ガウディとサグラダ・ファミリア展

サグラダ・ファミリア聖堂、2023年1月撮影
© Fundació Junta Constructora del Temple Expiatori de la Sagrada Família
 名古屋市美術館は伊勢湾周辺地帯の「郷土の美術」をはじめ、近現代の様々な美術を取り扱う美術館です。今回は「ガウディとサグラダ・ファミリア展」を担当した学芸員の久保田舞美さんに展覧会の魅力や、名古屋市美術館の活動についてお話を伺いました。

――教科書ではガウディが土地の風土や自然の造形を参考にし、様々なデザインに用いたことを含め、ガウディの造形の特徴を紹介しています。ガウディとサグラダ・ファミリア展の注目のポイントを教えて下さい。

久保田:ガウディ建築の面白いところは、自然の造形を家具やドアノブなどの装飾のデザインに取り入れただけでなく、建物の構造にも応用しているところです。ガウディは、自然に逆らわない形こそが、美しく、また建物としても安定した構造になると考えました。本展では、ガウディが自然をどのように建築へ取り入れようとしたのかを、その試行錯誤の跡が見える実験模型などを展示しながら紹介しています。

サグラダ・ファミリア聖堂内観
© Fundació Junta Constructora del Temple Expiatori de la Sagrada Família

――ガウディとサグラダ・ファミリア展では、サグラダ・ファミリア聖堂に焦点をあてた展示を行っています。建築をテーマとした展覧会において、どのような見せ方の工夫を行っているのか教えてください。

久保田:建築をテーマにした展覧会では、建物をそのまま持ってきて展示することはできないため、実験模型や図面の展示が多くなります。それらを文字で説明することも必要ですが、写真や映像、展示室の空間デザインなど、視覚的に理解しやすい媒体を織り交ぜながら、単調にならない立体的な展示となるよう工夫しています。

《サグラダ・ファミリア聖堂、身廊部模型》2001-02年、制作: サグラダ・ファミリア聖堂模型室、西武文理大学
©西武文理大学/photo: 後藤真樹

――名古屋市美術館では、全国に先駆けてアートカードを学校に貸し出すなど、多様な取り組みを数多く行っています。最近の活動の中で高校生に特に紹介したいことは何ですか?理由と共に教えてください。

久保田:「高校生サポーター」制度を利用すると、会費2,000円で特別展に年4回入場でき、常設展が見放題になります。この特典は、1人で4つの特別展を見るかわりに、高校生の友人と一緒に2人で2つの特別展を見る、という使い方もできます。気に入った展覧会を2回以上見に行く人や、ふだん友人と美術館に行く人にぴったりですので、ぜひ活用してください。

展覧会情報

■「ガウディとサグラダ・ファミリア展」
会期:2023年12月19日(火)~2024年3月10日(日)
会場:名古屋市美術館
公式サイト:https://gaudi2023-24.jp/
問い合わせ:052-212-0001
休館日:月曜日(1月8日[月・祝]、2月12日[月・休]は開館)
開場時間:9時30分~17時、2月23日を除く金曜日は20時まで(入場は閉館の30分前まで)
観覧料:一般1800円 大学・高校生1000円 中学生以下無料

【関連作品 教科書掲載情報】

  • 令和4年度版「高校生の美術1」p90-91.
    作家探究 アントニ・ガウディ

Webマガジンまなびと:「学び!とESD」Vol.50

Webマガジン:「学び!とESD」Vol.50 “「ユネスコ教育勧告」の誕生(その1)”を追加しました。

「ユネスコ教育勧告」の誕生(その1)

