取り組む国や都道府県及び市町村の役割について理解できるようにする。

①もし,自分が被災したら,どんな支援をしてほしいか,ということを考える。
○被災後すぐに…
・避難所の設置,食料・水,布団,家,家族の安否を知りたい,服,薬,トイレ等
○1ヶ月後…
・上記のものの他に,風呂,電気,医者,貴重品,仮設住宅や仕事など
②災害復旧に向けて,政治の取り組み(国・県・市の取り組み)について調べる。
(※総合的な学習の時間等を活用して調べ活動を行う)
・役所が計画案や予算案をつくっている。
・議会で議決されてから,執行される。
・災害復旧について,計画に基づいて取り組みが進められる。
③調べたことを交流する。
〔国〕
・自衛隊の派遣・救助活動
・外国への応援要請
・緊急予算(法律の制定)
〔県・市〕
・避難所の設置,物資の提供
・仮設住宅の設置
・電気・ガス・水道の復旧
・道路などの復旧工事
・仕事のあっせん
④自分たちが住んでいる地方公共団体の,災害発生時とその後の復旧についての取り組みについて調べる。
・市発行の広報やHPで調べる
・市役所へのインタビュー
⑤調べたことを交流する。
・少しでも被害を減らすために,市民に啓発することも政治の重要な働きであることをおさえる。

【思考・判断・表現】
復旧,復興の様子から,住民の願いとのつながりを考え,表現することができる。

【知識・理解】
住民の願いをもとにさまざまな制度が実現していくことがわかる。

住民の暮らしと地方公共団体や国の政治がどのようにかかわっているのかをつかみ,どのようなしくみで決定・運営されているのかを理解できるようにする。

①住民の願いと政治は,どのようなしくみでつながっているのかを調べる。
・都道府県知事や市区町村長,都道府県議会,市町村議会の議員は選挙で選ぶ。
・住民は選挙を通して政治に参加している。

【思考・判断・表現】
地方公共団体の取り組みには,議会を通して住民の意思が反映されていることをとらえ,適切に表現することができる。

住民の願いをかなえる政治のはたらきの中で,税金が果たしている役割について理解できるようにする。

①地方公共団体の取り組みの費用が税金によってまかなわれていることを理解する。
②だれが税金を納めているのかを調べる。
・税金の種類には,所得税や消費税などがある。
・税金は,国や地方公共団体に納められている。
③税金が何に使われているのかを調べる。
④税金についてまとめる。
・税金の使い道を考えることは,とても大切なこと。

【知識・理解】
税金が国民のよりよい暮らしを支えるはたらきをしていることを理解することができる。

6.本時の学習

①目標
 震災後の復旧に取り組む国や都道府県及び市町村の役割について理解できるようにする。

②学習展開

主な学習活動・内容

指導の工夫と教師の支援

資料

①「もし,自分が被災したら,どんな支援をしてほしいか」考える。
○被災直後は,どんな支援が必要か。
・避難所の設置
・食料・水
・布団
・家
・家族の安否を知りたい
・服
・薬
・トイレ等
○1ヶ月後は,どんな支援が必要か。
上記のものに加えて
・風呂
・電気,ガス,水道
・医者
・道路
・仮設住宅
・仕事等

・具体的な支援が考えられるように被災直後と1ヶ月たった新聞記事やニュース映像,被災者の声などを準備しておきたい。

・各社新聞記事

②災害復旧に向けて,政治の取り組み(国・県・市の取り組み)について調べる。
〔国〕
・自衛隊の派遣,救助活動
・外国への応援要請
・緊急予算(法律の制定)
〔県・市〕
・避難所の設置,物資の提供
・仮設住宅の設置
・電気・ガス・水道の復旧
・道路などの復旧工事
・仕事のあっせん

・インターネットや新聞記事などを使って調べられるようにしていきたい。また,可能なら役所などにインタビューをすると,より身近な情報を得ることができる。
・しっかり自分の言葉で,表現するようにしていきたい。

・地方自治体発行の広報,ハザードマップ


明治の国づくりを進めた人々(第6学年)

※本実践は平成20年度版学習指導要領に基づく実践です。

1.単元名

「明治の国づくりを進めた人々」

2.目 標

 黒船の来航,明治維新,文明開化,大日本帝国憲法の発布とそれらにかかわる人物の働きについて,年表や写真,絵画などの資料を活用して効果的に調べ,我が国が欧米の文化を取り入れつつ,廃藩置県や四民平等などの諸改革を行い,近代化を進めたことがわかるとともに,それらにかかわる人物の願いや働きについて思考・判断したことを適切に表現する。

3.評価規準

○社会的事象への関心・意欲・態度
 黒船の来航,明治維新,文明開化,大日本帝国憲法の発布とそれらにかかわる人物の働きに関心をもち,進んで調べようとしている。

○社会的な思考・判断・表現
 黒船の来航,明治維新,文明開化,大日本帝国憲法の発布とそれらにかかわる人物の動きについて,学習問題や予想,学習計画を考え表現するとともに,我が国が欧米の文化を取り入れつつ,廃藩置県や四民平等などの諸改革を行い,近代化を進めたことや,それらにかかわる人物の願いや働きについて思考・判断したことを,言語などで適切に表現している。

○観察・資料活用の技能
 黒船の来航,明治維新,文明開化,大日本帝国憲法の発布とそれらにかかわる人物の働きについて,年表や写真,絵画などの資料を効果的に活用して必要な情報を集めて読み取り,ノートや作品などにまとめている。

○社会的事象についての知識・理解
 明治政府が,廃藩置県や四民平等などの諸改革を行い,欧米の文化を取り入れつつ,近代化を進めたことがわかっている。

4.本単元の指導にあたって

 本単元では,単元を通し,地域教材(地方)と教科書教材(中央)が行き来する場面を多く設定している。郷土の人々の暮らしぶりや先人たちの偉業を知ることで郷土に関心と誇りをもたせるとともに,教科書で学習する歴史的事象と地域の歴史的事象とを関連させながら考えさせることにより,歴史的事象を身近に感じてもらいたいと考えている。
 また単元の最後に,明治政府の行った諸改革を評価し,討論後に,「自分だったら明治政府の諸改革をどのように改善するか」を考えさせる場面を設定している。価値判断や意志決定をさせることにより,歴史的事象を多面的・多角的に考察し判断する能力や公民的資質を育成したいと考えた実践である。

5.単元の指導計画

学習のねらい

子どもの活動と内容

江戸時代と明治時代の変化を捉え,明治維新の改革の大きさに興味・関心をもち,学習問題を考え表現することができる。

○写真「弘前にある,江戸時代と明治時代の建造物」を見比べて,気づいたことなどについて話し合う。
・なぜ明治になって,建物が西洋風になったのだろう。
・建物のほかに,変わったものはないのだろうか。

文明開化にかかわる様々な資料から,文明開化によって人々の生活や意識に変化が現れたことを読み取り,まとめることができる。

○年表「都市部と弘前の文明開化」を見て,話し合う。
・都市部より遅いが弘前も生活様式が西洋風になった。
○副読本から,郷土の偉人・菊池九郎と福沢諭吉との関係について読み取る。

日米修好通商条約が,国内生活を混乱させ幕府への不満を募らせたことや,江戸幕府よりも強い政府が必要と考えた若い武士たちが明治維新を進めたことを理解することができる。

○写真「野辺地戦争戦死者の墓所」を見て,話し合う。
・なぜ弘前藩と盛岡藩・八戸藩連合軍は戦ったのだろう。
○明治維新のきっかけについて調べ,発表する。
○資料「五箇条のご誓文」を読んだ感想を発表する。
○江戸時代のどんなところを改革すれば,よりよい日本になるか考え,話し合う。



明治政府の行った諸改革を相互に関連づけて考え,大久保利通らが富国強兵を進めるために国の財政を安定させようとしたことを表現することができる。

○写真「磨光小学跡記念碑」を見て,話し合う。
・なぜ明治になって,小学校ができたのだろう。
○明治政府の行った諸改革について調べ,発表する。
○資料から,諸改革と弘前との関わりを読み取る。
○明治政府の目指した国づくりについて話し合う。

政府の改革に不満をもつ人々の行動が,反乱から言論へと変わっていったことを,国会開設に尽くした板垣退助の願いや行動と関連づけて考えることができる。

○改革の問題点とそれにより影響を受ける人々について考え,発表する。
○改革に不満をもつ人々の行動を調べ,発表する。
○副読本から,菊池九郎らによる自由民権運動について読み取る。

伊藤博文がつくった大日本帝国憲法の特色について,資料を活用して調べ,まとめることができる。

○大日本帝国憲法と各地の憲法案を比較し,話し合う。
○議会と選挙制度について調べる。
○副読本から,政治家・菊池九郎について読み取る。

明治政府の行った諸改革について根拠を明確にして評価するとともに,自分が明治政府の役人だったらどのような政治を行うか,自分なりの考えをもつことができる。

○明治政府の行った諸改革について,政府側と国民側それぞれの立場から,江戸時代と比較しながら根拠を明確にして評価し主張する。
○自分が明治政府の役人だったらどのような政治を行うか,問題点の改善策も考え,発表する。

