my実践事例:小学校 算数 No.017 “場合の数〔ならび方や組み合わせ方を調べよう〕(第6学年)”を追加しました。
月別アーカイブ: 2022年6月
場合の数〔ならび方や組み合わせ方を調べよう〕(第6学年)
1.単元名
場合の数〔ならび方や組み合わせ方を調べよう〕(第6学年)
2.単元の目標
順列や組み合わせについて、起こりうる場合を落ちや重なりがないように調べる方法を理解し、事象の特徴に着目し、落ちや重なりがないように順序よく筋道立てて考えるとともに、多面的に検討した過程を振り返り、学習したことを生活や今後の学習に活用しようとする態度を養う。
3.評価規準
順列や組み合わせについて、起こりうる場合を調べるには、ある観点に着目したり、図や表などに表したりすればよいことを理解し、落ちや重なりがないように、起こりうる場合を順序よく調べることができる。
起こりうる場合を調べるのに、事象の特徴に着目し、図や表などを用いたり、項目を記号に表したりして、順序よく筋道立てて考えている。
起こりうる場合について、落ちや重なりがないように、図や表などを用いて順序よく調べたことを振り返り、学習や生活に活用しようとしている。
4.本単元の指導にあたって
本単元では、日常の事象について、起こり得る全ての場合を適切な観点から図や表などを用いたり、記号に表したりして分類整理し、落ちや重なりがないように調べることができるようにすることをねらいとしている。順序よく筋道を立てて調べる際には、項目を記号に表すことのよさを実感させながら、調べたことを振り返り、学習や生活に活用しようとする態度を育成することも大切であり、中学校の確率での学習にもつながっていくため、意識しながら展開していきたい。
起こり得る場合を順序よく整理して調べる際に、事象をノートに書き記しながら調べていくことが予想されるが、ノートに児童が思いつくままに列挙していくときの課題として、落ちや重なりが生じやすく課題解決に時間がかかってしまうことが考えられる。ノート上で試行錯誤しながら考えることはもちろん必要であるが、記号に表すことができ、さらにその表された記号を画面上でタップすると、移動させて表や樹形図にしやすく設定された指導者用デジタル教科書(教材)機能を活用し、児童が操作することで、落ちや重なりが生じることなく事象を効率よく整理して調べることができると考えた。分類整理していく過程で、図や表などを用いたり、項目を記号などに表したりするよさに児童自身が気付き、規則を見つけて正しく並べたり、整理して見やすくしたりして、誤りなく全ての場合を明らかにしていくことが必要であり、そのような資質・能力を育成することを目的として指導に当たった。
5.単元の指導計画
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時 |
学習のねらい |
おもな学習内容 |
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1 |
ならび方を、落ちや重なりがないように順序よく考え説明することができる。 |
・4人で写真を撮るとき、1人を左はしの位置にした場合のならび方を考える。 デジタル教科書 |
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3 |
ならび方を、落ちや重なりがないように、順序よく調べることができる。 |
・10円玉を3回投げたときの、表と裏の出方の起こりうる場合を、図を用いて調べる。 デジタル教科書 |
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4 |
条件に合った場合を、順序よく筋道立てて考え、説明することができる。 |
・条件に合った体育館への行き方を調べる。 デジタル教科書 |
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5 |
組み合わせ方を、落ちや重なりがないように順序よく考え説明することができる。 |
・4つの組でバスケットボールの試合をするとき、試合数の組み合わせ方を考える。 デジタル教科書 |
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6 |
組み合わせを、落ちや重なりがないように、順序よく調べることができる。 |
・5種類のケーキから、3種類を選んで買う場合の買い方を調べる。 デジタル教科書 |
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7 |
学習内容の理解を確認し、より確かなものにする。 |
・「わかっているかな?」「まちがいやすい問題」「たしかめポイント」に取り組み、学習内容をより確かなものにする。 デジタル教科書 |
6.本時の学習
ならび方や組み合わせ方を調べる際、落ちや重なりなく調べるために観点を決め、図や表を用いたり、名前を記号化して端的に表したりして、順序よく整理して考えている。
【課題発見~めあてをつくる】
授業の導入では、教科書教材である買い物の場面で、5つのケーキの中から3つのケーキを選んで買う場面を想定して提示した。授業の最初には、「昨日までとちがうところ」と板書した。児童には、まず、本時の学習で着目するべきところはどこかを意識・発見させる。
本時は、単元「場合の数」の最後の時間であり、児童は毎時間、様々な見方・考え方を働かせながら学んでいる。前時は、与えられたものすべてについての組み合わせを考えたが、本時では、与えられたものの中から、必要なものを選んで組み合わせる場合について、落ちや重なりがないように順序よく考えていく。
児童が、「すべての中から“選んで”組み合わせる方法」を考えていくことに気付いたところで、めあてを「落ちや重なりがないようにケーキの買い方を考えよう」と設定し、展開していった。めあてについては、①既習と比べてちがうところはどこか? ②新しく着目したいところはどこなのか? を発見させ、児童自ら課題を設定できるように意識して進めた。
T:今日の問題で着目したいところはどこ?
