わたしのおすすめ教材(5)「くもの糸」(第5学年)

1.学習指導案

(1)主題名 よく考えて生活する  A[善悪の判断、自律、自由と責任]

(2)教材名 「くもの糸」(出典:日本文教出版「新・生きる力」)

(3)ねらい
 せっかくつかんだチャンスを生かすことなく、再び地獄に落ちたカンダタの心境を考え、自分勝手にならず自律的に判断し生活していこうとする心情を育てる。

(4)展開の概要

学習活動
(○主な発問 ・予想される児童の反応)

○指導上の留意点 ◇評価


1 自分勝手な行動について考える。
○自分勝手な行動をして失敗してしまったことは、どんなことですか。

○日常での生活を振り返る。
○主題名を板書してから範読する。




2 教材「くもの糸」を読んで話し合う。
○くもの糸を登っているとき、カンダタはどんな気持ちだったでしょう。
・これで地獄から出ることができる。
・糸が切れないように慎重に登らねば。
・善いことをしたから糸が降りてきた。

○カンダタの気持ちを考えていくことを伝える。
○BGMをかけながら範読する。
○糸が降りてきたわけを考え、地獄からようやく抜け出せる機会を得たカンダタの気持ちを押さえる。
○細くて弱いくもの糸なので、切らないように細心の注意を図っているカンダタの気持ちに気付かせる。
(補)なぜ、糸が降りてきたのだろう。
(補)落ちたら、どうなるの。

○皆が登ってこようとする姿を見て、カンダタはどんなことを思ったでしょう。
・やめてくれ、糸が切れるじゃないか。
・俺の糸だぞ、勝手に登るな。

○一人でも切れそうな糸であるということ、自分の糸であるという意識のカンダタの気持ちをつかませる。
○糸が降りてきたわけも考えず、短絡的に怒りに任せて行動しようとするカンダタの心に気付かせる。

◎再び、地獄の底に落ちたカンダタは、切れた糸を見上げて、どんなことを考えたでしょう。
・お前たちのせいで切れたじゃないか。
・自分のことばかり考えていたせいだ。
・よく考えなかったことに後悔した。

○自分のことばかり考えていたことに気付かせ、後悔の念をつかませる。
○糸が切れたのは、皆のせいばかりにしていたという発言ばかりの場合、糸が切れた本当の原因について考えさせる。
(補)「おしゃか様はどんなお気持ちで糸を切ってしまったのでしょう。」
◇再び地獄に落ちたカンダタを通して、よく考えて行動することの大切さに気付くことができたか。(発言)




3 これまでの自分を振り返る。
○自分勝手にならず、よく考えて行動してよかったなと思うことは、どんなことですか。

○ワークシートに考えをまとめることによって考えを深める。
◇自分勝手の愚かさやよく考えて行動することの大切さを、自分との関わりで考えることができたか。(記述)


4 教師の説話

○余韻をもって終える。

2.授業への工夫とこれまでの経緯

 3年前の授業を思い出し当時のことを記してみます。その授業では、範読の際にBGMを活用することにより、児童がより教材に浸ることができるように取り組みました。そして、発問時の教師の動作化にも取り組みました。

(1)範読 ~BGMと読み方~
 臨場感を高めるため、教材によっては範読の際にBGMの活用をしています。テレビショッピングにて、クラッシック曲のCD10枚組を購入しました。2万円近くしましたが、道徳の授業のためにならと思い切りました。曲の前半部分だけですが、CDに収まっている全ての曲を聴きました。その中で、たった一つだけ、「これっ」というものを見つけました。「くもの糸」のお話にぴったりのものです。
 長いお話のため、その1曲では足りません。そこで、同じ曲を2回かけることにして、途中で、最初からかけ直すことにしました。どこで、かけ直すかがポイントとなります。場面が変わるところを中心に、何度も読みながらの試行錯誤でした。そして、ついに掴むことができました。この場面で、この曲調。この文面でこの曲調。まるで、一つの曲が、この「くもの糸」のお話のために、話の流れに沿って曲が作られているように感じました。
 範読は、静かに淡々と読むことにしました。強調したい言葉、例えば、「ほそい」を「ほそーい」と長くしてみました。また、文の途中で、どこで間を置いたら効果的なのかを考えながら範読の練習を重ねました。赤ボールペンを手に持ちながら、ポイントを書き込んでいきます。
 後半のカンダタの気持ちを表すところには抑揚をつけて読むことにしました。カンダタが再び血の池に落ちてからは、逆に、静かにゆっくりと読むことにしました。

(2)発問時の教師の動作化
 発問を効果的にするために、発問の際に教師による動作化を行いました。「くもの糸」における教師の動作化は先輩から教わりました。くもの糸を手繰っていくところを動作化します。くもの糸を手繰っていく様子を何度も練習しました。さらに、カンダタの顔の表情も付け加えていきました。ある日の休み時間のこと。児童が家庭科で終わらなかった裁縫をしていました。なかなか針に糸を通すことができず、私のもとへ来ました。私も目が悪いことから、上手く通せるはずがありません。そこで、糸通しと虫眼鏡を使って通すことができました。その夜のことです。帰りのバスを待っていたときに、ふと考えました。そうだ、糸を教室の天井から吊るせば、くもの糸に見える。早速次の日に、教室の天井に透明なガムテープを貼って糸を吊るしてみました。そして、研究授業を前に、隣の学級で事前授業を行わせていただきました。
 授業後、ある児童が言いました、「糸が切れるのに、天井から糸が外れるのはおかしい。」と。糸を垂らすのはよい考えだったのに、どうしよう。そのためには、どうしたらよいのか。夜の教室で何度も試行錯誤を重ねていきましたが、うまくいきません。毎日、通勤時にバスを待っている間、考え続けました。そして、ある日の夜、ふと閃きました。次の日、教室で何度も試してみました。そして、ようやく完成するに至りました。
 6年生が4学級あったことから、他学級で事前授業を再び行いました。上手くいきました。しかし、研究授業の本番では、糸が切れずに大失敗してしまいました。
 それから3年の月日が流れ、今回の授業となります。

3.授業記録

【導入】

T 自分勝手な行動をして、失敗してしまったことは、どんなことですか。
01さん お姉ちゃんと取り合いをしていて、お姉ちゃんを前に押しのけて自分が取ろうとすると、転んでしまった。
02くん おやつのケーキを、姉弟がいるのに隠して独り占めにしようとしたら、結局ばれてしまって、おやつがなしになってしまった。
03くん お母さんにハムスターの病院に一緒に行ってと頼まれていたけど、遊びたかったのと面倒だったので遊んじゃったら、怒られてしまった。
04くん じゃんけんして後出しをしたので、怒られてお菓子を取られてしまった。
05くん お兄ちゃんと遊んでいて、喧嘩になってしまった。
06さん 階段で弟がおもちゃを持っていて、急に脅かしたらびっくりして、落として壊してしまって、お母さんに怒られた。

【展開前段】

空から、くもの糸が降りてきた。そして、カンダタがくもの糸を登り始めることを伝える。
教師の動作化:糸を見つめる → 糸を見て喜ぶ → 糸を掴むふりをして一生懸命登る

このときの、カンダタはどんな気持ちか。
04くん この糸をのぼっていけば、また地上に出られるかもしれない。
05くん この地獄から逃げ出せるから、頑張って登ろう。
07くん このくもの糸をたぐっていけば、極楽に出られるだろう。
06さん このくもの糸を垂らしてくれたのは誰だろう。
08さん 06さんと似ていて、このくもの糸を垂らしてくれたのは、神様のお釈迦様かな。
09さん 05くんと似ていて、この地獄から抜け出せるなんて、ラッキーだ。
10さん 糸を垂らしてくれてありがとう。ここから、抜け出せるので、嬉しい。
11くん 地獄を抜け出すために、何でもするぞ。
12さん これで地獄から抜け出せるぞ。やったー。
13くん 地獄から抜け出せたら、もう悪いことは何にもしない。
14さん もう、地獄で辛い思いなんかしなくていい。
01くん 俺の上に降りてきたから、この糸は俺のために降りてきたんだから、他の者は寄せ付けない。
15さん ここから出られれば、もう悪いことはしない。
02くん 人を殺したり、家に火をつけたりしなければ、こんな苦労をせずに済んだ。
16くん 極楽につながっていれば、最高だ。
17さん 今までずっといっぱい悪いことをしてきて、一度だけ蜘蛛を助けたことがあったから、その蜘蛛が助けてくれたのかな。

【第2発問】

T 一生懸命登っていました。落ちたら、どうなるの?
C (口々に)地獄に落ちる。
教師の動作化:糸を掴むふりをしながら登る → 休憩する → 下を見る → 驚く
降りろー! この糸は俺のものだ 降りろー! このときの気持ちは。
18さん 俺のための糸なんだから、何で登ってくるんだ。
19さん 皆が登ってきたら、糸が切れてしまう。
20さん 俺のために降りてきたんだから、何で登ってくるんだ。
21さん 俺の上に降りてきたんだから、登るな。
22くん 俺の糸だ。お前らが登る権利はない。
23くん 俺の糸だ。早く降りてくれ。
24くん 早く降りろよ。糸が切れちゃうだろう。
25さん お前らが登ってきたら、俺も落ちてしまうけど、お前らも落ちてしまうぞ。
26くん 俺のために降りてきたから、この糸は俺のものだ。何でお前らが登ってくるんだ。
T では、他に発言はあるかな。
10さん やっとこの地獄から抜け出せるのに、皆登ってきたら落ちてしまうから、自分だけでも助かりたい。
04くん 俺が一番最初に糸を見つけて登ったんだ。お前らは降りろ。
08さん ぼくはくもを助けたから、自分の上に糸が来たけど、皆は違うので連なってきてほしくない。
05くん 俺が助けたくもなのに、何でお前らが登ってくるのだ。何にもしていないのに登ってくるのはずるい。お前たちは助けたのか。
07くん これは俺のための糸だ。勝手に登ってくるな。
11くん どうか、切れませんように。
25さん 08さんに似ていて、俺はくもを助けたのに、お前らは何か助けたのか。
12さん 俺が最初に登ったんだし、お前らは降りろ。
13くん 自分は地上にいるときに、いいことしたのに、お前らは何もしていない。
01くん やっと地獄から抜け出せるのに、藁にもすがる思いで登ってきているのに、ここで糸が切れてしまえば、これまでの苦労が水の泡になってしまう。
02くん 俺の上に降りてきた一本の糸なのに、お前らには関係ない。

【中心発問】

教師の動作化:「降りろー! この糸は俺のものだ 降りろー!」 → 糸を引っ張る → 糸が中ほどで切れる → 回りながら床へ尻もちをつく

地獄で切れた糸を見上げて、どんなことを考えたのだろうね。
09さん あんなこと言ったから、ばちがあたったんだ。あー、あ。
19さん せっかく登ったのに、あともう少しで地上に出られたのに、残念だ。
20さん こんなことを言ったから、糸が切れたんだ。
01くん せっかくの極楽への道が、俺の一言で途切れてしまった。いったい何てことをしてしまったのだろう。
02くん 切れるんだったら、俺の下で切れてくれればよかったのに。
27さん 結局、また地獄か。
03さん あいつらにも順番で登らせてやればよかった。
16くん 地獄の針の山に刺さってしまう。
25さん 03さんと似ていて、協力して順番に登ればよかった。
05くん 今の自分に何が悪かったのか教えてくれ。
T 協力して皆で登ればよかった。でも、糸が切れてしまったのは、皆が登ってきたせいかな?
20さん 自分の言葉で切れてしまった。
01くん 叫んだから、体が揺れて切れてしまった。
T 揺れたから切れてしまったのかな?
(01くん  あー、そういうことか。)
14さん 自分がすごくわがままで、一人いじめしていたから。
T 一人いじめって?
14さん 皆いるのに、自分だけが一人だけ助かろうと思ったから。
17さん 皆一人一人が自分勝手だったから。
28くん きっと、あんなことを言ったから、お釈迦様が怒ってしまった。
10さん 皆のことを考えないで、自分だけ勝手なことを考えていたから、糸が切れてしまった。
26くん 自分だけが助かろうと思って、人のことを考えず、人を傷つけるようなことをしてしまったから。
07くん 自分のことしか考えていない。それから、自分が思っていても、心にしまっておかず、口に出してそれを言ってしまったから。
13くん あのときに、ああいうことを言っていなければよかった。
01くん お釈迦様も、俺も開いた口が閉じない。
21さん くもの糸を自分一人のものにしてしまったから。

【展開後段】 意図的指名による発表

自分勝手にならず、よく考えて行動してよかったなと思うことは、どんなことですか。
21さん 私は友達と遊んでいるときに、お菓子を持ってきて食べたらとてもおいしくて、心の中で独り占めにしようかなと思ったけれど、独り占めにしないで友達にもちゃんとあげたら、その次の日に、「ありがとう」と言われてお菓子をいっぱいくれた。あのときに、独り占めをしないでよかったなと思いました。
18さん ときどき、お母さんの帰りが遅いときに、「ご飯作っといてくれる。」と言われて、ときどきは休ませてと思ったけど、頑張ろうと思って料理を作ったら喜んでくれたので、作ってよかったと思います。
19さん 自分が何か悪いことをしてしまったとき、お母さんに怒られて、「うるさいなー」と思ってしまったときがあったけど、お母さんがなぜ怒っているのかもわかったし、お母さんの気持ちがわかったから、よかった。
14さん 私は、お母さんと一緒に買い物をするときに、つい「あれ買ってー、これ買ってー」とおねだりしてしまい、買ってもらいましたが、でも、今日のくもの糸を学習して、自分はすごいわがままなんだなということに気付き、わがままなことは、もうやめようと思いました。
01くん ぼくは、これまで自分だけできればいいと言って、他の人のことなんか考えないで、満員電車で大きな荷物を持ったおじいさんがいるのにもかかわらず、自分が楽をすればいいと思って、一つだけ空いていた席に座ろうとしたけれど、おじいさんのことを考えて譲ると、おじいさんが「ありがとう」と笑顔で言ってくれたのでうれしかった。

4.板書例

5.考察

○今回の授業では、いつにも増して多くの子どもたちの挙手が見られました。長い範読でしたが、BGMや読み方の工夫による効果と、場面絵と発問の際の動作化による効果が考えられる。しかしながら、時間配分が上手くいかず、展開後段でじっくりと自分の生活に振り返って考えることができなかった。

