道徳ことはじめ 第6号(学年共通)

今回のテーマは、「アクティブ・ラーニング」についてです!

最近、どんどん新しい言葉が出てきて、さっぱり分からないわ……。言葉だけが一人歩きしている気がする……。分からないのは、私だけかしら?

そんなことはありません。分かっている人もいれば、まだまだよく分からない人も多くいると思います。新しい言葉は、新鮮で影響力がありますが、しっかりその言葉の意味を理解していかないと、大事な本質を見失ってしまいます。ちょっとここで、アクティブ・ラーニングについて考えてみましょう。

文部科学省の用語集では、以下のように書かれてあります。

 教員による一方向的な講義形式の教育とは異なり、学修者の能動的な学修への参加を取り入れた教授・学習法の総称。学修者が能動的に学修することによって、認知的、倫理的、社会的能力、教養、知識、経験を含めた汎用的能力の育成を図る。発見学習、問題解決学習、体験学習、調査学習等が含まれるが、教室内でのグループ・ディスカッション、ディベート、グループ・ワーク等も有効なアクティブ・ラーニングの方法である。

いろいろな方法があるということです。小学校においては、もうすでにやっていることです。

*能動的とは……自分から他へ働きかけること ←自分から進んでという点では、自発的と同じように感じるが、他へ働きかけるというのが「能動的」

 この「アクティブ・ラーニング」という言葉は、日本では、大学教育から使われ始めたものです。

では、小学校では???
 文部科学大臣は,平成26年11月20日に中央教育審議会に対して、次期学習指導要領に関して検討を行うように諮問し、諮問文「初等中等教育における教育課程の基準等の在り方について(諮問)」2)では、「そのために必要な力を子どもたちに育むためには,「何を教えるか」という知識の質や量の改善はもちろんのこと,「どのように学ぶか」という,学びの質や深まりを重視することが必要であり,課題の発見と解決に向けて主体的・協働的に学ぶ学習(いわゆる「アクティブ・ラーニング」)や,そのための指導の方法等を充実させていく必要があります。」とあります。

アクティブ・ラーニングの視点は、①対話的②主体的で③深い学びの3つです。
特に「深い学び」こそが質の高い理解に不可欠 (文科省 学習指導要領改訂のポイントから)

道徳は、平成30年度から、「特別の教科 道徳」としてスタートしますが、道徳ではどのようにやっていくことがアクティブ・ラーニングになるのでしょうか?

道徳の時間(道徳科)の特質をふまえた授業をしっかりやっていくことがこの3つの視点のためには不可欠です。新しい言葉に惑わされ、何か新しいことをしなくてはいけないとか、方法論のみにはしってしまうと、「深い学び」にはなりません。

「道徳の特質」とは何ですか?

①計画的・発展的に指導する時間
……今クラスでこんなトラブルがあったから、道徳でどうにか解決しようという時間ではないということです。
②学校の教育活動全体で行う道徳教育を補充・深化・統合する時間
……道徳の時間(道徳科)は、道徳教育の「要」の時間です。道徳教育の中で育まれたものを土台として深めていく時間です。
③自己を見つめ、物事を多面的・多角的に考え、自己の生き方についての考えを深める時間
……自己を自分で見つめ、自己の生き方について教材(資料)や友達の意見から考えを深める時間です。ここが特にアクティブ・ラーニングの3つの視点そのものが入っています。
④道徳性を育てる時間
……道徳性を育てる時間であって、道徳的行為を実際に行ったり、体験したりする時間ではありません。

自己を見つめさせるためには……

価値理解
 内容項目を、人間としてよりよく生きる上で大切なことを理解する。

人間理解
 道徳的価値は大切であってもなかなか実現できない人間の弱さなども理解する。

他者理解
 道徳的価値を実現したり、実現できなかったりする場合の感じ方は一つではない、多様であることを前提として理解する。

 この3つの道徳的価値の理解を図るには,児童一人一人がこれらの理解を自分との関わりで捉えることが重要です。

まず、しっかり児童の心に響く教材を年間指導計画に基づいて選ぶことが大切です。人間は、目の前に起こる事象について、心に響いたものには無関心ではいれなくなります。自然と自分にあてはめて考えているものです。

 教材にもよりますが、導入では、価値への導入をしっかり行っていくことで児童はその時間に考えることが明確になり、自己を見つめやすくなります。
 展開前段で「自分ならどうしますか?」という発問をする時には、かなりの配慮を要します。自分の発言が、クラスの話し合いの中で議論になり、否定された場合、その児童が心を閉ざしてしまう危険性もあります。道徳の時間は、「よいと分かっていてもなかなかできない人間の弱さにも気付き、そこをよりよく生きるためにどうするべきか。」と自分の心と対話する時間です。多様な考え方や感じ方に触れ、児童一人一人が自己の生き方について考えを深めていけるようにすることが大切です。

道徳ことはじめ 第5号(学年共通)

今回のテーマは、「考える道徳」についてです!

 「特別の教科 道徳」の完全実施を目前にして、いろいろな情報が飛び交い、不安に思っている先生方も多いようです。

 小学校学習指導要領(一部改正)解説「特別の教科 道徳編」では、第1章総説、1 改訂の経緯、の中で、「道徳に係る教育課程の改善等について」の答申を受けてのことが書かれてあります。

 我が国の学校教育において道徳教育は,道徳の時間を要として学校の教育活動全体を通じて行うものとされてきた。これまで,学校や児童の実態などに基づき道徳教育の重点目標を設定し充実した指導を重ね,確固たる成果を上げている学校がある一方で,例えば,歴史的経緯に影響され,いまだに道徳教育そのものを忌避しがちな風潮 があること,他教科に比べて軽んじられていること,読み物の登場人物の心情理解のみに偏った形式的な指導が行われる例があることなど,多くの課題が指摘されている。 道徳教育は,児童の人格の基盤となる道徳性を養う重要な役割があることに鑑みれば,これらの実態も真摯に受け止めつつ,その改善・充実に取り組んでいく必要がある。

最近、未履修の問題がよく新聞に載るけれど、道徳も未履修と言われてもおかしくないと思うことも……。お説教の時間に変わったり、ちょっとテレビを見せたり、副読本を読んで終わったりしている。つい、おろそかになってしまっているなあ。

 こんなふうに思っている先生方もおられると思います。今回の改正では、まずは、今までつい他教科に比べて軽んじられていた「道徳の時間をしっかりやっていきましょう。」というのがスタートだということです。今までも、ここにも書いてあるように確固たる成果を上げている学校や先生もたくさんいらっしゃると思います。その先生方から言わせれば、

読み物教材の登場人物の心情を追って理解させているわけではない。道徳で使う教材は児童の心を映す鏡です。登場人物の心情を考えさせる中で、児童は自分の思いと重ねて考えているのです。要はねらいとする道徳的価値の内容を一人一人に考えさせているのです。

という意見も出てくるでしょう。でも、なかなか難しいのが現実です。一生懸命に教材提示を工夫したり発問を吟味したり、教材研究を重ねていらっしゃると思います。だからこそ、年間35時間(1年生は34時間)しかない道徳の時間の中で実践をし、児童と共に考えていくことが大切です。
 今まで道徳を研究してきた学校、また、道徳をコツコツと授業をされてきた先生たちは、今までも、1時間の授業の中で、児童にねらいとする道徳的価値について考えさせてきたと思います。「特別の教科 道徳」となってからも、今まで通りに児童が深く考えることができるように工夫されていくことが大切だと思います。

 今回の改正は,いじめの問題への対応の充実や発達の段階をより一層踏まえた体系的なもとする観点からの内容の改善,問題解決的な学習を取り入れるなどの指導方法の工夫を図ることなどを示したものである。このことにより,「特定の価値観を押し付けたり,主体性をもたず言われるままに行動するよう指導したりすることは,道徳教育が目指す方向の対極にあるものと言わなければならない」,「多様な価値観の,時に対立がある場合を含めて,誠実にそれらの価値に向き合い,道徳としての問題を考え続ける姿勢こそ道徳教育で養うべき基本的資質である」との答申を踏まえ,発達の段階に応じ,答えが一つではない道徳的な課題を一人一人の児童が自分自身の問題と捉え,向き合う「考える道徳」,「議論する道徳」へと転換を図るものである。

いじめの問題は、道徳の時間を1時間やったからと解決するとは限りません。道徳の時間ももちろん大切です。しかし、それだけでは解決しません。学校の教育活動全体を通じて行われる道徳教育の中で心を育んでいくことと両輪のように進めていくことが大切です。

 いじめが起こる背景には、様々な問題があります。誰もがいついじめる側になるか、いじめられる側になるか、傍観者になるか分かりません。「こうすればいじめは起きません。」などという方法論をみんなで話し合っても、それは一時的なものであって解決にはなりません。道徳でいう「問題解決的学習」を他の教科で実施するように考えてはいけません。道徳はあくまでも、「自己をみつめ」「自己の生き方について考える」時間です。友達の意見を聞きながら、「そういう気持ちも分かるなあ。」「僕は、そこまでは思えないなあ。」など自分と対話をしながら、自分なりに今の自分の見つめることが大切です。答えが一つではない道徳的な課題を一人一人の児童が自分自身の問題と捉え,向き合って考えていこうとすることにつながります。「どうすればよかったのでしょう。」と、方法論だけを問うような発問だけで進めると薄っぺらな考えだけで終わってしまう可能性もあるので、発問には留意していくことが大切だと思います。

議論できる子と議論が苦手な子もいます。議論が苦手な子は道徳の時間が嫌いになってしまわないか心配です。

 「議論する道徳」は、討論するのとは違います。今まで行ってきた話合いをさらに深めていくと考えた方がいいと思います。「多様な価値観」を話合いの中で出していくのに、「討論」をしてしまっては「特定の価値観」の押し付けになりかねません。意見を言わない子が考えていないというのは間違いです。じっと友達の意見を聞きながら、じっくり自分と向き合っている児童もいます。「考えている」=「発言する」ではありません。議論が苦手な子でも、つい発言したくなるような発問をしたり、温かい対話的な話合いができたりすれば、どんな児童でも安心して自分の考えを発表できると思います。そのためには、基盤となる学級経営と吟味された発問が大切になってくると思います。

では、「考える道徳」にするには、どうすればいいのでしょうか?