C:落ちや重なりがないように調べないといけないから……。
C:昨日の方法でできると思うけど何かちがうね。
C:買わないケーキもあるね?
T:選ばないということ?
C:めっちゃあるんやけどどうしたらいいのかな?
C:5種類の中から3種類を選ぶ!
児童から「5種類の中から3種類を選ぶ」という意見が出たところで、自力解決に入っていった。ここでは、デジタル教科書内のケーキの絵や記号を動かすことができる機能を用いて進めていった。解決の途中では、児童から「樹形図で考える」や「表を作ってもいいですか?」という発言があったため、黒板の見通しのところに記載し、共有していった。
C:9通りありそう?
C:10通りくらいあるんじゃない?
C:いや、もっとありそう。
C:うん、もっとある! もっとある!
C:図で考えてみてもいいですか?
児童は、考えたことをつぶやきながら、しばらく一人で考えていった。ペアで考え、一人がケーキの名前を読み上げて、もう一人がデジタル教科書にその組み合わせで並べるという方法をとっている児童もいた。(画像1)
デジタル教科書の中には、ケーキの絵を動かしながら、図や表に整理していける機能がある。また、このケーキの絵を記号に変換できる機能もあり、本時の目標である「落ちや重なりなく調べるために観点を決め、図や表を用いたり、名前を記号化して端的に表したりして、順序よく整理して考える」ための手段として、児童が自分に合ったタイミングで活用できるようになっている。自力解決の時間で、1つ1つのケーキの絵や図をノートに書いていくとかなり時間がかかり、本当に考えたいところで時間がなくなってしまいがちになるが、デジタル教科書を用いると、タブレットの画面上に絵や記号を自分で動かしながら、樹形図などの図や表を作成することができるので、本当に考えたいところや議論に時間をとることができる。ICT機器を用いることによって、自力解決の時間を効率的に使うことができた。
C:3つ一緒やけど順番が入れ替わってるのは?
C:それは一緒、一緒。
T:何かわかったなと思ったら、ノートに書いていきましょう。
~中略~
―― C(A)との会話 ――
C:先生、10通りできた。
T:10通り? じゃあ、ノートにも記録してみよう。
C:考えを先にノートに写しとくわ。
―― ノートに書いている間に、Aのタブレット上の考え方を画面に映す。 ――
C:えっ? 9通りしかない! あと1つどれやろう?
T:Aさんの考え方を画面に映しますね。どう?
C:あれ? 8しかない?
(画像2~6)デジタル教科書の機能を活用して整理する様子
デジタル教科書の機能を活用することによって、(画像2)から(画像5)へと考えが整理されていっている。特に、(画像4)から(画像5)への変化は、選び方が10通りである、と答えを求めたが、落ちや重ないかをもう一度確かめるため、いちばん左のケーキを固定して整理し直し、確かめている様子である。一度考えたものをもう一度始めから並び替える際には、デジタル教科書の機能を使うと瞬時に消したり、同じ絵や図をコピーしたりすることができるのでノートに書き直すよりも効率的である。一度考えた絵や図は、スクリーンショットなどで画像として保存しておくと再度考えを共有することができる。また、絵を記号化する機能を用いて考える児童もいた。(画像6)
―― 児童の考えを画面に映して説明させる。 ――
C:シを固定するといい。
C:それをどんどん変えていく!
