Webマガジンまなびと:「学び!と共生社会」Vol.14

Webマガジン:「学び!と共生社会」Vol.14 “ICTの活用とインクルーシブ教育”を追加しました。

ICTの活用とインクルーシブ教育

 ICTの進展により、人工知能(AI)、ビッグデータ、Internet of Things(IoT)、ロボティクス等の高度化した先端技術が社会生活のあらゆる場面に取り入れられ、Society5.0時代が到来しようとしています。これまで紹介してきた「新しい時代の特別支援教育の在り方に関する有識者会議」の報告においても、特別支援教育におけるICTの利活用が取り上げられています。そこで、今回は、そこでの記述をベースに、インクルーシブ教育の構築という観点からも、ICTの利活用が重要な役割を担っているということについて考えてみたいと思います。

「新しい時代の特別支援教育の在り方に関する有識者会議」報告から

 「新しい時代の特別支援教育の在り方に関する有識者会議」報告の「Ⅳ.ICT利活用等による特別支援教育の質の向上」にはICTの活用について、次のような記述が認められます(*1)

○ ICTは、障害の有無を問わず、子供が主体的に学ぶために有用なものであるとともに、特別な支援を必要とする子供に対しては、その障害の状態や特性及び心身の発達の段階等に応じて活用することにより、各教科等の学習の効果を高めたり、障害による学習上又は生活上の困難を改善・克服するための指導に効果を発揮したりすることができる重要なものである。また、合理的配慮を提供するに当たっても必要不可欠なものとなりつつある。

 特別支援教育においては、特別な支援を必要とする子ども一人一人の教育的ニーズに合わせて適切な教材等を活用することで、さまざまな困難を取り除いたり、減らしたりすることが可能となるわけですが、これまでも、各教科や自立活動に関連してICTの活用が積極的に行われてきています。
 この報告には、具体的なICTの活用例として、「視覚障害であれば、文字の拡大や音声読み上げ、聴覚障害では、音声を文字化するソフトや筆談アプリ等のコミュニケーションツール、知的障害では、動画やアニメーション機能を活用した学習内容を具体的にイメージする情報提示、肢体不自由では、視線入力装置による表現活動の広がりやコミュニケーションの代替、病弱では、病室と教室を結ぶ遠隔教育のシステム、発達障害では、書字や読字が難しい人にとってのコンピュータを用いた出入力や音声読み上げ」など様々な事例が示されています。

ICT活用の有用性

 筆者は、平成24年から25年にかけて実施された文部科学省における「学びのイノベーション事業」(*2)の特別支援教育ワーキンググループの一員として実証研究に参画しました。そこで取り組まれた実証研究の一つは、病気療養中の子どもが病院内からテレビ会議システムを用いて遠隔教育にチャレンジする実践でしたが、ICT活用の有用性を目の当たりにしました。病気療養中であっても、学校の友人関係を継続させることができ、学習を途切れさせることなく続けることを可能にしてくれたのです。また、こうした取組は、子ども自身に前向きに生きようとするモチベーションを与えることにつながることなど、大きな可能性があることを実感したものです。

インクルーシブなICTの活用を

 このように、ICTの活用は多くの障害がある子どもの指導の充実に大きく寄与しているわけですが、インクルーシブ教育という観点からは、こうした特別支援教育におけるICTの活用は、その範疇に留まるものではなく、小中学校の教育においても活用の可能性があるというところに着目する必要があるように感じています。例えば、上記の「病気療養中の子ども」の実践は、「不登校中の子ども」への活用の可能性があります。
 東京学芸大学附属小金井小学校では、すでにICTをインクルーシブ教育に結び付けた実践を展開していますが(*3)、ICT は学校において「個別最適な学び」と「協働的な学び」を充実し、すべての子どもたちの可能性を引き出す教育を実現するために不可欠のものであり(令和3年1月の中央教育審議会答申、*4)、「個別最適な学び」という観点から見ると、特別支援教育におけるICTの活用が、特別支援教育に留まることなく必要とするすべての子どもにも対応できるようにしていくことが望まれるといえます。

