伊那市立伊那小学校 第45回 公開学習指導研究会を追加しました。
月別アーカイブ: 2023年12月
機関誌・教育情報:社会科NAVIプラス 中学社会⑭
機関誌・教育情報:「社会科NAVIプラス」中学社会⑭ “SDGsにかかわる小学校から中学校への学習の連続性” を追加しました。
SDGsにかかわる小学校から中学校への学習の連続性
Webマガジンまなびと:「学び!とESD」Vol.48
ESDと気候変動教育(その16) 若者の力が実を結ぶ時 ―英国‘Teach the Future’から学べること
Climate Education Billの始動
前号の学び!とESD <Vol.47>で「若者の力」の例として再び紹介した英国のボランティア組織である‘Teach the Future’(未来を教える)の活動が、いよいよ花を開かせようとしています。’Climate Education Bill’(気候教育法案)の誕生です。彼らが英国議会で最年少の現職議員である労働党のNadia Whittome(ナディア・ウィトーム)と共同で作成したこの法案は、2021-22年会期での成立は見送られるも、2022-23年会期はウィトーム議員が所属する労働党の政策プログラムの草案に盛り込まれ、2023年10月に再び成立を目指して歩き始めています。
しかしながら、彼らの活動は法案の作成に止まりません。法案の成立を目指して、彼らはさらなる政治へのプレッシャーをかける活動を続けています。それは署名活動だけではなく、彼らの求めるカリキュラム改革を次の国政総選挙で「労働党のマニュフェストに盛り込む」という、社会にインパクトを与えようとするものです。直接国会議員にメールを送るテンプレートを提供するなど、具体的なアクションをおこなっています。
困難な時でも
そんな彼らの活動ですが、組織設立からのこの4年間は、決して順調とは言えませんでした。2020年の年明けに始まった新型コロナウィルス蔓延による世界的なパンデミックにより、彼らは自分たちの活動拠点である「学校」という場所を失ってしまったのです。
2020年3月、活動開始たった5ヶ月でその動きを止めなければならなくなった彼らのブログには、「今は政府に影響を与える時ではないが、その時はすぐにやってくる」という決意表明が載せられました。そしてその活動休止期間においても、組織の再編成をおこない、時間を有効に活用するとした目標を立てています。
実際に彼らは、パンデミックと共に歩んだ2020年の1年間だけでも多くの足跡を残しました。すでにコロナ禍直前に100人の国会議員を招いたレセプションにおいて、史上初の子どもによる法案‘English Climate Emergency Education’(英国気候緊急教育法)を発表していましたが、彼らはその後すぐに英国全土で教育のためのグリーン・リカバリー・キャンペーンを展開し、実現のために専門家から適格なアドバイスを受けるためのアダルト・アドバイザリー・ボードを設立して毎月会合を開きました。こうした年間を通じたロビー活動や政治参加だけではなく、国際的な連携を求めたワーキンググループの活動を推進し、グレタ・トゥーンベリさんが発端となって開始された’Fridays For Future‘(未来のための金曜日)のヨーロッパ気候教育フォーラム活動のステーク・ホルダーとしての活動もおこなっています。とてもあの未曽有のパンデミック下における活動内容とは思えない程、目を見張る動きでした。
周囲の反応
果たして彼らの活動に対する周囲の反応とは、どういうものなのでしょうか。彼らは実際に周囲からよく受ける反応や質問を「問答集」という形でまとめています。
「費用がかかりすぎる」
「時間がかかりすぎる」
「気候に関する教育はもうすでにおこなわれている」
「それほど(気候変動は)悪いことではない」
「実際の脱炭素化に資金を投入すべきではないのか」
「傷口に絆創膏を貼るようなものだろう」
「気候変動は現実ではない」
「子どもを脅す気か!!」
「気候変動教育に関心がないし、若者は投票に行かないだろう」
「教師は、通常の責任に加えてこのようなことを学ぶ時間はない」
「生活や経済危機の中で、優先事項ではない」
「(気候変動教育は)親の役目であり、教師の仕事ではない」
これらはほぼ間違いなく「大人たち」からの反応でしょう。それに対して彼らは「端的・知的に答えます」と一つ一つに適切に回答しています。ですが、「気候変動は現実ではない」とした質問に対しては、「バーイ!(説得不可能な人たちに対して使うエネルギーはもったいないです)」と門前払いです。本来でしたら、彼ら子どもの立場から言いたい本音がもっとあるのかもしれません。
未来は誰のものか
「どうやって直すのかわからないものを、こわしつづけるのはもうやめてください」-1992年「子どもが環境サミットに行くなんて」という大人たちの反対にもめげず、仲間たちと遥々ブラジルを訪れて世界に訴えた少女の不満と、‘Teach the Future’の若者たちがもっているそれは、30年以上経った今もまったく変わっていません。むしろ環境的な状況は悪化し、若者がもつエコ不安は増大してしまいました。