C:それだとバラバラで順番がわからなくなるから。
C:順序よくってやった。
C:樹形図!!
T:重なっている選び方がないかも見てね。
C:シ‐ロ‐チ と シ‐チ‐ロ は一緒!
C:もっと見やすい並べ方があるよ。
T:3つ選ぶ方法を考えるということは、2つを選ばないという考え方もできるね。
C:あ、ほんとだ。
全員で解決方法について話し合い、考えを共有した際に、落ちや重なりなく、順序よく調べていく際には、いずれかのケーキを固定して考えること、さらには、5つのうち3つのケーキを選ぶということは、2つのケーキを選ばないということと同じ考えで求められることに児童らは気づき、本時のめあてを達成することができた。
2問目は、教科書の問題を活用し、4つのカードから3枚のカードを選んで3けたの整数をつくる問題とした。1問目の問題の考え方からの違いに着目させ、数字の組み合わせだけでなく、組み合わせた後に、ならび方を考える必要があるということに着目させたかったためである。この問題についても、児童はデジタル教科書の機能を使って、考えていった。1問目と同じく、タブレット端末上では数字のカードを実際に操作できるため、ノート上で書いて考えるよりも、落ちや重なりなく調べていくには効率的に進められた。今まで、ノート上で考える際のデメリットとして、何度も消して書いてという作業に時間がかかることがあったが、タブレット端末には、カードの移動、削除などがスムーズにできるよさがあった。また、カードそのものをコピーすることができることもメリットである。
7.指導を終えて
落ちや重なりなく場合の数を調べ上げる際に、デジタル教科書の絵や図を動かすことができる機能、絵や図を記号化して動かすことができる機能を活用するため、本時では、指導者用デジタル教科書(教材)を用い、手元で操作させたり、大型テレビに考えを映して発表させたりした。
自力解決の段階で、初めはノート上で起こり得る場合の組み合わせを考えさせた。ノートで考えるときには重なって同じものを数えてしまっているなど「重なり」がわからなくなりそうなときでも、デジタル教科書では、一度数えた事象は、視覚的に確認できるため気付くことができる。また、数えたかどうか見落としている「落ち」についても、デジタル教科書の機能を使うと視覚的に確認することができ、本時のめあてにせまることができた。
(画像8)タブレット端末で考え、ノートに記録を残す様子(本時)
(画像9)タブレット端末とノートを併用して考える様子(第1時)
デジタル教科書やICTの機能を用いた学習で指導者自身が悩む課題として2つある。1つ目は、タブレット端末上での操作だけで授業が終わってしまうことがあるということ、2つ目は、タブレット端末上に自分の考えを書き込むと、授業後に手元にいつでも見られるものとして残らないということである。この課題を改善するための方法として、自力解決や発表の際には、デジタル端末上で表現をしたとしても、自分の考えや授業の振り返りはノートにしっかり書くということを併用していきたい。こうすることによって、児童はノートを見ていつでも既習事項を振り返ることができ、次の学習につなげることができると考え、本時でも実践した。今後、ICT機器を活用した授業が普及しつつある中でも、ICT機器の使用は目的ではなく、有効な活用法の1つとして意識し、以前からのノート指導も大切にして、いつでも既習事項の振り返りができるようにしておくことを大切に指導したい。(画像8、9)普段から、紙媒体の教科書とデジタル教科書をうまく併用しながら学習することで、ICT機器が考えるための目的ではなく手段の1つとして日常的に算数の学習に定着していくことを願いたい。
国語からインクルーシブ教育を考える
学習指導要領に見る国語における障害のある児童などへの配慮
今回は、国語という教科からインクルーシブ教育への対応について考えてみたいと思います。
先月の「算数・数学からインクル―シブ教育を考える」でも確認しましたが、最新の小学校・中学校学習指導要領では、その総則において「特別な配慮を必要とする児童(生徒)への指導」(第1章第4)に言及しています(*1)。
それを受けて、国語に関しても、「障害のある児童への配慮についての事項」については、「小学校学習指導要領解説【国語】」(*2)の第4章「指導計画の作成と内容の取扱い」の(9)により具体的な留意点が記されています。