①主題名とねらいをしっかり!……ねらいとする道徳的価値について授業者なりの哲学をもって考える。
②よい教材を選択し、教材分析をし、的確な発問を考える……教材は、道徳授業の「命」
③教材提示に命を懸ける……教材提示を児童の心に響かせるように工夫する。
④発問したら、考える時間を児童に与える……沈黙の時間こそ、児童がしっかり自分を見つめて考える時間。
⑤児童に「聴く」姿勢を持たせる……話合いは、「聞き合い」であること。「言い合い」ではありません。
⑥展開後段を「主題」に沿った学習課題とする……つい時間がなくなりがちだが、自己をみつめるために大切。

道徳ことはじめ 第4号(第4学年)

今回のテーマ①は、「席を譲るという行為から見えるもの」についてです!

 先日、4・6年生のたてわり活動で高尾山に行きました。40分近く電車に乗っていました。帰りのバスでは、6年生が席を4年生に譲り、ヘトヘトになりながらも6年生は立っていました。中には、立ちながら寝ている子もいました。この光景は、今年の6年生に限ったことでなく、毎年見られる光景です。登る時は、4年生のリュックを何個も持って登っていた子もいます。
 これは、先生方の指示でやっていることではありません。自分たちが4年生の時に、6年生にやってもらったことを覚えていて、「大変な思いをしている時、助けてくれた6年生のようになりたい。」と一人一人が思っているからです。「6年生だから、4年生のリュックを持たなくてはいけない。」「6年生は、席を譲らないといけないから。」「先生にそうしないと叱られるから。」という義務感でやっている行為ではありません。毎年の6年生がこのように義務感ではなく、「心」でこういう行動をしているからこそ、「ぼくたちも6年生になったら、4年生のために頑張るぞ!」と思うのでしょう。まさしく、教育活動全般で行う道徳教育そのものです。

 その帰りの電車での出来事です。4年生の女の子2人が、座席に座っていました。だんだん電車が混んできて、お客さんが乗ってきました。席を譲るように声をかけようかと私が迷っている間に、その2人はすっと立って、入って来たご婦人に、「ここに座ってください。」とはっきりした声で声をかけていました。しかも、とってもいい笑顔でした。その笑顔から、この2人も、「席を譲らなければならない」ではなく、「席を譲らずにはいられない。」という気持ちが強かったと感じました。

この新聞記事は、2016年5月19日(木)読売新聞に掲載されたものです。この小学4年生の女の子も、「乗ってくる時、両手でおなかを触っていて、つらそうだったから。」とさっと譲った理由を言っています。
他のエピソードを読んでも、心で動いているのが分かります。

(「第3章 特別の教科 道徳」の「第1 目標」)
 第1章総則の第1の2に示す道徳教育の目標に基づき、よりよく生きるための基盤となる道徳性を養うため、道徳諸価値についての理解を基に、自己をみつめ、物事を多面的・多角的に考え、自己の生き方についての考えを深める学習を通して、道徳的な判断力、心情、実践意欲と態度をそだてる。

【小学校学習指導要領(一部改正)から】

 上記のように、平成20年の小学校学習指導要領と「道徳的な判断力、心情」の部分の順序が変わっていることから、「特別の教科 道徳」においては、「心情よりも判断力を養わなくてはいけない。」という風潮があります。しかし、改正学習指導要領の道徳編の解説には、「道徳諸様相には、特に序列や段階があるわけではない。」と書かれてあります。また、道徳的心情については、
「道徳的価値の大切さを感じ取り、善を行うことを喜び、悪を憎む感情のことである。人間としてのよりよい生き方や善を志向する感情であるとも言える。それは、道徳的行為への動機として強く作用するものである。」
とあります。このように、人間が道徳的行為を行う時に重要であると言えます。順序が変わったからと言って、心情を育てることを疎かにしていいということではありません。

今回のテーマ②は、「役割演技」についてです!

第4章 第2節 道徳科の指導 3 学習指導の多様な展開 (4)道徳科に生かす指導の工夫
オ 動作化、役割演技など表現活動の工夫
 児童が表現する活動の方法としては、発表したり書いたりすることのほかに、児童に特定の役割を与えて即興的に演技をする役割演技の工夫、動きや言葉を模倣して理解を深める動作化の工夫、音楽、所作、その場に応じた身のこなし、表情などで自分の考えを表現する工夫などがよく試みられる。

【小学校学習資料要領(一部改正)解説 特別の教科 道徳編】

まず、役割演技と動作化の違いをしっかり理解することが大切です。

役割演技は……

 特定の場面・役割の中で、自発的・即興的に演技をするものです。相手の言動に対してすぐさま反応をしなくてはいけません。したがって、演技はどうしても日常生活で繰り返されている自己の体験に頼るか、今までに培われてきた価値観に頼るしかありません。一般論ではなく、児童は本音を語ることになるのです。まさに、役割演技とは、演技を通して「自らを見つめる」「自らに問いかける」ことのできる指導法です。
 役割演技を取り入れる際は、以下のことを考慮して行います。

 (1)場面は具体的に示す。
 (2)役割を明確にする。
 (3)役割交代を行う。 →これを忘れないようにしましょう!

 場面や条件設定はなるべく具体的に簡潔に示さなくてはいけません。複雑な場面状況や条件設定では、演じる場面の共通理解が図れず、演技者の即興的・自発的な表現活動ができません。
 また、役割を交代することで、相手の立場や価値観を知る手がかりをつかめます。役割演技は、自ら演じたり、友達の演技を観察したりすることにより、これまでの自分を振り返り、自分自身の価値観を自覚することができます。

動作化とは……

 自分自身が資料の登場人物がした動作をまねて行うことです。道徳的価値にそって登場人物のとった行動を、心をこめてなぞります。そうすることで、登場人物の思いを自ら体験することができ、道徳的心情が養われていきます。

【東京都小金井市立東小学校H27年度研究発表冊子より】

 役割演技は、単に平板な授業の打開策としてのみを意図すると、授業者が役割演技のねらいを明確にもっていない場合は、授業のねらいから外れてしまいます。授業者は、役割演技を通して児童に何を考えさせたいのかを、明確にしておくことが必要です。

道徳ことはじめ 第3号(学年共通)

今回のテーマは、道徳の教科化についてです!

学校教育法施行規則の一部を改正する省令
(1)「特別の教科である道徳」
 従来の道徳の時間を「特別の教科」と位置付けるため
、学校教育法施行規則において、小学校、中学校及び特別支援学校小学部・中学部の教育課程における「道徳」を「特別の教科である道徳」と規定する。
(2)施行期日
 小学校及び特別支援学校小学部に関する改正規定は、平成30年4月1日から
、中学校及び特別支援学校中学部に関する規定は平成31年4月1日から施行。

小学校学習指導要領(一部改正)解説「特別の教科 道徳編」の総説から
 今回の改正は、いじめの問題への対応の充実や発達の段階をより一層踏まえた体系的なものとする観点からの内容の改善、問題解決的な学習を取り入れるなどの指導法の工夫を図ることを示したものである。(中略)
 発達の段階に応じ、答えが一つではない道徳的な課題を一人一人の児童が自分自身の問題と捉え、向き合う「考える道徳」、「議論する道徳」へと転換を図るものである。

多様で効果的な道徳教育の指導方法へと改善するようにという中央教育審議会から

改訂の経緯

「特別な教科道徳」において、目標や指導のねらいに即し、児童生徒の発達段階を踏まえた上で、対話や討論など言語活動を重視した指導、道徳的習慣や道徳的行為に関する指導や問題解決的な学習を重視した指導などを柔軟に取り入れることが重要であること。

 いずれの指導方法例についても、柔軟に授業に生かすことが求められるが、その前提となることは、「特別の教科 道徳」の特質を生かすということである。

「討論」…話し合っている双方が互いに自分の主張が正しく、対立する側の主張は間違っていると主張すること
「議論」…ある目的を達成するためにたがいに意見を交わす中から、良い考えなどを発見しようとする対話や会話

本校(東小)では、話合い活動や座席の形にしても、友達の意見をしっかり聞いたり、伝えたりしながら議論し、自己の生き方を道徳的価値に結び付けて考えさせてきました。

道徳教育の目標

「自己の生き方を考え、主体的な判断の下に行動し、自立した人間として他者と共により、よく生きるための基盤となる道徳性を育てる。」これは学校の教育活動全体を通じて行う道徳教育

「特別の教科 道徳」の目標

「道徳的諸価値についての理解を基に、自己を見つめ①物事を多面的・多角的に考え②自己の生き方についての考えを深める③学習」を通して「道徳的な判断力、心情、実践意欲と態度を育てる」

*道徳的諸価値(内容項目)についての理解
①内容項目を人間としてよりよく生きる上での大切なことと理解する。
②道徳的価値は大切だが、なかなか実現できない人間の弱さがあることを理解する。
③道徳的価値を実現したり、実現できなかったりする場合の感じ方や考え方は多様であるという前提で理解する。

 児童が道徳的価値について主体的に考えることができるようにするために、教師は導入から終末まで一貫して主題に添った授業をしていくことが大切である。

今さかんに、「問題解決的な学習」「体験的な学習」を取り入れて……と言われていますが、道徳ではどのような学習になるのでしょうか。

○あくまでも一手法。解説の中でも、「教材に応じて効果的な学習を設定することが大切」と書いてある。「いつもそうしなさい。」と言われているわけではない。

○解説「問題解決的な学習の工夫」から
 道徳科における問題解決学習とは、ねらいとする道徳的諸価値について自己を見つめ、これからの生き方に生かしていくことを見通しながら実現するための問題を見付け、どうしてそのような問題が生まれるのかを調べたり、他者の考え方や感じ方を確かめたりと物事を多面的・多角的に考えながら課題解決に向けて話し合うこと。

あくまでも自分の課題に対して!(みんなではありません。)道徳は自己の生き方を考えます。

友達との話合いを通して、道徳的価値のよさや難しさを確かめる学習→教師の発問の仕方の工夫
 ペアや少人数グループなどでの学習も有効→こうした学習方法を導入することを「目的」にしないように
主題に対する児童の興味や関心を高める導入の工夫
・他者の考えと比べ自分の考えを深める展開の工夫
主題を自分との関わりで捉え自己を見つめ直し、発展させていくことへの希望がもてるような終末の工夫
*あくまでも児童一人一人が自分自身の課題に対する考えを深めることが大切
 授業では、自分の気持ちや考えを発表することだけでなく、時間を確保してじっくりと自己を見つめて書くことも有効であり、指導法の工夫が不可欠!

○解説「体験的な学習等を取り入れる工夫」から
 単に体験的行為や活動そのものを目的として行うのではなく、授業の中に適切に取り入れ、体験的行為や活動を通じて学んだ内容から道徳的な価値の意義などについて考えを深めるようにすることが重要。

・問題場面によっては、役割演技や動作化を取り入れた学習も有効。ロールプレイやスキルトレーニングにならないように。

特別活動の特質と道徳科の特質を混合せず、しっかり生かしてくことが大切!