期待される特別支援教育におけるICTに関する情報の共有

 しかしながら、ICTに関する情報の共有という観点からすると、現実には、まだ通常の教育と特別支援教育の壁があるように思います。特別支援教育におけるICTの活用事例については、国立特別支援教育総合研究所(*5)が以前から情報発信をしています。是非とも、通常の小学校や中学校の先生方もこうしたサイトに気軽にアクセスして、情報を共有するようにしてほしいものです。

*1:新しい時代の特別支援教育の在り方に関する有識者会議 報告【本文】
https://www.mext.go.jp/content/20210208-mxt_tokubetu02-000012615_2.pdf
*2:学びのイノベーション事業実証研究報告書
https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shougai/030/toushin/1346504.htm
*3:東京学芸大学附属小金井小学校 ICT×インクルーシブ教育
http://www.u-gakugei.ac.jp/~ict-incl/
*4:「令和の日本型学校教育」の構築を目指して(答申)【本文】
https://www.mext.go.jp/content/20210126-mxt_syoto02-000012321_2-4.pdf
*5:国立特別支援教育総合研究所
国立特別支援教育総合研究所「特別支援教育教材ポータルサイト」
http://kyozai.nise.go.jp/
「ICT及びアシスティブテクノロジーに関して 」
http://www.nise.go.jp/cms/14,6055,69.html

普段着の国際協働へ ―未完―

1.台湾協働の新段階

図1 台中高女で打ち合わせ 2019年11月、私たちスタッフは台中市台中女子高級中學(台中高女)を訪れました。立人高級中學の学園祭で知り合った台中高女のPTAの方の招きによるものです。氏は台中市(日本の行政区分では「県」)とも太いパイプを持っており、当日の打ち合わせには台中県の教育局長も出席していました。
 事前の打ち合わせでは、台中市の都市部だけではなく、山間部と交流・協働することも考えてほしいとのことでした。この台中高女は台中市の都市部に位置し、全台湾でも5本の指に入るほどのエリート校で、いずれの生徒の家庭も上流階級ばかりです。しかし、これが台湾のすべてなのではなく、東の山間部には台湾原住民の血筋の人々も暮らしており、経済的にも恵まれているとは言えない、都市部の子どもたちは家族旅行で日本に行くことも珍しくないが、山間部の子どもたちのほとんどはそのようなチャンスがない、ということでした。
 「私たちの協働のねらいは、各地のありのままの姿を受け入れ、生徒同士が力を合わせる機会をつくっていくこと」と伝え、台湾側からの提案を歓迎しました。

2.三つの高校と

図2 100周年を迎える台中高女にて 2019年12月、私たちは台湾に向かいました。福島側の生徒もほぼ新しいメンバーに入れ替わり、語学が得意な生徒や中国語が堪能な生徒もいれば、プロジェクトで元気を取り戻しつつある不登校気味の生徒もおり、バラエティに富んでいました。彼らは皆、福島市高校生フェスティバルでチームワークを築きあげたメンバーでした。
 事前に、各校で発表するプレゼンテーションを準備し、英語や中国語でスピーチの練習をしたところ、確実にこれまでのものよりも1段階以上レベルが上がっていました。「希望のヒカリ」を友情の印に各校に寄贈する計画を立て、直径60センチ程度の小型のものを再設計し、週末の度に集まっては部品を作りました。学習会を開き、台湾の歴史や文化を、日本との残酷な関係も含めて学び合いました。
 今回訪問するのは、前述した市の中心部に位置する台中高女と、東の山間部にある新社高級中學の二つの高校です。これまで交流を続けてきた立人高級中學には今回は訪れませんが、パートナーたちが夕方生徒たちを夜市に誘ってくれました。
図3 立人高中のパートナーたちと 台中高女はこの日創立100周年の式典があり、私たちはそのセレモニーに招かれました。100年前に日本人が設立した高校で、制服が緑色である理由を尋ねると、戦時中周りの緑に溶け込み、空からの攻撃を避けるためと説明され、言葉に詰まりました。創立記念日には、本校を卒業した各界のセレブが集まり、台中市長(県知事)も出席して挨拶をしました。
 校内を案内してもらうと、ある部屋には3Dプリンタやレーザー彫刻機などが自由に使えるように複数セットされており、生徒の創造性を育むことに役立てているとのことでした。日本との差を痛感しました。交流の場面では、一定程度日本語が理解できるパートナーを集めていただいていたので、コミュニケーションはほとんど障害がありません。生徒たちはあっという間に仲良くなり、SNSの交換などをして別れました。