そこには、「国語科の目標や内容の趣旨,学習活動のねらいを踏まえ,学習内容の変更や学習活動の代替を安易に行うことがないよう留意するとともに,児童の学習負担や心理面にも配慮する必要がある。」ことを踏まえたうえで、次のような配慮事項が例示されています。
表1 小学校国語(小学校学習指導要領解説【国語】159-160ページ)
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○例えば,国語科における配慮として,次のようなものが考えられる。 ・文章を目で追いながら音読することが困難な場合には,自分がどこを読むのかが分かるように教科書の文を指等で押さえながら読むよう促すこと,行間を空けるために拡大コピーをしたものを用意すること,語のまとまりや区切りが分かるように分かち書きされたものを用意すること,読む部分だけが見える自助具(スリット等)を活用することなどの配慮をする。 ・自分の立場以外の視点で考えたり他者の感情を理解したりするのが困難な場合には,児童の日常的な生活経験に関する例文を示し,行動や会話文に気持ちが込められていることに気付かせたり,気持ちの移り変わりが分かる文章の中のキーワードを示したり,気持ちの変化を図や矢印などで視覚的に分かるように示してから言葉で表現させたりするなどの配慮をする。 ・声を出して発表することに困難がある場合や,人前で話すことへの不安を抱いている場合には,紙やホワイトボードに書いたものを提示したり,ICT機器を活用して発表したりするなど,多様な表現方法が選択できるように工夫し,自分の考えを表すことに対する自信がもてるような配慮をする。 |
ちなみに、中学校の国語については、中学校学習指導要領(平成29年告示)解説【国語編】第4章第4の1の(4)の「障害のある生徒への指導」の中で表2のように示されています(*3)。
表2 中学校国語(中学校学習指導要領解説【国語】136-137ページ)
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○例えば,国語科における配慮として,次のようなものが考えられる。 ・自分の立場以外の視点で考えたり他者の感情を理解したりするのが困難な場合には,生徒が身近に感じられる文章(例えば,同年代の主人公の物語など)を取り上げ,文章に表れている心情やその変化等が分かるよう,行動の描写や会話文に含まれている気持ちがよく伝わってくる語句等に気付かせたり,心情の移り変わりが分かる文章の中のキーワードを示したり,心情の変化を図や矢印などで視覚的に分かるように示してから言葉で表現させたりするなどの配慮をする。 ・比較的長い文章を書くなど,一定量の文字を書くことが困難な場合には,文字を書く負担を軽減するため,手書きだけではなく ICT 機器を使って文章を書くことができるようにするなどの配慮をする。 ・声を出して発表することに困難がある場合や人前で話すことへの不安を抱いている場合には,紙やホワイトボードに書いたものを提示したり ICT 機器を活用したりして発表するなど,多様な表現方法が選択できるように工夫し,自分の考えを表すことに対する自信がもてるような配慮をする。 |
以上のように、現行の学習指導要領では、国語という教科においても障害がある児童への配慮が言及されています。その記述を見ると、主として通常の教室に在籍する発達障害があると認められる子どもたちを念頭に置いたものが多く、内容についても国語科だけに特有の配慮事項は限定的であるように思われました。発達障害のある子どもたちへの指導や配慮について記された類書は数多く出版されています。それらの多くには、学習指導要領に示されている配慮事項への対応について、参考になる内容が具体的に詳しく記されています。また、発達障害については国語教育に特化した書物も数多く出版されていて、有用な情報が入手しやすい状況にあると言えるのではないでしょうか。
言語に着目した国語教科書の点字や手話に関する題材の扱い
他方、通常の学級で学ぶ発達障害以外の障害がある子どもへの配慮も大事なことです。学習指導要領解説の記述だけでは十分ではありません。