道徳科の授業

特別活動

「思いやりは大切だ」

どのようにしたら、思いやりのある行動ができるか」

特別活動では思いやりのある行動の方法を話し合って集団決定や自己決定をし、実際に態度や行動に表していきます。

道徳ことはじめ 第2号(学年共通)

今回のテーマは、道徳の時間の授業づくりについてです!

道徳の授業の展開が難しい。どうしていけばいいんでしょうか?

国語科の読み取りのようになってしまったり、途中で、「あれ?ねらいからずれてしまっているなあ。」と困ってしまったり……。どうすればいいんだろう?

 道徳の教材では、いくつもの道徳的価値がふくまれています。その授業のねらいとする道徳的価値を授業者がはっきり意識をして臨むことが大切です。

道徳の主題と主題名

■道徳の主題とは……
授業者が授業で何をねらいとするか、その達成のためにどのように教材を活用するかのまとまりを示すもの。

主題は、ねらいとする道徳的価値とそれを達成するための教材によって構成される。

■道徳の主題名とは……
主題名は、ねらいとする道徳的価値と教材で構成した主題を端的に表すもの。

*内容項目や教材名をそのままつけるのは好ましくない。

主題名は、児童がそれを一目見ただけで本時の学習内容が分かるものにする工夫が必要。

→児童が考える上での視点となり、授業がぶれにくくなる。
(月刊「道徳教育」明治図書 玉川大学客員教授 後藤忠先生のご指導から)

ねらいを具体的に

 第1号でもねらいについては触れましたが、教材に絡め、具体的にねらいを立てる
 →例えば、「ロレンゾの友達」で「友情・信頼」の内容項目で行う場合、学習指導要領におけるねらいの中の「男女協力して助け合う。」のところは、この教材では扱いません。教材の中心となる場面に絡めていくことで、ねらいとする価値により深くせまることができます。

ねらいの語尾をよく吟味する

学校における道徳教育は、道徳性を養うことを目指して行われます。一方、道徳の時間(道徳科)では道徳的実践力を育成します。道徳的実践力とは、道徳的心情、道徳的判断力、道徳的実践意欲と態度を包括するものです。これらは、道徳性の諸様相と言われる。(「道徳授業で大切なこと」東洋館出版社 元文部科学省初等中等教育局教育課程課教科調査官 赤堀博行先生著から)

道徳的心情

道徳的価値の大切さを感じ取り、善を行うことを喜び、悪を憎む感情。人間としてのよりよい生き方や善を志向する感情であり、道徳的行為への動機として強く作用するもの

道徳的判断力

それぞれの場面で善悪を判断する能力、人間として生きるための道徳的価値が大切なことを理解し、様々な状況下において人間としてどのように対処することが望まれているかを判断する力。的確な道徳的判断力をもつことにより、それぞれの場面において機に応じた道徳的行為が可能になる。

道徳的実践意欲

道徳的心情や道徳的判断力によって価値があるとされた行動をとろうとする傾向性を意味するもの。道徳的心情や道徳的判断力を基盤とした道徳的価値を実現しようとする意志の働き

道徳的態度

道徳的実践意欲と同様に、道徳的心情や道徳的判断力によって価値があるとされた行動をとろうとする傾向であり、道徳的心情や道徳的判断力に裏付けられた具体的な道徳的行為への身構え

(「道徳授業で大切なこと」東洋館出版社
 元文部科学省初等中等教育局教育課程課教科調査官 赤堀博行先生著から)

 赤堀先生の著書においても、「道徳的実践力とは、子どもの将来に生きて働く力であり、内面的な資質です。1時間の道徳の時間の指導で子どもの変容を目指すということではなく、年間35時間(第1学年は34時間)、小学校段階では、209時間の指導を、その特質を踏まえて丹念に指導することによって、潜在的に、持続的な作用を行為や人格に及ぼすものであると言われる」と述べられています。
 このようなことを踏まえていくと、道徳的心情は、あらゆる道徳性の基盤となります。道徳的心情が育っていないのに態度をねらってしまうということはなかなか難しいところがあります。よって、ねらいの語尾についてもよく吟味することが大切です。

教材分析をしっかり行う

 発問構成には教材分析が不可欠です。的を射た発問を作るためには欠かせません。発問は、経験や勘で作るのではなく、その根拠を明確にして作るものです。
 教材の文章の各行の全てに1から通し番号を打ち、主人公の気持ちが微妙に変化するところで細かく場面を分けていきます。理由は、児童がピンポイントで考えられる方が漠然とした場面を考えるより考えやすく、話合い活動もかみ合いやすくなるからです。話合い活動も活発になります。そして、各場面における主人公の気持ちをすべて出し尽くします。これによって、予想される児童の反応を把握できます。そして最初に、どの場面が一番本時のねらいにせまれるかを考え、中心発問場面としていきます。

(月刊『道徳教育』明治図書 玉川大学客員教授 後藤忠先生のご指導から)

道徳ことはじめ 第1号(学年共通)

今回のテーマは、道徳の時間についてです!

道徳って何やっていいのかわからないなあ……。副読本や東京都からも資料集がくるけれど……。活用の仕方がわからない。

教科になるらしいけれど、今なかなか道徳の時間ができていない……。ついつい説教のような話をしてしまうこともあるし……。道徳授業地区公開講座の時は、本当に大変……。

 私も道徳の研究を始めた頃は、「国語科とどう違うの?」と思ったり、「主題名と価値項目というのは違うの?」と悩んだりからのスタートでした。平成30年度からは、「特別の教科 道徳」ということで教科書に基づいての授業が行われます。少しずつ、道徳について一緒に勉強していけたらと思います。

道徳の時間とは……

 道徳の時間は、学校の教育活動全体を通じて行う道徳教育と密接な関連を図りながら、学習指導要領に示されている道徳的価値について年間指導計画に基づいて指導する時間である。

 児童は学校の教育活動全体を通じて、様々なところで道徳的価値に触れて生活をしている。道徳の時間は、それらを調和的に補充・深化・統合する時間である。
《例》
× 今度運動会があるから、信頼・友情の価値の教材を扱う。→これでは、左記の⇒が道徳の時間からの発信となり、みんなで協力して助け合わなくてはいけないという価値の押しつけになります。
○ 運動会を終えたあと、信頼・友情の価値の教材を扱う。→自分の体験をもとに価値について深く児童は考えることができます。

道徳の時間を通して、価値をしっかり理解させて、明日からすぐ子どもに頑張ってほしいのですが……。

道徳とは……

 道徳の時間に子どもの心に種をまくのが教師の仕事。やさしさの種、努力の種、協力の種。種はすぐに芽が出るわけではない。学校生活の中では芽が出ないかもしれない。
 しかし、まかない種は生えない。我々は道徳の時間に、コツコツと種をまこう。ひたすらよい種をまきつづけよう。10年後、20年後にやっと芽が出ることもある。心を育てるというのはそういうことです。

(玉川大学客員教授 後藤忠先生のお話より)

道徳の時間をどう作ればいいのでしょうか?

1.まずは、よい教材を選ぶ!
 教材は道徳授業の命である。よい教材とは何か。それは、「ねらいに合っている」「分かりやすい」「興味・関心がもてる」「臨場感がある」教材のことを言う。教師の心にガツンと響き、教師が惚れ込んだ教材は間違いなくよい教材と言える。よい教材はよい種のことである。

(玉川大学客員教授 後藤忠先生のお話より)

☆学校にある副読本やわたしたちの道徳、心あかるく、心しなやかに、心たくましくなど何冊か読み、よい教材を選んでいます。原作があれば、それを読んでみると、教材理解につながります。

2.教材提示に命を懸ける!
(1)教材はただ「読む」のではなく、「語る」ように読む。

 語=吾を言う ※読=言葉を売る
 何回も何回も読んで自分のものにする

「語る」と「読む」では違いますね。

(2)「間」と「余韻」を大切にする
 じっくりと、子どもの心にしみわたるよう
(3)子どもの表情を見ながら語る
(4)効果的な「朗読」の手法を

(明星大学教育学部教育学科特任教授 大原龍一先生のお話より)

☆何度も読むうちに最初に読んだ時とは違うところがたくさん見えてきます。授業で読む時に自分の自信にもなり、堂々と読むことができます。

3.本時のねらいを鮮明に立てる!
 本時のねらいは授業の出口である。ねらいが曖昧だと授業がぶれる。
 ねらいは、教材の扱いとの関係に照らして具体的に立てる、このことが大切である。

(玉川大学客員教授 後藤忠先生のお話より)

☆小学校学習指導要領解説の第3章、第2節の「内容項目の指導の観点」を低学年から見ていくとわかりやすいです。学年が上がるにつれて、どうねらっていくのかもわかります。

4.導入をしっかり行う!
 価値への導入をしっかり行うとぶれない授業ができます。児童の体験やアンケートの結果などをもとに導入を行うこともでます。また、教師の説話を使うのも一つの手です。

日常の道徳教育の学びを深化する道徳科授業「うばわれた自由」(第5学年)

1.主題名

本来の自由  A[善悪の判断、自律、自由と責任]

2.教材名

「うばわれた自由」(出典:日本文教出版「新・生きる力」)

3.主題設定の理由

(1)ねらいとする価値について
 人は、自分の意志を尊重し、自由を求め、おおらかに生きていきたいと考えている。自由だからこそ、自分で判断することができ、自分で行動することもできる。何物にもとらわれない自由な考えや行動は、自主性を生み、自立心を高めていくのである。
 しかし、「本来の自由」ではなく、勝手気ままでわがままな「自分本位の自由」を求めた行動は、時として他者の気持ちを考えられず、人に迷惑をかけ、集団への悪い影響につながる場合がある。人として成長していくためには、したいことをしたいがままに行動するだけでなく、自分のわがままな意志を律し、責任を伴うことを自覚した上で、本来の自由を生かした行動をすることが大切である。
 児童には、本来の自由についての考えや行動のもつ意味やよさに気付き、自律的に行動しようとする態度を育てたい。

(2)児童の実態について
 高学年になり、学校生活において、自主的に考え、行動しようとする児童がいる。一方で、自分の自由のみを追求し、相手や周りのことを考えず、自分勝手な振る舞いをしてしまう様子も見られた。
 6月の学校行事の移動教室では、集団での宿泊生活に関わる事前学習において、「自分勝手な言動が集団生活全体に影響があること」と、自律した生活に向けての指導をした。そして、そこでは「自由とはいえ時間は守る」など、自律ある生活をしようとする姿が見られた。
 体育科の表現運動では、グループ練習の時間をとり、リーダーを中心に自由に練習する時間を設けている。練習に取り組まず、自分勝手に行動する児童に対しては、グループ全体に関わることを意識できるよう当該児童のグループ全体に指導をした。その後は、自主的、自律的に行動する児童が増えている。
 本時では、自由な考えや行動は、自分の責任を伴うことに気付かせ、その自由のよさを感得できるよう日常の道徳教育の学びを深化する道徳授業を行う。自律的な行動で、責任を伴うことが「本来の自由」につながることを気付かせたい。