6.本時の学習(4/8)

①目標
○明治時代の小学校の様子について,学区の小学校跡記念碑や当時の資料などをもとに必要な情報を読み取り,ノートなどにまとめたり発表したりすることができる。
○明治政府の行った改革(学制)のねらいや内容,問題点について,理解することができる。

②学習展開

主な学習活動・内容

指導の工夫と教師の支援

資料

○写真を見て,気づいたことなどについて発表する。
・明治9年にできた学校だ。
・三つの小学校が一緒になって千年小学校ができた。
・この碑はどこにあるのだろう。
・わたしの住んでいる地域の人たちはどの小学校に通ったのだろう。
・なぜ明治時代になって,小学校ができたのだろう。

○写真にじっくりと向き合わせることで,郷土史へ興味・関心をもつようにしたい。
○地図を使って記念碑のある場所を確認することで,地域住民が明治時代に通っていた小学校に愛着をもつようにしたい。

写真「磨光小学跡記念碑」

写真「磨光小学跡記念碑」


・学区地図

○学習問題をつかむ。

○小学校ができる前には寺小屋があったことを想起させることで,なぜ学校をつくる必要があったのか疑問をもつようにしたい。

明治になって,なぜ小学校ができたのだろう。また,人々の生活はどのように変わったのだろう。

○自分の予想を書いて発表する。
・学問も西洋風にするために,明治政府がつくったのだと思う。

○既習事項をもとにして予想させることで,予想の内容がより具体的になるようにしたい。

○明治時代になって小学校ができた理由を,教科書や資料集で調べ発表する。
<改革名>
学制:明治5(1872)年
<ねらい>
すべての子どもに教育を受けさせるため,明治政府が公布。
<内容>
6歳以上の男女が小学校に通うことが定められた。

○<改革名><ねらい><内容>に区分したワークシートを活用することで,調べ学習を容易にするとともに,知識の定着を図りたい。

・ワークシート「明治政府の諸改革」

○二つの絵画を比較させ学制の内容がいまの時代に受け継がれていることに気づかせることで,明治政府の改革に対しプラスのイメージをもつようにしたい。

・絵画「江戸時代の寺子屋の様子」
・絵画「明治時代の小学校の様子」

○表を見て,明治9年の3校の様子について気づいたことなどを発表する。
・民家を借りて学校としていた。
・女子は清水森小学に一人だけ。
・なぜ学校に通っている子どもが少ないのだろう。

○磨光小学は,一部屋だけ校舎として借用し,それも約6m×約8mの小さなものであったことを補足することで,明治時代に対する華やかなイメージとのギャップから疑問をもつようにしたい。

表「明治9年の地元の3校」

表「明治9年の地元の3校」

グラフ「就学率の変化」

グラフ「就学率の変化」


○当時の青森県や全国の就学率を予想する。
○グラフを見て,気づいたことなどを発表する。
・明治初めの青森県の就学率は全国の半分より少ない。
・全国も青森県も就学率が伸び悩んでいる時期がある。
・学制公布から10年以上たっているのに,就学率が低い。(全国50%以下)
・地元の3校と同じく,特に女子が少ない。
・明治政府は就学率100%を目指していたのに,なぜ達成していないのだろう。またいつ達成したのだろう。
○明治政府の方針とは違い就学率が低い理由を予想する。
○就学率が低い理由を,教科書や資料集で調べ発表する。
・毎月の授業料を払わなければならないから。
・校舎の建設や教員の給料などが地元負担だったから。
・農作業が忙しい時期などは,作業を手伝わせるために子どもに学校を休ませる親も多かった。
・学制反対の一揆も起きていた。
○まとめる。

○「就学率」の意味について確認する。
○明治政府のねらいや地元の3校の様子などと比較・関連づけながら考えさせることで,歴史的事象を多面的・多角的に考察する能力を育成したい。


○明治政府が目指した就学率100%を達成するのに,約30年かかったという事実を伝えることで,なぜ達成が困難だったのか疑問をもつようにしたい。

○就学率が低い理由を,改革の<問題点>としてワークシートに記述させることで,単元最後の評価や問題点の改善につながるようにしたい。
○いまは,国や県,市が学校維持費の大部分を負担していることを補足することで,明治政府の援助がない中,地域住民が学校開設に努力したことに対して共感的にとらえるようにしたい。

・ワークシート「明治政府の諸改革」

 明治になって学校ができたのは,すべての子どもに教育を受けさせるために政府が学制を公布したからだ。
 ただ地元の負担が大きく,なかなか就学率が向上しなかった。
 わたしは,政府の考えには賛成ですが,すべて地元に負担させることには反対です。

○前時で自分なりに考えた改革を想起させることで,明治政府の行った諸改革について知りたいという意欲をもつようにしたい。
○ワークシートを使って,<改革名><めあて><内容><問題点>の四つにまとめさせることで,調べ学習を容易にするとともに諸改革を相互に関連づけて考えるようにしたい。
○次時で,調べたことについて発表させることを伝える。

・ワークシート「明治政府の諸改革」

○明治政府は学制の他にどのような改革を行ったのか,教科書や資料集,年表を使って調べる。
・廃藩置県,殖産興業,徴兵令,地租改正,四民平等

これからの食料生産(第5学年)

※本実践は平成20年度版学習指導要領に基づく実践です。

1.単元名

「これからの食料生産」

2.目 標

○低価格の輸入農産物の流入や国内の農業就業人口割合の低下などにより,我が国の食料自給率は40%程度となり,その不足分の食料を海外に依存していることがわかる。
○国産に比べ低価格の海外農産物が輸入できるのは,それらの国々では労働生産性の高い農業を行っていたり,物価が安い国で農業を行っていたりするためであることがわかる。

3.評価規準

○社会的事象への関心・意欲・態度
 我が国の食料生産や食料輸入について関心をもち,具体物や資料,既存の知識を活用して意欲的に考えながら追究している。

○社会的な思考・判断・表現
 我が国と海外との農業の取り組みの違いに気づき,低価格の輸入食料と農業就業者数の減少とのかかわりを考え,適切に判断し説明している。

○観察・資料活用の技能
 我が国の食料輸入の実態について,資料を活用しながら必要な情報を集め,読み取っている。

○社会的事象についての知識・理解
 我が国の食料生産や食料輸入の現状や問題がわかる。

4.本単元の指導にあたって

 小学校社会科学習指導要領5学年2内容(1)ア「様々な食料生産が国民の食生活を支えていること,食料の中には外国から輸入しているものがあること。」を受け本単元を設定する。また,内容の取り扱い(4)「内容の(2)のウ及び(3)のウにかかわって,価格や費用,交通網について取り扱うものとする。」にもかかわり実践を行った。
 我が国の供給熱量自給率(H22年度カロリーベース)は概算値で39%であり,輸入食料比率は61%となる。このことからも,わたしたちが生活の中で摂取している食料の多くは海外からの輸入に頼っていることがわかる。さらに,何らかの原因により海外からの食料輸入がストップし備蓄が底をついた場合,我が国では食料飢餓が引き起こることは予想に容易い。そこで,本単元では食料自給率や輸入される食料について価格などの視点を通して,先に述べた目標にある知識を獲得させていった。ここで子どもが身に付ける知識は,今後起きると予想される食料問題や食料の価格高騰などについて思考・判断する際の基となることから取り組んだ実践である。

5.単元の指導計画(全5時間)

学習のねらい

子どもの活動と内容

○我が国の食料自給率は40%程度であり,その不足分の食料を海外から輸入していることがわかるようにする。

○日本で足りない分の食料は,どのようにして間に合わせているのか調べよう。
「こんなに輸入に頼っているんだ!」
「世界各国から輸入されてるんだね。」

<資料>
・主な食料の輸入量の変化グラフ
・日本の主な食料の輸入先と自給率の変化

○輸入される小麦が,どのようにして生産されているのかがわかるようにする。

○アメリカでの小麦の生産の様子を日本と比べてみよう。
「大きい畑だね!」「機械も大きいな。」
「ヘリコプターも使っているぞ!」

<資料>
・日米での小麦生産の様子(VTR/写真)


本時

○アメリカでは日本の約70倍もの農地を大型の機械を用いて,手間や時間をかけずに小麦生産を行っているので,安い値段で小麦がつくられるということがわかるようにする。

○なぜ,アメリカ産の小麦は国産の小麦に比べて約3分の1の値段で売ることができるのかを考えよう。
「農地は広いけど大型の機械を使っていたから,たくさん小麦がとれるんじゃないかな?」
「小麦がたくさんとれるということは,たくさん余るはずだから,それで値段が安いの?」
「大型機械だからって,日本の機械と変わらない値段なんだ!」
「農家一人あたりで作ることができる小麦の量がこんなに違うなんて…」

<資料>
・日米の農業労働者一人あたりの農地面積
・日米の小麦生産用トラクターの写真と価格
・日米小麦の生産コスト比較表
・日米1haあたりの収量に対する売却価格

