Webマガジンまなびと:「学び!とESD」Vol.06

Webマガジン:「学び!とESD」Vol.06 “ミャンマーにおける持続可能な開発のための教育(ESD)の道 ―持続可能な環境を目指すローカルビジネスの力―”を追加しました。

ミャンマーにおける持続可能な開発のための教育(ESD)の道 ―持続可能な環境を目指すローカルビジネスの力―

 現在、持続可能な開発のための教育(以下、ESD)はアジア諸国でも注目され、教育を通して持続可能な社会を目指そうとする動きが加速しています。その認識は教育関係者だけでなく、政府関係者や研究者、事業家などにも広がっています。人々がようやく地球や社会の持続可能性に目を向け始めたのではないでしょうか。
 ESDは人間の考え方や行動を持続可能な未来を見据えたものへと変容させ、一人ひとりが多文化を尊重ながらも気候変動や生物多様性の損失などの問題解決に携わる、変化の担い手(change agent)を育みます。
 読者の皆さんはミャンマーという国はご存知でしょうか。人口が約5,400万人の途上国です。途上国ですので経済、教育、健康などの分野で他の国と比べると発展は遅れています。しかし、そのような国でもESDに関する動きが見られるようになりました。例えば、教師にESDについてのワークショップを行なったり、ザガイ大学がESDに関する意識調査を行なって研究をしたりしています。135の民族が暮らすミャンマーでは文化の多様性を尊重することはとても重要ですが、それは決してたやすいことではありません。ここに、ミャンマーでESDを推進することの重要性を見出すことができるでしょう。
 持続可能な社会に向けた人間の知識、スキル、価値観の変容にとって教育という視点はとても重要ですが、ミャンマーにおける教育の視点は学校教育だけに留まりません。子どもたちの中退率は、小学校でも約19% 近くあるため、学校教育だけではなくノンフォーマル教育も重要なのです。
 そこで重要な役割を果たしているのは、気候変動や地球温暖化などに関心をもち、環境教育を実践しようとしているローカル・ビジネスやボランティア活動です。現在ミャンマーでも環境問題に意識を向ける若者や事業家は増えています。その若者たちは、中退した子どもたちにリサイクル商品で創作した商品をマーケットで販売できるようになるまでサポートを行うボランティア・グループやNGO、NPOなども運営しています。
 また、持続可能な環境に向き合うビジネスも増えました。たとえば、レジ袋の代わりに紙袋を使うお店、リサイクルで作ったアクセサリーを販売するマーケットもできました。
 持続可能な環境に向き合うビジネスの1つにHLA DAY(ラディ)というローカルビジネスがあります。HLA DAYは職人の生活をサポートするための仕組みがあり、経済的な支援事業のトレーニングとともに、持続可能性に価値をおいた市場を提供する会社です。職人の多くは、障害をもつ人々や社会的に排除された人々、貧困の克服に苦労している人々などです。また、HIV患者やゲイの人々が集うマイノリティの人々もいます。HLA DAYはそのような人たちに教育や雇用の機会を提供しています。
 HLA DAYには約60のアーティスト・グループがあり、約700人のスタッフがいます。職人のニーズ、関心、アイデアがHLA DAY活動の中核です。優れた商品づくりは、彼らの仕事の誇りでもあります。商品を通して、彼らは困 っている人々のコミュニティに大きな力を与え、彼らの生活を変えることに寄与しています。過去数年にわたって、彼らは経済的な事業のモデルを設計し、機会を創出し、生み出すことに成功してきました。
 HLA DAYの製品はすべてミャンマー人によって作られています。彼らは地元の素材を調達し、使用することに誇りを持っています。また、持続可能性を促進するパートナーシップの構築にも注力しています。たとえば、織物担当のスタッフと協力して織工から直接購入する生産者を奨励したり、再生可能なプラスチック素材の使用など、環境の持続可能性に焦点を当てたグループと協力したりしています。また、オーガニックのコーヒー、ジャム、蜂蜜などの食物も販売しています。社員にもお客様さんにも環境への意識を啓発するようなビジネスは持続可能な社会になるために役立つと言えるでしょう。
 私たちは持続可能な社会への長い道のりを歩み始めたばかりですが、人々が一緒に力を合わせれば、一歩ずつ確実によりよい未来へ近づくことができると筆者は信じています。

【参考文献】
HLA DAYホームページ
https://www.hladaymyanmar.org/artisanstory/golden-queens
UNESCO Bangkok (2017): Training in Education for Sustainable Development Reaches 400 Teachers in Myanmar
https://bangkok.unesco.org/content/training-education-sustainable-development-reaches-400-teachers-myanmar

