テート美術館展 光 ― ターナー、印象派から現代へ

ジョン・ブレット《ドーセットシャーの崖から見るイギリス海峡》1871年 Photo: Tate 大阪中之島美術館は、大阪に関わりのある近現代美術をはじめ、日本と海外の近現代美術およびデザイン作品を数多く取り扱う美術館です。今回は主任学芸員の國井綾さんに、開催中の「テート美術館展 光 ― ターナー、印象派から現代へ」の見どころや、大阪中之島美術館で行われているイベントなどについてお話を伺いました。

――テート美術館展では、テート美術館に収蔵されている古今東西のさまざまな作品を見ることができます。絵画彫刻だけでなく、インスタレーション作品なども鑑賞できる展覧会ですが、展示のテーマや特徴について教えてください。

國井:本展覧会は「光」をテーマとしています。18世紀末から現代まで、約200年の間にアーティストたちが光をどのように描き、扱ってきたのか。テート美術館のおよそ77,000点におよぶ充実したコレクションから、絵画、版画、写真、彫刻、インスタレーションなど多様な形態の作品約120点でご紹介しています。
 ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナー、ジョン・コンスタブルなどの英国近代美術史を代表する画家から、クロード・モネら印象派、ラファエル前派、バウハウス、そしてジェームズ・タレルやオラファー・エリアソンなどの現代美術家まで幅広く出品しています。アーティストによって光の扱いは実に様々。約200年の間に光をめぐる表現がどのように変遷してきたのかをめぐる展覧会です。

ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナー《湖に沈む夕日》1840年頃 Photo: Tate

――教科書ではクロード・モネの《積みわら 夏の終わり 朝の効果》や、《明るい日光の中の積みわら》を通して、光源の方向や光の色の変化について紹介しています。テート展でもモネの《エプト川のポプラ並木》を公開しています。テート展では《エプト川のポプラ並木》をどのように紹介していますか?作品の魅力と共に教えてください。

國井:モネは光の効果をとらえるために、異なる光の条件下で同じ主題を何度も描いています。《エプト川のポプラ並木》はエプト川に沿って並ぶ木々の列を描いた23点から成るシリーズのうちのひとつで、描き続けるために、モネはこれらの木々の伐採を自ら費用を負担して阻止したといわれています。素早い筆致で、明るい光の下に照らされた生命感あふれるポプラ並木が描き出されています。

クロード・モネ《エプト川のポプラ並木》1891年 Photo: Tate

――大阪中之島美術館では、展覧会に応じて様々な市民参加型イベントを行っています。特に力を入れて行っているイベントがあれば教えてください。

國井:私たちのまわりにある様々な「光」について、科学とアートの二つの視点から学び、楽しむ「大阪市立科学館×大阪中之島美術館  『光』を見る・知る・感じるツアー」を開催しました。大阪市立科学館と大阪中之島美術館、双方の学芸員が講師をつとめ、サイエンスショーとギャラリーツアーを実施しました。
 大阪市立科学館と大阪中之島美術館は、いずれも地方独立行政法人大阪市博物館機構に属するミュージアムです。お向かいに位置することから日ごろから様々な事業でコラボレーションしています。今回の展覧会は「光」をテーマとしていることから、美術的な視点からのアプローチだけでなく、科学的なアプローチが可能ということで、今回のコラボレーションにつながりました。

展覧会情報

■「テート美術館展 光 ― ターナー、印象派から現代へ」
会期:2023年10月26日(木)~2024年1月14日(日)
会場:大阪中之島美術館 5階展示室
公式サイト:https://tate2023.exhn.jp/
問い合わせ:06-4301-7285(大阪市総合コールセンター 受付時間8時~21時 年中無休)
休館日:月曜日(1/8は開館)、12/31、1/1
開場時間:10時~17時(展示室入場は閉場の30分前まで)
観覧料:一般2100円  高大生1500円  小中生500円

【関連作品 教科書掲載情報】

  • 令和4年度版「高校生の美術1」p22.
    積みわら 夏の終わり 朝の効果[油彩・キャンヴァス/60×100cm]
    1890~91 オルセー美術館蔵[フランス]
  • 令和4年度版「高校生の美術1」p23.
    明るい日光の中の積みわら[油彩・キャンヴァス/58.4×96.5cm]
    1890~91 ヒルステッド美術館蔵[アメリカ]