○ほかのアジアの国々から輸入している食料が安い値段で販売できるのは,日本より物価が安いので,生産にかかる費用が安いからであるということがわかるようにする。

○スーパーのチラシで,中国産や台湾産の野菜や魚が国産に比べて安いのかを考えよう。
「同じ枝豆なのに,国産より台湾産が安いよ。」
「中国産のウナギもそうだね。」
「中国では,1か月にかかる生活費がこんなに安く済むんだ!」
「こんなに安かったら,国産が売れなくなって農家が減ってきてるのかな?」

<資料>
・各国の1か月の生活費比較グラフ
・農業就業者数の移り変わりグラフ

○国内の食料生産向上に携わっている人々の取り組みや努力について調べ,これからの食料生産について考えるようにする。

○なぜ,ビルの中で野菜の生産を行っているのだろうか。
「これだと台風の被害とか受けないね!」
「病気になりにくいから,農薬がいらないんだって!」
「もっと,自分たちで安全で新鮮な食べ物が作れるといいね。」
「わたしたちの周りでも,新しい取り組みってあるんじゃない?」

<資料>
・パソナビルでの野菜の水耕栽培の写真
・農水省「FOOD ACTION NIPPON」パンフレット

6.本時の学習

①目標
 アメリカでは日本の約70倍もの農地を大型の機械を用いて,手間や時間をかけずに小麦生産を行っているので,安い値段で小麦をつくることができるということがわかる。

②学習展開

主な学習活動・内容

指導の工夫と教師の支援

資料

○国産の小麦とアメリカ産の小麦では何が違うのか考える。
「国産の方が安全。」
「国産の方が美味しい。」
「国産の方が値段が高い。」

・安易に「国産=安全」と述べたときに,生活の中で意識しているか,違いがわかるかどうかに気付かせたい。

・アメリカの小麦の農作業風景(VTR)


○日本とアメリカの小麦農家の農地面積を比べる。
「日本は狭いな。」
「アメリカは広い。」

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・日米の農家一人あたりの農地面積図

○資料から学習問題を設定する。
「アメリカ産の方が安い。」
「国産の小麦は値段が高い。」
「アメリカ産の小麦は安いな。」

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・国産と輸入小麦の値段

なぜ,アメリカ産の小麦は国産の小麦に比べて約3分の1の値段で売ることができるのだろうか。

○予想する。
農地が広く,大きな機械で小麦をたくさんつくることができるので,安いのかな。」
「小麦は生活に必要なものだから,わざと安く売っているのかな。」
「アメリカ産は国産よりも安全というイメージではないので,みんな買わないから,値段を安くして売っているのかもしれない。」
○広い農地で大型機械を用いた農業だと,一人が収穫できる量が多いことに気づく。

・子どもの予想について,子ども同士で,自由に意見を述べさせたい。その際に,「なぜそう思うの?」と問いかけることで,根拠に基づいて話させるようにしていきたい。
・左予想の下線部の意見「たくさんだから安い」という根拠を,次のシミュレーションで具体的に想起させるようにしたい。

・以下のシミュレーションを行うことで,実感を伴った理解を図りたい。

・日米の農地の広さを描いたホワイトボードと,コンバインを示す太さの違う2種類のイレーサー

~小麦かりとりゲーム~
<ルール>
1.かりとり(畑に描かれた小麦を消していく)は日・米同時開始。
2.かりとりは「ていねい」かつ「急いで」行う。
3.コンバイン(イレーサー)の操作は一人で行うこと。
4.コンバインはムダな燃料がかからないように走らせること。

ssh007_02

○ゲームを振り返る。
「やはり,大型機械だと,たくさん刈り取れるな。」
「アメリカは一人でたくさん小麦がとれて,日本は少ししかとれないよ。」
「たくさんとれるんだから,小麦の値段を安くしても,もうかるんじゃない?」

・どちらも「一人」で行っているが,大型機械を使うことで,同じような作業であっても広い面積を刈り取ることができることに気づかせたい。

○確かめる。
「日本とアメリカのコンバインの値段ってあまり違わないんだ。」
「日本でもアメリカでも,農家の人が小麦を育てる仕事は,同じ作業なのにとれる量が違いすぎる!」
「農家の人一人が手にする金額も違うんだ。」

・資料はそのままでは子どもが読み取ることが困難なので,予め簡略化したグラフを作成しておくことが望ましい。
・生産額だけでなく,費用にも目を向けさせるようにしたい。
・米(146ha)
生産額:約1千万円
費用:約880万円
・日(2ha)
生産額:約63万円 
費用:約94万円
※1$…85円換算 補助金は除く

・農林水産省平成20年産小麦生産費
・アメリカ農務省2007,2008

※今回は授業で扱いやすいように,日米の平均農地面積を基に計算している。

アメリカでは日本の約70倍もの農地を大型の機械を用いて,手間や時間をかけずに小麦の生産を行っているので,安い値段で小麦をつくることができる。

図形の拡大と縮小(第6学年)

※本実践は平成20年度版学習指導要領に基づく実践です。

1.単元名

「図形の拡大と縮小」

2.本時の位置づけ(1/11)

学習指導要領における本単元のねらいは下記である。

C 図形
(1)図形についての観察や構成などの活動を通して、平面図形についての理解を深める。
 ア.縮図や拡大図について理解すること。

 本単元では、縮図や拡大図について学習し、相似の理解の基礎となる経験を豊かにし、それらを目的に応じて適切にかいたり、読んだりできるようにすることをねらいとしている。
 第5学年では、合同について学習し、「形も大きさも同じであるかどうか」という観点から図形を考察してきている。第6学年の縮図と拡大図では、大きさを問題にしないで、「形が同じであるかどうか」という観点から図形を考察していく。また、縮図や拡大図の関係にある図形については、対応している角の大きさは全て等しく、対応している辺の長さの比はどこも一定であるということも学習していく。
 こうした新しい観点で図形を考察することによって、これまで学習してきた平面図形についての理解をより深め、図形に対する感覚を豊かにしていく。
 本時は、本単元の第1時であるので、縮図・拡大図の意味を確実におさえる。
 「形が同じ図形は、辺の長さの比が一定であることや、角の大きさが全て等しい」ということについては必ず本時でおさえなければならないというのではなく、第2時でも詳しく調べていく予定である。

3.本時のねらい

算数の学習は楽しいですか?  ※算数アンケート 一部抜粋(対象者35名)

①とても楽しい(11人) ②楽しい(8人)
≪主な理由≫
・分からないことを考えて、分かったとき
・難しい問題がとけたとき
・みんなで発表し合うとき
・友だちと意見が同じだったとき
・友だちが分かってくれたとき
・友だちにきいてわかったとき

③どちらでもない(9人)
≪主な理由≫
・分かったときは楽しい
・難しくて分からなかったときは嫌

④苦手(5人) ⑤とても苦手(2人)
≪主な理由≫
・文章問題のとき
・難しい問題のとき

(1)主体的に学習を探求する力を身につけさせる
 「算数を学習することが楽しい」、「算数が好きだ」といえる子になってほしいというのが、私の大きな願いである。「算数が嫌い」な子が、「次はどうなるだろう?」と主体的に学習を探求していくはずがないからである。難しくて分からなかったとき、算数に対して苦手意識を持つ子が多い。このため、子どもたちが「できた。」、「分かった。」という実感をよりもてるようにし、算数の苦手意識をなくすことが主体的に探求する学習への第1歩目だと考える。そのために、デジタル・コンテンツを学習のまとめの段階で再度活用し、拡大と縮小の意味を確実におさえていく。

(2)根拠を明確にして、伝え合う力を身につけさせる
 伝え合う力を身につけさせるためには、「自分の考えを話したい!」「友だちの考えを聴きたい!」という学習意欲が必要である。本時では、まず「考えたい、伝え合いたい!」という学習意欲を育めるように、「形は同じでも、大きさがちがう図形を全て見つけよう!」という課題で学習を進める。辺の長さをマス目を使って数えて比べたり、角度を比べたりするなど、多様な考えが生まれる課題である。練り上げの場面では、拡大図・縮図ではない図形に対しても「なぜ同じ形と言えないのか」ということについて説明させる。元の形の拡大図・縮図とは違う理由を説明することで、拡大図・縮図についての理解がより確かになっていくからである。

4.本時の評価規準

 対応する辺の長さの比や、対応する角の大きさをもとに、拡大図、縮図を見つけることができる。【関心・意欲・態度】
 縮図や拡大図についての意味について理解することができる。【知識・理解】