「現在を生きている世代は、未来を生きる世代の生存可能性に対して責任がある」という世代間倫理は、環境倫理学における重要なテーマです。ですが、そのような難題の解決以前に必要なことは、「私たちは彼ら若者が今発している声に、同等な立場から真剣に耳を傾けることができるのか」という態度ではないでしょうか。
本法案のステータスは、現在‘First Reading’(第一読会)(*1)を経ており、その状態は英国議会ホームページで閲覧することも可能です(*2)。審議の進捗を表すボタンが進み、「Royal Assent」(国王裁可)(*3)にチェックが付く日を心待ちにしながら、それを確実にするための活動を継続している若者たちがいます。この先法案がステージをどんどんクリアし、若者の力が実を結ぶ時-そこにあるのは「冷やかしの声」などではなく、「称賛の声」であって欲しいと願っています。
*1:英国議会における立法手続過程の一段階目
*2:英国議会ホームページ
https://bills.parliament.uk/bills/3405
*3:議会を通過した法案に対する国王の形式的裁可
【参考文献】
- セヴァン カリス=スズキ(2003年)『あなたが世界を変える日-12歳の少女が環境サミットで語った伝説のスピーチ』学陽書房
- 吉永明弘、寺本剛、編(2020年)『環境倫理学』昭和堂
- Climate Education Bill
https://publications.parliament.uk/pa/bills/cbill/58-02/0197/210197.pdf
- Teach the Futureホームページ
https://www.teachthefuture.uk/
- Teach the Futureブログ ‘Debate Sheet’(問答集)
https://www.teachthefuture.uk/blog/we-are-prepared-with-answers-to-your-questions-on-climate-education
- The Ecologist onlineホームページ
https://theecologist.org/2021/nov/25/pupils-present-climate-education-bill
北海道教育大学附属札幌小学校 令和5年度 冬季授業研究会
北海道教育大学附属札幌小学校 令和5年度 冬季授業研究会を追加しました。
第102回 愛媛教育研究大会(幼稚園・小学校の部)
第102回 愛媛教育研究大会(幼稚園・小学校の部)を追加しました。
Webマガジンまなびと:「学び!と社会」Vol.19
Webマガジン:「学び!と社会」Vol.19 “小学校社会科×小学校図画工作科コラボ企画 ~横浜を歩く~” を追加しました。
Webマガジンまなびと:「学び!と美術」Vol.136
小学校社会科×小学校図画工作科コラボ企画 ~横浜を歩く~
コラボ企画に参加
群馬大学の市川寛也先生率いる小図の「そぞろみ部」の活動。「そぞろみ」とは、まちのなかで出会った風景や建物、オブジェなどについて、「これは何だろう。」「〇〇に見える(似ている)。」「デザインや色づかいが面白い。」など、それぞれ思ったことや考えたことを対話しながら歩くこと。想像力を働かせながら、対話しながら対象を見ていくことで、互いの感性が研ぎ澄まされていくこの活動は、小学校図工で大切にしている「造形的な見方や考え方」につながる魅力あふれる活動だ。
そのような「そぞろみ部」の活動に同行させていただくことになった今回の企画。テーマは、図工と社会科の「見方や考え方」にどのような共通点や相違点があるのか、小学校社会科の視点でまちを「そぞろみる」のならば、どのような事象に着目するのか……という具合である。
先にも述べたように、「そぞろみ部」の活動に魅力を感じた私は、当日をとても楽しみにしていた。テーマ検証が興味深かったことも理由の一つだが、「みなとまち横浜」が今回の「そぞろみ」の舞台だったことももう一つの理由だ。以前、5年間ほど、横浜に勤めていたこともあり、勝手ながらもこの企画にご縁を感じていた。
図工と社会科の共通点や相違点とは…実際に歩いてみると
とはいえ、「そぞろみ部」の活動は初めて。改めて考えてみると、社会科として「そぞろみて歩く」という活動は、3年生の地域学習「まちたんけん」に近いものを感じる。子どもたちがフィールドワークに出かけ、そのなかで不思議に思った事象(モノ・コト・ヒト)をあれこれ発見していく。子どもの疑問一つひとつが追究テーマにダイレクトに発展できる魅力ある学習である。私がファーストインプレッションで「そぞろみ部」に興味を持った所以は、この「フィールドワーク」という共通点だったのかもしれない。
そんなことを考えながら、舞台の横浜へ。みなとみらい線「馬車道駅」で下車。そこから、市川先生と合流し、一同、「海」をめざしてゆっくり歩きはじめる。
私の目に真っ先に入ってきたのは、県庁などをはじめとしたレンガ造りの建物。横浜開港当時の歴史を感じることができるこれらの建物は、港まち横浜の象徴と言えるものだろう。また、街灯には当時のガス灯を彷彿させるデザインが施され、街全体の景観が統一されている感じがした。ところが、そのころ、市川先生は、「これは何でしょうね。」と言いながら、建物の壁から突き出た「小さな輪」に着目。それから、交差点にあるボラード(車止め)の形やデザインについて「どうしてこんな形なのか。」と考え始める。さらには、ビルの壁面に規則的に並ぶエアコンの室外機にも目を向ける……。歩き始めてまだ5分。早くも「そぞろみ」に対する図工と社会科の向き合い方の違いを目の当たりにし、衝撃を受けることに。