 世界中で目指されるべき学習の目標や向かうべき教育の方向性が示された勧告、いわばお墨付きの「提言集」があることをご存じでしょうか。ユネスコが1974年に採択した通称「国際教育勧告」もしくは「1974年勧告」(正式名称「国際理解、国際協力及び国際平和のための教育並びに人権及び基本的自由についての教育に関する勧告」)はそのように呼べる希少な国際文書でした。
 昨年11月、第42回ユネスコ総会での総意としてこの勧告が半世紀ぶりに改定され、「平和と人権、国際理解、協力、基本的自由、グローバル・シチズンシップ、持続可能な開発のための教育に関する勧告」(以下、「ユネスコ教育勧告」と略)という新たな名称のもとに生まれ変わりました(*1)
 50年前に採択された「国際教育勧告」はユネスコ加盟国に共通する教育の課題や目指すべき目標となり、自国の教育を見直すチャンスを提供してきましたが、日本をはじめ、各国ではその真意を十全に活かすことは残念ながらままなりませんでした(*2)。それだけに新しい勧告に寄せられる期待は少なくないと言えます。
 上記のタイトルを見ると、「グローバル・シチズンシップ」等のほか、「持続可能な開発のための教育」、つまりESDが新たに加えられていることが分かります。これらが挑む課題は50年前は現代ほど深刻ではありませんでしたが、現在では全てのユネスコ加盟国が優先的に重んじるべき教育領域になったと言えます。また、新たな勧告には「学び!とESD」Vol.31Vol.35で紹介した「教育の未来報告書」(2021年)と「教育変革サミット」(2022年)の知見を活かすように期待されていたことは特記に値するでしょう。
 なぜ50年もの時を経て改定されたのでしょう。その主たる理由は、現代社会特有の地球規模の課題である環境・気候変動問題、生物多様性の消失、感染症の蔓延、レイシズムやヘイトスピーチなどの暴力、格差、持続不可能な消費社会、AIに代表されるテクノロジーの急速な進展など、半世紀前には問題視されていなかった問題に対応するためです。たしかに、気候変動など、近年は誰もが意識するようになった地球規模の課題は半世紀前にはさほど問題視されておらず、「国際教育勧告」では環境問題はわずかな言及にとどまり、人権が前面に出されていました。
 「持続可能な開発」が略称のタイトルにまで含まれたことは、ESDが国連のフラグシップ事業となり、その後も10年間ほど普及の努力を途絶えさせなかった成果であると言えましょう。また、長年にわたり参照される勧告なので、しばらくの間、ESDは世界的な教育課題に挑んでいく立場の教育として位置づけられたとも言えます。
 最後になりますが、「ユネスコ教育勧告」の構成を見てみたいと思います。主な構成は次のとおりです。

  • 世界の共通課題
  • 国境を越えた「定義」の共有
  • 14の主導原則
  • 12の学習目標
  • 多岐にわたる行動領域
  • フォローアップ

 「世界の共通課題」は先に述べた地球規模の諸課題と重なり、人類存続の危機が意識されています。また、勧告の冒頭には重要な教育課題のキーワードの定義が明記されています。「教育」とは「奪うことのできない人権」であると明記され、さらに「平和」「国際理解」「平和の文化」「人権」「持続可能な開発のための教育」などが定義されています。ちなみにESDは「教育への変容的アプローチ」であり、「文化の多様性を尊重しつつ、現在及び将来世代にとって環境が生き生きとし、経済が活性化し、社会が公正になることを目指し、十分な情報に基づいた意思決定を行い、責任ある行動をとれるように学習者をエンパワーする」というESD for 2030(「学び!とESD」Vol.7, Vol.8, Vol.9)からの表現が定義として用いられています。
 「ユネスコ教育勧告」の採択から2か月が経ち、そのメッセージを広く届けるための冊子(図1)もユネスコから刊行されました(*3)。そこでは勧告の包摂性、つまり保育・幼児教育段階から高等教育、さらには生涯学習まで全ての教育・学習段階に適合されるべき提言であること、また学校教師や地域の活動家から政策策定者に至るまであらゆる教育関係者に関わる課題であることが具体的に描かれています。こうした資料に基づいて、次回は 勧告の「目玉」とも言える主導原則(ガイディング・プリンシプル)など、注目すべき特徴について説明したいと思います。

図1:「ユネスコ教育勧告」概説の冊子(表紙)
出典:UNESCO Digital Library

*1:採択された文書は次からダウンロードできます。
https://unesdoc.unesco.org/ark:/48223/pf0000386924?posInSet=1&queryId=88262d97-74b6-4100-bd33-8cc96a779989
*2:こうした見解を共有してきた研究は少なくありません(例えば次を参照)。市民社会及び政府の課題であると言えましょう。日本国際理解教育学会 研究・実践委員会『特定課題研究 21世紀の社会変容と国際理解教育(報告書)』2022年11月.
https://kokusairikai.com/wp-content/uploads/2022/12/f4520f9a00e78b7055cc62b121ad188e-1.pdf
*3:UNESCO (2024) The UNESCO Recommendation on Education for Peace, Human Rights and Sustainable Development: An Explainer.
https://unesdoc.unesco.org/ark:/48223/pf0000388330