5.単元の指導内容

学習活動及び内容


本時

◇図形の拡大、縮小の関係
方眼にかかれた元の図と他の図との辺の長さの関係や角度などを調べ、形は同じだが、大きさを変えた図を見つける。

◇拡大図、縮図の意味と性質
元の図と縮図や拡大図との対応する角の大きさや対応する辺の長さの比について調べる。

◇方眼紙を使った拡大図、縮図のかき方
方眼を使って、縮図や拡大図をかく。

◇三角形の拡大図、縮図のかき方
辺の長さや角の大きさを使って、三角形の縮図や拡大図をかく。

◇四角形の拡大図、縮図のかき方
辺の長さや角の大きさを使って、四角形の縮図や拡大図をかく。

◇内部の点を中心にした拡大図、縮図のかき方
図形内部の1つの点を中心にして、縮図や拡大図をかく。

◇外部の点を中心にした拡大図、縮図のかき方
図形外部の1つの点を中心にして、縮図や拡大図をかく。

◇縮図を利用した測定の工夫
学校の敷地の縮図から実際の長さを求める方法を考える。

◇縮図を利用して校舎の高さを求める
縮図を使って、実際には測定できない校舎の高さを求める方法を考える。

10

◇適用問題
縮図や拡大図について学習の内容をふり返り、算数レポートにまとめる。

11

◇グラウンドに大きな拡大図を描こう
設計図を基に、グラウンドに大きな絵をかく方法を考えかく。

6.実践紹介

①課題をつかむ

 学習意欲が高まるように、子どもの集合写真をデジタル・コンテンツで提示した。

san005_01T:「同じ写真だけれど何がちがうだろう?」
C:「右上の写真は、太い。」
C:「左下の写真は、体が細いし、長い。」
C:「左下の写真は、何か変。」
T:「大きさが違うけれど、形は同じように見えるのは?」
C:「左上と、右下。」
T:「実は、左上の写真と右下の写真は、形は同じだけれど、大きさが違う写真だよ。」
T:「身の回りの中に、形は同じだけれど、大きさは違うものはないかな?」
C:「宿題のプリントとか、ノートとかの紙がある。教室に掲示している、プリントだって全部形が一緒。」

 「形は同じでも、大きさは違う」というイメージを持たせた上で、本時の課題に入った。

形が同じでも、大きさはちがう図形を全てみつけよう!

san005_02T:「赤と緑の家と、形は同じでも、大きさは違う図形はないかな?」

②見通しを持つ

 まず、結果の見通しをたてた。

T:「まずは直観で。元の形と形は同じだけれど、大きさが違うのはどれだろう?」
C:「ウとカかな。」
C:「イは合同。」
san005_03T:「どうして?」
C:「対応する辺の長さが等しいし、対応する角の大きさも等しい。」「ぴったり、重なる。」
C:「アとエは明らかに違う。」
C:「アは、横に2倍になっている。」
C:「エは、下の形が長方形になっていて、形が違う。」
C:「ウとカは多分、形は同じでも、大きさは違う。」
C:「オはどっちかよく分からない。」

san005_04 次に、解決方法の見通しをたてた。

T:「どうやって、同じかどうか確かめたらいいだろう?」
C:「辺の長さを比べたらできそう。」
C:「形を比べるために、面積を考える。」
C:「形を変形して、同じになるか試してみる。」

③自力解決をする

san005_05T:「ウ、オ、カについて、どうして形が同じと言えるのか、同じと言えないのかを他の人に説明ができるように、考え方を書いてみよう!」

 必要な子どもには、形が切り抜いてある図を渡し、図形を重ねて角度が同じであることを確認しやすいようにさせた。

④考えを発表し、練り上げる

 ペアで自分の考えを発表させた後、全体で考えを発表した。
 まず、「ウは、形が同じでも大きさはちがうのか」について考えた。

C:「元の形の屋根も形も、下の形も4つに等分して重ねたら、ウになるから形は同じ。」
C:「面積を調べたら、きっちり元の形の1/4倍になっている。」
C:「元の形も、ウも、屋根を変形させたら、正方形が全部で2つできるから同じ。」
C:「角度を比べてみたら、全部同じになった。だから、ウは形が同じでも大きさは違う。」

 次に、「カは、形が同じでも大きさはちがうのか」について考えた。

C:「形が全く同じ。下が正方形になっていて、屋根が二等辺三角形になっている。」
C:「面積を調べてみたら、きっちり元の形の4倍になっている。」
C:「辺の長さが2倍になっているから、形が同じでも大きさは違う。」

 面積で考えるという方法はいつでも使える有効な方法なのか子どもの中で質問が出てきた。

C:「質問! 面積で倍になっていたらいいっていうけど。エだって、面積がきっちり元の形の2倍になっている。」
C:「だって、エは形が既にちがう。」
C:「あ、そうか…。」

 面積で比べるだけでは、形が同じでも大きさは違うということが調べられないというするどい質問であったが、意見が続かなくなってしまったことが悔やまれる。多様な方法で、調べられていたが、「わかりやすくて、かんたんで、いつでも使える方法か?」という検証までできていなかったことが反省である。

san005_06 最後に、「オは、形が同じでも大きさは違うのか」、それとも「形も大きさも違うのか」について考えた。

C:「オは、屋根の形の角度が違うから、形が違う。重ねてみたら分かる。」
C:「面積が、16.5cm2になって、元の形と面積がきっちり倍にならないから形も大きさも違う。」
C:「下は正方形で形は、一緒だけれど、屋根の形が違う。」
C:「質問。屋根は二等辺三角形で、同じだよ。」
C:「もし、オが同じ形になるんだったら、屋根の下の長さがもう少し長くなる。」(辺の比の考え方を使って、図示して説明していた。)
C:「だから、答えはウとカだけだ。」

⑤学習をまとめる

 拡大図、縮図の意味や用語を知らせた。

T:「今日、みんなが考えた新しいことだよ。」

ある図形を形を変えないで、大きくすることを拡大する、小さくすることを縮小するという。拡大した図を拡大図、縮小した図を縮図という。

 デジタル・コンテンツを使い、拡大図・縮図の意味を再確認した。

san005_07

 最後に、さんま(算数まとめ)を書き、学習のまとめとした。

T:「『形は同じでも、大きさがちがう図形は      』の続きを自分の言葉で書こう。」

形は同じでも、大きさがちがう図形は対応する辺の長さの比を比べたり、角の大きさを比べたりすると、見つけられる。

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《学習を終えて》

【本時の学習についての子どもたちのアンケート(一部抜粋)】

・辺の比を使って考える方法をきいて「あ~、なるほどな。」と思った。もし、五角形などでも今日の考えは使えるのかな? 
・「例えば~。」「ここまで分かる?」などの言い方をして、ゆっくり説明してくれたので友だちの意見がとても分かりやすくて「なるほど!」と思った。
・自分だけの意見じゃなく、友だちの考えをきくことで、いろいろな考えが増えた。自分の意見よりも、分かりやすくて、簡単な方法がでてきて、問題がよく分かった。

 授業を終えた後の休み時間、子どもたちが5、6人黒板の前に集まって説明を始めだした。

C:「先生、あのね、面積で考える方法だけれど…。」
C:「カは確かに、面積が32cm2だからきっちり4倍だけれど、アだって、エだって面積が16cm2になっているから、きっちり2倍。」
C:「イだって、きっちり1倍。」
T:「ということは、どういうことなの?」
C:「面積で考える方法では、考えられる時と考えられないときがある!」

 面積で図形の拡大・縮小を考える方法について、子どもたちは疑問を感じていたようであるが、授業の中で取り上げてあげることができていなかった。
 確かに、子どもたちは「どうやって調べたらいいだろう? 考えたい!」「自分の考えを伝えたい!」と学習意欲を持って、多様な方法を考えノートに表現し、全体で伝え合っていくことはできた。
 しかし、どの方法が有効で効果的なのか?ということまで高めることができなかった。やはり、「わかりやすくて、かんたんで、いつでも使える方法か?」という検証ができていなかったことが一番の反省である。
 言語活動を充実させることで、思考力・判断力・表現力を育むことが大切であるといわれている。子どもが説明を分かりやすくすれば言語活動が充実されていて、思考力・判断力・表現力が育まれるというのではない。思考力・判断力・表現力が深まっていないと感じたならば、教師の出番であり、子どもの考えを関係付けて考えさせることが必要であるということを改めて実感した。
 次時に、「面積で考える方法に対する質問」から学習をはじめ、「面積で考える方法だけでは、拡大図・縮図を見つけられないことがある。」ことをおさえた。

敗戦と人びとの願い(第6学年)

※本実践は平成20年度版学習指導要領に基づく実践です。

1.単元名

「敗戦と人びとの願い」

2.目 標

 15年続いた戦争について調べ,中国との戦いが全面化したことや,日本がアジア・太平洋地域において連合国と戦って敗れたこと,日本が戦時体制に移行したことによって人びとが大きな被害を受けたことや,日本が近隣の諸国に大きな損害を与えたことを理解できるようにする。

3.評価の規準

社会的事象への関心・意欲・態度
○15年続いた戦争に関心をもち,それを意欲的に調べている。
○戦争や平和に対して自分なりに考えようとしている。

社会的な思考・判断・表現
○15年続いた戦争について学習問題や予想・学習計画を考え表現している。
○戦争の拡大と人びとのくらしを関連させて戦争が与えた影響について考え,適切に表現している。

観察・資料活用の技能
○写真や地図,表や年表などを活用して,15年続いた戦争について必要な情報を集め,読み取っている。
○調べたことをノートや新聞,年表やポスターなどにまとめている。