○展開後段での01くんは、[親切、思いやり]での内容項目の発言になってしまいました。しかし、おじいさんのことを考えて、何が一番正しいことかを判断できたことはよかった。

○導入で、急に、自分勝手な行動をして失敗してしまったことと聞かれても、児童はすぐに考えていくことはできない。同じことを聞くのであれば、例えば「授業の中で」などと場面を絞って発問した方がよいと考えた。

○第一発問で、なぜ、くもの糸が降りてきたのかを考えさせることができなかった。17さんは、くもが糸を降ろしてくれたと考えた。お釈迦様のお導きがあったことを押さえたかった。

○[善悪の判断]での授業を行ったが、[節度、節制]の内容項目で授業を構築していった方がよいことを、後に、ご指導いただいた。次回の実践に向けて研究途上である。

わたしのおすすめ教材(4)「ふくらんだリュックサック」(第6学年)

1.学習指導案

(1)主題名 公共の場が気持ちよく  C[規則の尊重]

(2)教材名 「ふくらんだリュックサック」(出典:日本文教出版「新・生きる力」)

(3)ねらい
 自らもごみを拾って綺麗にしていったときの私のすがすがしい気持ちを通して、自他の権利を考え、公共の場で皆が気持ちよく過ごしていけるようにしていこうとする心情を育てる。

(4)展開の概要

学習活動
(○主な発問 ・予想される児童の反応)

○指導上の留意点 ◇評価


1 公共の場について考える。
○公共の場所とは、どのようなところがありますか。
・駅 ・電車やバスの中 ・道路
・公園 ・図書館 ・スーパー
・教室 ・学校

○導入後、公共の場所を黒板に書いていく。
○主題名を黒板に書く。




2 教材「ふくらんだリュックサック」を読んで話し合う。
○どのような気持ちから、私はごみを拾おうとしなかったのでしょう。
・誰も拾っていないのになぜ自分が
・汚いから拾いたくない
・自分の捨てたものでない
・自分には関係ない

○黒板の右下に、場面絵①(私)、右上に②(父と兄弟)を貼る。
○「わたし」の気持ちの移り変わりを考えながら読むように指示する。BGMの活用。
○範読後すぐに発問せず、余韻をもつ。
○発問カードを貼ってから発問する。発問後、考える時間を十分に取る。青チョークで囲む。
○ごみに対する嫌悪感や、他人事であるという私の気持ちに共感させる。

○どのような気持ちから、私もごみを拾おうとしたのでしょう。
・子どもたちが拾っているのだから
・自分もやるべきだ
・お父さんの言葉に目が覚めた
・皆が使うところを綺麗にするべき

○場面絵③と発問カードを黒板中央に貼ってから発問する。黄色チョークで囲む。
○子どもたちと父親とのやりとりを通して、子どもたちが変化していく様子を間近に受けとめ、自分の心も変容していったわけについて考えさせる。

◎出発して歩きながら、私はどのような気持ちになったでしょう。
・綺麗になって気持ちよい
・自らも取り組んですがすがしい
・子どもたちに教えられたなあ
・この次もまたごみを拾おう
・皆の山が綺麗になってよかった

○場面絵④を黒板左端上に貼る。発問カードを貼ってから発問する。赤チョークで囲む。
○綺麗にしたという達成感、自らも取り組んだというすがすがしさなどを通して、公共の場を大切にしていきたいという気持ちを高めさせる。
◇自ら行動したときの私のすがすがしい気持ちを通して、自他の権利を考え、皆が気持ちよく過ごしていけるようにすることの大切さを考えることができたか。(発言)




3 これまでの自分の生活を振り返る。
○皆が気持ちよく過ごすことができるために、気を付けていることは、どのようなことですか。

○展開前段を振り返ってから課題を示す。
○発問後、ワークシートに記述させる。
○考えが思い浮かばない児童には、児童のよいところを伝えたり、板書を見ながら助言したりする。
◇自他の権利を尊重し合い、皆が気持ちよく過ごしていけるようにすることの大切さについて、自分との関わりで振り返ることができたか。(ワークシートの記述)


4 教師の説話を聞く。
○皆の使う教室が、4月と今とを比べてどうですか。

○皆の使う教室が、4月の頃と違って、一人一人の心の変化が行動をもたらし、ごみを拾おう、落とさないようにしよう、気持ちよく過ごすことができるようにしようとする子どもたちの姿勢を称賛する。

(5)本時の評価
○自ら行動したときの私のすがすがしい気持ちを通して、自他の権利を考え、皆が気持ちよく過ごしていけるようにすることの大切さを考えることができたか。(中心発問での発言)
○自他の権利を尊重し合い、皆が気持ちよく過ごしていけるようにすることの大切さについて、自分との関わりで振り返ることができたか。(展開後段でのワークシート記述)

2.本時の板書

3.授業記録

【導入】

T 公共の場所とは、皆が使ったり過ごしたりする場所です。どんなところがありますか。
C 公園 電車の駅 学校 トイレ 病院 図書館 広場・公園 会社 コンビニ 公民館 道路 スーパー 電車の中 バスの中 映画館

【展開前段】

どのような気持ちから、私はごみを拾おうとしなかったのでしょう。
01くん 皆が拾っていなかったから、私だけ拾っても。
02くん 私の捨てたものじゃないから、拾わなくてもいい。
03さん 今、ごみを拾っても、またすぐに増えてしまうから、拾っても仕方がない。
04さん 皆が拾えばきれいになるかもしれないけど、たった2・3人が拾っても、きれいにならないと思うから。
05くん 10年でこんなに変わるんだ。
06さん ごみを捨てた人が拾えばいい。
07さん 自分で捨てたごみを拾うのは当たり前なのに、ゴミを捨てるそんな非常識な人のゴミを拾うのは嫌だ。
08さん 拾ったとしても、持って帰るのが嫌だから。
09くん こんなにごみが多いんだったら、ぼくが少しくらい持ち帰っても仕方がない。
10さん 自分だけが拾っても、十年前のような心地よい山にならないから。
11さん 02くんと03さんに似ているんですけれど、今自分が拾っても、自分が捨てたわけじゃないから、結局また誰かが捨てて、汚くなっちゃう。
12さん 07さんと似ていて、ルールを守らない人が悪いから、その人たちが拾えばいい。
13くん 03さんと似ていて、どうせ拾っても、また若者が捨てるから、意味がない。
14くん 自分は捨てていないから、他の人が、落とした人が拾えばいい。
15くん 汚いし、荷物になるから、拾ってもいい気持ちはしないから。
16さん 07さんと似ていて、山の礼儀を知らない人がたくさん山に来ているから、拾っても、どうせまた同じことになるから、意味がない。
17さん たった一人がどれだけ拾っても、山はたいして変わらない。
18さん 10さんと似ていて、自分が捨てていないし、いっぱい落ちているから、一人で何個も拾っていたら、時間がなくなっちゃう。
19さん 10さんと似ていて、今、自分が拾っているだけでは、十年前の綺麗さが戻ってくるわけではない。
 6年生となり、新しい学級で、これまで見られない光景を目にしました。それは、道徳の授業で、挙手があまり見られない子どもたちがどんどん挙手し発言を繰り広げている姿です。これまで全ての授業において挙手が見られなかった04さんも発言することができました。
 子どもたちからは、自分の捨てたごみではないということ。人のごみは拾いたくないこと。捨てた人が拾えばいいこと。誰も拾っていないこと。自分だけ拾っても仕方がないこと。拾ってもどうせまた汚くなってしまうこと。一人が頑張っても仕方のないことの考えが出されました。

【第2発問】

どのような思いから、「私」もごみを拾いだしたのでしょう。
02くん あの3人が拾い出したから、私も拾おう。
20さん 自分たちが拾い出したら、周りの人も拾うかもしれない。
21くん 自分も拾えば、少しは片付くかもしれない。
14くん お父さんの言った通りで、他人のせいにばかりしていたから、自分も拾おう。
01くん ごみを拾えば拾うほど、その分、山がきれいになるから。
13くん 親子3人で拾ったら、3人分しか拾えないけど、私が拾ったら1人分多く拾えるから、私も頑張ろう。
04さん 少しでもごみを拾えば、少しだけでも山は綺麗になる。
22くん 子どもがごみを拾っているのに、自分が拾わないのはみっともないことだ。
23さん 22くんと似ていて、子どもたちがごみを拾っているから、子どもたちは皆のために働いているけど、自分はやっていないから恥ずかしい。
24くん 13くんと04さんと似ていて、家族3人とわたしがやれば、少しでも多く拾えるし、頑張ろう。
11さん 山が汚れたのは1人のせいじゃないから、自分も拾って他の人の分まで拾う。
15くん 山が好きなら好きなりに、自分もちゃんと拾わなければならない。
12さん 毎日やっていけば綺麗になるかも。
25さん 久しぶりに山にきて、山が汚れていたら自分の気分が悪くなっちゃうけれど、拾えば皆が気持ちよくなれるし、自分も気持ちよくなれる。
07さん いっぱい山に人が来て、いっぱいごみを捨てるのも嫌だけど、皆がこの山を嫌いになるというのは、皆が気持ちよく使ってもらって、この山が好きってなってくれたら。
T 好きな山になったらどうなるの?
07さん 好きになったら、そのために、もっと綺麗に使おうという気持ちになるから、ごみを拾おうというボランティアみたいなことをしていくかもしれない。
10さん 皆が前みたいにごみを捨てなくなる。
18さん 25さんと07さんと似ていて、山が汚いと、自分が気分が悪くなるし、他の人も気分が悪くなるし…… (言うことを)忘れちゃいました。
19さん さっきまでは、たった3人じゃ少ししか片付かないから、やる意味はないと思っていたけど、今は、少しずつでもやっていけば片付くと思う。
26さん ごみを捨てているのが悪いと言って、何もしなかった自分が恥ずかしい。
27さん たくさん拾っていけば、10年前の綺麗な山に戻れる。
16さん 27さんと似ていて、10年前の山の空気や、綺麗な山の景色を楽しむために、自らごみを拾わないと。やらなくちゃ。
13くん 初めて来た人が、この山を登って、このごみの散らかっている状態を見たら、悲しくて、帰るかもしれないから、それをなくすために、私も拾う。
21くん 自分のごみじゃなくても、自分が拾えば、自分もいい気分になるし、皆もいい気分になれる。
10さん 山にごみを捨てるような礼儀正しくない人もいるけど、この親子のように礼儀正しい人もいるから、自分もその人になれば、少しは片付くかもしれない。
02くん 拾うか拾わないか迷っている時間があるのなら、その時間を使って拾おう。
 02くんは、親子の姿を見て私も見習おうと考えました。20さんは、自分たちの行動が周りの人々を変えるかもしれないと考えました。14くんの「お父さんの言った通りで」の発言は、ワークシートの記述の「お父さんを目標に」に見られるように、この教材に出てくるお父さんの姿が14くんの心を動かすことになります。01くん、13くん、04さんの発言に見られるように、一人一人の積み重ねが大切であると考えました。22くん、23さんは、子どもが正しいことをしているのに、正しいことをしようとしない自分が恥ずかしいと考えました。道徳で初めて発言する25さんは、気持ちよく過ごしたいと考えました。26くんは、人のせいにばかりしていた自分に気付き、反省しています。

【中心発問】

出発して歩きながら、「私」はどのような気持ちになったでしょう。
28さん 私も拾えばその分だけきれいになったかから、よかった。
29さん 少しは山のごみも片付いたなぁ。
05くん ちょっとだけだけどごみを拾って、すっきりした。
08さん 来たときよりも、帰りのほうが、心が心地よい。
04さん 少しでも山が綺麗になったから、少しでも拾ってよかった。
18さん 28さんと05くんと似ていて、少ししか拾えなかったけど、また次来たときとかに、ごみが落ちていたら、また拾って、それを繰り返して山を綺麗にしていきたい。
19さん 05くんに似ていて、少しでも綺麗になったから、すがすがしい。
16さん ごみを拾って、山をどんどん綺麗にしていく第一歩につながっていったかも。
17さん 自分で拾った分だけ綺麗になったから、拾わなかったときより、心が気持ちよくなった。
13くん これで、少しでも綺麗になったから、これからも、少しずつでも綺麗にしていきたい。
14くん 自分がもしあの場で拾わなかったら、こんな気持ちになれなかったなぁ。
10さん 14くんと19さんに似ていて、ごみを拾わなくてそのまま帰っていたら、嫌な気分のままで家に帰っていただろうけど、ごみを拾って帰ったから、すがすがしい気分で帰れた。
20さん 19さんに似ているんですけれど、4人でごみを拾って、こんなに綺麗になるとは思わなかった。
11さん 10さんに似ていて、もしあの親子に出会えていなかったら、不快な気分のまま、帰っていることになっていた。
23さん 17さんと似ていて、自分のリュックのふくらみ、重みの分だけ、気分がよい。
26さん 重みの分だけ、ごみが減ってよかった。
12さん この親子みたいに、私みたいに拾って、ほかの人にも輪が広がっていってくれたら嬉しいなぁ。
25さん ごみが減った分、思いやりの心が増えていったから、心が豊かになった。
03さん これからこの山に登る人がいい気持ちになっていってくれることだろう。
07さん この家族に会えなかったら、ずっと嫌な気持ちでいただろうから、感謝したい。
18さん 山も、自分の心も、綺麗になった。
26くん 皆が拾っていけば、どんどん綺麗になって、皆が気持ちよくなって、楽しくなれる。
 04さんは、この授業で3回発言しました。①2、3人で拾ってもきれいにならない。②少しでも拾えば、少しだけでも綺麗になる。③少しでも綺麗になったから、拾ってよかった。
 12さんは、①ルールを守らない人が悪いから、その人が拾えばよい。②毎日やっていけば綺麗になるかも。③親子や私が拾っていくように、他の人にも輪が広がっていけば嬉しい。
 18さんは、①自分は捨てていない。たくさん落ちているからきりがない。②山が汚いと自他共に気分が悪くなる。③少ししか拾えなかったけど、また今度も拾おう。③山も自分の心も綺麗になったと、発言が変化していきました。
 25さんは、②拾えば、自他共の気持ちがよくなる。③ごみが減った分、心が豊かになった。
 11さん、07さんは、この親子とのご縁に感謝しています。
 展開後段では、多くの子どもたちがごみのことを取り上げていました。導入で、公共の場所を教師の方で提示しておいてから、「公共の場所で迷惑だなと思うこと、嫌だなと思うことは、どのようなことですか?」と問いかけ、展開後段に入る前に、導入部に戻って振り返れば、子どもたちはもっと自己の生活において、多面的に考えることができたと自己反省です。