(3)教材について
 森の番人ガリューは、自分の思いのままに行動するジェラール王子に決死の覚悟で、それは誤っていると訴えるが、聞き入れてもらえず、捕えられてしまう。ジェラール王子は、ガリューの訴える「自由」を理解できなかった。自分がしたいことを思うがままにできるからこそ、しばられることがなく、良い生活ができると考えていた。
 国内の状況が変わり、ジェラール王子自身も捕えられてしまう。ろう屋でガリューと再会し、ジェラール王子は、「ガリューの言葉を受け入れていれば、国は乱れることもなかった」と言い、はらはらと涙を流す。ガリューがろう屋を出る時、ジェラール王子に「本当の自由を大切にして、生きてまいりましょう」と話す。
 児童には、ガリューの言葉を聞いたジェラール王の思いをじっくりと考えさせ、思うままに行動する自由な生き方ではなく、自分を律し、責任を伴う自由のよさや大切さに気付かせたい。

4.指導の工夫

(1)イメージの可視化
 事前に「自由」に対するイメージを絵で描かせ、どのような自由を求めているか意識できるようにする。児童は「自分の受けているきまりやルールから解放される自由」や「自分の欲求を満たす自由」を想像している。
 導入で数名の児童の絵を紹介し、「自由」ついて共有することで、自分の意志で思うがままに行動できる自由を感じさせる。授業では、自分の意志のままに行動することが及ぼす影響を理解させ、児童が「本来の自由」について主体的に考えられるよう展開していく。

(2)教材提示の工夫
 教材は、音楽を流す、間を十分にとるなどの工夫により語り聞かせる。牢屋でガリューとジェラール王が話す後半の場面では、照明を薄暗くし、臨場感を出すことで児童が教材に聞き入り、登場人物の気持ちを自分のこととしてじっくり考えることができる。範読後は、牢屋に残されるジェラール王を見せ、中心場面のジェラールの様子を印象付ける。

(3)グループによる話合い活動
 「ほんとうの自由をたいせつにして、生きてまいりましょう」というガリューの言葉を聞いたジェラール王の思いを少人数のグループで考えさせる。「『本当の自由を大切に生きていく』とはどうすることか」と話し合うポイントを児童に投げかけ、「考えたい、意見を聞きたい」と意欲をもたせ、話し合わせる。
 全体で共有する場面では、「ジェラール王はほんとうの自由をたいせつに生きていくことができるか」を考えさせ、自分勝手な行動ではなく、よく考え、判断し、自律的に行動することが大切さに気付かせたい。

5.教材分析

※網掛け……授業では取り上げないが想定される発問

場面

ガリューとジェラール王子の心の動き

考えられる発問

発問の意図 他

夜明け前
森に銃声が響いた。きまりをとりしまるガリューは、馬を走らせる。

ガリュー:
・狩りをする時間ではない。
・きまりを守るよう言わなくてはならない。

ジェラール王子は、狩りをしてはいけないきまりを無視して、身勝手に遊んでいた。ガリューは、決死の覚悟で正すが、とらわれてしまう。

ガリュー:
・国のきまりを守るべきだ。
・ジェラール王子の言動は身勝手だ。
・周りのことを考えて、自分の気持ちをおさえるべきだ。
・勝手な振舞いを慎むべきだ。

「あなたが言っているのはほんとうの自由ではない。」と必死に訴えるガリューは、どんな気持ちだろう。

◆ガリューの話す「本当の自由」について理解することができる。

ジェラール王子:
・したいことをしたいようにして何が悪い。
・ガリューの言うようにしていると窮屈だ。
・自由をみんなが望んでいる。きまりを言われたくない。

○「あなたが言っているのはほんとうの自由とは申しません。」というガリューの必死の訴えを聞くジェラール王子はどんな気持ちだったのだろう。

◆王子のわがままで身勝手な考えについて捉えさせる。
◆自分の好きなことを制限されずできることが「自由」だとするジェラール王子の考えにふれさせる。

国中の人々が勝手に行動し、国が乱れた。
ジェラール王は裏切りにあい、とらわれてしまう。

ジェラール王子:
・どうして、こんなことになってしまったのだ。
・どうして裏切られたのか。

牢屋で、ジェラール王とガリューが再会する。

ガリュー:
・身勝手すぎた。自業自得だ。
・辛そうだな。
・心を入れ替えるべきだ。

(しばらくの間、二人が向き合いだまっている時ガリューはどんな気持ちだったのだろう。)

◆ジェラール王に改心してほしい気持ちに気付かせる。

ジェラール王子:
・自分が悪かった。反省している。
・どうすればよかったのか。
・ガリューに申し訳なかった。
・これからは、よく考えて行動する。

(はらはらと涙を流すジェラール王は、どんな気持ちだろう。)

◆ガリューの思いを受け止めなかった反省と謝罪の気持ちを感じさえることができる。

ガリューは牢屋から出されることになった。ガリューは「ほんとうの自由を大切にしましょう。」とジェラール王に伝える。

ガリュー:
・思うままに行動するだけでは自由ではない。
・我慢することも大切。
・自分勝手はしないこと。
・人のことも考えられるようにすること。

(「ほんとうの自由を大切にして、生きてまいりましょう。」には、ガリューのどんな思いが込められているのだろう。)

◆「本当の自由」の意義やよさをジェラールに味わわせたいという思いに気付かせる。

ジェラール王子:
・自分のことだけを考えていた。間違っていた。
・自分のしたいことばかりではだめだ。
・みんなのことを考え、行動する。

◎「ほんとうの自由を大切にして、生きてまいりましょう。」というガリューの言葉をジェラール王は、どんな思いで聞いたのだろう。

◆「本当の自由」を求め、行動しようとするジェラール王に共感させる。
◆「大切に生きていく」について考え、自由の意味やよさに気付かせる。

6.本時のねらい

 「ほんとうの自由をたいせつにして生きてまいりましょう。」というガリューの言葉を聞いたジェラール王の思いを考えることで、自由を大切にし、自律的で責任ある行動しようとする態度を育てる。

7.本時の展開

学習活動
(○主な発問 ・予想される児童の反応)

◇指導上の留意点 ☆評価


1 「自由」という言葉のもつイメージについて話し合う。
○友達の絵を見て、どのような「自由」なのか考えよう。
・宿題がなくて、楽な生活をしている自由
・好きなものを、好きなだけ食べられる自由
・ずっとゲームや遊びができる自由

◇事前に描いた「自由」をイメージした絵を見て、自分中心で自分の意志を優先した自由について共有する。
◇登場人物を紹介し、2人の「自由」についての考えが異なることを話し、教材への導入を図る。


2 教材「うばわれた自由」の範読を聞き、話し合う。

◇BGMを活用したり間のとり方を工夫したりして読み聞かせる。
◇教材の後半では、会場を薄暗くし、臨場感を高める。

○「あなたが言っているのはほんとうの自由とは申しません。」というガリューの必死の訴えを聞くジェラール王子はどんな気持ちだったのだろう。
・したいことをしたいようにして何が悪い。
・ガリューの言うようにしていると窮屈だ。
・自由をみんなが望んでいる。きまりを言われたくない。

◇板書を通してガリューの考える「自由」について捉えさせる。
◇ガリューとジェラール王子の「自由」に対する考えの違いを視覚的に理解できるようにする。

◎「ほんとうの自由をたいせつにして、生きてまいりましょう。」というガリューの言葉をジェラール王は、どんな思いで聞いたのだろう。
・自分のことだけを考えていた。間違っていた。(反省)
・自分のしたいことばかりではなく、それをおさえてみんなのことも考えることが大切だ。(他者に対する責任)
・みんなのことを考え、行動する。(自律した行動)

◇少人数で話し合う学習形態をとり、「本当の自由を大切にして、生きていく」ことについて考え、自律的で責任を伴う自由の意味やよさに気付かせる。

○「本当の自由を大切に生きていく」とはどうすることだろう。(補助発問)

◇全体で共有する場面では、ジェラール王がどう考え、行動するかについて考えさせる補助発問を行う。
☆話合いを通して、自由を大切にし、自律的に行動しようとする気持ちがもてたか。

3 自分の生活を振り返り、これからの自分について考える。
○「自分勝手」と「自由」について考えよう。「自分勝手」に行動しなくてよかったことはありますか。
・自由時間だとしても勝手なことをせず、きまりやルールは守る。
・夏休み中に、自由に遊べたけれど、家族との約束を守って遊んだので、ほめられた。
・自分勝手に行動したために、みんなに迷惑をかけてしまった。

・ワークシートを通して、自己を振り返り、自由を大切にすることのよさを感じさせる。
・「自分勝手な行動をした」経験も可とし、授業を通して考えたことを記入するよう指導する。
☆ワークシートへの書く活動を通して自由な言動の意味やよさについて考えることができたか。


4 教師の説話を聞く。

・児童が事前に描いた絵を紹介し、自由であっても、自律して行動する大切さを感得させる。

8.板書計画

日常の道徳教育の学びを深化する道徳科授業「ブランコ乗りとピエロ」(第5学年)

1.主題名

寄り添う心  B[相互理解、寛容]

2.教材名

「ブランコ乗りとピエロ」(出典:文部科学省『私たちの道徳 小学校5・6年』)

3.主題設定の理由

(1)ねらいとする価値について
 人の考えや意見は多様である。だから互いの考えや意見、立場を尊重し、認め合い、理解し合いながら豊かな関係を築いている。そして自分の考えや思いを相手に伝えるとともに、自分と異なる考えや思いを受けとめ、相手への理解を深めることで、自分自身を高めていくことができるのである。
 しかし、自分と異なる意見や考えを広い心で受け止めて、理解を深めることは決して容易ではない。つい、自分の考えや立場を優先してしまい、他人の意見や考えを一方的に否定したり、自分と異なる考えや意見の人を遠ざけたりする。
 自分の心の中には、身勝手に考えてしまうことがあったり、自己本位になりやすい弱さがあることを自覚し、相手の考えや意見への理解を深めようとする寄り添う心が、重要であると考える。相手の心に寄り添い、自分と異なる考えや意見を尊重することで、互いの違いを生かしたよりよい人間関係が育まれることを感得させたい。