社会的事象についての知識・理解
○我が国が戦時体制に移行したことや国民が大きな被害を受けたこと,我が国が近隣諸国に大きな損害を与えたことを理解している。
○15年続いた戦争が与えた影響を理解している。

4.指導にあたって

子どもの実態について
○歴史上の人物の業績や社会に大きな影響を与えた出来事について,自ら意欲的に調べている。
○各単元の終わりには,学習したことやもっと調べてみたいことなどを,絵や図,イラストや年表にして進んでまとめることができている。
○「調べる」段階では,絵や図,表や年表,文書資料などから,各時代の特徴や変化について気付くことができているが,書かれている内容をそのまま写すだけで,自分の言葉で整理し,表現するのは苦手である。
○話し合い活動では,友だちの意見を聞くことが多い。また,互いの意見をもとにして,考えを深め合うまでには至っていない。

教材について
○15年続いた戦争の経緯を調べることで,国民の生活が戦争中心のくらしにかわっていったことや新たな資源を求め占領地を拡大していったことなど,日本が戦時体制に移行していったことが分かる教材である。
○写真や映像,年表や地図,戦争体験者からの聞き取りなどを効果的に使うことにより,児童に戦時中の様子や人びとの気持ちや願いを想像させることができると考える。
○戦時中の苦しい状況の中での人びとのくらしや近隣諸国に対して多大な損害を与えたことを学習することで,戦争の悲惨さを理解するとともに,平和な社会を作る担い手になれるようにしたいと考える。

指導について
○「つかむ」段階では,絵や図,表や年表などの資料を大きく掲示することで,児童全員で資料を共有し,学習問題をとらえることができるようにする。
○「調べる」段階では,観点を明確にすることで,読み取った情報を整理して分かりやすくまとめることができるようにする。
○「考える」段階では,調べたことをもとにして,戦時中や敗戦直後の人びとの気持ちに寄り添うことができるようにする。
○話し合い活動では,少人数で意見を交流する場を設定することで,自分の考えを深められるようにする。その際,似ている所や異なる所を見つけるように支援する。

5.単元の指導計画(全9時間)

学習のねらい

子どもの活動と内容

評価規準の具体例



大阪空襲の被害の様子から,戦時中の人びとのくらしについて調べ,自分たちの住んでいる大阪市も大きな被害を受けたことに気付くとともに,15年続いた戦争について調べていこうと意欲をもつことができるようにする。

○「敗戦直後の大阪市のようす」の写真を見て感じたことを話し合う。
○大阪の空襲について調べる。
・空襲28回
・死者約1万人
○空襲下の人びとの生活について考える。
・苦しい生活
・いつ死ぬかもわからない
○日本に長い戦争があったことを知り,年表を見て分かったことを話し合う。

自分たちの住んでいた大阪でも空襲があり,大きな被害にあっていたことを知り,15年も続いた戦争中に何があったのか調べていこうという意欲をもつことができたか。
(関心・意欲・態度)
(観察技能)

学童疎開について調べ,国は子どもの命を守ると同時に,次の戦力として確保するため集団疎開を実行したこと,疎開した子どもたちはさびしい不便な生活の中で精一杯生きたことを考えることができるようにする。

○「疎開先にむかう小学生」の写真を見て話し合う。
○学童疎開について調べる。
・親と離ればなれの生活
・粗末な食事
○子どもたちを疎開させた理由を考える。
・都会で生活していては危険
・子どもを戦力として確保・育成
○大阪以外でも疎開は行われていたことを話し合う。

学童疎開をした子どもの様子から,戦争のために子どもまで戦力として考え,巻き込んでいった当時の日本の様子をとらえることができたか。
(思考・判断・表現)

戦時中の人びとのくらしについて,文書資料や写真などから調べ,多くの人びとが苦しい生活をしていたことや,生活そのものが戦時体制に移行していったことを理解することができるようにする。

○戦争中の人びとのくらしについて話し合う。
○戦争中の人びとのくらしついて調べる。
・生活必需品の切符制・配給制
・言論のとりしまり
・兵器工場の動員
○戦争中の人びとがこのようなくらしをしなければならなかったわけを考える。
・国のために国民全員が戦う
・戦争を維持するためのくらし
○戦争中のアジアの国々について話し合う。

戦争中の人びとのくらしぶりから,戦争のために自分たちの生活を犠牲にするほど苦しかった様子を理解できたか。
(知識・理解)


戦争は激しくなり,戦場はアジアや太平洋まで広がっていったことについて,文書資料や地図資料などを使って調べ,占領地域を拡大し,周辺の多くの国々に多大な被害を与えたことを考えることができるようにする。

○「広がる戦場」について話し合う。
○アジアや太平洋への戦争の拡大と日本が行った占領地政策について調べる。
・中国・東南アジアの占領
・新たな資源の確保
・食料や資源の取り立て
・朝鮮に対する政策
○アジアや太平洋で戦争が広がった影響について考える。
・連合国と対立
・占領した地域での抵抗運動
○日本の勢力範囲の変化について話し合う。

アジアや太平洋に戦争が広がったことによって,アジアの人びとに多大な被害を与えたことを理解することができたか。
(知識・理解)

沖縄戦の様子について,文書資料や映像資料などで調べ,沖縄に暮らす人びとが大きな被害を受けたことを理解できるようにする。

○沖縄戦の資料を見て,話し合う。
○沖縄の様子について調べる。
・3ヶ月にもわたる激しい地上戦
・ガマでの抵抗
・アメリカによる占領
○沖縄戦当時の沖縄の人びとの気持ちについて考える。
・早く平和な世の中になってほしい。
○今も残る沖縄のアメリカの軍用地について話し合う。

沖縄戦の様子について文書資料や映像資料などで調べ,沖縄に暮らす人びとが大きな被害を受けたことを理解できたか。
(知識・理解)

原爆による被害の様子について,文書資料や写真などを使って調べ,原爆が与えた影響や戦争が終結したことを理解できるようにする。

○「被爆後の広島」の写真を見て,感じたことを話し合う。
○原爆による被害の様子を調べる。
・昭和20年8月6日広島
・昭和20年8月9日長崎
・一瞬のうちに破壊された町
・放射能による後遺症
○原爆が投下され,人びとに与えた影響について話し合う。
・放射線による後遺症
・平和への祈り
○敗戦後の日本と世界の様子について話し合う。

原爆による被害について,文書資料や写真などを使って調べ,原爆が与えた影響や戦争が終結したことを理解ができたか。
(知識・理解)


本時

戦後の日本がバラック小屋でのくらしや食糧不足による買い出し,青空教室での授業を行っていたことを調べ,新しい日本を作ろうと苦しいながらも懸命に生きようとしていたことを理解できるようにする。

○敗戦直後の人びとのくらしについて話し合う。
○敗戦直後の人びとのくらしについて調べる。
・バラック小屋
・やみ市での買い物
○当時の人びとの願いについて考える。
・おなかいっぱいに食べたい
・平和な社会になってほしい
○戦争について話し合う。

敗戦直後の人びとの様子を調べ,敗戦直後の人びとの願いについて理解することができたか。
(知識・理解)

「ピースおおさか」を見学し,戦争中の主なできごとについて学習したことを具体的に確かめ,戦争や平和に対する自分の考えをまとめることができるようにする。

○見学の視点について話し合う。
○戦争について調べる。
・戦時中の人びとのくらし
・大阪大空襲・沖縄戦・原爆投下
○戦争や平和について,自分の考えをまとめ,話し合う。

「ピースおおさか」の見学を通して,展示物や資料を読み取り,自分なりの戦争や平和に対する考えを表現することができたか。
(思考・判断・表現)

6.本時の学習

①目標
 戦後の日本がバラック小屋でのくらしや食糧不足による買い出し,青空教室での授業を行っていたことを調べ,新しい日本を作ろうと苦しいながらも懸命に生きようとしていたことを理解できるようにする。

②展開

主な学習活動・内容

指導の工夫と教師の支援

資料

敗戦直後の人びとのくらしについて話し合う。
・一面が焼け野原
・何も残っていない

「敗戦直後の大阪市のようす」「敗戦直後の大阪市の人びとのようす」を拡大して提示することで,読み取った情報を共有することができるようにする。「人びとはどこに暮らしていたのかな。」「何を食べていたのかな。」など,敗戦直後の人びとの暮らしについて興味関心をもつことができるようにしたい。

・写真「敗戦直後の大阪市のようす」


敗戦後,人びとはどのようなくらしをしていたのだろう

敗戦直後の人びとのくらしについて調べる。
・バラック小屋
・やみ市での買い物
・青空教室
・すみぬりの教科書
・闇市の価格表

「青空教室」「墨塗り教科書」「バラック小屋」「闇市」「闇市の価格表」の5つの資料を載せたプリントを配布する。列車の窓につかまる人びと,闇市の様子,敗戦直後の物価の上昇が続いたことなどから,苦しいながらも懸命に生きようとしていたことを調べることができるようにする。