【展開後段】

皆が気持ちよく過ごすことができるように、気を付けていることは、どのようなことですか。
04さん 私は、学校の廊下でごみが落ちているのを見たことがありますが、いつもそのまま通ってしまいます。しかし、このお話を通して、廊下などにごみが落ちていたら、少しでも拾おうと思いました。
13くん ぼくは、公園にごみを置いて帰ってしまいました。次の日に遊びに公園に行ったら、ごみがありませんでした。ラッキーと思いました。しかし、今ごみを置いて帰ったことを思うと、拾ってくれた人に悪いことをしたなぁと思います。これからは、自分のごみを持ち帰るだけではなく、友達が置いて帰ったごみも持ち帰るようにしたいです。
14くん このお話に出てきたお父さんを、これからの目標にしていきたいと思いました。なぜかというと、周りをよく見ていて、他の人の役に立つようなことをしていて、ぼくは、よく自分のことしか考えないところがあるから、そう思いました。
21くん ぼくは、自転車が倒れているのに、見て見ぬふりをしてしまいました。ぼくは、自分が倒したわけじゃないから、手伝わなくていいや、誰かが手伝うと思って、見て見ぬふりをしてしまいました。そしたら、誰か知らないおばあさんが手伝いました。ぼくは、おばあさんが手伝っているのに、ぼくはまだ若いし、自転車を持ち上げる力のあるぼくが、なんでおばあさんなんかにやらせているんだと、恥ずかしく思えてきました。だから、ぼくはとっさにおばあさんと一緒に自転車を起こすことを手伝いました。そうしたら、周りの人も手伝ってくれて、とてもよい気持ちになりました。
28さん 私は、ときどき電車の席や公園でごみを見ます。だけど、自分が捨てたわけではないし、汚いので、近付かないようにしていました。しかし、今日のお話を聞いて、汚いと思っているだけではごみはなくならないし、綺麗にはならないので、まず、「自ら進んできれいにする」ということを実行することが大切だと思いました。
11さん 小学校の最高学年として、1年から6年生までが気持ちよく過ごすことができるようにしたいです。私は、これからは皆が気持ちよく過ごせるように、人の気持ちを考えてから行動し、皆に協力したいと思いました。私は、友達が困っていたら助けてあげたいです。また、自分の気分が不快になったときには、他の人も不快になると思うので、自分にできることをしてあげたいです。
18さん 5年生のときの移動教室では、部屋がとても汚くて散らかっていたけれど、6年生での日光林間学園では、5年生の時とは逆で、とても綺麗になって、部屋の皆が気持ちよく過ごすことができたので、これから、旅行とかへ行くときには、部屋やトイレのスリッパを綺麗に並べたいと思いました。
12さん 前に、遠足で、先生が「周りにあるゴミを拾ってください。」と言っていました。でも、私は、あまりごみを拾おうとはしませんでした。この「ふくらんだリュックサック」のお話を学んで、もっとたくさんのごみを拾っておけばよかったと、後悔しました。

4.授業を終えて

 今回の授業では、普段発言しない子どもたちが、発言を繰り返していきました。04さんは3回も発言をしました。1時間を通して、子どもたちは活発に発言を繰り返していきました。そこには、何と言っても教材の魅力、そして、その教材に子どもたちがしっかりと浸れたこと、さらに、教材の中の私に共感しながら、自分の心を投影しながら考えていくことができたからだと考えます。

5.日常の学校生活から

 学習規律が保たれて、真面目に学習に取り組んでいる学級には、一定の要素があると考えます。その一つに、教室が綺麗であるということです。まず、机が整列されていること。そして、ごみが落ちていないこと。さらに、机の上やロッカーの中が整頓されていることです。そのような落ち着いた教室環境の中で生活することが大切です。皆で過ごす教室を磨くということは、自分自身の心をも磨くことにつながっていきます。
 新しい学級となって、必ず出合う場面。「ごみが落ちているよ。」「私が落としたんじゃない。」子どもたちは、他人の落としたごみは拾おうとはしません。さらに、自分が落としたごみでも平気でいる子どもたちもいます。そんな子どもたちの意識改革から始めなければなりません。
 授業では、机の上にある筆箱、教科書、ノートの置き場所にも気を配ります。気持ちよく、姿勢を正して勉強していくためです。おかげで、筆箱が床に落ちることもなくなってきました。筆箱に肘を乗せて勉強することもなくなりました。
 新しい学級となって月日が流れるにつれ、こんなことが起きてきました。テストの後、子どもたちが一斉に教卓に集まるといった光景です。テストの際は、出席番号順に座り直してテストをします。座席を変えることは、テストだという雰囲気を演出します。テストが終わると、机の上は消しゴムのかすがあります。これまでは、そのままにしておくか、手で払って床に落として自分の席に戻るといった様子が見られました。ところが、その消しかすを手のひらに載せて、教卓の下にあるごみ箱へ捨てにいくという光景です。もちろん、普段の授業でも同じです。おかげで、掃除の時間には、ごみがたいそう減りました。
 掃除の時間には、一つの班の子どもたちが教室の端に一列に並んで、一斉に床拭きをする。お寺の修行のように。教室の前側と後ろ側を7往復ずつ合計14往復。「せーのー」で声を合わせて、一体感に包まれていきます。他の一つの班では、雑巾を持って気付いたところを拭いていきます。机は勿論のこと、机や椅子の脚、窓のレール、棚、廊下の手すりなど。掃除を通して、教室も子どもたちの心も綺麗になっていっています。

わたしのおすすめ教材(3)「うばわれた自由」(第5学年)

1.学習指導案

(1)主題名 ほんとうの自由とは  A[善悪の判断、自律、自由と責任]

(2)教材名 「うばわれた自由」(出典:日本文教出版「新・生きる力」)

(3)ねらい
 ジェラールの心の移り変わりを考えることを通して、自律的に判断し、責任ある行動をとることを大切にしょうとする心情を育てる。

(4)一人一人への願い(01くん)
 ジェラールの心情の変化を通して、自分自身を見つめながら本当の自由について考えさせたい。

(5)展開の概要

学習活動
(○主な発問 ・予想される児童の反応)

○指導上の留意点 ◇評価


1 自由について思うことを発表する。
○今日の5時間目、自由だったらどんなことをしますか。
・遊ぶ
・好きなことをする
・勉強する

○身近な生活の中で、自由の意味について考えさせる。
○主題名を板書してから範読する。




2 教材「うばわれた自由」を読んで話合う。
○森の中でのジェラールの気持ちは、どうだったでしょう。
・俺を誰だと思っているんだ
・王子だから自由にしてよい
・自由にして何が悪い

○ジェラールの気持ちを通して考えていくことを伝える。範読後、余韻をもつ。
○ジェラールが自由についてどのように考えているのかをつかませる。

◎牢屋で一人になったとき、ジェラールはどんなことを考えたでしょう。
・好き勝手にしなければよかった
・ガリューの言うことを聞いていれば
・王子としての責任が大切だった
・ルールを守るべきだった

○ジェラールがしっかりと自分を振り返っている姿から、ほんとうの自由について考えさせる。
◇ジェラール王子の自由に対する考えの変容を通して、自由についての道徳的価値を深めることができたか。(発言)




3 自分の生活を振り返る。
○このお話を通して、自由について学んだこと考えたことはどのようなことですか。

○自己の生活を振り返ることによって、ねらいとする価値を高める。
◇本当の自由について、自分との関わりの中で振り返ることができたか。(ワークシートの記述)


4 教師の説話を聞く。
○えらいね。自ら考えて取り組んでいるね。

○先生がいなくても、子どもたちが今やらなければならないこと考え、自主的にしっかりと取り組んでいた様子を称え、今後の学校生活につなげる。

2.授業記録

(  )内は教師の発言

【導入】

T あっ、そうそう、今日の5時間目は、テストなし。自由にしよう。好きにしてよし。
C えっ?! おっ やったー! <笑顔と歓声に包まれる>
T 自由だったら、どんなことをしますか。
01くん 本当に何してもいいの。(いいよ) 遊んでもいい?(いいよ)
01くん 校庭で遊ぶ。(いいねー)
02さん でも、他のクラスが体育をやっているから、迷惑がかかるよ。(あっ、そうか)
01くん じゃあ、教室でゲームをする。(あっ、それいい考えだね)
03さん 5時間目は理科だから、理科のまとめをやる。(いいの?自由だよ)うん。
04さん 休み時間は遊んでもいいけど、いくら自由って言っても、授業中なんだから、遊んではいけないと思う。(なるほどね)
05さん 教室で遊んだら、休み時間のように絶対にうるさくなってしまう。(やっぱりー)
01くん ほかのクラスに迷惑かけるし、静かに遊ばなきゃいけない。トランプをするか。あっ、そうだ、賭けする。賭けで勝ったら、給食のおかわり貰えることにする。
06くん もう5時間目だから、食べちゃっているよ。<一同爆笑>
07さん 自由は自由でも、勉強の時間だから。
08さん 遊んでいたり、うるさくしていると、廊下を通ってくる他のクラスに変に思われていやだ。(そうだね)
09くん 低学年が見ていたら、示しがつかない。(ぼくたち高学年だからね)
10さん 授業のときに、ふざけていたり、ほかのことをしたりすると、自分のためにならない。(あっ、自分自身のためにもね。なるほど)
 授業よりも遊びたいという01くんの気持ち。そして、02さんの発言を受けて01くんは、迷惑がかからないように教室で遊ぶことを選択し、さらに、05さんの発言を受けて、静かに遊ぶことにしました。子どもたちは、この2か月間の学級での営みや、高学年という意識を持ち始めたことが表れています。本心は遊びたいところですが、ちょっとまずいのではないかと。
 範読では、01くんはいつもよりも集中して教材に目をやっていました。ところどころで、子どもたちに目をやると、01くん同様、BGMの効果もあって、教材に浸っている姿がみられました。

【展開前段】

森の中での、ジェラールの気持ちは、どんなだったでしょう。
01くん 動物を殺しているわけでもないし、なんで、こんなにうるさく言われなければならないんだ。(なるほどね)
11くん 王子なんだから、何をしてもいいじゃないか。(王子だからね)
12くん 俺が一番えらいんだ。(あー、なるほど、なるほど)
02さん 酒に酔っているから、いいじゃないか。(そっか)
08さん 王子だから、自分に逆らえるものは誰もいない。(なるほど)
09くん 王子だから、ちょっと悪いことをしてもいいや。(あー、なるほどね)
13くん きまりなんて、守らなくてもいい。(おー、ほ、ほ、ほ、ほ)
10さん 王子なんだから、自由自在に遊んでいればいいし。(あ、なるほどね)
14くん 王子だから、自分はきまりを守らなくてもよい。(うん、うん)
15くん 俺は王子だから、はむかうやつなんかいない。(なるほど)
16くん 俺は王子なのに、何で森の番人なんかに注意されなければいけないんだ。(あー、なるほどねー)
17くん 自分が言うことは全部正しい。(うん)
11くん 王子なんだから、悪いことをしても牢屋には入れられないぞ。(王子だからね)
18くん 何も撃っていないんだから、やったっていいじゃん。(あー、は、は、は、は-)
06くん このくらい、いいじゃん。(このくらい)
T (板書した後)王子は、自由についてどんなふうに思っていたと思う?
19さん 自分が思ったことを、好き勝手にしていい。(ほう、ほう、ほう、ほう)
10さん まわりのことを考えてなくてもいい。(あー、なるほど)
16くん 自由というのは、何をやってもいいということ。(自由はね)
01くん ジェラールがやっている自由というのは悪いことの自由で、ガリューの言っている自由は、悪いことをしないで、幸せな生活をやったりする自由で、ガリューがしているのは悪いことの自由。(ほー、ほ、ほ、ほ、)
人を殴ったり、人を殺したりの自由。ガリューは、善いことの自由、幸せに暮らしたり。(なるほど、善い自由と悪い自由か、よい自由は幸せに暮らせる。なるほどなあ。これは次につながる大切なことだから、左に書いておくね)
13くん 自分さえよければの自由。(自分さえよければ)
18くん 好き勝手にやってもいいという自由。(好き勝手に)
11くん やりたいことは、やりたい放題やってもいいという自由。(やりたい放題か)
09くん きまりを破ってもいいという自由。(なるほど)
02さん 注意されても、言い訳を考えとけばいいや。(なるほどね)
12くん 死ぬまでに、やりたいことをやるのが自由。(やりたいことを)
01くん 全部が全部、やりたいことをやっていいというわけではない。(なるほどね)
全部が全部、やっていいわけじゃない。ルールを破ったり。番人さんに、聞いてやるんだったらいいけど、聞かずに勝手にやるのは犯罪。嫌われていく。
 発問後、01くんの手が挙がりました。01くんに、無言で「うん、ありがとう、わかっているよ。」と、うなずきながら目を合わせました。徐々に手が挙がり始め、01くんに口火を切ってもらうことにしました。
 続いて多くの子どもたちが発言を重ねていきました。「王子だから」という気持ちが、このようなジェラールの行動に至るのだという考えです。そこで、王子の自由についての考えについて投げかけました。すると、3人の発言を受けて01くんは、自由には善い自由と悪い自由があり、善い自由が幸せにつながるのではないかと考えました。この彼の発言には、これまで2か月の間、学校生活の中で、私が01くんに何度も説いてきたことが、ようやくこのときに、01くんの中に整理されたように感じられ、嬉しくなりました。
 01くんの発言後、自分さえよければと好き勝手にしたり、人に迷惑をかけたりする自分勝手な振る舞いがよくないとの声があがっていきました。