図4 福島の今を伝えるプレゼン図5 親しくなった高校生たち

3.被災者と支援者

 翌朝早く、東の山岳部にある新社高中にバスで向かいました。急な山道をバスで登っていくと、突然、まるで山奥の桃源郷のような風景が広がります。新社高中は1999年の台湾大地震で校舎を失った高校で、20年を経てやっと元に戻ったと校長先生が説明していました。ここは普通科と農業科が一つになった学校で、広大な農場を持っています。台湾でサトウキビの栽培を始めたのがこの高校とのことです。
 ここでは、日本語や英語はほとんど使えず、中国語のできる通訳が唯一の頼りでした。両国の生徒や先生方と植物の種を揉んで作るゼリーを体験し、校内を歩いているうちに、生徒たちはここでもすっかり仲良くなりました。新社の生徒たちはとりわけ人なつっこく、福島の不登校気味だった生徒も、わずかな時間で仲のよい友達を作りました。再会を約束して学校を後にすると、出発したバスの後を高校生たちが走って追いかけて来るではありませんか。

図6 ゼリー作りを一緒に図7 バスを追いかけてくる生徒たち

 震災と原発事故の被災地福島を知ってもらうために始めた台湾との交流・協働事業でしたが、台湾もまた解決しなければならないさまざまな課題を持っています。自分たちの力だけでは日本に来ることの難しいここの生徒を日本に招待できないか、そのためにクラウドファンディングを始めてはどうか、日本への帰路でそんなことを本気で考え始めました。
図8 新社高中の仲間たちと しかし、2020年が明けて新型コロナウイルスが広がり始めるとすぐに、台湾はいち早く国境を封鎖し、自由な行き来ができなくなってしまいました。生徒同士、メッセージのやりとりは続いていますが、次のプロジェクトに取りかかるには、もうしばらく時間がかかりそうです。