・写真「バラック小屋」「青空教室」「やみ市」
・文書「敗戦直後の人びとのくらし」

当時の人びとの願いについて考える。
・おなかいっぱいに食べたい
・教室で勉強したい
・平和な社会になってほしい

「闇市の価格表」に挙げられていた石けんを実物資料として提示する。当時,石けん1個が闇市では200倍,現在の石けん1個100円の200倍,つまり20000円になることを伝えることで,敗戦直後の生活の苦しさを実感することできるようにする。

・文書「敗戦直後の人びとの生活と思い」

戦争について話し合う。
・戦争は2度と起こしてはならない
・戦争の悲惨さを伝えたい

「敗戦の子どもたち」という墨塗り教科書で勉強した当時の子どもたちの気持ちを表した歌の歌詞を提示することで,苦しい生活を送っていただけでなく,これから新しい日本を作ろうと復興に力を入れていこうとする思いも感じ取ることができるようにしたい。

・歌「敗戦の子どもたち」

【板書計画

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新聞とわたしたちのくらし(第5学年)

※本実践は平成20年度版学習指導要領に基づく実践です。

1.単元名

「新聞とわたしたちのくらし」

2.目 標

 放送,新聞などのマスメディアを通して情報を提供している産業と国民生活のかかわりについて調べ,人々は放送や新聞などの産業が発信する情報を日常の生活や産業活動の多方面で活用し,様々な影響を受けていることを理解し,情報を発信する側に求められる役割や責任の大きさ,情報を受け取る側の正しい判断の必要性について考え,様々な情報に対して適切に判断し,望ましい行動をしようとする能力や態度を身に付けることができるようにする。

3.評価規準

社会的事象への関心・意欲・態度
○情報化された社会の様子に関心をもつ。
○様々な情報に対して適切に判断し,望ましい行動をしようとする能力や態度を身につけることができる。

社会的な思考・判断・表現
○情報を発信する側に求められる役割や責任の大きさ,情報を受け取る側の正しい判断の必要性について考えることができる。
○情報化した社会において人々が主体的に生きていくためには情報を有効に活用することが大切であることについて考え,自分の意見をまとめてわかりやすく表現することができる。

観察・資料活用の技能
○人々が日常の生活で必要な情報をどのように入手し活用しているのかを調査したり資料を活用して調べたりすることができる。
○放送・新聞などの産業が,多種多様な情報を収集・選択・加工して提供していることを,視聴覚教材などを使って調べることができる。

社会的事象についての知識・理解
○情報産業が様々な情報を提供し,多くの人々がそれらを多方面で活用しており,人々がそれらの情報から大きな影響を受けていることを理解することができる。

4.本単元の指導にあたって

①教材について
 新聞は多くの様々な情報を一度に手軽に入手できる優れた手段であり,情報産業についての理解を深め,子どもの情報活用能力の向上を図ることができる。また,新聞で学習したことを活用して,テレビやラジオ,インターネットにおける情報発信や,受信の様子を調べ,様々な情報産業と人びとのくらしとの関わりについて,それぞれの特徴を比較しながら共通点や相違点を学習することを通して,様々な情報手段を使って情報を収集し,状況に応じてもっとも適した情報を選択して活用する必要性について考えることができる。

②学習課程について
 学習の導入として号外新聞を取り上げ,号外新聞に掲載される情報の内容や形式,配られたタイミングや配布方法等を調べ,号外新聞の発行理由を考えることで,新聞に掲載される情報が人びとのくらしとどのように関わっているのかについて関心をもつことができるようにする。
 テレビ,ラジオ,インターネットについて学習する際には,新聞社と同様に「早さ,正確さ,わかりやすさ」という視点が他のメディアでも生かされているのかを確かめることで,メディアは違っても情報を提供する立場の人びとが心がけていることは共通していることに気づくようにする。
 学習の終末の段階では,台風情報について自分であったらどのメディアを利用して情報を得るのか,話し合う活動を行う。それぞれの特徴を比較しながら意見を深め合い,それぞれのメディアに特徴があり,くらしの中の様々な情報手段をうまく活用していくことが大切であることを理解できるようにする。

5.単元の指導計画

学習のねらい

子どもの活動と内容

評価規準の具体例

新聞の「号外」について,記事の内容や発行されるタイミングや配り方を調べ,新聞から得られる情報やくらしと情報の関わりについて関心をもつことができるようにする。

号外新聞に興味をもちながら,新聞の号外について調べ,号外新聞が発行されたわけについて考える。

子どもの発言
「号外は,新聞の一種で,いち早くたくさんの人へ情報を知らせるために特別に配られているんだな。」

号外新聞が発行されたわけを考え,くらしと情報の関わりについて関心をもったか。

新聞社が,多種多様な情報を収集し,選択・加工して提供している様子を調べ,新聞社は新聞をつくるうえでたくさんの工夫をし,情報の発信者として役割や責任があることを考えることができるようにする。

新聞の発行部数に興味をもつことで,新聞の制作過程について調べ,新聞社の人々が情報の発信者としてどのような工夫をしているのか考える。

子どもの発言
「新聞社は発信者として新しい情報を早く・正しく・分かりやすく伝えようとしているんだな。」

新聞社の情報発信者としての工夫について考え,早さ・正確さ・分かりやすさという工夫があることを理解できたか。

新聞に掲載される内容について,どのような情報が掲載されているのかを調べ,様々な人びとがくらしの中で様々な情報を活用していることを理解することができるようにする。

新聞の記事について興味をもち,どんな情報が掲載されているのかを調べ,それぞれの情報を誰がどのように役立てているのか考える。

子どもの発言
「新聞の情報は,たくさんの立場の人のくらしや仕事で活用されているんだな。だから多くの新聞があるんだな。」

新聞記事の情報を誰がどのように役立てているのか考えたか。


新聞の他に放送・ラジオ・インターネットなどの多種多様な情報を収集し,選択・加工して提供しているメディアについてどのような特徴があるのか調べ,くらしのなかには様々な情報手段があることを理解し,それぞれのメディアの特徴を表現することができるようにする。

テレビ・ラジオ・インターネットについて,その特徴を「情報提供の方法」「正確さ」「早さ」「わかりやすさ」「短所」「長所」の観点で調べ,まとめる。

テレビ・ラジオ・インターネットについて,観点別にその特徴をまとめたか。


本時

新聞,ラジオ,テレビ,インターネットの特徴を比較し,どのような違いがあるのかを調べることで,情報化した社会においては,情報を有効に活用することが大切であることを考えることができるようにする。

台風情報を得るのに,自分だったらどうするのかを決め,その理由を考え,クラス全体で考えたことを発表し合う。

台風情報を得るための手段を考え,その理由を考え表現することができたか。

6.本時の学習

①目標
 台風情報を得る場合の新聞,テレビ,ラジオ,インターネットの特徴を比較し,どのような違いがあるのかを調べ,自分であったらどのメディアを使って台風情報を得るのかを考えることを通して,情報化した社会においては,情報には様々な入手方法があり,それらから得た情報を,よく吟味しながら有効に活用することが大切であることを考えることができるようにする。

②展開

主な学習活動・内容

指導の工夫と教師の支援

資料

○台風災害と情報とのかかわりについて話し合う。
・伊勢湾台風の被害
・進路や強さの台風情報

○台風災害時(伊勢湾台風等)に,事前に情報を得ることができなかったために,大きな被害が出たことを伝え,台風情報を手に入れる大切さを実感できるようにする。

・写真「伊勢湾台風」
・台風情報


○それぞれのメディアの特徴を調べる。
(新聞) 
・どこでも読める。
・だいたいの予想進路がわかる
(テレビ)
・映像でわかりやすい
(ラジオ)
・定期的に放送される
・どこでも聞ける
(インターネット)
・パソコンがあれば,リアルタイムの情報を得ることができる。

○「台風情報を得るのにあなたはどうしますか」と発問することにより,学習活動をとらえることができるようにする。
○前時の学習で作成したワークシートを振り返り,新聞・テレビ・ラジオ,インターネットの各メディアについて特徴をつかむことができるようにする。
○台風情報を得るという観点で,それぞれのメディアの特徴を調べるようにする
○台風が「接近する前」「上陸時」と時間によってのメディアの特徴についても調べることができるよう助言する。

・ワークシート

○自分であったら,台風の情報を得るときに,どのメディアを利用するのか決め,その理由を考える。
・だいたいのことがわかっておけばいいので新聞 
・見やすくわかりやすいテレビ
・いつも聞いておけるラジオ
・詳しい情報をリアルタイムで得ることができるインターネット

○新聞,テレビ,ラジオ,インターネットのうち,どれか1つを選び,利用する理由を話し合うようにする。
○ラジオの意見が出ないときは,災害時にラジオが活用されている写真を見せ,災害時のラジオの特徴を補説するようにしたい。
○どれか一つに意見が偏った場合は,教師が話し合いに入り,考えを深めることができるようにしたい。

・写真「避難所のラジオ」

○学習して,考えたことを論述する。
・情報と自分のくらしとの関わり

○話し合いの結果をもとに,自分の考えを学習してきたこととともに論述できるようにする。


【ワークシート

ssh005_01

重なる形と図形の角を調べよう(第5学年)