【中心発問】

牢屋で一人になったとき、ジェラールはどんなことを考えたでしょう。
05さん 悪いことをしなければ、こんなことにならなかった。(なるほど、悪いことってどんなことかな。もう少し詳しく言ってみて)
動物を殺したりすること。(うん)
19くん 思ったことを好き勝手にすること。(なるほど)
18くん ルールを破る。(うん)
01くん 王子だからいいとか思っていたり、ルールを破って、勝手に狩りに侵入したり。(なるほどね)
T じゃあ、もう一回聞くよ。牢屋で一人になったとき、ジェラールはどんなことを考えていたでしょう。
20さん 森の番人のガリューの言うことを聞いておけばよかった。(あー、なるほどな)
14くん 悪い自分に、もっと早く気づいていれば。(あー、悪い自分にね)
21くん もっと、早く気づいていれば、乱れた世の中にならずに済んだ。(気づけばね)
12くん ジェラールがどんどん悪いことを好き勝手にやってしまったから、自分がやったから、皆に影響して、悪い国になってしまった。乱れた。(自分のせいでね、なるほど)
10さん こんなことになるんだったら、ルールを守ってやっていたほうがよかった。(なるほど)
16くん 自分がしっかりしていれば、国を守ることができた。(なるほど、しっかりしていれば、12さんにつながるね)
09くん 王だからといって、好き勝手にやってしまって、こうなって、後悔した。(なるほどね あれ、さっき手を挙げていた22さんは?)
22さん 09くんと同じ。(同じ。いいよ、自分の言葉で言ってごらん。)
今まで好き勝手にしていなければ、国はこんなに乱れることはなかった。(あー、なるほどね)
02さん ガリューが正しいことを言ってきたのに、こんなに長く牢屋に入れられてしまって、自分がしたことのほうが間違えていたのに。(なるほど)
11くん 自分が王だということを使って、調子に乗りすぎた。(あっ、そうか、ははは)
18くん 今までの自分は、なんて悪いことをしていたんだ。(あー、なるほどね)
08さん 自分にとっていいことが、悪いことだった。(あー、なるほど)
05くん 自分は、なんて最低な人間だったんだ。(なるほどね)
12さん 責任感をもっていればよかった。(あー、なるほどね)
16くん ガリューに迷惑がかかるとかじゃなくて、国中の人々の自分の幸せというか、01くんが言ってくれた幸せという善いことの自由。その善いことの自由というものを考えずに、悪いことの自由ばっかり頭に入ってしまったから、国中が悪くなってしまって、国中の人にとって迷惑をかけてしまった。(なるほど)
21くん 人に迷惑がかけてはいけない。夜に皆が、人が寝ているのに、大きい音がしたら迷惑。(なるほど、迷惑をかけてはいけないということか)
自由だからといって、人に迷惑をかけてはいけない。(なるほど)
01くん 人に迷惑をかけないってことは、皆が幸せになれる。(そっかー)
 捕まって後悔したジェラールの気持ち。国が乱れてしまったという王としての責任の気持ち。国民に迷惑をかけてしまったというジェラールの反省の気持ちを、子どもたちは考えました。前の発問で01くんが考えたことについて言及し、黒板の左に書いた善い自由と悪い自由について考え、迷惑をかけることを問題視していきました。最後に、01くんに特に考えてもらいたいことが、01くん自らの口から出て、終えました。
 01くんが教材に向き合っていたように、一人一人が教材に浸っているように思えました。教材を通して考え、多くの友達の考えを聴き合いながら、自分の考えを少しずつ深めていくことによって、心が高ぶっていく。範読の大切さ、聴き合いの大切さを感じさせられました。

3.板書例

4.授業への工夫 ~教材提示の充実~

(1)多いセリフを習得するために
 この教材を音読して感じたことは、セリフ(かぎかっこ)が多いことです。そこで、ジェラールとガリューのセリフを、蛍光ペンを使い、色分けして音読することにより、教師自身が登場人物になりきろうとしました。それでも、音読をする度に毎回どこかで失敗します。ガリューになりきり、「ジェラール王、あなた様も~」と言ったあと、本文中では「低い声で語りかけてきました。」と続きますが、低い声どころか普通の声で読んでしまっているありさまです。今度は、教材に赤ボールペンを使って「低い声で」と書き込みました。文の途中で間を開けたいところには、青ボールペンで印をしていきました。そうこうしているうちに、コピーした教材は、蛍光ペンとボールペンで賑やかになっていきました。
 何度も音読していくと気持ちが高ぶり、ジェラールがガリューに喰ってかかるところやガリューが叱るところのセリフは、大声になっていきました。音読を何度も繰り返すうち、ついには声がかれるようになってきました。私はふと考えました。大声をださなくとも、二人の気持ちが表せるのではないかと。

(2)範読にBGMを用いて効果的にするために
 教材が長いために、BGMは3曲を用意しなければなりません。このクラスで初めてBGMを使用するということもあって慎重に検討しました。BGMと場面がマッチするように、BGMをかけた後、どのあたりから範読をスタートしたらよいのか試行錯誤の連続です。また、文章のどこで間をとると効果的かを考えながら、範読を重ねていきました。次に、BGMの音量です。黒板の下辺りから流れるBGMが一番後ろの席まで聞こえるのか、聞こえすぎないかを探るため、教室の後ろで範読し、耳をBGMに傾けました。結果、ボリューム13が丁度よいことがわかりました。授業の前日の夜、最後の範読が終わったとき、廊下から多くの拍手が聞こえてきました。PTAの仕事を終えられた保護者の方々やお子さんたちが、廊下越しに私の範読の様子を見ていたようです。思わぬ励ましの拍手を受けての授業前日となりました。
 授業当日、範読で初めてBGM使用とあって、子どもたちがびっくりしないように、1時間目にその旨を伝えました。範読する位置に立って、本日の理科のテストのことについて話しながら少しの間BGMを流すことによって、一番後ろの児童にBGMが聞こえるかどうかを確認しました。また、一番前の児童にはBGMの音が大きすぎて邪魔にならないかを聞きました。結果、予定していたボリューム13から15に引き上げることとなりました。

(3)BGMの過去の失敗から学ぶ ~音量をよく考えないと
・児童のいないひっそりとした夜の教室と、児童が実際にいる教室とでは、違う。
・他学級での事前授業と、当日の本学級との授業では、子どもたちの実態によって、違う。
・校庭の状況でも変わる。準備体操(掛け声)のときに丁度範読の時間となる。
・CDプレーヤーの機種により、音量が変わってくる。

5.考察

○01くんが、今後の学校生活において、善い方向へと変容が見られた。
 この授業以来、喧嘩をすることがなくなり、自分勝手な考えや立ち振る舞いが見られなくなった。また、級友同士が喧嘩をしていると、体を張って止めに入り、双方の言い分を聞きながら、解決を図っていく姿が、何度も見られた。
 この授業以来、学校生活のルールを率先して守り、学級の一員であるという自覚と責任をもって、学級を良くするために提案したり、自ら進んで行動したりするようになった。男女問わず、親切に級友に接することによって、慕われている。
 授業でのルール(学習規律)を進んで守ろうとしている。自分勝手に発言せず、黙って挙手する、指名されたら「はい」と返事をし、起立して椅子を入れてから発言する。授業に集中して取り組み、級友の発言を聴きながら、自分の考えと照らし合わせて考えたり、よい考えを取り入れたりしようとしている。

○本教材の範読時には、BGMが有効であることが確認できた。
 授業への工夫にも記載させていただいたように、BGMを用いると効果的である。子どもたちは、教材の世界に引き込まれていくことが、範読しながら手に取るようにわかった。

○正義心の強いガリューを中心に据えるよりも、わがまま勝手なジェラールが変わっていくさまを捉えた方が、より人間理解を通して、価値理解につながると考えた。
 森の番人のガリューは、自分の使命感や正義感において、正しいことを主張している。もっともなことである。しかし、人間は、正しいことであるとわかっていても、よいことであるとわかっていても、ときにはできなかったり、いい加減になってしまったりすることもある。ジェラールは、王子とはいえ、自分勝手に立ち振る舞う姿と、牢屋に入れられて何が大切なのかを深く考えることになる姿から、ジェラールについて焦点を当てて捉えた方が、本授業において、子どもたちの学びが深まるのではないかと考えた。

わたしのおすすめ教材(2)「手品師」(第6学年)

1.学習指導案

(1)主題名 誠実に生きる  A[正直、誠実]

(2)教材名 「手品師」(出典:日本文教出版「新・生きる力」)

(3)ねらい
 大劇場へ行かないと決意した手品師の思いを考え、後ろめたさや後悔のない、誠実に明るい心で生活をしていこうとする心情を育てる。

(4)展開の概要

学習活動
(○主な発問 ・予想される児童の反応)

○指導上の留意点 ◇評価


1 誠実について考える。
○誠実の意味について考えてみましょう。

○主題名を黒板に書き、「誠実」の意味を伝える。




2 教材「手品師」を読んで話し合う。
○手品師はどのような気持ちで、男の子に「明日も来るよ」と約束したのでしょう。
・どうせ暇だから
・男の子がしょんぼりしている
・男の子が元気になってほしい

○黒板の右上に、場面絵①(手品師と男の子を描いた絵)を貼る。
○「手品師」の気持ちの移り変わりを考えながら読むように指示する。余韻をもつ。
○場面絵②と発問カードを貼ってから発問する。発問後、考える時間を十分に取る。
○困っている人や悲しんでいる人がいると、手を差し伸べたくなる手品師の温かさをつかませる。

○大劇場への誘いを迷いに迷う手品師の心の中は、どんなだったでしょう。
〔大劇場への気持ち〕
・やった、これで大舞台に立てる
・貧乏から抜け出せる
・こんなチャンス2度とこない
〔男の子への気持ち〕
・約束を破るのはよくない
・男の子が悲しむ
・男の子には私しかいない

○場面絵③④と発問カードを黒板中央に貼ってから発問する。
○大劇場への気持ちを発問カードの右側に、男の子への気持ちを左側に分けて板書する。
○大劇場へ行きたいとする気持ちと、男の子のもとへ行かねばならないという気持ちとの葛藤を考えさせる。
○どちらの考えも正しいとの立場を取る。
○方法論の発言の場合は、本題に戻していく。

◎大劇場に行かないと決意させたのは、どのような思いからでしょう。
・約束を守ることが大切
・男の子との約束を破ると、もういつ会えるか分からない
・自分のことも大切だが、男の子のことも大切
・人を悲しませてまで自分が幸せになることはよくない

○場面絵⑤⑥と発問カードを貼ってから発問する。
○自分の良心に従って行動することができた人間としてのすばらしさ、誠実な心の大切さを考えさせる。
◇大劇場へ行かないと決意した手品師の思いに共感することを通して、誠実に明るい心で生活することの大切さを考えることができたか。(発言)




3 これまでの自分の生活を振り返る。
○誠実に取り組んでよかったなと思うことはどのようなことですか。自分の生活に振り返って考えてみましょう。
・自分の利益より、相手のことを考えていきたい。
・手品師のように、誠実に生きていきたい。
・損得関係で行動しない。
・約束は守る。

○展開前段を振り返ってから課題を示す。
○今回は、発表しないことを伝える。
○発問後、ワークシートに記述させる。
○考えが思い浮かばない児童には、児童のよいところを伝えたり、板書を見ながら助言したりする。
○自分ができたこと、できなかったことを振り返ることによって、今後の誠実な生き方への糧としたい。
◇後ろめたさや後悔のない、誠実に明るい心で生活していくこと大切さについて、自分との関わりで振り返ることができたか。(ワークシート記述)


4 教師の説話を聞く。
○子どもの誠実なる行いについて紹介する。

○日常生活での誠実なる行為を称え、道徳的価値を高める。

(5)本時の評価
○大劇場へ行かないと決意した手品師の思いに共感することを通して、誠実に明るい心で生活することの大切さを考えることができたか。(中心発問での発言)
○後ろめたさや後悔のない、誠実に明るい心で生活していくことの大切さについて、自分との関わりで振り返ることができたか。(展開後段でのワークシート記述)

2.本時の板書

3.授業記録

【展開前段】

手品師はどのような気持ちで、男の子に明日も来るよと約束したのでしょう。
01さん あまり売れていない暇な手品師だから、小さい男の子が一人でしょんぼりしていてかわいそうだから、ぼくが手品を見せてあげようと思った。
02さん いつもは売れていないから、誰にも手品を見せることはできないけど、小さな男の子でもお客さんだから、手品を見せてあげようと思った。
03くん 01さんと似ていて、明日暇だから、来てやろうと思った。
04くん どうせ誰も見てくれないんだから、見てくれるんだったら精一杯やってやろう。
05さん 02さんと似ていて、暇だし、この男の子も一人のお客さんだから、手品を見せて元気になってほしい。
06さん 05さんと似ていて、男の子が自分の手品を見て喜んでくれたから、明日ももう一度見せてあげたい。
07さん もう二度と男の子のかわいそうな顔を見たくない。
08くん 明日暇だし、ただ街を歩いているよりもいいか。
09くん 約束して、明日また行かなかったら、男の子は悲しむだろう。
10さん 自分の手品で男の子が明るくなってくれるなら、自分の手品をもっとやってあげたい。
11さん 10さんに似ていて、あまり売れていない手品だけど、たった一人でも見てくれるんなら頑張ろう。
12さん あまり売れないということはおもしろくないということだけど、その男の子は明るさを取り戻していたので、しかし、明日来なかったら、また暗い顔になるだろう。
13くん 手品をして喜んでくれるのだったら、精一杯やろう。
 第1発問では、手品師の自己都合や充実感といった自分自身に対する気持ちと、男の子への気遣いという相手に対しての気持ちが、子どもたちから表れました。
 01さんは、「しょんぼりしていてかわいそうだから」と発言していますが、売れない手品師ということで手を差し伸べていると考えられます。もし、売れっ子の手品師であったら、男の子の前で手品を見せていないと考えることもできます。02さん、03くんも同様に続きます。04くんは「見ている人がいるなら精一杯頑張りたい。」と考えに少し変化が見られました。05さんは、「男の子に元気になってほしい。」と変化していきました。06さんは、喜んでもらった嬉しさ。07さんは、男の子を悲しませたくないと続きました。10さんは、男の子の気持ちによく寄り添って考えています。