ミナリ

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 「ミナリ」(ギャガ配給)は、今年のアカデミー賞で、作品賞、監督賞、主演男優賞、助演女優賞、脚本賞、作曲賞の6部門でノミネートされた話題の作品だ。
 1980年代、韓国からカリフォルニアに移住した韓国人一家が、農業での成功を目指して、アーカンソーの農地にやってくる。大きな農園を作って、韓国料理店に提供する農作物を栽培しようと奮闘するが、現実は甘くない。一家に、いったい、どのような試練が待ち構えているのか。
 韓国から移民のジェイコブ(スティーヴン・ユァン)は、妻のモニカ(ハン・イェリ)と、まだ幼い長女のアン(ネイル・ケイト・チョー)、7歳の長男デビッド(アラン・キム)といっしょに、アーカンソー州のオーザック高原にやってくる。
 モニカは、おんぼろのトレーラーを改装したような粗末な家を見て、「勝手に決めるなんて」と機嫌が悪い。ジェイコブは、「ここの土地はいいはず。大きな農園を作ろう」と考えている。
 ジェイコブとモニカの夫婦は、とりあえず、ヒヨコの雄雌選別の作業に従事する。ジェイコブ夫婦にとっては、カリフォルニアでずっと関わっていた仕事である。農作業での成功を考えているジェイコブと、現実を重視するモニカは、ことあるごとに対立してしまう。心臓に欠陥を抱えるデビッドを気遣うモニカは、近くに病院がないのも不満である。
 このままでは、子どもの面倒も満足にみることが出来ない。韓国から、モニカの母スンジャ(ユン・ヨジョン)を呼び寄せることで、なんとか夫婦の危機を乗り越えようとする。
©2020 A24 DISTRIBUTION, LLC  All Rights Reserved. スンジャがやってくる。アンは小さい頃に祖母に会っているが、デビッドにとっては、初対面になる。字の読めないスンジャは、にぎやかで、思ったことをズバズバ、口にする。「食らえ、この野郎」などと、下品な発言も多い。スンジャは、テレビのプロレスが大好きで、特技は花札だ。いつのまにか、孫たちに花札を教えたりして、少しずつ、アメリカの暮らしになじんでいく。当初、「おばあちゃんらしくない」と、敬遠していたデビッドは、すっかりスンジャになつくようになっていく。
 近くに住むポール(ウィル・パットン)が、なにかと農作業を手伝ってくれる。ポールは、朝鮮戦争に従軍していたらしく、ジェイコブ一家に、親切である。ポールは、熱心なクリスチャンだが、ちょいと変わり者で、日曜日には、自らをキリストになぞらえてか、木で出来た大きな十字架をかかえて歩く。
 なんとか、ナス、パプリカ、トウガラシなどが育つ。しかし、自然は厳しい。ある日、急に地下水が枯れてしまう。水道水は出るが、無料ではない。やがて、資金繰りもままならない一家は、大きな危機を迎えることになる。
 スンジャは、デビッドを近くの川に連れていき、ミナリ(セリ)を植える。デビッドは、両親から心臓病のことを立ち聞きし、「死にたくない」とスンジャに訴える。「死なせない」と励ますスンジャ。
 一家5人の暮らしぶりが、淡々と描かれていく。いろんな出来事があるが、大きく一家の運命を揺るがすほどのことは起こらない。だが、ある日、スンジャのある行為が、とんでもない事件を起こす。
©2020 A24 DISTRIBUTION, LLC  All Rights Reserved. アメリカは、もともと、移民の人たちの多い国である。いろんな国からやってきて、たいへんな苦労を重ねたことと思う。もちろん、大成功を収めた人もいるが、「ミナリ」で描かれた韓国人家族のように、苦労を重ねる人たちが多いはずだ。
 脚本、監督は、リー・アイザック・チョン。アメリカ生まれだが、名前から分かるように、韓国からの移民2世である。幼い頃、アーカンソーの農場で育ったこともあって、いわば、監督の自伝的な要素を持ち合わせた映画でもある。シリアスなドラマなのに、ユーモラスなセリフや、やりとりが随所に出てきて、そう悲壮感は感じない。
 いたってシンプルドラマなのに、観客をぐいぐいと引き付けるのは、俳優たちの演技、監督の演出力もあるだろう。ジェイコブに扮したスティーヴン・ユァンは、「バーニング 劇場版」などに出た実力派。開拓者精神が旺盛ながら、妻との葛藤に苦しむ役どころを力演する。
 個性豊かな祖母役のユン・ヨジョンは、最近では「チャンシルさんには福が多いね」に出演。ヒロインが下宿する部屋の大家さん役を巧みに演じた、韓国を代表する大女優だ。デビッドとのラスト近くの演技は、圧巻である。デビッド役のアラン・キムは、その仕草のひとつひとつが、とても可愛い。心臓病のせいで、走ることが出来ない設定が、見事に活きるシーンがある。もちろん、タイトルの「ミナリ」にちなんだシーンもあり、厳しい現実を生き抜く勇気が湧くような、心ふるえるセリフが用意されている。
 4月に発表になるアカデミー賞では、いくつか受賞するかと思うが、賞とは関係なく、見るに値する、余韻たっぷりの傑作だろう。

2021年3月19日(金)より、TOHOシネマズシャンテほか全国公開中

『ミナリ』公式Webサイト

監督&脚本:リー・アイザック・チョン
出演:スティーヴン・ユァン、ハン・イェリ、ユン・ヨジョン、ウィル・パットン、スコット・ヘイズ ほか
原題:MINARI/アメリカ/カラー/シネスコ/5.1chデジタル/116分/字幕翻訳:根本理恵
配給:ギャガ

小学校 図画工作:「みんなの図工ギャラリー」追加

小学校 図画工作:「みんなの図工ギャラリー」の5・6年生の作品の「【絵】墨と水から広がる世界」を更新、1・2年生の作品に「【絵】みてみて あのね」「【絵】ふしぎな たまご」、3・4年生の作品に「【絵】いろいろうつして」「【絵】言葉から形・色」、5・6年生の作品に「【絵】ほり進めて刷り重ねて」「【絵】版で広がるわたしの思い」「【絵】わたしの大切な風景」を追加しました。