(2)児童の実態について
 高学年になり、委員会活動やクラブ活動等、人とかかわる機会が広がり、自分の考えや思いをもち、様々な人と良好な関係の中で活動している。授業では、人の話を受け入れながら聞いている児童が多く、友達がどんな気持ちで話しているのかを聞く姿勢がある。しかし、話し合う場面では、自分の考えを主張し、相手の考えを受け入れず、また一方的に相手の意見を否定してしまう児童もみられる。相手の考えや意見を理解し、尊重していこうとする心を育んでいきたい。
 学級活動「子どもまつりを成功させよう」において、学級の出し物や係決め等について話し合う時間には、「みんな一人ひとりが『子どもまつりでこんなことをしたいなあ』という気持ちや考えがある。自分の考えだけでなく、友達の考えを生かし、みんなが楽しめる会に向けて話し合いをしよう」と指導した。児童は、楽しく意見を出し合い、参加者がより楽しめる工夫を考え、実践していた。
 本時では、意見や考えが違う相手の気持ちに寄り添うことの大切さを感得するよう日常の道徳教育の学びを深化する道徳授業を行う。相手の気持ちや考えを理解し、尊重することでよりよい人間関係が生まれることを味わわせたい。

(3)教材について
 サーカスをまとめるリーダーのピエロと花形スターのサムは、一時間という制限で大王にサーカスの演技を見てもらうことになった。日頃から、ピエロはわがままな言動のサムに腹を立てていた。当日、サムの演技が延長し、ピエロは大王の前で演技ができなかった。しかし、ピエロは演技後に疲れ切った様子のサムを何度も思い出しながら、サムの気持ちを理解し、尊重したため、サムを許すのである。
 児童には、身勝手な言動で到底許されるはずのないサムの言動を演技後の様子を何度も思い出し、理解し、受け入れるピエロの思いを考えさせたい。そして、互いに心が寄り添うことで、共演するなど、よりよい関係を築くことができることを感得させたい。

4.教材分析

場面

ピエロとサムの心の動き

考えられる発問

発問の意図

児童に考えさせたいこと

サーカスの開幕

サムの演技が始まる。ピエロとサムは開演前に話をしていた。

ピ:サムは、自分のことしか考えていない。勝手だ。約束を守れない。
サ:観客が喜んでいる。サーカスのスターだ。ピエロは、私の人気を妬んでいる。

ゲートのすき間からサムの演技を見ているピエロはどんな気持ちだったのだろう。

・サムの身勝手さを受け入れられないピエロに共感させる。
・大王の前で演技ができない悔しい思いに気付かせる。

ピエロはサムを許せない気持ちは強いが、「目立ちたい」「大王に演技を見せたい」「サーカスを成功させたい」等の気持ちは、サムと共通していることを感じ取らせる。

サムの演技が終わり、通路ですれ違う。

ピ:サムが演技で疲れ切っている。自分の演技を精一杯行おう。
サ:演技が終わった。

●通路ですれ違ったサムを見たピエロはどんな気持ちがあったのだろう。

・サムの演技と演技後の様子を見て、サムの身勝手さだけでなく、サムの良さにも気付き始めた。

通路で一瞬立ち止まるピエロの気持ちから、サムの努力を認め、サムへの憎む気持ちに変化があった。

控室
団員の怒りとサムの訴え
ピエロがサムに語りかける。

ピ:憎む気持ちが消えた。サムの気持ちが分かる。自分がサムの立場ならと考えた。
サ:どうして、身勝手な言動をした私を許してくれるのだろう。ピエロは、私のことを考え、話してくれた。うれしい。謝罪、感謝をしなければならない。

サムをにくむ気持ちが消えて、おだやかな目でサムを見つめるピエロはどんなことを考えていたのだろう。

・サムを許せるようになったピエロの心の変化を捉えさせる。
・自分の同じ立場ならとサムの気持ちや考えを理解しようとしたピエロに共感させる。

サムの言動を安易に許したわけではなく、サムの立場になって考えれば、ピエロ自身も同様のことを起こしかねないと考え、サムの気持ちを理解し寄り添うことの大切さに気付かせたい。

控室
サムとピエロのみが残り、語り合う。

ピ:サムの気持ちを考えてよかった。分かり合える。
サ:サムの気持ちを受け入れる。ピエロとともにサーカスを盛り上げていきたい。

●控室で話し合う二人の気持ちを考えよう。

・互いに分かり合えた二人の気持ちを感じさせる。

ピエロの言葉を受けとめ、サムの反省と感謝の気持ち等をとらえさせる。

サーカス最終日
二人の共演が行われる。

ピ:サムと分かり合えたので、二人で演技ができる。自分の気持ちだけでなく相手の気持ちを考えることが大切だ。
サ:ピエロとの共演は楽しい。互いに分かり合えてよかった。

どうして二人は共演することができるようになったのだろう。

・自分のことだけではなく、相手の気持ちを理解すること、尊重することの大切さに気付かせたい。

互いに理解し合うこと、尊重することが、よりよい関係づくりにつながることに気付かせる。

5.本時の学習

(1)ねらい
 サムをにくむ気持ちが消え、おだやかにサムを見つめるピエロの気持ちを考えることで、自分と異なる考えや意見を尊重し、大切にしていこうとする態度を育てる。

(2)本時の展開

主な発問と予想される児童の反応

・指導上の留意点
▽指導の工夫 ☆評価


1 友達と考えや意見が合わなかった体験を思い出す。

○友達と考えや意見が合わずに困ったことについて発表しましょう。
・友達と遊ぶ時に、何をして遊ぶかで意見が合わなかった。
・子供会で係を決めるときに、なかなか決まらなかった。

▽子どもまつりに向けた話合いを例示し、意見が合わず、話合いが進まなかったなど、自分と友達の考えや意見との違いを感じた場面を振り返らせる。
・話の登場人物(ピエロとサム)を紹介し、その立場について簡単に説明する。


2 教材「ブランコ乗りとピエロ」の範読を聞き、話し合う。

○ゲートのすき間からサムの演技を見ているピエロはどんな気持ちだったのだろう。
・自分だけ目立とうとしている。勝手だ。
・私の演技の時間がなくなった。ひどいことをする。
・約束したはずなのに…ずるい。
・私も大王の前で演技をしたかった……

▽範読後、ピエロとサムが共演している場面絵を提示し、「二人がどうして共演できたのか」と話題を提示する。
・サムの身勝手さに対する怒りの気持ちだけでなく、ピエロ自身も大王の前で演技をしたかった悔しい思いにも気付かせる。

◎サムをにくむ気持ちが消えて、おだやかな目でサムを見つめるピエロはどんなことを考えていたのだろう。
・サムはがんばっていた。【サムを認める】
・スターとして頑張っているサムはすごいと思う。【サムを認める】
・どこかで私も目立ちたいと思っていた。【謙虚に受け止める】
・自分が間違っているのではないかと思うようになった。【謙虚に受け止める】

▽サムの言動は簡単に許せることはできないと共有し、少人数グループによる話合いを通して、ピエロの思いを考えさせる。
・自分の同じ立場ならとサムの気持ちや考えを理解しようとしたピエロに共感させる。
☆話合いを通して、ピエロがサムを謙虚に受け止め、サムを尊重する気持ちを考えることができたか。

○どのような気持ちが芽生え、二人は共演することができるようになったのだろう。
・サムもピエロの気持ちが分かった。
・サムもピエロの気持ちに近づいた。
・サムも悪いと思った。
・ピエロとサーカス団を盛り上げようと思ったから。

▽話題を再提示し、教材を通した学びを共有する。
・互いに理解し合うこと、尊重することが、よりよい関係づくりにつながることに気付かせる。

3 今までの自分を振り返り、これからの自分について考える。

○自分の考えとは違っていても、友達の考えや意見を大切してよかったなあと感じたことを発表しましょう。
・移動教室の話し合いで、友達が言ってくれたことをやったらとてもよかった。(ピエロのようになれた自分)
・自分が勝手に言ってしまい、友達の話を無視してしまったことがある。これからは、話を聞いてあげるようにしたい。(ピエロのようになりたい自分)

▽「ピエロのようになれた自分」「ピエロのようになりたい自分」を示し、自分の体験を振り返るきっかけとする。
・ワークシートを通して、相手の気持ちや考えに寄り添った体験を振り返えらせる。また、自己の課題に気付き、寄り添いたいという意欲につなげる。
☆相手の考えや意見を大切に受け止めて、相手とよりよい人間関係をつくろうと考えることができたか。


4 教師の説話を聞く。
※展開後段での児童の発言を生かして話す。

・友達の意見を生かして、話合いを進めた児童の様子を話し、自分の思いだけでなく、広い心で人の意見を大切にしていこうとする気持ちを高める。

6.板書計画

多面的・多角的に考える授業「よわむし太郎」(第4学年)

1.はじめに

 平成30年度から完全実施となる「特別の教科 道徳」に向けて、授業方法や評価についてさまざまな取り組みが行われている。私は週1回の道徳の授業を子どもたちと共に考え、つくり上げていくことを大切にしたい。そして年間35時間の授業を確実に行っていきたい。

2.実践紹介

(1)主題名 「自分が正しいと思うこと」  A[善悪の判断、自律、自由と責任]

(2)教材名 「よわむし太郎」(出典:日本文教出版「新・生きる力」)

(3)主題設定の理由

A ねらいとする道徳的価値
 私たちの周りには生き方についてさまざまな選択肢があり、常に自分の判断のもとに問題解決を図りながら行為を選択して生きている。そして、その判断基準は、今までの人生経験や置かれている環境、周囲の人とのかかわりなどによって培われたものである。
 今、私たちが置かれている社会で主体的に生きていく上では、よいこと悪いこととの区別が的確にできるようにすることは重要である。また、自分が正しいと思うことを自らの力で判断し行動に移すことは、人としてもとても大切なことである。
 しかし、そのような中でも、人は周りの状況やその時の自分の思いによって正しいと思うことを行動に移すことができなかったり、見失ったりすることもある。そのようなときほど、人に左右されることなく、自らの判断を信じ、それを行動に移す強い意思が必要である。
 本授業では、中学年という発達段階において、自分が正しいと思うことを行動に移すことの大切さや、自らを信じることのよさについて考えさせたい。そして、どのような状況におかれてもその思いを貫き通す強さにも気付かせたい。