【第2発問】

大劇場への誘いを迷いに迷う手品師の心の中は、どんなだったでしょう。
14さん 大劇場だったらこれから苦労しないで豊かに暮らせるけど、男の子はまだ子どもなのに、お父さんが死んでお母さんも帰ってこないから、ちゃんと子どもの方に行って、その悲しみを自分が埋めるというか……
15くん 大劇場に行っていたら嬉しいかもしれないけど、子どもが喜んでもらえない、どうしよう。
16さん 大劇場で手品をして売れっ子になったら嬉しいけど、男の子をまた悲しませるわけにはいかないから、男の子との約束を優先したい。
17くん 大劇場でやるのは二度とないチャンスだけど、男の子との約束を破ってしまうと、人として悪いから。
12さん 14さんと似ていて、大劇場に行けば自分が有名にすぐになれるけど、男の子の方へ行って、少しずつ人気を増やして、代わりの力ではなく自分の力でお客を増やしていきたい。
10さん 大劇場に行けば、自分がすごい有名になると思うけど、男の子が自分の力で明るくなれるのなら、男の子の方を優先したい。
18さん もしもこの電話が、男の子と約束する前にかかってきたとしたなら、大劇場に行ってもよかったと思うんだけど、先に男の子と約束したのだから、そっちを優先する。
19くん 大劇場で手品を披露するのは、二度とないチャンスなのだけど、そこでもし売れたら仕事が忙しくなって暇がなくなって男の子のところに行けなくなって、二度と男の子の笑顔を見ることができなくなる。
05さん 自分にとって大劇場は夢だけど、自分の手品で喜んでくれた男の子にとっては手品を見ることが夢なので、約束をしてしまったので、優先的に男の子のところへ。
01さん 手品師は、人のことを笑顔にさせるのが仕事だから、大劇場に行けばたくさんの人を笑顔にすることができるけど、それは他の手品師でもできることなので、男の子の方には自分にしか行けないので、自分は男の子の方に行かないと、男の子は悲しんじゃう。
02さん 大劇場に行けば確かに売れっ子になるだろうし、今みたいな暮らしはしなくていいけど、明日男の子が手品師のことを楽しみに待っている姿を目に思い浮かべると、約束を守らなきゃならない。約束を破ってはいけない。
11さん 大劇場には自分でなくてもできるけど、男の子には、自分しか手品をすることができない。
19くん 男の子には明日も来るって行って約束したのに、もし自分が明日も来ると言われて来なかったらショックだし、男の子がもし自分が来なかったら、どんなことをするかわからないから、行かないといけない。
 最初に発言した14さんは、レポートの活字にすると平坦なイメージになりますが、実際には、じっくり、間を置きながら(考えながら)話していっています。皆は話し手の方を見ながら発言を聴いているので、14さんの「~~かもしれないけれど~~」という対比的な考え方を発言したことにより、2人目からの発言者も同様に発言していくといった傾向が見られました。
 12さんは、「代わりの力ではなく、自分の力でお客を増やしていきたい。」と発言しました。芸能関係の仕事をしていることから、自分の思いが込められているようでした。第1発問においても、「あまり売れないということは面白くないことだけど」と考えているようにです。
 01さんは3つのキーワードを提示しました。「手品師は人を笑顔にさせるのが仕事」「大劇場は他の手品師でもできる」「男の子には自分にしかできない」この考えは、第3発問への思考に、大きく影響を与えていくこととなります。
 16さん、17くん、約束を守ることの大切さについて言及しました。さらに、02さんは、その考えをより強くしていきました。誠実とは、約束を守ること。この考えは、展開後段の自己への振り返りにもつながっていきます。
 最後に、19くんの考えに着目してみます。第1発問では、「明日暇だし、ただ街を歩いているよりもいいか。」第2発問では「大劇場で売れたら、仕事が忙しくなって暇がなくなって男の子のところに行けなくなって、二度と男の子の笑顔を見ることができなくなる。」と発言しています。どちらも、手品師の立場に立った考えです。
 道徳の授業では、あまり発言の見られなかった19くんですが、第1発問、第2発問と、途中からではありますが、挙手をしていきました。彼の真剣な眼差し、発言に、私は感動しました。最後に、11さんが発言して、第3発問に入ろうとしたとき、19くんが再び挙手をしました。時間的なこともあって、次の発問に入りたかったのですが、19くんの目が訴えています。「言いたい、どうしても語りたい」と。
 私は彼を指名しました。すると「男の子が、もし自分が来なかったら、どんなことをするかわからないから、行かないといけない」と発言しました。今までは手品師の立場からの発言でしたが、今度は相手の立場に立った、男の子のことを真に考えたからこその発言でした。「どんなことをするかわからないから」との発言は、この教材からはかけ離れている、飛躍し過ぎると捉えてしまうかもしれません。しかし、そうでしょうか。私は、この言葉に、子どもたちの本音を感じます。裏切られたら。何も信じられなくなったら。そのとき、人間はどうなるのでしょうか。

【中心発問】

大劇場に行かないと決意させたのは、どのような思いからでしょう。
20くん 男の子をこれ以上悲しませるのはしたくない。
06さん 男の子が約束を破られたために、いろいろな人を信じられない性格にはしたくない。
21さん 今自分の一番しなくてはならない仕事は、大劇場のステージの穴を埋めることではなく、男の子の心の穴を埋めることだ。
15くん 劇場はまたあるかもしれないけど、男の子とは今度いつ会えるかわからないから、男の子の方を決意した。
09くん 21さんに似ていて、今自分にしかできないことは、男の子を元気にさせること。
10さん 大劇場に行くことは自分だけの夢だけど、男の子のところに行ってあげれば男の子に夢を見せてあげられる。
13くん 人を楽しませることが手品師の仕事だ。
04くん 13くんに似ていて、人を楽しませることが手品師の仕事だから、より困っていて悲しんでいる男の子を楽しませることだ。
02さん 大劇場のステージで披露できるのも最初で最後のチャンスかもしれないが、この男の子との約束を破ったら、男の子に会えない確立の方が、大劇場に出られない確率より高いから。
01さん 13くんと04くんと似ていて、手品師は人を楽しませるのが仕事だから、男の子を悲しませてしまうのは、手品師の仕事と逆になってしまうから、手品師失格になってしまうから、男の子の方に行く。
 第2発問での最後の19くんの発言は、第3発問において、06さんに受け継がれていきます。「人を信じられない性格にはしたくない」と。
 同じく、第2発問での01さんに発言も、21さんに受け継がれていきます。「大劇場のステージの穴を埋めることではなく、男の子の心の穴を埋めることだ」と。21さんが発言した後、教室のあちらこちらから、うなずきの声があがりました。
 そして、13くんは、自分の信念を語るように「人を楽しませることが手品師の仕事だ」と言い切りました。その発言は堂々たるものでした。手品師の仕事に対する誠実さが感じられました。13くんの発言を受けて、最後に01さんは語りました。「手品師は人を楽しませるのが仕事だから、男の子を悲しませてしまうのは、手品師の仕事と逆になってしまう、手品師失格となってしまう」と。01さんは、第1、2発問と、一貫して男の子へのやさしさを説いています。しかし、第3発問では、手品師という職業への誠実さをも説きました。手品師として、人間として、生きるべき道を。
 「自分に誠実であれ、相手に誠実であれ、仕事に誠実であれ。」仕事もしたことのない、たった11歳の子どもたちが、この道徳の授業を通して、訴えているように感じました。

【展開後段】

誠実に取り組んでよかったなと思うことはどのようなことですか。自分の生活に振り返って考えてみましょう。
17くん ぼくは、先に友達と約束したことを、後に約束した方が楽しいからといって、先に約束した方を破ってしまい、友達に嫌な思いをさせてしまいました。しかし、この話を聞いて、楽しいからといって、後の約束を守る人ではなく、先に約束したほうを優先したいです。
01さん 私は、友達に勉強を教えているときに、もう一人の友達から教えてと言われたときに、その子の方へ行ってしまって、最初の友達が「何でそっちに行ったの」と言われて、自分は最初の友達に悪かったと思いました。手品師のように約束を守れる人になっていきたいと思いました。
20くん お祭りに行ったとき、おみくじで2等を取り、ラジコンをもらった。その後、小さな男の子がヘリコプターの羽根が割れて泣いていたところを見て、ラジコンをあげたら、とても喜んでもらって、よかったと思った。
22くん ぼくは、今まで損得で考えて行動することが多かった。「この誠実に生きる」を考えて、これをやったら得をするなど考えず、自分がやってもらったら嬉しいことを相手にもやってあげることが重要だと思いました。
06さん 私は、自転車置場から自転車を取り出そうとして他の自転車も一緒に倒してしまったおばあさんを手伝いました。その時は習い事に行く途中でした。手伝って習い事の教室に着いたときは、始まる時間には遅れて、先生に怒られてしまいました。しかし、よいことをしたということは変わらないから、手伝ってよかったなと思いました。この話を学んで、私も手品師のように、自分の利益より人のことを考えられるような人になりたいです。
16さん 私が5年生のときに、保育園との交流会を行った、保育園の人たちに楽しんでもらえるようにどうすればよいか、私は友達と休み時間をつぶして話し合った。他の人たちは校庭で遊びに行ったが、私と友達は計画を立てた。すると、保育園の交流のときに、保育園の人たちがとても喜んでくれた。このことから私は、誠実に物事に取り組むことの大切さを学んだ。
18さん 体育が苦手で、前はいつも逃げていて、自分の中では得(らく)をしていました。でも、今は、逃げないで体育をやっているので、前よりも少しできるようになってきました。だから、何事にも逃げないで、損得関係なく、やっていきたと思います。

4.授業を終えて

○誠実とは… 自分にとって、相手にとって、仕事にとって誠実であるということが、子どもたちからの学びとして浮かび上がりました。

○今回の授業は、教師の発言を極力控えて、児童たちの発言にある程度ゆだねてみることにしました。しかしながら、教師の適切な補助発問や、児童の発言を受けて問いかけていくこと等、教師の適切な問い返しや補助発問が大切であることがわかりました。また、第2発問で、葛藤する二つの気持ちについて役割演技のペア学習を取り入れることが必要であることを、授業後に考えさせられました。

○二か月後に、「杉原千畝」(日本文教出版「新・生きる力」6年)の教材を用いて、D[よりよく生きる喜び]の学習を行いました。中心発問では、子どもたちから、「困っている人を助けたい」「見て見ぬふりはできない」「人として正しい生き方をしたい」「胸を張って生きたい」との声が挙がりました。このように、誠実に生きることが、人間として、よりよく生きることにつながってくるのではないかと考えました。

わたしのおすすめ教材(1)「母の仕事」(第6学年)

1.学習指導案

(1)主題名 仕事とは  C[勤労、公共の精神]

(2)教材名 「母の手紙」(出典:日本文教出版「新・生きる力」)

(3)一人一人に対する願い
・目立たなくてもいい。自分に誇りをもって、仕事や役割を努めていこうとする気持ちを全うしてきた自分自身の気持ちを大切にさせ、来たる将来につなげてほしい。(08さん)
・自分のお母さんの仕事について理解を深め、お母さんの姿を想像していくことによって自分の心が高まり、自分の将来に生かしていきたいとする心情を育てたい。(09さん)

(4)ねらい
 母の仕事を通しての私の思いを考えることを通して、人々のために働いていくことの素晴らしさについて考え、将来の自分に生かしていこうとする心情を育てる。

(5)展開の概要

学習活動
(○主な発問 ・予想される児童の反応)

○指導上の留意点 ◇評価


1 仕事について考える。
○仕事は、何のためにするのでしょうか。
・生活をするため
・夢をかなえるため
・やりがい
・人の役に立つため

○児童の発言の最後に、黒板に書き記す。
○主題名を黒板に書く。




2 教材「母の仕事」を読んで話し合う。
○腰の痛いお母さんを見ながら、私はどのような気持ちになったでしょう。
・もっと楽な仕事をすればよい
・母を楽にさせてあげよう
・なぜ、そこまでするの

○黒板の右下に場面絵①を貼って、私とお母さんを紹介する。
○範読後すぐに発問せず、余韻をもつ。
○発問カードを貼ってから発問する。
○発問後、考える時間を十分に取る。緑チョークで囲む。

○お年寄りの人たちは、お母さんが来るのをどのような気持ちで待っていたのでしょう
・ありがたい
・待ち遠しい
・きれいになれるから嬉しい

○場面絵②-1、2と発問カードを黒板中央に貼ってから発問する。
○お年寄りの立場から考えさせることを明確にするため、発問カードの上にあえてチョークで「お年寄り」と明記する。
○黄色チョークで囲む。
○お年寄りの人たちの気持ちを考えることを通して、私の心に勤労に対しての意識の変化をもたせる。

◎微笑みながら話すお母さんを見て、私はどのようなことを考えたでしょう。
・役に立てるという幸せ
・仕事への使命感
・お母さんのようになりたい
・お母さんを労わりたい

○場面絵③を黒板左端上に貼る。発問カードを貼ってから発問する。赤チョークで囲む。
○お母さんの仕事に対する思いをもとに、勤労や生き方について考えを深めさせる。
◇母の仕事に対する思いを考えることを通して、人々のために働いていくことの素晴らしさを考えることができたか。(発言)




3 自分自身の生活を振り返って考える。
○お仕事をするということは、どういうことでしょうか。このお話を通して考えてみましょう。

○展開前段を振り返ってから課題を示す。
○発問後、ワークシートに記述させる。
○書くことが進まない児童には、板書を見ながら考えさせる。
○机間巡視の際に、ねらいに達する考えを多面的に探していく。発表させたい児童には、声掛けをして了承を得る。
◇人々のために働いていくことの素晴らしさや、将来の自分に生かしていきたいとする考えを深めることができたか。


4 教師の説話を聞く。
○教師としてここにいる喜びを語る。

○仕事は大変なことも多いが、それ以上にやりがいがあり、幸せであることを伝える。

(6)本時の評価
○母の仕事に対する思いを考えることを通して、人々のために働いていくことの素晴らしさを考えることができたか。(中心発問での発言)
○人々のために働いていくことの素晴しさや、将来の自分に生かしていきたいとする考えを深めることができたか。(展開後段でのワークシート記述)

2.本時の板書

3.授業記録

【導入】

T 仕事をするのは、何のためにするのでしょうか。
01くん 生活をするため。
02くん 食べる物を買うため。
03さん 自分の夢を叶えるため。
04さん 人のために役立つため。
05くん 世の中がうまくまわっていくため。

【展開前段】

腰の痛いお母さんを見ながら、私はどのような気持ちになったでしょう。
06さん このままじゃ、体が悪くなってしまうから、無理をしないで、もう少し休んでほしい。
07さん 06さんと似ていて、私はお母さんのような家のことはできないから、もう少し休んでほしい。
08さん お母さんがこんなに疲れているということは、お母さんは自分の役割を精一杯やっているということだから、お母さんの疲れを少しでも癒してあげたい。楽にさせてあげたい。
09さん 腰が痛いたいのに、市役所の仕事を、何でそんなつらい仕事を、そこまでできるのだろう。
05くん お母さんも自分のやりたいこともあるだろうし、お母さんのためにも、もう少し仕事を減らすか、他の仕事とか、体がもう少し楽な仕事をしてほしい。
 第1発問では、お母さんの体を心配し、楽になってもらいたいという発言が多く見られました。09さんは、「なぜ、こんな大変な仕事なのに、そこまでできるのだろう」という問いをもちました。

