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月別アーカイブ: 2020年2月
Webマガジンまなびと:「学び!と美術」Vol.90
Webマガジン:「学び!と美術」Vol.90 “「ラウンド・ダイアローグ(役割交代鑑賞)」” を追加しました。
「ラウンド・ダイアローグ(役割交代鑑賞)」
近年、美術鑑賞は、対話的なディスカッションあり、鑑賞アクティビティあり、知識解説型ギャラリートークありと、すっかり多様になってきました。本連載でも、これまでいろいろな鑑賞方法を紹介してきました(※1)。今回は、最近考案した、役割を交代しながら対話が進む「ラウンド・ダイアローグ」を紹介します。
対話には4つのタイプがある(※2)
対話というと、ファシリテータも参加者も「しゃべらないといけない」「発言が続かないといけない」などの強迫観念にとらわれがちです(※3)。でも「積極的に発言する人」もいますが「人の意見を聞いているだけの静かな人」もいる、それが普通の対話です。
全米の指導的立場にいるフリック美術館のリカは、対話と呼ばれる鑑賞には、「自由にとりとめもなくおしゃべりする会話(Conversation)」「リーダーから与えられたテーマや質問について考える授業のような議論(Discussion)」「問いや結論を生み出す主体が参加者にあり、即興的でオープンに進む対話(Dialogue)」の「三つのタイプ」があると言います(※4)。その中で、参加者は4つの役割を果たしており、みんな適切にふるまっていると指摘します。4つの役割とは以下です。
①どんどん意見を言う推進役(Mover)
②推進役から出た意見を補強、補充する補佐役(Follower)
③意見は言わないけど、みんなの発言を聞きながらうなずいている傍観役(Bystander)
④意見に反対したり、不同意を示したりすることで、対話を活性化する反対役(Opposer)
確かに、そうだなと思います。「自分はどの役割を果たしているのだろう」と考えると面白いでしょう。研修会などで挙手してもらうと、推進役や反対役は少数派で、傍観役が最も多いようです。ただし、「黙っている」から「考えていない」わけではありません。じっと友だちの意見を聴きながらいろいろなことに思いを巡らせています。また、反対役や推進役は傍観役を見ながら意見を言います。傍観役にうなずかれることで安心したり(連携)、妥当性を確かめたり(判定)しています。大勢いる傍観役はまとめでは決定権ももちます。対話や話し合いで大切なのは推進役や反対役だけではなく、傍観役も大事。すべての役割が必要なのです(※5)。
すべての役割を実感する「ラウンド・ダイアローグ」
鑑賞において重要な目標の一つは参加者の変容でしょう。「すべての役割が大事」だとすれば、対話における役割を体験するアクティビティもありだと思いました。そこで以下のような「ラウンド・ダイアローグ」を考案しました。
- 4つの役割に、司会の役割を付け加えた5枚のカードを用意します。表面には役割、裏面には役割の解説が書いてあります。(写真参照)
①推進役(Mover)
②補佐役(Follower)
③傍観役(Bystander)
④反対役(Opposer)
⑤司会役(Facilitator) - グループの成員に役割カードを配ります。5人以上のグループでは傍観役を増やします。
- グループ全員で同じ絵を鑑賞します(※6)。ただし、自分の役割を踏まえて。例えば、傍観役のカードをもらったら、傍観に徹してもらいます。たとえ、推進役の性格であったとしても!
- 5分話し合ったら、役割カードを回して役割を交換します。これを5分おきに繰り返し、鑑賞を続けます(※7)。
- 全員が役割を果たした頃、全員で鑑賞した内容をまとめて、グループごとに発表します。
鑑賞に一種の役割演技を組み込んだ活動ですが、これまで企業や教員の研修で実践して以下のような効果を感じています。
- 自分を発見する~自分の特性を知ることができる、自分は傍観するタイプと思っていたのに反対役の素養があるに気付く、等。
- 他者の重要性を理解する~意見を言う人だけが大事ではないことが分かる、対話に他者が欠かせないことを理解する、役割と対話の関係を実感する、等(※8)。
- ヒエラルキーのない議論ができる~役割演技という申し合わせがあるため利害関係なく自由に発言できる、美術作品の多様性がヒエラルキーを解消する、等。
- 美術鑑賞のよさが実感できる~美術作品の持つ多様性が反映された対話の楽しさを味わえる、何を言ってもよいという安心感をもてる、等。
「ラウンド・ダイアローグ」は他の教科等でも可能なアクティビティですが、美術作品の多様性や鑑賞の自由さゆえに活発な活動になるように思います。ぜひ美術鑑賞がつくりだす対話と役割を体験してはいかがでしょうか。
※1:学び!と美術<Vol.78>「ラウンド・スケッチ~人気の鑑賞アクティビティ」
※2:以下の調査成果に基づいています。科学研究費補助金基盤研究(B)平成24-26年度「科研費美術館の所蔵作品を活用した鑑賞教育プログラムの開発」研究代表者:一條彰子
※3:武蔵野美術大学の杉浦幸子は、視覚思考法とも言うべきVTSが対話型と訳されたことに起因しているのではないかと指摘している。
※4:Rika Burnham, Elliott Kai-Kee, “Teaching in the Art Museum-Interpretation as Experience” (2010) ちなみに、リカは、次々と質問されたり、意見が強要されたりするディスカッション・タイプは嫌いだと言っていました。
