小学校 道徳

小学校 道徳

道徳ことはじめ 第2号(学年共通)
2018.04.16
小学校 道徳 <No.024>
道徳ことはじめ 第2号(学年共通)
東京都小金井市立東小学校 指導教諭 田上由紀子

今回のテーマは、道徳の時間の授業づくりについてです!

道徳の授業の展開が難しい。どうしていけばいいんでしょうか?

国語科の読み取りのようになってしまったり、途中で、「あれ?ねらいからずれてしまっているなあ。」と困ってしまったり……。どうすればいいんだろう?

 道徳の教材では、いくつもの道徳的価値がふくまれています。その授業のねらいとする道徳的価値を授業者がはっきり意識をして臨むことが大切です。

道徳の主題と主題名

■道徳の主題とは……
授業者が授業で何をねらいとするか、その達成のためにどのように教材を活用するかのまとまりを示すもの。

主題は、ねらいとする道徳的価値とそれを達成するための教材によって構成される。

■道徳の主題名とは……
主題名は、ねらいとする道徳的価値と教材で構成した主題を端的に表すもの。

*内容項目や教材名をそのままつけるのは好ましくない。

主題名は、児童がそれを一目見ただけで本時の学習内容が分かるものにする工夫が必要。

→児童が考える上での視点となり、授業がぶれにくくなる。
(月刊「道徳教育」明治図書 玉川大学客員教授 後藤忠先生のご指導から)

ねらいを具体的に

 第1号でもねらいについては触れましたが、教材に絡め、具体的にねらいを立てる
 →例えば、「ロレンゾの友達」で「友情・信頼」の内容項目で行う場合、学習指導要領におけるねらいの中の「男女協力して助け合う。」のところは、この教材では扱いません。教材の中心となる場面に絡めていくことで、ねらいとする価値により深くせまることができます。

ねらいの語尾をよく吟味する

学校における道徳教育は、道徳性を養うことを目指して行われます。一方、道徳の時間(道徳科)では道徳的実践力を育成します。道徳的実践力とは、道徳的心情、道徳的判断力、道徳的実践意欲と態度を包括するものです。これらは、道徳性の諸様相と言われる。(「道徳授業で大切なこと」東洋館出版社 元文部科学省初等中等教育局教育課程課教科調査官 赤堀博行先生著から)

道徳的心情

道徳的価値の大切さを感じ取り、善を行うことを喜び、悪を憎む感情。人間としてのよりよい生き方や善を志向する感情であり、道徳的行為への動機として強く作用するもの

道徳的判断力

それぞれの場面で善悪を判断する能力、人間として生きるための道徳的価値が大切なことを理解し、様々な状況下において人間としてどのように対処することが望まれているかを判断する力。的確な道徳的判断力をもつことにより、それぞれの場面において機に応じた道徳的行為が可能になる。

道徳的実践意欲

道徳的心情や道徳的判断力によって価値があるとされた行動をとろうとする傾向性を意味するもの。道徳的心情や道徳的判断力を基盤とした道徳的価値を実現しようとする意志の働き

道徳的態度

道徳的実践意欲と同様に、道徳的心情や道徳的判断力によって価値があるとされた行動をとろうとする傾向であり、道徳的心情や道徳的判断力に裏付けられた具体的な道徳的行為への身構え

(「道徳授業で大切なこと」東洋館出版社
 元文部科学省初等中等教育局教育課程課教科調査官 赤堀博行先生著から)

 赤堀先生の著書においても、「道徳的実践力とは、子どもの将来に生きて働く力であり、内面的な資質です。1時間の道徳の時間の指導で子どもの変容を目指すということではなく、年間35時間(第1学年は34時間)、小学校段階では、209時間の指導を、その特質を踏まえて丹念に指導することによって、潜在的に、持続的な作用を行為や人格に及ぼすものであると言われる」と述べられています。
 このようなことを踏まえていくと、道徳的心情は、あらゆる道徳性の基盤となります。道徳的心情が育っていないのに態度をねらってしまうということはなかなか難しいところがあります。よって、ねらいの語尾についてもよく吟味することが大切です。

教材分析をしっかり行う

 発問構成には教材分析が不可欠です。的を射た発問を作るためには欠かせません。発問は、経験や勘で作るのではなく、その根拠を明確にして作るものです。
 教材の文章の各行の全てに1から通し番号を打ち、主人公の気持ちが微妙に変化するところで細かく場面を分けていきます。理由は、児童がピンポイントで考えられる方が漠然とした場面を考えるより考えやすく、話合い活動もかみ合いやすくなるからです。話合い活動も活発になります。そして、各場面における主人公の気持ちをすべて出し尽くします。これによって、予想される児童の反応を把握できます。そして最初に、どの場面が一番本時のねらいにせまれるかを考え、中心発問場面としていきます。

(月刊『道徳教育』明治図書 玉川大学客員教授 後藤忠先生のご指導から)