Webマガジンまなびと:「学び!とPBL」Vol.69

Webマガジン:「学び!とPBL」Vol.69 “コロナ禍!それでも動き出す生徒たち、同僚たち(中学校でPBL③)”を追加しました。

コロナ禍!それでも動き出す生徒たち、同僚たち(中学校でPBL③)

 中学校における探究活動の実践を、前回に引き続き、福井市森田中学校(以下、森田中学校)の木下慶之先生の取り組みを通して見ていきましょう。木下先生は、森田中学校2年目にして、コロナ禍に見舞われてしまいます。

1.休校中でもみんなのためにできること

図1 福井ラウンドテーブル Zone D 授業研究のフォーラム中高分科会 2020/2/15 2020年2月に福井大学で開催された福井ラウンドテーブル(*1)では、森田中学校の教育実践研究を研究主任や同僚たちと発信し、参加者との交流を通して、これからの新たな実践の展望を見出す機会を得ることができました。
 ところが、コロナ禍が始まります。コロナ禍で学校は2020年3月から一斉臨時休校となり、教師と生徒たちの探究は止まってしまいました。インターネットを通じて様々なコロナ対策や制限下の先進的な取り組み、創造的な発想を見聞きすることはできても、自分の学校では実践できず、何もできないもどかしさと、何とも言い表せない無力感ばかり感じていました。2020年4月から、初めての学年主任(第2学年)になります。
 あるとき、研究推進委員のメンバーや管理職と相談し、学習支援ホームページ(Google siteを活用)を作成することにしました。「オンライン森田中学校 森田未来プロジェクト」と名付け、教師からの自宅学習用の教材紹介や、実践の記録、交流のページまで発想はふくらみました(学校祭の映像などもパスワード付きで視聴可)。
図2 オンライン森田中学校のHP(現在はedumapのHPに移行)(*2) 一方向ではなく、少しでも生徒たちの声を聴こうと、アンケート付きの通信の配付を試み、課題とともに回収しました。すると、生徒たちの学びに対する意欲や問題意識を知ることができ、これによって「こんな状況であっても、何かできることがあるのでは?」という思いが、教師たちに沸き起こりました。

2.「森田推し隊プロジェクト」の発意

 5月になっても学校はまだ休校のままでしたが、生徒たちから「休校中だけど、みんなで何かに挑戦したい」という声がアンケートを通して学校に届いていました。
 総合的な学習の時間を担当する教師が、「自宅にいながらできる程度で、自分たちが住む場所の近くの施設やお店、公園などを調べて、その魅力を発信する活動を生徒たちにさせてみませんか?」と、「森田推し隊プロジェクト」というプロジェクト型学習の企画を提案してきました。
 他の担任教師たちも、「よし、やってみよう!」と、すぐに活動オリエンテーション動画を撮影し、学校ホームページを通して生徒たちに「森田推し隊プロジェクト」を提案しました。

図3 総合的な学習の時間「森田推し隊プロジェクト」のオンラインオリエンテーション図4 マイリサーチ・ユアリサーチの学級内での報告会

 6月になってようやく学校が再開しました。生徒たちは休校中に調査してきた内容をポスターにまとめ、まずは学級内で「マイリサーチ・ユアリサーチ」活動として、調査報告や交流をしていきました。
 さらに7月には地区ごとにチームを編成し直し、小グループごとに夏休み期間を利用して校外調査活動に取り組むことになりました。

図5 夏休み中のフィールドワーク

 生徒による実行委員会も結成され、合計20数名の委員が休み時間などを利用し、打ち合わせを重ね活動を運営しました。教師たちは彼らの活動を丁寧に見ながら、サポートやアドバイスをすることにしました。実行委員長たちは8月に開催されたISIF2020(生徒国際イノベーションフォーラム)(*3)にオンライン参加し、他校でのプロジェクト型学習の取り組みを学びました。

図6 生徒たちによる森田推し隊プロジェクト実行委員の会議図7 ISIF2020(生徒国際イノベーションフォーラム)にオンライン参加

 実行委員は、学年のみんなが参画できるように、表現方法も動画やものづくり、ダンスなど、多様な方法を提案しました。
 文化祭では、体育館ステージで全校生徒に対して、これまでのプロジェクトのプロセスを劇形式で報告し、その後教室8教室に分かれて、分科会形式でプロジェクト報告会を行いました。

図8 学年掲示板に作成された森田推し隊マップ図9 森田推し隊のロゴも生徒たちによってつくられ、掲示物や資料などに使用されました

 この報告を通して、さらなる探究への思いが生徒の中に生まれました。「もっと地域のことを知りたい。まだ知らないことや実際に体験していないことばかりだ。」そのようなときに、彼らに新たなチャンスが訪れます。