※5:原著を翻訳するとこうなりますが、日本語では「傍観役」は「共感役」、「反対役」は「創造役」の方が適切という意見もあります(愛知県深谷孝之先生)。実際に、傍観に徹して共感を忘れたり、反対に徹して創造に貢献できなかったりする例も見られます。役割名は柔軟に考えた方がよいでしょう。
※6:アートカードやプロジェクターを用いています。
※7:司会役はラウンドさせず固定する場合もあります。
※8:アクティビティをした後の鑑賞活動に、相手の意見や存在を尊重しようとする態度が見られることもあります。
機関誌・教育情報:「社会科NAVI」Vol.24
機関誌・教育情報:「社会科NAVI(小・中学校 社会)」Vol.24 “[ここに注目!]小学校社会科における学習評価改善のポイント” を追加しました。
[ここに注目!]小学校社会科における学習評価改善のポイント
Webマガジンまなびと:「学び!とシネマ」Vol.167
Webマガジン:「学び!とシネマ」Vol.167 “巡礼の約束”を追加しました。
巡礼の約束
©GARUDA FILM
3年ほど前、チベットで牧畜を営む家族の暮らしぶりを描いた、ソンタルジャ監督の「草原の河」を本欄でレビューした。このほど、ソンタルジャ監督の新作「巡礼の約束」(ムヴィオラ配給)が公開となる。
チベット高原の東端にギャロン地区がある。四川省の成都からバスで7時間ほどで、正確に言うと、四川省チャン族自治州になる。標高1800メートルほどの山あいの村に、ロルジェ(ヨンジョンジャ)とその父、ロルジェの妻のウォマ(ニマソンソン)が暮らしている。
明け方、泣きながら、ある夢を見たウォマが目覚める。ロルジェは、心配しながら火を起し、ウォマは供養するが、ロルジェには、ウォマの行動の意味がよく理解できない。
ウォマは病院で、医師からあることを宣告されるが、ロルジェには、なにごともなかったように振る舞う。そして、突然、ウォマは宣言する。「五体投地でラサヘ巡礼の旅に出る」と。
五体投地とは、チベットの聖地ラサへの巡礼の方法で、両手、両膝、額の体の5ヶ所を地面に投げ出して祈る。当然、時間がかかる。ざっと、1日に5kmほどしか進めない。ロルジェは反対するが、ウォマの決意は固い。
©GARUDA FILM 巡礼の前に、ウォマは実家に父母を訪ねる。実家には、病気で亡くなった前夫との息子ノルウ(ルィチョクジャ)が暮らしている。母親と暮らしたいノルウは、小学校でも喧嘩ばかりで、部屋に籠もったままで、母親と会おうとしない。
巡礼の準備が進む。手にはめる木型を松の木で作ってやるロルジェだが、内心は気が気でない。出発が近づく。村の娘ふたりがウォマに同行することになる。
出発して2週間、ロルジェがバイクでウォマに追いつく。病院での結果を知ったロルジェが、巡礼をやめさせ、大きな病院で治療させようとするが、ウォマはかたくなに拒否する。怒ったロルジェは、「勝手にしろ」と、バイクで走り去る。付き添いの村の娘は、ふたりとも、すでにいなくなっている。
ウォマの弟が、母親に会いたがっているノルウを連れて、ウォマに追いつく。ウォマは、久しぶりに会ったノルウを抱きしめる。
怒って別れたロルジェが戻ってくる。ノルウを届けたウォマの弟は、ノルウを連れて戻ろうとするが、ノルウは言う。「一緒にラサに行きたい」と。
実の母と息子、息子ノルウと母のいまの夫ロルジェは、他人である。母と一緒に暮らせないノルウは、ロルジェをこころよくは思っていない。ウォマは、病魔と闘いながらも、五体投地を続けている。ウォマの亡くなった夫への思慕を理解しても、ロルジェには、秘めた嫉妬もあるはずだ。やがて、ウォマは、巡礼に出た真の理由を、ロルジェに話し始める。
©GARUDA FILM 少ないセリフで、練りに練った脚本だ。ドラマの進行に合わせて、人物の関係像が少しずつ、露わになっていく。ロルジェは、妻の決意をどのように理解するのか。前夫との間の息子と、どう立ち向かうのか。
静謐なドラマの進行にあわせて、緊張感が漲る。風景は、絶景である。世界でいちばん美しい村に選ばれた場所から、遙か西のラサへの巡礼である。五体投地でラサに向かう。1日5km。ラサまでは、1年かかる行程だ。チベットの人たちの信仰の深さは、半端ではない。
ロルジェたちは、旅の途中、とても親切な家族に出会う。心優しい人ばかりではないとは思うが、信仰の旅人を暖かくもてなすのも、チベット文化のいいところだろうか。
人生には、いろんなことがある。楽しいことより、辛いことのほうが多いかもしれない。チベットの人たちは、自分のことばかり考えず、他者を理解し、他者のために祈る。あらまほしいことだ。
ロルジャを演じたヨンジョンジャは、歌手としても有名で、チベット文化の普及、継承に尽力している。本作のプロデューサーでもある。映画初主演と思えないほど、繊細な表情で演じきる。また、まだ小学生だが、ノルウを演じたツィチョクジャが、少年の屈折した心情を、巧みに演じて、驚く。
ソンタルジャ監督の「草原の河」はもちろん、チャン・ヤン監督の五体投地の詳細を描いた「ラサへの歩き方 祈りの2400km」をご覧になると、さらに本作へのご理解が深まることと思う。
2020年2月8日(土)より、岩波ホール
ほか全国順次ロードショー
■『巡礼の約束』公式Webサイト
監督:ソンタルジャ
プロデューサー:ヨンジョンジャ
脚本:タシダワ、ソンタルジャ
出演:ヨンジョンジャ、ニマソンソン、スィチョクジャ
2018年/中国語題:阿拉姜色/英語題:Ala Changso/中国映画/109分/シネマスコープ/5.1chサラウンド/字幕:松尾みゆき/字幕監修:三宅伸一郎
配給:ムヴィオラ
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