【第2発問】

お年寄りの人たちは、お母さんが来るのをどのような気持ちで待っていたのでしょう。
10さん 早く来てくれないかな。
11さん 自分たちは他の人と比べて体が少し不自由だから、お風呂とかも入れないけど、お風呂に入れてくれたり、やさしく気遣ってくれたりするから、洗った後の体だけではなく、心の中もきれいになる。嬉しい。
12さん カレンダーを見るたびに、ドキドキワクワクする。待ち遠しい。
08さん 11さんと似ていて、看護師さんたちが来ると、体もきれいになるけど、自分の気持ちも、すがすがしくなる。
13さん 自分の身内でもないのに、精神的にも身体的にも大変な仕事をしてくれて、感謝の気持ちでいっぱい。
14さん 11さんと似ていて、自分たちはそんなに体が思うように動かないから、こんなに重い体なのに、3人で浴槽まで運んでくれて、少し申し訳ない気持ちもあるけど、洗ってくれて嬉しい。
15さん 普通の人なら、そんな大変な仕事をしたくないだろうけど、自分たちの動けない体を運んでくれて、汚れた体を洗ってくれて、嬉しくて、ありがたい。
T (挙手をやめた09さんを見て)09さんは?
09さん 皆と同じ。体の不自由な私たちのためにそこまでしてくれて、本当にありがたい。
 第2発問では、私の気持ではなく、介助を受ける側の立場を考えてみました。介助を受ける側である相手の気持ちになって考えることが、大切だと考えたからです。この授業の1ヶ月前に、デイケアセンターでの交流体験を行いました。実際に、お年寄りの方々と交流した体験が、今回の授業において児童の思考を深めていくと考えたからです。道徳の授業では、体験活動をして1時間単位を終わるよりも、体験したことをもとに、皆の気持ちを聞きながら、伝え合いながら、自己の考えを深めていくことが大切だと思いました。
 介助を受ける側のお年寄りの気持ちに寄り添って考えた結果、うれしい、ありがたいという介助者に対する感謝の気持ちが多く表れました。

【中心発問】

微笑みながら話すお母さんを見て、私はどのようなことを考えたでしょう。
16さん お母さんの仕事は大変だけど、お年寄りのために頑張っているから、尊敬できる。
10さん 私は、最初は嫌だったけど、お母さんがやりがいを感じて頑張っているので応援したい。
06さん 自分のことよりも人のことを大切にしている。
T (挙手をやめた17さんを見て)17さんは?
17さん 10さんと同じで、お母さんにとって、その仕事はやりがいがある。
09さん お母さんが人のために頑張っているから、皆に自慢できる。
14さん 16さんと少し似ていて、お母さんの話を聞いていると、大変な仕事に聞こえた。しかし、疲れて帰ってきても、しっかりと家事もやっていて、将来は、そんなお母さんのようになりたい。
08さん お年寄りの人は、お母さんのこの仕事で支えられて、お母さんは、そのお仕事をした分のお年寄りの人の笑顔に支えられて、このお仕事をずっと続けていられるんだなぁ。
05くん お母さんの仕事はとても大変だけど、それのおかげで、普段お風呂に入ることのできない人はすごい笑顔になるし、お母さんもすごいやりがいがあるから、お母さんの仕事は皆が笑顔になる素晴らしい仕事で、実は尊敬するし、自分も頑張っているお母さんの腰をもんだり家のことを手伝ったりして貢献したい。
 第2発問での、相手が喜んでくれている気持ちや感謝の気持ちが子どもたちの心に深く浸透していった結果、中心発問では、喜ばれる嬉しさや、お役に立てたという心の高まりが、お母さんの姿を通して、子どもたちに表れています。それが、仕事へのやりがいと捉えたようです。このお話のお母さんと同じ仕事をしている母を持つ09さんは、「自慢のお母さん」と答えました。09さん以外の子どもたちのお母さんは全く違う仕事をしています。しかし、違う仕事をしていても、同じように考えることができるのは、読み物教材を通してじっくりとねらいとする道徳的諸価値について考えたからこそだと私は考えます。ここで子どもたちは、仕事へのやりがいや、社会貢献を学んでいったように思われます。

【展開後段】

お仕事をするということは、どういうことでしょうか。このお話を通して考えてみましょう。
03さん 私も、このお話のように、1、2回で良いから、背中を押してなどと母や父に言われます。私はいつも疲れが取れるように、何回もマッサージをします。なぜかというと、やさしさだけの気持ちだけではなく、お疲れ様やいつも家族に尽くしてくれてありがとうという気持ちを伝えたいからです。母の日や父の日に手紙で伝えているのですが、言葉だけではなく、行動に表したいからです。そうすると、母や父は喜んでくれるので、また今度も、マッサージをしたいと思います。
→手紙で感謝の気持ちを伝えるよさ、行動に表すよさを、皆に伝えたかったので、ねらいとは外れるが発表してもらった。
18さん 私の母は、主婦をしています。主婦は、家事などをして、家族を支えることです。私は、主婦は仕事に入らないと思っていました。しかし、このお話を通して、誰かのために精一杯尽くして、自分だけではなく、周りの人を支えられることが仕事だと思いました。母は、全力で仕事に取り組み、家族を毎日毎日支えています。だから、主婦も立派な仕事だと思いました。
→主婦も大切な仕事であることを皆に伝えたかったので発表してもらった。
19くん ぼくは、このお話を通して、仕事の大切さがわかりました。仕事は、責任をもって成し遂げなければいけないものであり、自分勝手な理由で、辞めたり休んだりしてはいけないと思いました。将来、ぼくが仕事を選ぶときには、やりがいを感じられるかなどを考えたいと思いました。
→価値に迫っている。同じような内容を多くの子どもが書いていた。発言は少ないが、展開前段でしっかりと考えている姿が伺えているので、代表して発表してもらった。
20くん ぼくは、この話を通して、ぼくもいつか社会に出て仕事をするから、やりがいのある仕事に就こうと思いました。今、ぼくのお母さんも疲れているから、腰を押したり、肩を揉んだりしようと思いました。
→多くの子どもたちが書いていた「やりがい」という言葉の大切さを共有したいので、代表して発表してもらった。先週、両親に叱られているので、道徳で活躍の場を提供したかった。
<未発表分 本時では時間の関係上発表できなかったが、紹介したいもの>
21くん ぼくの母は、仕事をしています。でも、近頃、新しい仕事のやり方を覚えなければならないので、帰りがだんだん遅くなっていて、ぼくは、母が帰ってくると、「ご飯早く」と言ってしまいます。でも、このお話を通して、これからは、母が少しでも楽になるように、ご飯の準備など手伝っていきたいです。
→お母さんと二人暮らし。この子の思いに涙が出る。
22さん このお話を通して、仕事をするということは、「責任を持つ」ことだと思いました。私たちが今やっている係とかの仕事にも責任があります。だから、今やっている仕事を精一杯やって、将来の仕事につなげていきたいです。
→将来の仕事と、学校生活での仕事とを共通事項として考えた。正義感が強く、自覚と責任を持って取り組むことができた。
23さん 私は、仕事に就くのだったら、楽な仕事をしたいと思っていました。今日の授業を通して、今までの自分が情けないと思いました。私は、自分に大変な仕事であっても、人の役に立つ仕事をした方がやりがいを感じられると思いました。そういう仕事に将来就こうと考えました。
→素直な気持ちが嬉しい。毎回の道徳の授業で自分の至らなさを発見し、善くしていこうと取り組んでいた。
08さん 仕事とは、生活をしていくためにやらなくてはならないことだと思っていたけれど、自分の仕事にやりがいを持って、この社会の役に立つことができるものだと思いました。このお話では、お年寄りの人が、母に支えられていたけれど、母もお年寄りの笑顔によって、仕事を続けていられているので、自分にとって大変でもやりがいのある仕事を見つけて、将来頑張っていきたいです。
→前回も発表したので、今回は発表を見送った。しかし、改めて考えると、発表してもらうべきであった。多面的・多角的に考え、思いやりの気持ちに溢れ、将来頑張っていきたいと、これからの人生を明るく希望のあるものにしているから。
09さん このお話を通して、仕事をするのは、自分自身が生きていくためだけではなく、他の人が生きていく、喜んでもらうためだと考えました。私の母も、同じような仕事をしています。毎日、夜遅くに家に帰り、家事をしてくれています。そんな母に感謝の気持ちがあります。また、おじいさんやおばあさんも、母のことをとても感謝の気持ちでいっぱいだと思います。
→プライバシーに関わりそうだったので発表を見送ったが、発表してもらうよう声をかけるべきだったと、後悔の念。

4.授業を終えて

<09さん>
 09さんは、「腰が痛いたいのに、市役所の仕事を、何でそんなつらい仕事を、そこまでできるのだろう。→ 体の不自由な私たちのためにそこまでしてくれて、本当にありがたい。→ お母さんが人のために頑張っているから、皆に自慢できる。→ 仕事=自分自身が生きていくためだけではなく他の人へ奉仕=自他共の喜び 母への感謝の気持ち。」と考えを深めていきました。いつまでも母を大切にし、将来に向けて歩みを進めてほしいと願っています。

<08さん>
 08さんは、「お母さんは自分の役割を精一杯やっている=お母さんの疲れを少しでも癒してあげたい。楽にさせてあげたい → 看護師さんたちが来ると、体も心もきれいになる → お年寄りの人は、お母さんのこの仕事で支えられて、お母さんは、そのお仕事をした分のお年寄りの人の笑顔に支えられている = このお仕事をずっと続けていられる → 仕事とは、生活をしていくためにやらなくてはならないことだと思っていたけれど、自分の仕事にやりがいを持って、この社会の役に立つことができるもの お年寄りの人が、母に支えられていたけれど、母もお年寄りの笑顔によって、仕事を続けていられているので、自分にとって大変でもやりがいのある仕事を見つけて、将来頑張っていきたいです。」と考えを深めていきました。
 08さんは、6年生の2学期後半から道徳でよく挙手をするようになりました。「ふくらんだリュックサック」の教材を用いたときからです。その際、第2発問と第3発問で発言を重ねました。毎日掃除を頑張っている08さんだからこそ、自我関与を通して発言に至ったのではないかと考えることができます。今回の授業まで、意欲的に発言が続きました。何かはわかりませんが、08さんは心の中に自信を持ったからだと考えることができます。

主題について自分事として考える道徳の授業(第5学年)

はじめに

 本主題を自分事としてとらえさせるには、人間理解が大切であると考える。いじめ問題は、児童の身近に潜む、差別や偏見に関わる大きな問題の一つである。いじめ問題を生む、「差別や偏見の芽」となる心、例えば「あの人なら許せるけど、この人だとなんだか許せない。」のような心は、多くの人の心に潜むものである。そのような人間の弱さを知った上で、差別や偏見を絶対に許さないという道徳的態度を養うことが大切だと考える。
 人種差別は、日本の児童にとってあまり身近な問題ではないと考える。だからこそ、人種差別について考える時、児童は憤りや悲しみを感じ許さないという心を強くもつであろう。その心を児童の身近な生活にもつなげて考えさせたいと思い、授業作りを行った。

1.主題名

差別のない世の中に  C[公正、公平、社会正義]

2.ねらいと教材

○ねらい
 誰に対しても差別をすることや偏見をもつことなく、公正、公平な態度で接し、正義の実現に努めようとする道徳的態度を養う。

○教材名
 マーチン少年の夢―キング牧師(文溪堂)

3.主題設定の理由

(1)ねらいとする道徳的諸価値について
 本主題は民主主義の基本である社会正義の実現に努め、公正、公平に振る舞うことに関するものである。小学校高学年においては、差別や偏見がいじめなどの問題につながることを理解できるようになる。傍観的な立場に立ち、問題から目を背けようとすることは、自分自身の問題であるという意識が足りないことから生ずるものである。その上で、社会正義の実現は容易ではないが、身近な差別や偏見に向き合い、公正、公平な態度で行動できるようになることが求められている。
 人種差別など多くの差別について、児童は身近には感じていないかもしれない。本時では、そういった世の中にある差別を客観的に捉えるのではなく、「仲の良いあの子なら許せるけど、この子については許せない。」などの自分の心の中にも潜むかもしれない差別や偏見の芽に目を向け、公正、公平に振る舞おうとする態度を養いたい。

(2)児童の実態
 本学級では、日頃から、違いを受け入れて、仲良くすることを指導している。互いにその人らしさを理解し、仲良く過ごすことができている。人それぞれの良さを理解するだけでなく、人それぞれの苦手さ、生まれながらの個性における違いも受け入れて、誰に対しても公正、公平に振る舞おうとする態度を養いたい。

4.本時の展開

学習活動 ○主な発問 ・予想される児童の反応

・指導上の留意点 ☆評価


1 マーチン=ルーサー=キングについて知る。
○みなさん、この方を知っていますか。

・教材への導入として、マーチン=ルーサー=キングや人種差別について説明する。


2 「マーチン少年の夢」を読み、話し合う。
①友達のお母さんに「うちの子とは、もう遊んではいけないよ。」と言われた時、どんな気持ちだったでしょう。
・どうしていけないの。
・遊びたいよ。もう会えないの。
・ひどい。

・マーチンの気持ちになって聞くよう伝える。
・突然友達と遊ぶことを拒否された時の悲しみや怒りの気持ちについて考えさせる。

②お父さんに連れられて店を出た時、マーチンはどんなことを考えたでしょう。
・お父さん、かっこいいな。
・決してぼくたちが悪いわけではないんだ。
・差別を許さないと、きっぱりと言おう。
・みんな平等に仲良くするべきだ。

・父親の姿に感銘を受けたマーチンに共感することを通して、差別や偏見に対して、どう向き合えば良いかを考えさせる。

③マーチンはどんな思いで、人種差別をなくす働きを続けたのでしょう。
・子供のころの悔しさが忘れられない。
・差別は絶対にあってはいけない。
・黒人も白人も平等であるべきだ。
・あきらめてはいけない。
・よりよい世の中を作るのだ。

・マーチンに共感することを通して、差別や偏見のない世の中を実現するために大切な思いについて多面的・多角的に考えさせる。
[多面的]
・差別は許されないもの。
・偏見は人を傷つける。
・人は皆平等である。
[多角的]
・あきらめずに続ける。
・より良い世の中を作りたい。
・悔しさをばねに頑張る。

☆差別や偏見のない世の中を実現するために大切な思いについて考えているか。(発言・挙手)