B 児童の実態
 学校や学級という多くのかかわり中で、児童は「正しいこと」「正しくないこと」について、日々実感している。そして、“正しい行動をすることで、自分もみんなも気持ちよく生活することができる” “正しくないことをすると、自分だけでなくみんなが困り、悲しい気持ちになる”ということも、生活経験から学んでいる児童も多い。
 また、事前に、「自分が正しいと思ったことは、自信をもって行うことができるか」というアンケートを実施した。「できる」と答えた児童が19人/27人中、「できない」と答えた児童は8人/27だった(※座席表指導案参照)。正しいことをしようとする気持ちが全体的に強いと考える。しかし、実際の生活では、「できない」と答えた児童と同じように行動に移すことの難しさも感じているはずである。周りに流されてしまったり、自分の弱さに負けてしまったり、また、そのときの状況や相手によって気持ちや行動が変わってしまったりすることもある。
 本授業では、自分自身を見つめながら、自分が正しいと思うことを行動に移すことの大切さを改めて感じとらせたい。そして、自らの力を信じることや心の強さにも気付かせ、自信をもって行おうとする気持ちを育みたい。

C 教材について
 ある村に「よわむし太郎」とよばれる男がいた。ある日、この国の殿様が村へやってきた。狩好きな殿様は、子どもたちとよわむし太郎が大切に世話をしていた白い鳥を討とうとする。その時、太郎は殿様の前へ立ちはだかった。そして、大きな涙をこぼしながら鳥を助けるよう頼み、最後まで鳥を守った。
 子どもたちのため、自分のために、自らが正しいと思ったことを行動に移し、最後までその思いを貫き通した太郎。その姿から、相手がどのような立場の人であっても、自分を信じ、正しいと思うことを行動に移す気持ちの強さ、そしてその大切さを感じることができる。
 本授業では、太郎の気持ちを考えることを通して、どのような状況においても、自分が正しいと思うことを自らの力を信じて行っていこうとする気持ちを育みたい。

(4)授業の工夫

○児童の主体的な学びに近づけるために

「第3 指導計画の作成と内容の取扱い」の2-(3)

(3)児童が自らの道徳性を養う中で、自らを振り返って成長を実感したり、これからの課題や目標を見付けたりすることができるよう工夫すること。その際、道徳性を養うことの意義について、児童自らが考え、理解し、主体的に学習に取り組むことができるようにすること。

(小学校学習指導要領 第3章 特別の教科 道徳より)※下線筆者

≪主体的に取り組むために大切なこと≫
学習の始めに児童自らが学びたいという課題意識や課題追及への意欲を高め、学習の見通しなどをもたせること。
一定の道徳的価値に関わる物事を多面的・多角的に捉えることができるようにすること。
理解した道徳的価値から自分の生活を振り返り、自らの成長を実感したり、これからの課題や目標を見つけたりすること。
そのために、一人一人が意欲的で主体的に取り組むことができる表現活動や話合い活動を仕組んだり、学んだ道徳的価値に照らして、自らの生活や考えを見つめるための具体的な振り返り活動を工夫したりすることが必要である。

(小学校学習指導要領解説 特別の教科 道徳編より)

 授業では、主体的に学習に取り組むことができるよう、以下の手立てを考えた。
◆児童の課題意識や課題追及への意欲を高めるために、「考えてみたい」「気になる」「他の友達はどのように思うのだろう」という気持ちを大切にしたい。そのために、児童自らが感じる「問い」と教師が本時のねらいとする道徳的価値とを関係づけながら、教師が本時の課題を設定する。
◆物事を多面的・多角的に捉えることができるよう、話合い活動の時間を確保する。
 話し合うことは、自分自身の考えをより明確にしたり、相手の考えを深めたりすることができる。その話合いを深まりのあるものにするために、本学級では「つなぎ言葉」を活用している。

【児童の発言例】
「私は、~だと思います」「○○さんの考えに付け足しです」「○○さんの考えと違って」「○○さんが言いたかったことは~だと思います」「○○さんと似ていて」 他

 教師も児童の発問をさらに深めるために、切り返しの発問も意識している。

【教師の発問例】
「もう少しくわしく教えて」「どうしてそのように思ったの」「この考えについて、みなさんはどう思いますか」「自分の思いと似ているなと思うところはありますか」「これらの思いで共通しているものは」 他

◆児童自らの生活を振り返ることができるよう、「心のノート」を活用する。
 「心のノート」は、主に道徳の授業で自分の生活や考えを振り返るときに活用している。児童の思いや考えを書き残すことができるとともに、いつでも今までの自分を振り返ることができる。継続的に取り組むことで、児童の成長も感じることができる。

(5)評価

「道徳的諸価値についての理解を基に、自己を見つめ、物事を(広い視野から)多面的・多角的に考え、自己(人間として)の生き方についての考えを深める」という学習活動における児童生徒の具体的な取組状況を、一定のまとまりの中で、児童生徒が学習の見通しを立てたり学習したことを振り返ったりする活動を適切に設定しつつ、学習活動全体を通して見取ること。

(小学校学習指導要領解説 特別の教科 道徳編より)

≪大切なこと≫
◇他者との考え方や議論に触れ、自律的に思考する中で、一面的な見方から児童がより多面的・多角的な見方へと発展しているか。
◇多面的・多角的な思考の中で、道徳的諸価値の理解と自分自身との関わりの中で深めているか。

(小学校学習指導要領解説 特別の教科 道徳編より)

 本時では、道徳的価値の理解と自分自身との関わりの中では、「心のノート」を活用し、今までの自分やこれからの自分を見つめさせる。また、児童の「自己評価」を取り入れる。本時の授業への取り組みや、自分の考えを伝えることができたか、また、友達の考えから自己の見方が広がったかなどを評価する。
◆評価の方法として
・発言(話し合い)・心のノート・自己評価を活用して児童の考えについて評価する。
 「自己評価」については、5つの項目の中から、特に今日の授業でがんばったことや学んだことを2つ選ばせる。

□ 自分の考えをもち、進んで伝えることができた。
□ 友達の考えを聞いて、「そういう考えがあるんだ」「なるほどな」など、考えることができた。
□ 友達の考えを聞いて、新たな考えをもつことができた。(自分の考えが広がった)
□ 登場人物の気持ちを考えることができた。
□ 今日、学習したことについて「自分はどうかな」「自分も、似たようなことがあったかな」と、自分を振り返ることができた。

 これらを継続的に行い「個々の内容項目ごとではなく、大くくりなまとまりを踏まえた評価」「成長を励ます個人内評価」につなげていきたい。

「よわむし太郎」 教材分析表

A 場面の概要・keyword

B よわむし太郎の内面

C 発問

①1行目~3行目
<太郎の様子>
背はとても高く、力も人一倍あるのに、子どもたちからどんなにばかにされても笑っている。

②3行目~13行目
子どもたちがどんないたずらをしても、太郎はにこにこと笑っている。

・やっぱり子どもはかわいい。
・子どものことだから、いろんなことをやるもんだ。
・次はどんなことをしてくるのだろう。

③14行目~21行目
白い大きな鳥を、子どもたちと太郎は大切にしている。

・子どものためにも、この鳥を大切にしよう。
・どんどん餌をたべて、大きくなってほしい。

基本発問
子どもたちの大切な鳥を、太郎はどのような思いで世話をしていましたか。

④22行目~29行目
狩り好きのとの様が現われる。

【との様の内面】
・なぜ、なにも捕まえられないのか。

⑤30行目~38行目
との様が白い大きな鳥に向かって弓をかまえたとき、太郎は「うってはだめだ」と立ちはだかった。

・何をするんだ。・やめてくれ。
・どんなんことがあっても、うってはいけない。
・お願だ。わかってくれ。
・この鳥は、子どもたちにとっても自分にとっても大切な鳥なんだ。

⑥39行目~42行目
との様は大声をあげたが、太郎は動かなかった。

・なんとしてでも、この鳥を守るんだ。
・との様に何を言われても、この場を動くものか。
・何を言われても構わない。

⑦43行目~45行目
「助けてやってください」と、太郎は大きな涙をこぼしとの様にたのんだ。

・子どもたちが世話をしている鳥を、どうかうたないでくれ。
・子どもたちの思いをわかってくれ。大切な鳥なんだ。
・うたせてたまるか。
・なんとしてでも、守り抜こう。
・もしかしたら、この場で鳥がうたれてしまうかもしれない……そんなことがあってなるものか。
・自分もうたれてしまうかもしれないがそれでもいい。

中心発問
「どうか助けてやってください」と目から大きな涙をこぼしてとの様の前に立っていたとき、太郎はどのような思いだったでしょう。

⑧46行目~47行目
との様は、しばらくすると弓を下にむけた。

・最後まで、あきらめないぞ。
・との様にこの思いが伝わったのだろうか。

⑨48行目~50行目
との様が、城に向かって帰っていった。

・鳥を守ることができて、本当によかった。
・これで、安心だ。

⑩51行目~54行目
子どもたちが、太郎の周りに走りよってきた。

・鳥を守ることができて、よかった。
・子どもたちのうれしそうで、よかった。
・自分もうれしいよ。
【子どもたち】
・太郎はすごい。強い人だな。
・鳥を守ってくれてありがとう。
・もう「よわむし太郎」なんて言わない。今までごめんね。

基本発問
太郎の姿を見ていた子どもたちは、どのようなことを思ったでしょう。

⑪55行目~56行目
それから後は、「よわむし太郎」という名前は、この村から消えた。

(6)学習指導過程

A 本時のねらい
 自分が正しいと思ったことは、自信をもって行おうとする道徳的心情を育てる。

B 本時の展開

学習活動

・指導上の留意点 ◇評価


1 「自分が正しいと思うこと」について話し合う。
○自分が正しいと思うことを相手に伝えたり、行動に移したりできますか。
・いけないなと思うこといけないと伝えることができる。
・気持ちはあるけど、簡単にはできない。

・日常の生活で、正しいことだと分かっていてもなかなか行動に移せなかったり、勇気をもって伝えることができたりしたことを想起させる。


2 教材「よわむし太郎」を読んで、話し合う。

①子どもたちの大切な鳥を、太郎はどのような思いで世話をしていましたか。
・児童のためにも、この鳥を大切にしよう。
・どんどん餌をたべて、大きくなってほしい。

・「子どもたちのために」と、子どもたちを大切に思う太郎の気持ちを押さえる。

②「どうか助けてやってください」と目から大きな涙をこぼしてとの様の前に立っていたとき、太郎はどのような思いだったでしょう。
・子どもたちが世話をしている鳥を、どうかうたないでくれ。
・子どもたちの思いをわかってくれ。大切な鳥なんだ。
・うたせてたまるか。
・なんとしてでも、守り抜こう。
・もしかしたら、この場で鳥がうたれてしまうかもしれない……そんなことがあってなるものか。
・自分もうたれてしまうかもしれないがそれでもいい。