しかし、考えてみれば至極当然。社会的事象の見方・考え方と造形的な見方・考え方はそれぞれ違うからだ。社会科は、目の前にある事実をもとに歴史や事象の相互関係について、比較や関連づけをおこなうことを主とする。それに対し、造形的な見方・考え方は、色や形について感性や想像力を働かせることが念頭にあるからだ。図工の面白さの中心ともいえる部分なのではないか。市川先生の発見から、教科特有の違いに気づかせていただいたと同時に、先生のような柔軟な見方をしてみたいと痛切に感じた時間だった。
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(引用「小学校学習指導要領(平成29年告示) |
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(引用「小学校学習指導要領(平成29年告示) |
「そぞろみ」でまちが見えてくる
しばらく歩いていくと、海ぞいから離れた街頭に船を留める「係船柱」を発見。市川先生は、その形や素材の違いに興味を感じたようだった。先生とお話をしているうちに、「どうして、まちのなかに船を留めておくものがあるのだろうか。」という疑問が浮かぶ。しかも、海に近づくにつれ、その「係船柱」の素材や形は近代的で新しいもの変化していく……。ここで、ようやく気がつく。古い「係船柱」があったところが、昔(おそらく明治時代)の横浜の港があった場所(沿岸)であり、そこから次第に沿岸部を拡張しているということである。何気なく目に留めたものが横浜の沿岸部の歴史を知る手がかりになるとは……。貴重な史跡との出会いとなった。
さらに、目的地の海へどんどん足を進めていくと、出発した馬車道の街並みとは異なった新しい建物が増えてきた。この様子からも、港湾拡張をしてきた横浜の歴史とまちの特徴を知ることができた。
気になった「ヒト・モノ・コト」
交差点の眼下に円を描くようにして歩くことができる歩道橋。歩行者は歩道橋を歩くことで、危険な道路横断を避けることができ、また、自動車の渋滞解消にもつながる。市民・観光客と交通量のお互いの利便性を考えた横浜のまちづくりの特徴が見えてくる。6年生の政治学習で活用できるか……。
国際都市横浜を代表する施設。この写真では確認しづらいが、「イギリス」「日本」「サンフランシスコ」「ブラジル」の時刻が表示されている。これを見ると、日本とブラジルの時差がちょうど12時間だということがわかる。5年生の学習に活用できそうだ……。
すがすがしい海風を感じ、折り返しとなる赤レンガ倉庫前で見つけたのは、旧税関の跡地を利用したガーデンだった。旧税関は、関東大震災の火災で焼失したものだったが、その跡地を活用しているのがとても珍しく感じた。先の「係船柱」にも共通して言えることだが、古いものを排除するのではなく、それらを活用しながら新しいものと融合していく、互いに共存を図ろうとする横浜のまちづくりのイズムを垣間見ることができた気がした。
ベイエリアから海を眺めると、真っ先に目に飛び込んでくる風力発電のプロペラ。この風力発電所は、2007(平成19)年に稼働。建設工事費の約5億円の半分以上は、一般の企業や市民による市場公募債で賄われ、事業運営費は、売電収益と「ハマウィングサポーター」と呼ばれる、風力発電事業に賛同する企業や市民の協賛金で運営されている。
行政と企業、市民が協働して再生可能エネルギーの普及啓発を進めるこの取り組みは、横浜市政の新しいシンボル的な役割を担っているといえるだろう。
(横浜市環境創造局HPより一部引用)
「そぞろみ」を終えて
以上のように、私が「そぞろみ歩き」をすると、出会ったものの背景を探ろうとする傾向があることが分かった。出会った「ヒト・モノ・コト」について、
「いつ(できたのか?/やってきたのか?/始まったのか)」
「だれが(つくったのか?/始めたのか?/考えたのか?)」
「どうして(何のために?/意図や効果は?/背景にどんな問題があるのか?)」
などについて、具体的な事実を突き止めたくなる。これは、図工の「造形的な見方・考え方」と違う面ではないだろうか。
対話しながら、さまざまなまちの様子を知ることができる「そぞろみ歩き」。図工と社会科の見方や考え方の違いはあったが、学習をデザインする視点で考えると、子どもたちが「疑問」や「興味・関心」をもつことができる題材を見つけるという点においては、共通する部分がたくさんあった。「自分のまちをそぞろみると、どうなるかな。」と、新たな発見をしていきたいと強く思えた一日となった。
◆今回の「学び!と社会」は、初の試みとして「学び!と美術 」とコラボレーション企画をしています。社会科の見方と図工科の見方を比べて楽しんでください。
「学び!と美術 <Vol.136>」へはこちらから。

神奈川県秦野市立本町小学校 総括教諭 第6学年社会科担当
趣味:アウトドア、キャンプ、旅行など、浅く広く……