3 差別や偏見のない世の中を作るために大切なことを考える。
○差別や偏見のない世の中を作るために、必要な「心構え」とは何だろう。
・差別は許さないという強い心。
・誰とでも仲良くする心。
・相手を知ること。知ろうとする心。
・法律を作ればいいと思う。

・差別や偏見の例を挙げ、人種差別に限らず、身近な問題としてとらえさせる。
・友達と話し合うことを通して、差別や偏見のない世の中を作るために必要なことについてより身近に考えさせる。

○みなさんはそういう心をもって、生活することができていますか。

・ワークシートに書かせる。
☆自分との関わりで差別や偏見のない世の中を作るためにできることを考えている。(ワークシート)

5.板書

言葉のおくりもの(第6学年)

1.主題名

男女の友情と協力  B[友情,信頼]

2.教材名

「言葉のおくりもの」(出典:日本文教出版「新・生きる力」)

3.主題設定の理由

(1)ねらいとする価値について
 高学年の内容項目B[友情,信頼]では,「友達と互いに信頼し,学び合って友情を深め,異性についても理解しながら,人間関係を築いていくこと。」というものである。
 この段階においては,これまで以上に友達を意識し,仲のよい友達との信頼関係を深めていこうとする。また,流行などにも敏感になり,ともすると趣味や傾向を同じくする閉鎖的な仲間集団を作る傾向も生まれる。そのため,疎外されたように感じたり,友達関係で悩んだりすることが今まで以上に見られるようになり,このことが不安な学校生活につながる状況もみられる。このことから,友達同士の相互の信頼の下に,協力して学び合う活動を通して互いに磨き合い,高め合うような,真の友情を育てるとともに,互いの人格を尊重し合う人間関係を築いていくようにすることが求められる。指導に当たっては,健全な友達関係を育てていくことが一層重要になる。この段階が第二次性徴期に入るため,異性に対する関心が強まり,これまでとは異なった感情を抱くようになる。この異性間の在り方も根本的には同性間におけるものと同様,互いの人格の尊重を基盤としている。異性に対しても,信頼を基にして,正しい理解と友情を育て,互いのよさを認め,学び合い,支え合いながらよい関係を築こうとすることに配慮して指導することが大切である。(新学習指導要領解説より)
 今回の学習を通して,男女の正しい友情の芽を育て,友情は性別を超えたものであることに気付かせたい。また,互いに信頼し合い,協力し合うことで,明るく楽しい学級が形成されることにも目を向けさせ,一人一人の良さを生かすことの大切さを自覚させたいと考え,本主題を設定した。

(2)児童の実態について
 最高学年となり,学校のリーダーであることを自覚して日々の活動に積極的に取り組む姿が見られる。本学級は男子15名,女子17名の学級である。5年生でクラス替えを行い,この学級で過ごすのは2年目ということもあり,男女お互いに慣れ親しんでいる様子が見受けられる。中休みや放課後の時間を一緒に過ごしたり,係活動を協力して行ったりすることもできる。しかし,第二次性徴期に入る児童にとって,少しずつ異性を意識し始めたこともあり,照れや恥ずかしさから素っ気なくしてしまったり,態度が悪くなってしまったりする場面もある。異性に対する正しい理解と男女間の友情を育てていくことが課題であるといえる。さらに,一緒にいて楽しいだけではなく,励まし合ったり忠告し合ったりしてお互いを切磋琢磨する真の友情に発展させていくことが求められる。

(3)教材について
 一郎は,すみ子と仲の良いところをたかしに見られ,からかわれたり,周りに言いふらされたりするのを嫌がり,すみ子をわざと避けようとする。小さなことにこだわらない明るい性格のすみ子は,たかしのリレーでの失敗を許し,一郎の誕生日には,すばらしい「言葉のおくりもの」をする,という内容である。揺れ動くこの時期の男女関係を,明るいすみ子,明るい学級の様子を中心に現実の問題として描き,児童をひき付けてくれる資料である。主人公の考えや行動に共感しつつ,お互いに信頼し合って友情を深め,男女相互に理解し,協力する態度を養うのに適した資料であると考える。

教材分析

場面

☆主な発問
○予想される児童の反応
◎ねらいに迫ったと考えられる児童の発言

関係する価値項目

1 一郎の消しゴムを拾ったすみ子に感謝の気持ちを表したことで冷やかされる。

☆一郎がすみ子に怒った態度をとったのは,どういう気持ちからでしょう。
○こんなことでからかわれたくない。
◎すみ子と仲がいいと思われるのはいやだ。
○あまり近寄るな。
○ゆううつだ。

B[友情,信頼]

2 植木鉢を落とした一郎をすみ子が手伝おうとするが,断る。

B[友情,信頼]

3 子ども会のリレーで,たかしがバトンをおとしてしまうが,すみ子はそれをかばう。

☆リレーで失敗したたかしをかばい,力づけるすみ子を一郎はどのように思ったでしょうか。
○失敗したたかしをかばうなんて。
○失敗を許せるすみ子は心が広い。
◎誰に対しても優しく思いやりをもって接している。

A[正直,誠実]

4 一郎の誕生日。すみ子も言葉のおくりものを贈る。教室のあちこちから拍手が起こる。

☆誕生日のすみ子の「言葉のおくりもの」に,一郎やクラスの友達はどう思ったでしょうか。
○すみ子の自分への励ましはうれしくありがたい。
○これまでの自分の態度が恥ずかしい。
◎これからもっと男女仲の良い友達でいたい。
○すみ子の言うようにみんなで明るい学級をつくりたい。

B[親切,思いやり]

4.年間指導計画による位置づけ

○10月…「ロレンゾの友達」
 ねらい…友達と共にかかわり合って,互いのよさに気付き,学び合いながら友情を深めようとする心情を育てる。

5.指導の工夫

(1)場の工夫
・児童同士が互いの表情を見て共感しながら話し合えるようにするために,座席をコの字型にする。

(2)導入の工夫
・事前に「友達に関する実態調査」を行い,資料への導入をし,資料の理解を助ける。
・調査結果

6年3組の友情を探れ!!

①男女が仲良くすることは大切だと思いますか。

はい 32人
いいえ 0人

②大切だと答えた人は,なぜ大切だと思いますか。
・クラスの雰囲気があたたかくなる  ・困った時に助け合える
・まとまりのある優しいクラスになるから
・共に楽しく過ごせるから  ・男女で分かり合うことが大切
・協力し合うことができるから
・男女共に素晴らしい意見,魅力的な意見があるから

③6年3組は,男女の仲が良いクラスだと言えますか。

はい 28人
いいえ 2人
どちらとも 2人

④言えると答えた人はどんなところが仲が良いクラスと感じますか。
・みんなで協力することができる
・男女共に遊んだり意見を交わしたりすることができる
・互いに思いやりをもって行動できる  ・困っている時に助け合える
・互いに教え合うことができる  ・友達の良い所をみつけることができる
・男女で手をつなぐゲームなどがサッとできる  ・先生がきっかけ

⑤言えないと答えた人はどんなところが仲が良くないと感じますか。
・一部の人は男女共に遊んでいるが一部だけな気がするので,それではまだ仲が良いとは言えない
・一部の男女が互いに苦手意識をもっているから
・互いに口が悪くなってしまう時があるから

⑥男女仲良く過ごすためにはどんなことが必要だと思いますか。
・男女関係なく一緒に遊ぶこと(全員遊びなどのきっかけを作る)
・相手の気持ちをもう少し考えること
・思いやりをもつこと
・自分から積極的に話しかける
・日頃から意見の交換や交流をする
・あまり遊んだことのない友達と遊ぶようにする

(3)教材提示の工夫
・話の展開や様子が分かるよう,拡大した挿絵を黒板に掲示する。
・資料を読む際に「一郎」の気持ちになって聞くという読みの視点を示す。

(4)発問の工夫
・一郎の心が少しずつ揺れ動いていくところに発問の焦点をあてた。

(5)展開前段の工夫
・ワークシートを活用する。ワークシートには,挿絵を入れることで,「一郎」の気持ちを考えやすくする。

(6)終末の工夫
・男子から女子へ,女子から男子への手紙を書いたものを渡すことで改めて友情についての考えを深め,それぞれが課題意識や友情への希望を抱いて終わることができるようにする。

6.本時の学習

(1)ねらい
 互いに信頼し合って友情を深め,男女相互に理解し,協力する態度を養う。

(2)展開


学習活動
(○主な発問 ・予想される児童の反応)

指導上の留意点(●)
指導の工夫(・) 評価(☆)



3

1 友達がいてよかったと思った経験を話し合う。
○友達がいてよかったなと思うときはどんな時ですか。

・楽しく遊び,笑い合うとき。
・困っているときに励ましたり助けてくれたりする。

・事前の実態調査を十分に活用して,意見を引き出し,学習への方向付けとする。





22

2 教材「言葉のおくりもの」を読んで話し合う。

・教師が教材の読み聞かせをする。

○どんなところが印象に残りましたか。
・一郎が素っ気なくしたところ
・たかしがからかったところ
・すみ子がたかしに励ましの声をかけたところ
・言葉のおくりものを贈るところ

・一郎,すみ子,たかしの顔の絵を提示し,3人の心の動きをとらえやすくする。

○すみ子に対して怒った態度をとった一郎はどんな気持ちからでしょうか。
・また,たかしに冷やかされる。
・すみ子と仲がいいと思われるのはいやだ。
・こんなことでからかわれたくない。

☆冷やかされたくなくて冷たい態度をとってしまう「一郎」の気持ちに気付くことができたか。

○リレーで失敗したたかしをかばい,力づけるすみ子を一郎はどのように思ったでしょうか。
・失敗したたかしをかばうなんて。
・失敗を許せるすみ子は心が広い。
・誰にでも優しく思いやりをもって接している。

・一郎のすみ子に対する本当の気持ちをとらえさせる。すみ子の寛容な態度に気付くことができるようにする。
☆すみ子の寛容な態度に気付くことができたか。(発言,観察)

◎すみ子の「言葉のおくりもの」を,一郎はどう思ったでしょうか。
・すみ子の励ましはうれしくありがたいなあ。
・これまでの自分の態度が恥ずかしい。
・これからもっと男女仲の良い友達でいたい。

・すみ子の,男女を超えた友達を思うすがすがしい態度についてじっくりと考え,味わえるようにする。
・個人の関係だけにとどまらず,学級全体に目を向け,明るい学級づくりへの自覚を高める。
・ワークシートを活用し,一人一人がじっくりと考える時間を与え,多様な考えを引き出せるようにする。
☆すみ子のすがすがしい態度に共感し,学ぼうとする気持ちをもつことができたか。(発言,ワークシート,観察)





15

3 男女仲良くするためやよい友達であるために,どんなことが大切か,話し合う。
○男女仲良くするためやよい友達であるために,どんなことが大切だと思いますか。
・人のことをからかわない。
・お互いによさを見つけ,認め合うようにする。
・相手の気持ちになって思いやりをもち,考えて行動する。

・考えを発表させることでお互いの考えや体験を交流し,実践化へとつなげる。
☆自分の生活を振り返り,積極的に話し合うことができたか。
(発言,ワークシート,観察)


4 男子から女子へ,女子から男子への手紙を渡す。読みながら、思いを深め自分なりの課題をもつ。

・それぞれなりの思いや課題意識を大事にしつつ終わることができるよう、静かに読むことを事前に指導する。
☆お互いの気持ちを理解し,仲良くしようと考えることができたか。(観察)

7.評価

○主人公の気持ちに共感し,互いに信頼し合って友情を深め,男女相互に理解し,協力しようとする心情を高めることができたか。

○男女関係なく,相手を認め信頼し助け合おうとする意欲をもつことができたか。

8.板書計画

児童が考えを深める道徳授業(3) ―小道具等を使用した教材提示の工夫―(第5学年)

1.主題名

やっぱり親切っていいな  B[親切・思いやり]

2.教材名

くずれ落ちた段ボール箱
(出典:文部省「小学校 道徳の指導資料とその利用 4」昭和56年3月)[一部再構成]

3.主題設定の理由

(1)ねらいとする道徳的価値について
 人間は一人では生活していけない。家族はもちろんだが、家族以外のたくさんの人々と常に関わり合いながら生活している。その中で、よりよい人間関係を築いていくことが大切であり、それがよりよい生き方につながっていく。
 よい人間関係を築くには、相手に対する思いやりが不可欠である。それが、他人に接する時の基本姿勢となる。思いやりとは、相手の立場になって相手のことを考えて、その自分の思いを相手に向けることである。そして、それを具体的に表していくのが親切な行為である。親切な行為にはいろいろあり、場合によって、温かく見守り接することもあれば、相手に対して励まし手助けをすることなどがある。
 そこで大切になってくることは、「自分にとって」ではなく、あくまでも「相手の立場になって」考えることを忘れてはいけないということである。人間一人一人は考えや性格・置かれている環境も違う。それをしっかりとらえた上で考えていかなくてはいけない。また、思いやりの心を伴った親切な行為は家族や親しい友達だけでなく、だれに対しても行っていくことが重要である。そこで自分の行った親切な行為によって、相手が喜び、また、それが自分にとっての喜びとなっていくことを知り、「やっぱり親切っていいな。」ということを考えさせていきたい。

(2)児童の実態について
 本学級の児童は気持ちの優しい児童が多く、学校生活の中でも、自然に友達のことを考えて進んで手助けをしている場面が多く見られる。また、たてわり活動などでの姿を見ても、低学年の児童が戸惑っている様子に気付き、手を添えて近くまで連れていってあげたり低学年の児童の目の高さに合わせて話をしていたりしている。
 さらに、登下校の際におばあさんが道がわからなくて困っていた様子を見て,何人かで声をかけ教えてあげたことで喜んでもらえたことを嬉しく思い日記等で教えてくれた子もいる。
 親切というのは、相手に認めてもらうためにやるものではない。自分のやった親切な行為が困っている人の手助けになり、それが自分にとっても人のために何かできたという喜びとなるものだということに気付かせていきたい。その上で、なかなか勇気がいることではあるが、相手が誰であっても、困っている人がいたら、相手の立場になって考え、そのままにはしていられない、親切にしていきたいという気持ちを考えさせていきたい。