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その手に触れるまで

© Les Films Du Fleuve – Archipel 35 – France 2 Cinéma – Proximus – RTBF

 1時間24分ほどの短い映画である。まだ13歳の少年が、イスラムの過激思想に洗脳され、「聖戦」を実行しようとするドラマで、全編、緊張感に満ちている。「その手に触れるまで」(ビターズ・エンド配給)の舞台は、ベルギーの首都ブリュッセルの西、人口10万人足らずの町モレンベークで、イスラム教徒が多く住んでいる。
 13歳になるアメッド(イディル・ベン・アディ)は、ゲーム好きのごくふつうの少年だ。ところが、いま、イスラム教の聖典であるコーランに夢中になっていて、近くのモスクに足しげく通っている。
 アメッドは、識字障害の克服でお世話になったイネス先生(ミリエム・アケディウ)にも、宗教上の理由で、挨拶の握手もしない。これを知ったアメッドのママ(クレール・ボドソン)は、アメッドを叱るが、アメッドはママに、「飲んだくれ」とアラビア語でつぶやく。父が家出して以来、ママは毎晩のように酒を飲んでいるからだ。
 アメッドは、信頼しているイスラムの導師(オスマン・ムーメン)に、イネス先生のアラビア語を歌で学ぶ授業の話をする。導師は言う。「聖なるアラビア語を、歌で学ばせるとは冒涜的だ」。そして、アメッドに問う。「このような背教者には、どうする?」。「排除すべき」とアメッド。導師は言う。「聖戦の標的だ」と。
© Les Films Du Fleuve – Archipel 35 – France 2 Cinéma – Proximus – RTBF アメッドは、ナイフを忍ばせ、標的のイネス先生に近づいていく…。
 映画の舞台になったモレンベークは、過激なイスラム教徒が多く住んでいて、2015年のパリ同時多発テロ事件や、2016年のブリュッセル連続テロ事件にも、深く関わっていたらしい。
 宗教は、もともと、どれも寛容であるべきと思う。ところが、いろんな宗教の歴史は、そうはいかない。同じ宗教でも、親子、兄弟がいがみあい、戦いつづける歴史がある。イスラムとて、穏健な人たちもいるが、過激な行動を実行する人たちもいる。
 洗脳されるのは、なにも若い人たちだけではない。たまたまコロナ騒ぎとやらで、いつもより注意深く、国会中継を見ていた。いまの政府の一連の対応は、ひどい、としか言いようがない。一部の新聞やテレビは、政府に不都合なことは、詳細に報道しない。むしろ、政府に都合のいいように、事実を切り取ってしまう。多くの人が、いまの国会や政府の実情を知れば、内閣の支持率は40%前後もあるはずがない。いまの政府は、多くのメディアを懐柔し、あきらかに大衆を洗脳しているのではないか。
 アメッドは、一度、イネス先生の襲撃に失敗する。それでもなお、「聖戦」を信じている。映画は、だから、ドラマに接した観客に、多くの情報を受け入れ、どのような人生を選択するかの、大きな問いを投げかける。
© Les Films Du Fleuve – Archipel 35 – France 2 Cinéma – Proximus – RTBF アメッドを演じたイディル・ベン・アディの演技が、圧倒的にいい。ことに、あまり変化のない、思い詰めたような表情なのに、微細な感情の変化を、見事に表現する。アメッドは、イネス先生の襲撃に失敗した後、少年院に入れられる。農場での更正プログラムの一環で、農場作業に従事するシーンがある。アメッドは、農場主の娘ルイーズ(ヴィクトリア・ブルック)と、ひとときの時間を過ごすが、ほんの一瞬の微笑に、とても素直な表情を見せる。
 ラストシーンが、多くを示唆し、唐突に終わる。監督、脚本は、ベルギーのダルデンヌ兄弟だ。「息子のまなざし」や、「ある子供」、「ロルナの祈り」、「少年と自転車」、「サンドラの週末」など、多くの傑作を撮り、どの作品も、社会的に恵まれていない人たちに、暖かく寄り添う姿勢を貫いている。もはや、映画というジャンルを超えたメッセージがあり、いまという世界の現実に、鋭い問題提起を続けている。
 劇中、例によって効果音などは、ない。ラストで流れる音楽は、シューベルトのピアノ・ソナタ第21番の第2楽章である。シューベルトが最晩年に行き着いた、静謐で、崇高な、美しい音楽。緊張感いっぱいの第2楽章が、アメッドの未来を暗示するかのよう。
 いまの時代、必見の映画。多くの人に、強く、広く、お勧めしたい。

2020年6月12日(金)より、ヒューマントラストシネマ有楽町新宿武蔵野館ほか全国順次ロードショー!

『その手に触れるまで』公式Webサイト

監督:ジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ
出演:イディル・ベン・アディ、オリヴィエ・ボノー、ミリエム・アケディウ、ヴィクトリア・ブルック、クレール・ボドソン、オスマン・ムーメン
エンディング曲:フランツ・シューベルト「ピアノ・ソナタ第21番変ロ長調 D.960 第二楽章 Andante sostenuto」(演奏:アルフレッド・ブレンデル)
2019年/ベルギー=フランス/84分/1.85:1/英題:YOUNG AHMED/原題:LE JEUNE AHMED
後援:ベルギー大使館
配給:ビターズ・エンド