・相手が殿様であっても、自分が正しいと判断して行動に移した太郎の思いを考えさせる。
・さらに「太郎の中で迷いはなかったのか」「簡単にできることではないのでは」と問い、自分を信じる気持ちや正しいと思ったことは行動に移そうとする思いの強さについて考えさせる。
◇殿様にたのむ太郎の気持ちを考えることができたか。
(発言・話し合いより)

③太郎の姿を見ていた子どもたちは、どのようなことを思ったでしょう。
・太郎はすごい。強い人だな。
・鳥を守ってくれてありがとう。
・もう「よわむし太郎」なんて言わない。今までごめんね。

・今まで「よわむし」と言っていた子どもたちが、太郎の行動から感じたことや学んだことを考えさせる。

3 今までの自分を見つめる。
○自分が正しいと思うことを、行動に移したことはありますか。そのとき、どのような思いでしたか。

・「心のノート」を活用する。
◇自分が正しいと思い行動に移すことについて今までの自分を見つめ直すことができたか。(ノートより)


4 教師の説話を聞く。

・担任の中学生のときに、自分が正しいと思って行動に移したときの話をする。

3.授業記録

【導入(学習問題作り)】

T 自分が正しいと思うことを相手に伝えたり、行動に移したりできますか。
C 自分で考えはあっても、なかなか言えないなあ。
C 言えるときと言えないときがある。
→「言えるときと言えないときがある」という児童の発言から、相手が「友達だったとき」「自分より年が上だったとき」と条件を設定し、その場合の気持ちを問いかけた。また、伝えようとする気持ちを共有するために、視覚的にもわかる「心情円グラフ」を全体で活用した。
T 友達が何かいけないことをしていたときに、自分だったら教えるよという気持ちはありますか。
C 3分の2くらい。
C 4分の3くらい……。
C 友達だったらできるかも。
T では、相手が自分より年上、大人だったらどう?
C もっと青(できない)が多い。
C やっぱり心の中ではだめだよって思っているけど、それをさすがに言えない。
たとえば、ベンチを独り占めしている人に心の中では言えるけど、実際は言えない。
C いやできる!
T 人によると思うけど……今友達だったらこれくらいできるって言っていたけど(円グラフ確認)、知らない人や大人だったら(円グラフ確認)これくらいかな。
C 青の方が多いね。
→円グラフを活用して全体で確認をし、友達だったら言えるが、大人だったらなかなか言えないことを確かめた。そして、本時の授業への問題意識をもたせるために、次の発問をした。
T 「正しいことを伝える」ということは、大切なことではないですか?
→円グラフで、「正しいことは相手によってそう簡単に言うことはできない」という児童の思いと、「正しいことを伝える大切さ」という道徳的価値への意識で児童は迷い始めた。
C 年上の人たちに言えば直ると思うけど、言おうとしても言い返されちゃうかもしれない。
C 大人っていう考えだとちょっと違うのですけど、知らない人だとちょっと違う気がする。
T 何が違うの?
C できるっていうところが違う。知らない人にはなかなか言えない。
C 友達とか家族、知っている人なら気軽に話せるけど、知らない人や初めての人はそんなに話せないから、いくら正しくても言えない。
→児童の「伝えることは大切だとわかっているが、なかなか言えないときもある」という思いに共感しながら、本時の課題を提示した。
課題「自分が正しいと思うことを伝えるためには、何が大切なのか。」
教材範読後、児童の思いを問いかけた。
T どんなことを感じたり考えたりしましたか。
C 相手が殿様なのに、太郎はすごい勇気がある。
C 殿様なのに、しかも「お前もいっしょに射ってしまうぞ」と言われている中で、動かずに立ち向かえる太郎がすごい。
C 子どもたちにいたずらされていて普通に強い人だったら言い返すのに、太郎は笑って相手をしていたから本当に強い人、すごい人なんだなって。
C どうしてよわむし太郎は子どもにいたずらされていたのにニコニコしていたんだろう。
C なんで殿様の前でも立ちはだかることができたのかな。
→児童から教材に対しての気になること「殿様に言われても立ちはだかった太郎」「子どもたちからいたずらされても怒ることをせず、ニコニコしていた太郎」それはどのような思いからか、なぜそのようなことができたのかという思いがあった。
これらは、教師が本時の授業でねらうところでもあり、中心発問として「殿様に言われてまで立ちはだかった太郎の思いとは」について十分に触れることにした。

【展開】

T 太郎は、子どもから言われてもニコニコしていたよね。いやじゃなかったのかな。
C 太郎は子どものことが好きだから。子どもに言われても我慢ができた。強い人ほどやさしい。
C 子どものことだから仕方がないと思ってまったく怒らなかった。よわむし太郎は子どもが好き。子どもが悲しむ姿は見たくなかった。
T その太郎は、子どもたちと一緒に白い鳥を世話していたね。どのような気持ちで世話をしていたのだろう。
C 太郎は、子どもが好きだし、みんなと一緒に育てようと思っていた。
C 子どもが好きで、鳥がいれば子どもが喜んでくれる。
T 子どもが好きだからという気持ちが強いのかな。
→太郎の「子どもが好き」という思いを押さえ、本時の中心発問を問いかけた。
T 太郎は、白い鳥を大切に世話していました。そのような中で殿様が来て、大切な白い鳥を撃ってしまおうとします。そのとき太郎は殿様に向かって、体全身で鳥を守りました。そして、「どうか助けてやってください」と言って大きな涙をこぼして殿様に頼みました。このとき、太郎はどんな思いで殿様の前に立ちはだかったのでしょう。
~ペアトーク~
C 動物の命をなくすのもいや。子どもたちの笑顔をなくすのものいや。だから守らないと。
C 太郎は、撃たれるかもしれない恐怖はあったかもしれないけど、子どもが好きという気持ちの方が大きかった。
C 鳥が撃たれるなら、自分の命は後でもいいと、一瞬そのときは思った。
T 一瞬って?
C そのあとに、撃たれてしまったら終わりだけれど、その時はできる限りやろうと思った。
C 自分が死んだら鳥も死ぬ。でも、自分の命も大切だけど鳥の命も大切。
T 自分の命が撃たれたとしても守りたいくらい、鳥が大切ということかな。
C 子どもたちの悲しい顔が見たくない。もし撃たれたら、子どもたちもどうしてあんなことをしたんだろうっていう気持ちになって悲しむ。太郎も、悲しい気持ちになる。
→子どもたちは、「太郎は子どもたちが好きだから」「動物を守りたい」という思いからこのような行動に至ったという考え多かった。
そこで、相手が「殿様」であることをもう一度おさえた。これは、導入で児童から発言があったように“たとえ立場の異なる相手でも、正しいことを伝えることができるか”という視点と重なる。また、ねらいとする価値にも迫ることができる。
T みんなは、動物の命、子どもたちの思いを守りたいという思いでこのような行動をとったといっているけれど、相手は殿様だよ。こういうこと簡単にできますか。
C 言えない。絶対、言えない。
C 太郎もさすがに、全部が全部そういう気持ちではなく、怖さはあったと思う。でも、本当にいやなことをされたら、本当に怖さを忘れることってあると思う。ぼくもそういうことある。
C 子どもたちを笑顔にできるんだったら、何を言われても、何をされても、なんとか言おうという気持ちがあったと思う。子どもたちのため。鳥のために。
C 白い鳥の命は、子どもたちの笑顔とつながる。その笑顔を守りたい。
C 相手が殿様と忘れるくらい、そのときは鳥や子どもたちのことを考えていたのだと思う。
→児童は、たとえ相手が殿様であっても行動に移すことができた太郎の思いの強さを考えていた。また、怖さを忘れるくらい強く鳥を守ろうという気持ちであったことも児童は共感していた。
次に、その姿を見た村の子どもたちの思いを問いかけた。
T それを見ていた、子どもたちはどんな思いだったでしょう。
C 太郎は勇気がある。だから、よわむし太郎ではない。
C よわむし太郎といってごめんね。
C 本当は勇気があってやさしい。
C もうよわむし太郎とは言わない。強い太郎だ。
C 殿様にも言えるなんて、ぼくたちにはできないな。
C 勇気があってすごい。
→児童は、太郎の「勇気」「感謝」「優しさ」について、自分たちの思いを村の子どもたちの思いに重ねて伝えていた。特に、「勇気」は本時のキーワードでもあった。これは、本時の課題でもある
「自分が正しいと思うことを伝えるためには、何が大切なのか。」
についての「大切なこと」につながると考える。
その後、太郎のように強い気持ちで正しいと思ったことを行動に移したことがあるかどうかを問い、自己を見つめさせた。

~児童の心のノートより~
○たまに、歩いていたりすると、ながらスマホをしていたり、音楽を聴きながら歩いている人を見る。いけないとわかってしてしまう。なので、太郎はやっぱりすごいと思う。
○わたしは太郎のようにえらい人や年上の人に向かって注意できたことはない。理由は、年上の人は自分よりも力が強いから。でも、クラスではだいたい言えることは言っている。そこをのばして太郎のように関係なく正しいことができるようにしたい。

【終末】
(教師が中学生だったころ、「いけないことはいけない」と思って行動に移した

4.考察

 児童は「自分が正しいと思ったことは、自信をもって行う」ということについて、自分とのかかわりで多様な視点から考えていた。
 本教材の太郎が考える「正しいこと」とは、「相手が誰であろうと、自分が守るべき大切なものを守り通すこと」であると考える。ここでは、相手が殿様であろうと誰であろうと、子どもたちが大切にしていた鳥を守り通すことである。自分の命までも討たれるかもしれない中、そう簡単にできることではないが、殿様の前に立ちはだかった太郎は、それだけ「勇気」「優しさ」そして「強さ」があることを全体で話し合うことができた。
 また、教材を通して本時の課題である「自分が正しいと思うことを伝えるためには、何が大切なのか」を自分とのかかわりで考えることができた。児童は太郎の姿から「勇気」「優しさ」「強さ」の外にも「守るべきものがある」ということも伝えるための支えとなることに気付くことができた。そして、「自分もそうでありたい」というこれからの思いをもつ児童もおり、それぞれの納得解を感じることができた授業だった。
 今後も引き続き児童の思いを大切にしながら、児童が物事を多面的・多角的に考え、道徳的諸価値の理解と自分自身との関わりの中で深めることができるよう授業を工夫していきたい。

◆座席表指導案

心を揺さぶる教材との出会い ~教材「いのりの手」の実践を通して~(第4学年)