※本実践は平成20年度版学習指導要領に基づく実践です。

1.単元名

重なる形と図形の角を調べよう

2.本時の位置づけ

本時12/15

3.本時のねらい

 本時は,三角形や四角形の角の和を生かして,計算を使って多角形の角の和を求めることが主な学習である。特に,この多角形の角の和は,計算で鮮やかに答えが出るので,子どもたちはそのことに感動することが多い。私も自分が小学生の時,この学習では計算で答えが出ることがわかり,とても嬉しかったことをよく覚えている。
 図のように三角形や四角形で分けると,多角形の角の和を簡単に求めることができる。そして,多角形の角の和は辺の数が一つ増えるに従って,180°ずつ増えていく。

san004_01

 ここでつまずきやすい子どもは,図形を分割する対角線の引き方が分からないことが多い。何本引けばよいのか,どのように引けばよいかが分からない。一つの頂点から引いて,また,別の頂点からも対角線を引いてしまう。結局,下図のようになってしまうのである。そのため,授業中に「どこがよくないのか」検討する時間を設けたい。
 また教科書の進行であれば,五角形をすっきり分けて,その後,六角形,七角形と学習を広げていくという計画になっている。
san004_02 しかし,ここでさらにすっきりさを求めて,別の課題を組み合わせて入れることにした。それは,求めた五角形の角の和を利用して,正多角形の一つの角を求めさせるのである。
  子どもたちにとって正三角形の一つの角が60°になる理由は,これまでは偶然の測定の結果でしかなかった。しかし,三角形の角の和が180°であることが確定すれば,180÷3でその60°という角の大きさに理由付けがなされる。そのため,子どもはなるほどという思いを持ちやすい。この正三角形のすっきりさを生かして,正五角形の角の大きさを測定することなく計算で求めさせて,子どもたちがどれだけすっきり感を感じるのか試してみることにした。

※5年上教科書P17

※5年上教科書P17

※5年下教科書P100

※5年下教科書P100

4.本時の評価基準

正五角形の一つの角の大きさを角の和を等分して求めることができる。(数学的な考え方)
五角形の角の和の求め方を理解することができる。(知識・理解)。

5.単元の指導内容

学習活動及び内容

ぴったり重なる形を見つける。(合同の意味)

三角形の対応する頂点,対応する辺,対応する角を調べる。

対応する辺の長さや角の大きさを調べ,考える。

四角形を対角線で分けた三角形の合同を調べる。

合同な三角形をかく。①

合同な三角形をかく。②

三角形のかきかたを利用して,合同な四角形をかく。

三角形のかきかたを利用して,合同な四角形をかく。

三角形の3つの角の和を考え,調べる。

10

三角形の角の和が180°であることを利用して問題を解く。

11

四角形の内角の和を考える。

12

多角形の内角の和を調べる。

13

タングラムで様々な合同な形をつくる。

14

練習問題で復習する。

15

練習問題に挑戦する。

6.実践紹介

①課題把握

 あいさつがすむと,少し教室はざわついている。授業をビデオで記録すると告げたから少し動揺したのであった。それでも,プリントを配布すると子どもたちは自然と集中していった。
 教室が学習する雰囲気になったとき,私は先に新しい「多角形」という言葉を板書して教えた。

※教科書をコピーしたプリント

※教科書をコピーしたプリント

T 多角形とは,三角形,四角形,五角形のように,直線だけでかこまれた図形のことをいいます。
T みんな覚えてね。
C 多角形。
T 直線だけで囲まれた図形,曲がった線はあかんで。

 子どもたちの多くは,自分のノートにメモした。
 続いて,本時の課題へと移る。

T それでは問題です。今日は五角形の角の和を求めます。五角形の角の和ってわかるかな?
C (何人かがうなずく)
T 今日は,分度器で測るのではありません。計算で求めます。それができても終わらないで,別の方法で考えてみましょう。3つのやり方を見つけることができたら,とても素晴らしい。
T 何か分からないという人いますか?
C1 一つできた。
C2 できた。
T もうできたの,すごいね。みんなにわかるように説明できるようにしておくといいよ。

②自力解決

san004_06 子どもたちが,プリントに向かうと,すぐに「できたー」という声が上がった。四角形の角の和を求める時に同じような学習をしているから考えやすかったようだ。しかし,子どもたちの作業を見て回ると,とんでもない線の引き方をして答えを出している子も見受けられた。自分で間違いを発見できる子になって欲しいので,「それで本当にいいか見直してみよう」と,間違いであるとは伝えない。また,何も手がつけられない子もいるが,その子ができることを信じて,何も声はかけなかった。
 このクラスでは,まだまだ自分の力で何とかしようという態度が出来上がっていない。そのため,少しできると「先生,これでいい」と聞いてくる子どもが何人もいる。自信がないのである。子どもたちにできた,わかったという実感を伴った学習を経験させる必要がある。そして,自分でこれでいいと判断できるようにしたい。

※黒板にかく

※黒板にかく

 多くの子どもが何らかの答えを書いたのを見届け,黒板を使った発表に移った。私は,直接,黒板に書かせることが多いが,プロジェクターや卓上カメラを使用してノートやプリントを写す方法もある。

③集団検討

 5人の子どもを指名して,黒板に書かせた。机間指導の間に,発表者を決めておく方法もあるが,このクラスは人数が36人と多く,集団で学習できる雰囲気作りを育てているところなので,発表したい子どもを指名した。

san004_08C3 三角形は180°で四角形は360°です。三角形の180°と四角形の360°を合わせると540°です。(右図)
T なるほど,一本の対角線で分けるのか。今のKさんと同じように考えた人いますか。(20人ぐらいが挙手をした。)
C4  こことここに線を引くと,三角形が3つできます。それで,180×3で540°になります。
san004_09T なるほど,三角形に分けたんだね。これと同じように考えた人?(15人が手を挙げる。)二人の発表してくれた人に質問やつけたしはありますか?

 二人の発表に反応が乏しかったので,授業中に困っていた人の例を教師が演じることにした。

san004_10T 先生から質問。今,Nさんは,2本の対角線で分けましたね。でも,もっと対角線はひける。ここに2本引いてみよう。(右図点線)あれー,わけがわからなくなったよ。何がよくなかったのかなー。誰か教えてよ。

 本当は子どもに自分で質問して欲しい。しかし,間違いや失敗の例はなかなか出せないものである。ここでそういう声を伝えておかないと,できない子や分からない子が授業で置き去りにされてしまうかもしれない。そのため教師が代弁したのである。

C5  それは線の引きすぎです。分けられているのに,それ以上,線をかかなくてもいい。
C6 線が交わっているのがいけないのとちがう。                                  
T たくさん引きすぎたらかえって難しくなるんだね。
T ところで,別の方法を見つけた人はいますか?
san004_11C7  (黒板に出てきて右図のようにかいた。)
T ちょっとSさんストップ。みんなSさんの考えていることわかるかな?ノートに式や考えを書いてごらん。
C8 三角形が5つなので180×5-360です。それで540°になる。
T 聞こえにくかったのでもう1回言ってよ。  
C9 180×5から360をとる。
C10 どうして360をとるんですか?
T 今,Hさんから質問が出て,どうして360をとるんですか,というのがあったね。
C11 真ん中のところは五角形の角とは関係ないから360とります。
T でも,360というのはどこから出てきたの。
C12 真ん中のところは1回転しているから360°とります。1回転が360°です。
C13  ぐるっとまわると360°です。それが五角形の角とは違うので,引きます。
T 上手に説明してくれましたね。この方法でも求められるけど,最初の二つが簡単ですね。結局,答えは540°です。では,次の問題に移るよ。

④発展問題に取り組む

 五角形の角の和が540°と求まっても学習はこれで終わりではない。新しい問いで連続的に追究させていきたい。この問いは子どもたちが自ら発見できれば素晴らしいが,そうならないときは教師が代わりに問いかけて,学習の仕方を教えていくとよい。ここでは,六角形や七角形の角の和を求めさせたり,正多角形の一つの角の大きさを求めることが考えられる。本時は,後者を選んだ。

T これまでの学習を生かして,正五角形の一つの角は何度か求められますか。よし挑戦してみよう。

 プリントには正三角形,正方形とならべて,ヒントを暗示しておいたので,自然と気がつく子どもが出てくると予想した。
 (しばらくたって)できた人は?