図10 文化祭での全体ステージ発表とその後の分科会発表

3.「もりたシャルソン」を中学生版で復活

 森田地区の地域の方から、「中学生版もりたシャルソンをやってみませんか?」と連絡が入りました。「シャルソン」とは、タイムを競うマラソンではなく、経験を競い合う「ソーシャルマラソン」の略称です(*4)。今年度はコロナ禍により中止になっていましたが、中学生が地域に関する探究活動を行っていることが地域で話題になり、「中学生で、もりたシャルソンを復活させては」と、生徒たちに誘いが来たのです。

 実行委員の生徒たちに伝えると、「やりましょう!」と即答しました。

図11 子どもたちが作成したシャルソン旗図12 もりたシャルソンGUIDE MAP

 こうして、「もりたシャルソン」と「森田推し隊プロジェクト」のコラボ企画が始まりました。生徒たちは、文化祭の発表で作成した店舗や施設を紹介したリーフレットをもとに、もりたシャルソンのツアーマップを作成しました。活動計画表をチームごと(全24チーム)に作成し、当日を迎えました。
図13 「もりたシャルソン2020×森田推し隊プロジェクト」の発表の様子
 移動手段は、徒歩と地域コミュティバスです。当日はあいにくの雨天でしたが、生徒たちは約6時間のもりたシャルソンを成功させました。

 タブレット端末で飲食店の様子や風景、インタビューなどを撮影し、ゴール後には短編動画や自分たちの経験をまとめたポスターを作成しました。実行委員は1週間かけてそれらに目を通して、後日各チームに賞状を授与し、全員でその成果を視聴し合い、認め合いました。テレビ局や新聞社の取材も受け、彼らの活動が地域に発信されるチャンスにもなりました。
 様々な方に携わってもらえることによって、当初は思ってもみなかった活動へと発展したのです。

図14 もりたシャルソン2020の様子

図15 もりたシャルソン2020 各グループのツアーポスター

図16 もりたシャルソンの様子と生徒玄関でのゴールシーン 実行委員の生徒たちは表彰式を企画し、「よいタイムを出したチームとか、たくさんポイントをとったチームだけでなく、すべてのチームに賞をつけましょう!」と提案がなされました。教師は「どれだけ地域の名所や店舗を訪問したか」、「公共交通機関をうまく活用できたか」などで数値化し、上位数チームを表彰しようかと考えていたのですが、生徒たちは撮影した写真や動画、さらに活動報告ポスターなど、チームごとにそれぞれの良さを評価し、賞を与えたいと考えるようになりました。単純な指標だけで「数チームだけを評価するのではもったいない」とのことでした。実行委員と彼らをサポートする教師らは、昼休みなどを利用し、ポスターや動画などを審査し、「インスタ映え賞」や「たくさん歩いたで賞」などの賞を設定しました。1週間後の総合的な学習の時間に体育館に学年全員が集い、各クラス代表の動画を視聴後、実行委員からすべての班に賞状が授与されました。
 森田推し隊実行委員長の生徒は次のように振り返りました。
図17 生徒たちが企画した「もりたシャルソン」表彰式 「今回のもりたシャルソンを通して、森田の良さについて知ることができました。一つ目は人の良さです。あいさつしたら返してくださるし、質問したら丁寧に答えてくださいました。すごく良い気分で過ごすことができました。二つ目はお店の良さです。お菓子屋さんや、飲食店の方の対応が良く、優しい方ばかりで、安心して食事をすることができました。このように、森田の良いところを発見できて、2年生にとってとても良い経験になりました。」

*1:福井大学連合教職大学院と実践研究福井ラウンドテーブル
https://www.fu-edu.net/
*2:edumapホームページ
https://morita-jhs.edumap.jp/
*3:ISIF(生徒国際イノベーションフォーラム)2020 学び!とPBL <Vol.54>
https://www.nichibun-g.co.jp/data/web-magazine/manabito/pbl/pbl054/
*4:もりたシャルソン
https://www.facebook.com/MoritaCialthon

令和6年度版 小学校教科書のご案内:道徳資料ダウンロード「各教科等との関連表(道徳教育の全体計画〔別葉〕)」

「令和6年度版 小学校教科書のご案内」特設サイト:道徳の資料ダウンロードに「各教科等との関連表(道徳教育の全体計画〔別葉〕)/月別」を追加しました。