特に国語科の目標には言語教育が含まれていることに注意を向けてほしいと思います。国語では日本語という言語を扱っているのですが、それは視覚を使って「読むこと」・「書くこと」、音声を使って「話すこと」・「聞くこと」が大前提となっています。当然のことながら、学習指導要領の記述もその範囲にとどまっています。
しかしながら、それに当てはまらない言語があります。点字や手話です。現在の特別支援教育体制では、点字や手話を使わなければ学校生活や学習活動に制約が生ずる児童生徒等の多くは視覚特別支援学校(盲学校)や聴覚特別支援学校(聾学校)で学んでいます。しかし、実際には、インクルーシブ教育の広がりの中で点字や手話を常用する場合であっても、通常の学校に在籍するケースは全国的に見ると少なくありません。
視覚特別支援学校(盲学校)や聴覚特別支援学校(聾学校)の現状を見ると、児童生徒の少人数化、重複化、多様化が進んでおり、教科学習が可能な場合は、地域の小学校や中学校を就学先として選択するケースが一層増えていくのではないかと筆者は推測しています。
こうしたことを鑑みると、言語教育を担っている小学校の先生や中学校の国語科の先生には、日本語以外に日本で使われている言語についても興味関心をもち、基礎的な知識を有しておいてほしいと思うのです。そうした備えがあれば、実際にそうしたケースに出会ったときに、適切な判断ができるのではないでしょうか。そこで、以下に筆者が日頃、通常の学校の先生方に知っておいてもらいたいと思っている点字や手話に関することを記しておきたいと思います。
言語としての点字、手話
点字は触覚を使って「読み・書き」する「言語」です。かな書きですが、点字を使えば、日本語を読み書きすることができます。また、世の中に存在するほとんどの文字は点字で表すことができます。日本語の点字は基本的にかな表記で、規則性の高い文字になっています。かな表記のために分かち書きの原則が細かく定められています。また、点字は表音主義の基に誕生したため、現在の日本語表記と異なっているところがあります。筆者はそれらが点字を馴染みにくくしている一因ととらえています。
対して「手話」は少しばかり複雑です。本稿では深入りできないのですが、一口に手話といってもいくつかの種類があります。日本で使われている手話は、大きく「日本手話」と「日本語対応手話」に大別できます。「日本手話」は当事者の間で自然に生まれた自然言語で、日本語とは別物の言語ということになります。「日本語対応手話」は、聴覚障害者と聞こえる者との間でコミュニケーションツールとして使われるようになった人工言語で、日本語をしゃべりながら、それに合わせて手話の単語に置き換えていくものです。こちらは日本語に準じているということになります。ただ、手話には助詞の表現がないため、それを補うために、助詞等を指文字やキュードサインで示すことを取り入れた手話もあります。聴覚に障害がある人の状況は一人一人異なっていることもあって、手話にはさまざまな種類があるということになります。また、口の動きで音声言語を読み取る方法もあります。口話法といいます。こうしたさまざまな手話、口話、指文字などすべての方法を活かして使おうというトータルコミュニケーションという考え方もあります。
言語としての点字教材の扱い
近年、国語の教科書に点字や手話を扱った題材が掲載されるようになってきています。それらの多くは、障害理解の観点から点字や手話及びそれらにまつわる逸話が掲載されているのですが、言語教育という面から深く扱っているものは多くないように思います。
例えば、点字を扱った教材では、点字習得の大変さや活用の意義を学んだり、疑似体験を通して、見えないことの制約を実体験したりするなどの活動には熱心に取り組まれていますが、点字の構造や文法、さらには点字の表記法等にまで踏み込んだ言語に直結する指導にまでには至っていないようです。実際、大学や短大の学生に接する機会がありますが、小中学生時代に国語で点字について学んだことをしっかり覚えている学生は例外的な存在です。学んだことを失念しているものも少なくありません。少なくない時間数をかけて学んでいるはずです。残念なことです。