※540÷5で108°になる

※540÷5で108°になる

C14 540÷5=108 答え108°です。
C15 五角形の角の和が540°なので,5で割って108°です。
T でも,どうして5で割ることができるの。
C16 五角形には角が5つあって,一つの角の大きさを知りたいのだから,5で割ることができます。
C17  正五角形の角は全部同じ大きさだから,5で割ったらいい。
T 100,80,75……と角の大きさが違うってことないんですか?
C18 正五角形なので,全部同じ角度。
C19 正三角形は180÷3で60°になるのと同じで,正五角形も540÷5で108。
T うーん計算で出せるなんてすごいね。もう一度確認しますよ。正三角形は180÷3で60°なの,では正方形はどうなるの?
C20 360÷4で90°になる。
T なるほど,すごいすごい。それで,正五角形も同じように計算できるんだ。それなら正六角形はどうなるんだろうね。まず六角形の角の和は求められる。
C21 六角形は三角形4つに分けられるので720°になります。(黒板に図示して)6で割って120°です。
T あっという間に計算できたね。これは素晴らしい。

※感想を発表する

※感想を発表する

 子どもたちの努力と教材のよさに教師も感心して誉める。こうすることで,今日の学習の意味づけが確実になる。
 最後に,今度は子どもの口から感想を発表させ,大事なことを復唱させる。これは昔からよく使われる共感を生かした方法である。

C22 正五角形の角が簡単に計算で求められたのがおもしろかったです。
C23 正三角形や正方形,正五角形ではみんな角が同じ大きさだとわかりました。
C24 五角形や六角形を分けて,角の和が計算で求められたのがよかった。

 発表したのは三人だけであったが,その他にも子どもたちは次のような感想をプリントに書いていた。

・五角形の角の和も対角線をひけば,計算でできることがわかった。
・正がつく角は角度がすべて等しいことがわかった。
・九角形も調べてみたい。
・辺の数が多くなるにつれて角の大きさの和が180°ずつ多くなっていることがわかりました。
・多角形は三角や四角がわかっていればかんたんにわかることがわかった。
・五角形の角の和の求め方はいろいろとあることがわかった。
・角の和はすごく大きな数でも,計算で求められることがわかった。
・正三角形,正方形とかの角の角度は同じことがわかった。
・五角形の角を調べるときに,線を引きすぎるとできないことがわかりました。
・正五角形の一つの角の大きさを計算で求めれることがわかりました。

7.授業後の反省と考察

san004_14 子どもたちは,集中して授業に参加し,様々なことを発見することができたと思う。こちらの予想以上に子どもたちの感想の言葉は豊かであった。また,左図のようにかいていた子どもは,無駄な点線を消して,三角形と四角形に分けていた。教師が線をひきすぎてわからなくなっている人の例を出したことで,自分の線の引き方を吟味したのであろう。
 一方,反省点としては,①六角形まで授業で取り扱ったが,七角形や八角形はどうなるのか次の課題として意識させるともっとよかった。
 さらに,②子どもの口から,「もう一回説明して」や「そこがわからない」など学習を深めていく発言を引き出したかった。わかる子どももわからない子どももともに授業中に積極的に学ぶことが理想である。しかし,まだわからないことが言語化できていないのであろう。これは今後の課題である。そうして,子ども同士が対話して,できる限り教師の出番が減るようにしていきたい。
 ③子どもたちの感想の最後の言葉はほとんどが「わかった」や「わかりました」であった。感想の内容の豊かさに比べると,その表現が乏しいように思われる。おもしろかった,楽しかったをはじめとして多様な感想が出てくるように,感想を書かせる場面を多くして,その表現についても工夫させていきたい。
 なお,この授業の成果としていえることは,①五角形の角の和を利用して正五角形の一つの角を求めさせることが自然に行えたことである。②また,その活動を通して子どもがすっきり感を感じていることである。そういう意味では,教科書では上と下に分かれている内容であるが,併せて指導する単元構成には可能性があるといえる。
 最後に,③本時の展開では,「計算ですっきり答えが出る」教材のよさに教師自ら感心し,さらにまとめのところで子どもに実感した感想を語らせ,そのよさを何度も強調している。算数科の授業では,このように教材のよさをみんなで確認し合う場面は少ないように思うが,改めてこの繰り返しが大切であることを実感した。この実践記録を読んでいただいた先生方にも参考にして欲しいことである。
 今後も楽しくてわかりやすい算数科の授業を創造し続けたい。

福島の先生が3.11後を漫画に。

この青空は、ほんとの空ってことでいいですか?

topics_vol32_1 私は、現在、福島県郡山市で小学校の教師をしております。震災後の生活は、まだまだ大変な状況にあります。私の勤務する小学校においても、大勢の子どもたちが避難を余儀なくされ、児童数が減少してしまいました。除染も進んでおらず、保護者の力をお借りして、いまだに続けており、校庭の一部はまだ立ち入り禁止の状態です。運動会をやるにも水泳の授業をやるにも、本当に大変な毎日を過ごしております。
 街中を見ますと、長そで長ズボンで、マスクをしている子供たちも少なくなり、公園で遊ぶ姿も徐々に増え続けてはいるのですが、まだまだ不安材料はたくさんあるのです。残念ながら、私も含めて放射能に関して麻痺してしまっているのです。
 そんなことを考えている日々を過ごしていた昨年度(H23)、郡山市にある「あさか開成高校」の演劇部の指導をしている教師から私に漫画化の依頼がありました。私はこの演劇を見たときに、しばし呆然としました。高校生の思いも私たちと一緒で、日々つらい生活を強いられているのだと強く感じたからです。被災者の立場から言うと、あの日のことを一日でも早く忘れてしまいたいのですが、やはり、この悲惨な状況を忘れてはいけないこととして考えていかなければいけないのです。そして、いろいろな方にこの現状を知っていただきたいと思っています。演劇というメディアとは違った形でも、全国のみなさんに知っていただけるのではないかという思いから、頑張って描きました。

いろんな子どもたちが生きる時間

art2_vol2_01 前回、「図工や美術が今できること」の考える手がかりを提供したいと書いた。大それたことを言ってしまったと、かなり後悔している。しかも、2回以降の内容まで予告している。今回は「いろんな子どもたちが生きる時間」? 苦し紛れに書いたことだが、しょうがない。こうやって自分を追い込んでいくのは悪い癖だ。あきらめて、思い付くまま書いてみよう。

 図工や美術は「いろんな子どもたちが生きる時間」である。
「生きる?いや、どんな時間でも子どもたちは生きてるよ」
「図工や美術だけのことじゃないし…」
 「生きる」には「生存する」「活動する」「生活する」「効果を発揮する」「更新する」など複数の意味がある。文字通り生きて活動するのであれば、その通りだ。ただ述べたいのは、図工や美術が子どもの在りようにどう関わっているかである。「新しい私を生きる」、「ともに生きる」などいろいろ言いたいが、本稿では、「いろんな私を生きる」ということについて取り上げたい。

 具体的に考えよう。ギャラリートークをしていると、よく言われることがある。
「あの子、いつもはしゃべらない子なんですよ。」
 国語の読解とギャラリートークの学習形態はそれほど変わらない。学級担任としては、いつも「発言しない子」がたくさん発表して驚いたようだ。「それが美術のすばらしさですよ」と即答したいところだが、それでは話が終わってしまう。少し丁寧に検討してみる。
 実は、この先生の言葉には「その子は授業中『発言しない子』だ」という前提がある。それは学習の当事者である子ども自身の評価ではない。指導者の実践や学校制度をもとにした評価である。意地悪く言えば、自分の授業は棚上げにしている。授業では問いが方向づけられていたり、解が一つしかなかったりすることが多い。高学年にもなれば、自分が答えられるか、答えられないか、すぐ分かる。そんな学習の状況が、休み時間はおしゃべりな子どもを「語らない子」にしているのではないか。「発言しない子」という言葉は、授業の属性を子どもの属性にすり替えていると考えられないだろうか。
 「私」という概念は、文化や社会、制度や状況などをもとに、その都度、構築されている。例えば私自身、職場では多弁な先生だが、家では寡黙なお父さんだ。留学生は、国語の時間は外国人になるが、体育の時間は普通にスポーツを楽しむ人になる。「私」は流動的で可変的な実践である。そう考えれば、他の授業では「発言しない子」が、美術鑑賞でよく「発言する子」になるというのは、それほど不思議なことではない。
 美術作品には多様な意味が含まれている。解釈の幅があり、その多くは見るものに任せられる。その特性を生かして解釈を創造する現場がギャラリートークだとすれば、よほどでもないかぎり発言は「間違い」にはならない。そのことを、絵を前にした子どもは直観的に分かる。「ああ、何を言っても認められそうだ」「ぼく、いろんなこと考えられるよ」。語る自由を学習の当事者である子どもは知っている。だから「いつもはしゃべらない子」がよく発言する。いろいろ思い付いたことを素直に語る。「発言しない子」にはならずに、いろんな子どもたちが、いろんな「私」になれる。自分も同じように、図工の時間にそういう子どもたちを山ほど見てきたし、体験してきた。
 しかし、今の学校制度では朝から夜まで硬直的な「私」を生きる時間が圧倒的に多い。その外的な属性が、いつのまにか個人の属性として同定していく。それを「解放する時間」というのは言い過ぎだと思うが、図工や美術が「いろんな私を生きる時間だ」くらいは言えるだろう。もちろん、このようなことは他教科でも言えるので断言はできない。
 「美術は分からない」とよく言われる。しかし、それが多義性を意味するのだとすれば、学習として、むしろ重要な要素となっている。多義的に私を生きる時間。そんな時間が、子どもたちには必要だと思う。