1.教材との出会いを大切に

 児童が道徳の時間を楽しみ、友達と語り合い、よりよい学びにつなげるためには、心を揺さぶる教材との出会いは不可欠です。児童と教材との出会いを大切にした工夫を報告します。

①教材提示はドラマチックに!
 導入では児童の作品へのイメージを膨らませるために、「祈る手」の絵とハンマーを用意しました。「祈る手」の絵は、額縁に入れ、イーゼルに飾り、布をかぶせておきました。授業前から児童の関心を引きつけておくためです。また、ハンマーは事前に児童に握らせ、重さを実感させました。その上で、教材提示の途中に指導者が振り上げる動作を行えば、ハンスの苦労を想像する助けになると考えました。
 教材提示は、プレゼンテーションソフトとプロジェクターを使って、スクリーンに場面絵を映します。そして、語り口調は穏やかに、児童の目を見ながら、ゆっくり教材を読み聞かせます。時には、指導者が作品の動作化をしながら教材を語ります。物語のクライマックスには、BGMを使い、雰囲気を盛り上げました。

②図工の先生にも協力を!!
 教材に出てくる「祈る手」を含めた作品やアルブレヒト・デューラーの説明を図工専科の先生にしてもらいました。専科の先生が作品や人物の紹介を行うことで、児童にデューラーが世界的に有名な画家であることを深く伝えることができると考えたからです。そうすることで、教材への関心や理解が深まり、児童が教材の世界に浸りやすくなると考えました。

2.実践報告

(1)主題名 「大切な友達」  B[信頼、友情]

(2)教材名 「いのりの手」(日本文教出版)

(3)ねらい 友達と互いに理解し、信頼し、助け合う心を育てる。
 ハンスの友情に応えようとするデューラーの気持ちを、自分との関わりで考えることで、友達のかけがえのなさに気付き、その存在を大切にしていこうとする道徳的心情を育てる。

(4)学習指導過程

学習活動
○主な発問 ・予想される児童の反応

◇指導上の留意点 ☆評価


1 教材への導入を図る。
○この絵の手は、どんな人の手だろう。
・祈っている手
・何かをつかもうとしている手
・何かをお願いしている手
・外国人の手

◇「祈る手」の絵画を提示する。
◇図工専科の先生に、「祈る手」「アルブレヒト・デューラー」「代表作」についての専門的な説明を受けることで、教材への関心を高める。


2 教材「いのりの手」を読み、話し合う。
○「自分でよいと思うまで、しっかり勉強したまえ。」という励ましの手紙とお金をもらった時、デューラーはどんなことを考えたのでしょう。
・いつもぼくのためにありがとう。(日頃の感謝)
・なんでぼくのためにこんなにしてくれるのだろう。(疑問)
・ハンス、なんていい人なんだ。(ハンスへの賞讃)
・ハンスの手紙に勇気をもらった。もっと頑張ろう。(鼓舞する気持ち)
・ハンスは本当は勉強したいだろうな。申し訳ない。
・なかなか代われない。ごめん。(謝罪)
・だいじょうぶかな。(心配)

◇教材提示前に登場人物を簡単に紹介し、デューラーの気持ちになって話を聞くように伝える。
◇教材提示は、ICT機器を使って指導者の語りによって行う。
◇初発問は、児童による相互指名で行う。
◇勉強し始めてから、長い年月がたったという事実を押さえた上で発問を行う。
◇ハンスへの感謝の気持ちがあることを確認する。また、この時のデューラーのもっと勉強していたいという気持ちも同時に気付かせる。

○ハンスの手をにぎりしめたまま、おいおいと泣きだしたデューラーはどんな気持ちだったのでしょう。
・こんな手になってしまったのか。ぼくのせいだ。(事実を知ったことへの驚き)
・ぼくは、もっと早く帰ってくるべきだった。君の夢をうばってしまった。何てことをしてしまったのだ。(後悔・反省)
・許してくれ、ハンス。(謝罪)
・こんな手になるまで、ぼくのために働いてくれていたのか。この手のおかげで、ぼくの成功があったのか。ありがとう。(感謝)

◇第2発問に入る前に、「ごつごつした手」ではどうして絵筆がもてないのか想像させる。
◇ハンスがデューラーのために夢をあきらめた事実を押さえる。
◇第2発問は教師が意図的に指名する。
◇デューラーの罪悪感による自分の行いへの後悔の念や、謝罪の気持ちがあったことを想像させる。

◎デューラーはどんな気持ちを込めて、ハンスの手を描いたのでしょう。
・ぼくを助けてくれたこの手を忘れないように絵を描こう。(友情)
・この手のおかげで、ぼくの成功があった。(感謝)
・こんな手になってしまったのか。ぼくのせいだ。ごめんなさい。(謝罪)
・ぼくは、もっと早く帰ってくるべきだった。(反省)
・君の夢を奪ってしまった。(後悔)
・絵が描けなくなったハンスの代わりに絵を描いていこう。(決意)

◇謝罪の考えに対して、「ハンスは怒っているのか。」と問い返すことで、心が満たされているハンスの気持ちを想像させる。
◇児童の発言に、「デューラーがハンスの手をなぜ題材としたのか。」と補助発問することで、デューラーのハンスへの思いをより考えさせることができる。
☆ハンスの友情に対し、少しでも自分ができることを誠意を込めて行おうとするデューラーの気持ちを自分との関わりで考えることができたか。(発言)


3 自分の友達について振り返る。
○友達の事を思い出してください。「友達っていいな。」って思ったことは、どんなことでしたか。
・わたしは、その子の笑顔が好きです。わたしが困っている時や悲しんでいる時に、その笑顔で励ましてくれるからです。これから友達が困っている時は、わたしも笑顔で元気にさせたいです。
・音楽クラブで友達になった子は、楽器が壊れたら直してくれたり、楽器洗いの時はどこに何を塗ったらいいのか教えてくれたりして、嬉しかったです。ずっと友達でいたいです。そして、その友達に教えてもらったことを、これから入ってくる3年生に教えてあげられたらいいと思います。

◇道徳ノートを活用し、学習の積み重ねを大切にする。
◇相手の何かしらの行為や気持ちに対して、何か返してあげたいという振り返りをしている児童を指名し、発表させる。
☆友達の事を振り返り、その大切さについて考えることができたか。(道徳ノート)


4 教師の説話を聞く。

(5)本時の評価
○ハンスの友情に応えようとするデューラーの気持ちを考えることができたか。(中心発問)
○友達のかけがえのなさに気付き、その存在を大切にしていこうとする心情をもつことができたか。(道徳ノート等)

(6)板書

(7)授業記録 ※抜粋

【導入】

T (白い布を取りながら)みなさん、この絵を見てどう思いますか。
数名の児童 「拍手」「高級そう」「うまい」「有名人の手」「手が大きい」「いただきます」「おそうしきの手」
T 実はこの学校にはこの絵に詳しい先生がいます。図工の先生にこの絵の説明していただきます。
~図工専科による説明~
T 今日は、この「いのる手」を書いたデューラーにまつわるお話です。デューラーとハンスという友達が出てきます。デューラーの気持ちをよく考えながら、お話を聞きましょう。

【教材提示】(部屋を暗くし、提示する。)

【展開前段】

T (ストーリーの振り返りをして、場面絵を示しながら)
お金と一緒に手紙をもらったデューラーはどんな気持ちだったのだったのでしょう。
児童の
主な反応
早く終わらせて、ハンスにかわらなきゃ。ハンスありがとう。ハンスは何て優しいんだ。自分は絵、ハンスはつらい仕事、なのにこんな手紙を。ありがたい。ハンスは大丈夫かな。ハンスが先に勉強すればよかったのに。勉強しなきゃ。ハンスが頑張ってくれているから、自分も頑張ろう。
T やっと終わってハンスと出会ったデューラー。抱きしめあったのかもしれないね。しかしその時、デューラーはおいおいと泣きだした。どうしてだっけ。
児童 ごつごつとしていたから。
T うん。どんな手なんだろう……。マメがいっぱいできているのかな。こわばって、うまく開かなかったり、伸ばせなかったりしたのかな。絵筆が握れないってどういうこと。
児童 上手く動かない。しっかり筆がもてない。
T
うん。その手をにぎったデューラーは、どんな気持ちだったのだろう。
児童の
主な反応
ハンスを先に勉強させておけば、こんなことにはならなかった。早く絵を終わらせればよかった。
ごめんね、ハンス。なんで早く帰らなかったのか。こんなになるまで、自分は待たせてしまったのか。
T ハンスの手は急にこんな手になったのかな。ハンスの夢はもともと何だったのかな。
児童 絵かき。
T 「ハンス、君の手をぼくにかかせてくれ。」というデューラーは言った。「心をこめて」描いたんだよね。
どんな心をこめて描いたのかな。
(心をこめて と板書する。)
児童の
主な反応
ハンスの筆の持てない手の代わりに。がんばって働いてくれた、ありがとう。
自分が有名になるまでがんばり続けてくれて、ありがたい。ハンスの手を忘れたくない。
自分のために頑張ってくれた手を残したい。
T ふつうは顔を描くんじゃないかな。なんで手を描いたのかな。
児童 今までこんなになるまで頑張ってくれた。自分を助けてくれた手だから。
T ハンスは仕事のために頑張っていたのかな。
児童 デューラー!!
T ハンスはデューラーにとってどんな存在だったのかな。
児童 大切。
T みなさんにも、大切な友達はいますか。その子の事をすこし考えてみて下さい。どんな所が好きですか。その子とどんな風にこれから付き合っていきたいですか。ワークシートに書きましょう。
C1 わたしは友達の笑顔が好きです。わたしが困っている時や悲しんでいる時にその笑顔ではげましてくれるからです。これから友達が困っている時は、わたしも笑顔で元気にさせたいです。
C2 音楽クラブで友達になった子は、楽器がこわれたら直してくれたり、楽器洗いの時はどこに何を塗ったらいいか教えてくれたりして、うれしかったです。ずっと友達でいたいです。そして、その友達に教えてもらったことを、後から入ってくる3年生に教えてあげられたらいいと思います。
C3 いつも笑顔でニコニコして優しいところ。放課後や中休み、昼休みに一緒に遊んで今よりももっと仲よくなりたいです。中学校に行っても仲良くしたいです。

3.考察

 教材提示に際して、事前に何度も資料を読み、暗唱できるほどになりました。そのため、児童の顔をじっくり見ながら余裕をもって教材提示を行うことができました。どの子の顔も真剣に画面を見つめていました。多くの児童が、授業中の発言に意欲的になりました。
 4年生の終了時に、「道徳の時間で心に残った教材は?」と聞くと、多くの児童から、「いのりの手」という声があがりました。