私の経験から、点字の基礎を身に付けさせるのはそれほど大変なことではありません。視覚障害関連の講義では、できるだけ点字を紹介するようにしているのですが、週1回90分の内の10~20分程度の点字に関する講義と毎日5分程度の課題を2か月続けるだけで、ほとんどの学生は基礎的な点字文の読み書きができるようになっています。工夫次第では、小学生や中学生にも十分可能ではないかと思いますし、手話についても同様の対応ができると思います。
国語の目標は、「言葉による見方・考え方を働かせ,言語活動を通して,国語で正確に理解し適切に表現する資質・能力を次のとおり育成することを目指す。」となっています。ぜひとも点字や手話の題材についても、「言語」という側面を大切にして、少しでもそれを理解し、表現できることの喜びを味わってもらえたらと願っています。
*1:小学校学習指導要領
https://www.mext.go.jp/content/1413522_001.pdf
中学校学習指導要領
https://www.mext.go.jp/content/1413522_002.pdf
*2:小学校学習指導要領(平成29年告示)解説【国語編】
https://www.mext.go.jp/content/20220606-mxt_kyoiku02-100002607_002.pdf
*3:中学校学習指導要領(平成29年告示)解説【国語編】
https://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/micro_detail/__icsFiles/afieldfile/2019/03/18/1387018_002.pdf
Webマガジンまなびと:「学び!と共生社会」Vol.29
Webマガジン:「学び!と共生社会」Vol.29 “国語からインクルーシブ教育を考える”を追加しました。
[ここに注目!]あらためて考える消費者教育と社会科
機関誌・教育情報:「社会科NAVI」Vol.31
機関誌・教育情報:「社会科NAVI(小・中学校 社会)」Vol.31 “[ここに注目!]あらためて考える消費者教育と社会科” を追加しました。
中美特設サイト更新
中学校美術の先生応援サイト「中美 チュービ」:「指導の悩みABC」先輩からのアドバイス vol.32 “【マンガ】研究会に参加して 後編”
を追加しました。
小学校 生活:「生き活きうぃーくる」第119回
生活科ブログ「子どもがかわる 授業がかわる『生き活きうぃーくる』」:第119回「生活科でのタブレット端末活用法」
を追加しました。
Webマガジンまなびと:「学び!とシネマ」Vol.195
Webマガジン:「学び!とシネマ」Vol.195 “【2作品紹介】イントロダクション / あなたの顔の前に”を追加しました。
【2作品紹介】イントロダクション / あなたの顔の前に
韓国のホン・サンス監督の映画が好きである。
どの作品も、格段、劇的な展開はない。何気ない日常の会話から、どのような人物なのかがうかがえ、ふと、それぞれの人生の一端が、垣間見える。呑んだり食べたりするシーンが多いが、ここでの会話や表情に、おおげさに言えば、「人生の真実」があるように思えるのだ。
そのホン・サンス監督の新作が2作品、同時公開される。「イントロダクション」と「あなたの顔の前に」(どちらもミモザフィルムズ配給)だ。
「イントロダクション」
© 2020. Jeonwonsa Film Co. All Rights Reserved
「イントロダクション」
© 2020. Jeonwonsa Film Co. All Rights Reserved 「イントロダクション」は、3つの短いエピソードからなる。
第1章。ソウルの韓方病院に、ヨンホ(シン・ソクホ)という若者がやってくる。院長の父親(キム・ヨンホ)に呼び出されたのだ。父親は、ある大物俳優(キ・ジュボン)の応対で忙しい。ヨンホは待っている間、幼なじみの看護師の女性と立ち話をする。
第2章。ヨンホの恋人ジュウォン(パク・ミソ)は、衣装デザインを学ぶために、いまベルリンにいる。ヨンホは、突然、ベルリンにやってくる。ヨンホはジュウォンに「なぜ、こんなところまで来たのか」と問う。「勉強よ」とジュウォン。「ぼくもここに来ようか」と言うヨンホ。ふたりは路上で抱き合う。
「イントロダクション」
© 2020. Jeonwonsa Film Co. All Rights Reserved 第3章。海に面したレストランで、ヨンホの母親(チョ・ユニ)と大物俳優が会っている。母親は、以前、ヨンホが俳優を志望していたことを知って、この席にヨンホを呼ぶ。ヨンホは、友人(ハ・ソングク)を誘って、レストランに向かう。大物俳優は、ヨンホが俳優を断念した理由を知って、突然、怒り出す。
たった、それだけの話である。注目すべきは、人物の仕草と会話、その表情である。観客は、いま現在と、この後どうなるかを、思わず想像してしまう。
人生は、なかなか思い通りにはいかないし、経済的に恵まれていても幸せとは限らない。映画は、多くの余韻を残して、終わる。
「あなたの顔の前に」
© 2021. Jeonwonsa Film Co. All Rights Reserved
「あなたの顔の前に」
© 2021. Jeonwonsa Film Co. All Rights Reserved 「あなたの顔の前に」の主人公は、元は女優で、いまはアメリカに住むサンオク(イ・へヨン)だ。このサンオクが突然、韓国に戻ってくる。
サンオクは、長く疎遠だった妹のジョンオク(チュ・ユニ)のマンションに厄介になっている。姉妹はカフェに出かける。「なぜ帰ってきたのか」と訊くジョンオクに、「ただ会いたくて」とサンオク。
ふたりは、公園を散歩する。「俳優さん?」と声をかけられるサンオク。
ジョンオクの息子スンウォン(シン・ソクホ)が開いているトッポッキの店に立ち寄る。スンウォンは留守で、店を出るふたり。戻ってきたスンウォンは、ふたりを追いかけ、伯母のサンオクに財布をプレゼントする。
サンオクは、幼いころに住んでいた家を訪ねる。緑いっぱいの庭は残っていたが、住居はもうなくなっていて、洒落たお店になっている。
「あなたの顔の前に」
© 2021. Jeonwonsa Film Co. All Rights Reserved 会ったことのない映画監督ソン・ジェウォン(クォン・ヘヒョ)の誘いで、サンオクは監督の指定した居酒屋に向かう。店主は留守で、鍵を預かった監督は、近くの中華料理店から出前をとり、ふたりは強い酒を呑む。監督は、若い頃から、サンオクのファンで、短編映画を作る旅に出ないかと口説く。やがて監督は、サンオクのある秘密を知ることになる。
ただそれだけの、サンオクのたった1日の出来事が、淡々と描かれる。タイトルの意味は本編で明かされるが、絶妙のタイトルと思う。
これまた、どのエピソードも深い余韻を残す。観客は、かならず、いろいろと想像をめぐらすはずである。そういうふうに、巧みに編集されている。
いわば、映像と映像のあいだに、そして映像の裏に、とても雄弁なセリフと深いドラマがあるのだ。なにより、人間のさまざまな感情が、くっきり浮かびあがる。そして、おおげさに言えば、「人間って何か」を問いかけてくる。
どちらも脚本、撮影、音楽、編集を担当したのは、監督のホン・サンスである。恐るべき才人である。俳優陣は、多くが演劇の経験者で、映画出演のキャリアが豊富。巧いなあと感心するのは、「あなたの顔の前に」で映画監督に扮したクォン・ヘヒョだ。ホン・サンス作品に多く出ていて、イザベル・ユペールと共演した「三人のアンヌ」での演技は圧巻だった。
韓国の映画に限らず、映画は「人間を学ぶ」教科書と思っている。ぜひ、ホン・サンスの映画から、多くを学んでいただきたい。
2022年6月24日(金)より、ヒューマントラストシネマ有楽町
、新宿シネマカリテ
、アップリンク吉祥寺
ほか全国順次公開
■『イントロダクション』『あなたの顔の前に』公式Webサイト
監督・脚本・撮影・編集・音楽:ホン・サンス
出演:シン・ソクホ、パク・ミソ、キム・ヨンホ、イェ・ジウォン、ソ・ヨンファ、キム・ミニ、チョ・ユニ、ハ・ソングク
2020年/韓国/韓国語/66分/モノクロ/1.78:1/モノラル
原題:인트로덕션 英題:Introduction 字幕:根本理恵
配給:ミモザフィルムズ
監督・脚本・製作・撮影・編集・音楽:ホン・サンス
出演:イ・ヘヨン、チョ・ユニ、クォン・ヘヒョ、シン・ソクホ、キム・セビョク、ハ・ソングク、ソ・ヨンファ、イ・ユンミ、カン・イソ、キム・シハ
2021年/韓国/韓国語/85分/カラー/1.78:1/モノラル
原題:당신 얼굴 앞에서 英題:In Front of Your Face 字幕:根本理恵
配給:ミモザフィルムズ