(3)教材について
 小さい男の子が、狭い通路にあった段ボール箱を崩してしまう。男の子は気にも留めずおもちゃ売り場に行ってしまい、一緒にいたおばあさんは片付けたくても男の子が気がかりで困っていた。わたしと友子さんは、その様子を見かねて、自分たちが片付けると言って片付け始めた。しかし、店員さんに誤解され、厳しい口調で叱られてしまう。おばあさんに後でお礼を言われてもすっきりせずにいたが、後日、店員さんからの謝罪とお礼の手紙をもらい、親切にしてよかったと晴れ晴れとした気持ちになるお話である。
 親切にしたにもかかわらず、認めてもらうどころか誤解をされ叱咤され、「こんなことならしてやらなきゃよかった。」という気持ちは子どもだけでなく、大人でもそう思うことがほとんどである。そのような葛藤場面を考えさせ、親切とは何かと深く考えることができる教材である。
 この教材を通して、知らない人であっても困っている人がいたら親切にすることで、相手が喜ぶだけでなく、自分の心も「親切にしてよかった。」という晴れ晴れとしたい気持ちになるということを考えさせたい。

4.教材分析図

場面

わたしの心の動き

発問

①わたしは友子さんと買い物に出かけた。

・とっても楽しみだなあ。何を買おうかな。
・二人でいろいろ選べて楽しいだろうな。
・ワクワクするなあ。

②ショッピングセンターの裏の段ボールが山のように積んである通路を通っていた。

・今日は混んでいていやだな。
・友子さんと離れてしまいそう。
・段ボールがこんなに積んであって倒れてきたら、大変だな。
・段ボールが邪魔だなあ。

③わたしたちの前を男の子とおばあさんが歩いていた。

・おばあさんと一緒に買い物に来て、とても楽しいんだろうな。
・おばあさん一人で小さい子を連れているのは大変。
・男の子、かわいいな。

④男の子が段ボール箱にふれながら歩いていた。

・危ないな。
・倒れないといいな。
・倒れたら、けがをしてしまう。

⑤段ボール箱が通路にくずれ落ちた。

・やっぱり落ちちゃった。
・危ないなあ。
・通れない。困るなあ。
・だれもけがしなくてよかった。
・おばあさんも注意しておけばよかったのに。
・男の子は、叱られちゃうだろうな。

⑥男の子は気にする様子もなく、おもちゃ売り場に行こうとおばあさんの手をひいていた。

・ひどい。ちゃんと片付けなきゃ。
・えっ!そのままにしちゃうの?
・少しは悪いとか思わないのかな?
・小さいから仕方ない。

⑦おばあさんが整理し始めたが、男の子はおもちゃ売り場に行ってしまった。

・おばあさん一人にさせて、男の子はひどい。
・なんでおばあさんの言うことをきかないんだろう。
・男の子は、迷子にならないかな。大丈夫かな。

⑧周りの買い物客は誰も手伝うことをしなかった。

・手伝ってあげないのかな。
・見ているだけなんて、みんなひどいなあ。
・おばあさん一人でかわいそう。

⑨おばあさんの困っている様子を見て、わたしたちも段ボール箱の整理を始めた。

・おばあさんが困っているのに、何もしないのは悪いなあ。
・手伝ってあげよう。
・みんなでやれば早い。
・おばあさんが一人でやるのはかわいそう。

⑩おばあさんは、男の子が気になって、周りを見回していた。

・男の子が心配なんだろうなあ。
・男の子、迷子になっていないといいな。

⑪「わたしたちが整理します…。」とおばあさんに言うと、おばあさんは、お礼を言って男の子の方へ行った。

・これで、おばあさんは、男の子のことを探しに行けるから、安心できるだろう。
・おばあさんの役に立てる。
・おばあさんに喜んでもらえてうれしい。
・ちょっといいことしたかも。

⑫おばあさんのことを話しながら段ボール箱を一生懸命に整理していた。

・もとに戻ってよかった。
・おばあさん、男の子のこと探せたかな。
・いいことをして、気持ちいいな。
・きれいに直せそう。

一生懸命に段ボールを整理していた時、私はどんな気持ちだったでしょうか。(親切をして気持ちがいいことをおさえる)

⑬店員がやってきて、遊んでいて落としたと疑われた。

・えっ?何のこと?
・店員さん、だれかと勘違いをしている。
・わたしたちは悪いことしてないのに。
・おばあさんのかわりやっているのに。
・人違いをしないでほしい。
・話も聞かずに勝手に決めないでほしい。

⑭周りの人に叱られている様子を見られた。

・はずかしい。
・わたしたちでないのに…。

⑮悪いことをしていないと言い聞かせたのだが、言葉にならなかった。

・堂々としていればいい。
・なぜ、こんなこと言われなくてはいけないの。
・なんて言えばいいの。
・男の子のせいと言っても信じてくれないかも。

⑯それでもむしゃくしゃしながら、最後まで片付けていた。

・何で何も悪くないのにこんなふうに言われなきゃいけないの?
・ひどい。
・手伝わなきゃよかった。

⑰整理は片付いた後、店員さんにまたきつい口調で言われた。

・ひどい。
・勝手に疑って!
・最後まできれいに片付けて、何で、こんな風にいわれなきゃいけないの。
・こんなことなら、おばあさんのために片付けなきゃよかった。
・あの男の子のせいだ。
・おばあさん戻ってきて、説明をしてほしい。

①片付けが終わった後になってまでも、店員さんにきびしい口調で注意された時、私はどんなことを考えたでしょうか?

⑱おばあさんが男の子を連れて戻ってきて、お礼を言われた。

・今さらお礼を言われても…。
・今ごろ戻ってきても遅い。
・もっと早く戻ってきてよ。
・男の子が崩さなきゃこんなことにならなかったのに。
・親切にしたことには変わりない。

②「いいえ、いいんです。」と言って、その場を立ち去ったわたしの心の中には、どんな思いがあったでしょうか。

⑲朝会の時に校長先生が、ショッピングセンターから手紙が来たことをお話になった。

・また、文句を言ってきたの…。
・ひどい。学校まで連絡しなくてもいいのに…。
・どんな内容の手紙なんだろう。
・いやだな。聞きたくない。

⑳手紙の内容を聞いた。

・やっとわかってくれたんだ。
・わかってもらえてうれしい。
・おばあさんの手助けをしてよかった。

㉑友子さんも嬉しそうにしていたし、わたしも足取りが軽やかだった。

・やっぱり親切にするっていいな。
・いいことをすると気持ちがいいな。
・あの時、手伝ってよかったな。

③わたしの足取りが軽やかになったのは、心の中がどんな思いでいっぱいになったからでしょう。

5.ねらいに迫るための手立て

(1)座席の工夫
〈教材提示〉教材にじっくりひたらせるために、全員が担任の方を向くように、横の座席の児童は前向きにする。
〈話し合い〉座席をコの字にし、みんなの顔が見て、話し合いができるようにする。
〈振り返り〉前向きの座席の形にし、一人一人がじっくり自分のことを振り返られるようにする。

(2)教材の精選
 各社の副読本で使用されている教材である。内容が、文部省の方が「わたし」の心の様子をより細かく書いてあるので、原作である文部省の教材を使う。ただし、古くから使われている教材なので、現代に合わせるために一部再構成した。

(3)教材提示の工夫
 話の流れがわかりやすい教材なので、教材は手元に渡さずに、場面絵は映像で映したり、実際に段ボールを用意したりし、教師が児童の様子を見ながら範読をする。ねらいに関係なく、今の児童があまり使わない表現のところは少し省いて提示する。手紙は、映像に最初は映さずに読み、主人公と同じようにどんな内容かを考えさせる。

6.本時

(1)ねらい
 店員さんからもらった手紙を聞いて、私の足取りが軽やかになった時の気持ちを考え、だれに対しても思いやりをもち、相手の立場になって考え、困っている人には進んで親切にしようとする心情を育てる。

(2)本時の展開

□学習の流れ ○発問 ・予想する児童の活動

・指導上の留意点


□道徳的諸価値への導入
○困っている人に親切にした後、どんな気持ちになりますか。
・いいことしてよかったなあ。
・喜んでもらえて嬉しかった。
・気持ちがすっきりした。

・児童の言葉をもとに主題につなげる。





□教材を読み、話し合う。

・教材を画像に映しながら、教師が範読をする。横の座席の児童は前向きにする。
・一生懸命に段ボールを整理していた時の気持ちを教師がおさえてから発問に入る。

①片付けが終わった後になってまでも、店員さんにきびしい口調で注意された時、わたしはどんなことを考えたでしょう。
・ひどい。勝手に疑って!
・最後まできれいに片付けて、何で、こんな風にいわれなきゃいけないの。
・あの男の子のせいだわ。
・こんなことなら、おばあさんのために片付けなきゃよかった。

②「いいえ、いいんです。」と言って、その場を立ち去ったわたしの心の中には、どんな思いがあったでしょう。
・今さらお礼を言われても…。
・今ごろ戻ってきても遅い。
・男の子が崩さなきゃこんなことにならなかったのに。
・親切にしたことには変わりない。
・おばあさんには喜んでもらえたからいい。

・お礼を言われても納得いっていないわたしの気持ちと、親切にしたことにはかわらない気持ちが入り混じっている思いを出させ、どちらが強いか考えさせる。
・2人組で役割演技をさせる。

③わたしの足取りが軽やかになったのは、心の中がどんな思いでいっぱいになったからでしょう。
・やっぱり親切にするっていいな。
・いいことをすると気持ちがいいな。
・あの時、手伝ってよかったな。

・疑いが晴れてすっきりしたというような発言が出た場合は、みんなに投げかけ、話し合う。





□自分を振り返る
○相手のことを考えて親切にしたり、自分のことを考えてもらって親切にされたりして、「やっぱり親切っていいな」。と思ったことはありますか?その時のことを書きましょう。
・電車に乗っていて、おばあさんに席を代わって、お礼を言われた時。
・下校の時に転んで困っていたら、近くを通った子が、大丈夫と言ってハンカチを貸してくれた時、とてもうれしかった。

・ワークシートに書く。
・発表したい児童がいれば、発表させる。


○教師の説話をする。(手袋の話)

(3)評価
・親切にしたことを後悔していたが、店員さんからもらった手紙を聞いて、「やっぱり親切っていいな。」と思った主人公の気持ちを考えることができたか。(③の発言)
・誰に対しても思いやりの気持ちをもち、相手の立場を考え、親切にしていくことの大切さに気付き、「やっぱり親切っていいな。」、これからも親切にしていきたいなという心情になったか。(ワークシート)

(4)板書計画

(5)ワークシート

児童が考えを深める道徳授業(2) ―教材提示を工夫して―(第6学年)

1.主題名

自分の役割と責任に誇りを  C[よりよい学校生活、集団生活の充実]

2.教材名

海の勇者(出典:文部省「小学校 道徳の指導資料 第2集 第6学年」1965年)[一部再構成]

3.主題設定の理由

(1)ねらいとする道徳的価値について
 人は社会的な存在であり、家族や学校をはじめとする様々な集団や社会に属して生活を営んでいる。それらの集団や社会の中で生活していく上で大切なことは、集団や社会の中で一人一人が尊重して生かされるとともに、一人一人が主体的にその集団や社会に関わっていくことが大切である。そのためには、各自が役割をもち、その責任を果たしていくことが必要になってくる。しかし、人は大きな集団になればなるほど「誰かがやってくれる。」「自分がやっても大して変わらない。」といった無責任な気持ちで集団に関わり、自分の役割に責任をもとうとせず、責任転嫁してしまうこともある。しかし、これは個にとっても集団にとってもマイナスでしかなく、いずれはその集団のまとまりを壊してしまうことにもつながる。また、人は逆に自分の役割を自覚しているものの、その責任の重さに耐えられずその役割を投げ出してしまいたくなる弱さをももっている。
 いろいろ大変なことや自分の力だけではどうにもならないことが起こったとしても、集団や社会の中で自分の役割を自覚しその責任を果たしていくことをしていかなければ、よりよい集団や社会をつくっていくことはできない。そのように自分の役割を果たす経験を重ねる中で、「集団を支えている一人なんだ。」ということに気付いたり、集団の中で主体的に協力することの大切さを知ったりすることができる。自分の役割をしっかり果たすことで、所属する集団がよりよく向上していくことをじっくり考えさせていきたい。そして、集団の中で役割をもつことが大変なことと思うのではなく、自分が責任をもってやったことが集団に影響を与えることを考えることによって、自分に与えられた役割と責任を自分の誇りとしてどんなことがあっても最後まで責任を果たしていこうとする心情を育てたい。

(2)児童の実態について
 自分に与えられた仕事は責任をもってやろうとする児童が多い。普段の学校生活でも、係や委員会の仕事に責任をもち、その仕事の中でも全校に対して先頭にたってやらなくてはいけない時など、隙間の時間まで原稿に目を通していたり、練習に励んでいたりしている。また、6年生だからこそ頼まれた仕事や先生から自分を見込んで頼まれた仕事などは、生き生きと誇りをもって仕事をしている姿に頼もしく感じることもある。また、真面目に取り組んだり、責任感を強くもつ気持ちが強かったりすればするほど自分の責任に対して重く感じていることもある。
 責任をもつということは大変なことではあるが、自分の責任を重く感じるのでなく、自分が責任をもってやったことが集団の支えになっていることに気付かせ、自分に与えられた役割と責任を自分の誇りとして、どんなことがあっても最後まで責任を果たしていくことの大切さを考えさせたい。

(3)教材について
 1951年12月26日に実際に大西洋で起こった出来事の話である。突然の大嵐の中、船長のクルト=カールセンは必死に船と乗客、船員を守ろうとしていた。しかし、自然の驚異には勝てず、船がだんだん傾き、航海を続けることができなくなった。クルト=カールセン船長は乗客の命を守るために細かに避難の指示を出す。乗客、船員がボートに移った。しかし、クルト=カールセン船長は、船員の再三の呼びかけにも応じず、船を守るという自分の船長としての責任を果たそうとする。
 乗客が無事救助され、クルト=カールセン船長のもとにも救助船が向かい、とうとう船が沈んでしまうというところでクルト=カールセン船長も救助された。その最後まで乗客と船を守ろうとした船長の姿をたたえた内容である。
 何社かの副読本にもこの教材は掲載されている。原作である文部省「小学校 道徳の指導資料 第2集(第6学年)」を読み、その時の情景がよく描写され、クルト=カールセン船長の自分の責任に対する思いがよく分かるので、原作をもとにねらいとするところに着目して再構成をした。
 この教材を通して、クルト=カールセン船長が船長として、乗客と船をまもろうと最後の最後まで自分の責任を果たそうとした姿を通して自分の役割に責任をもち、また、それを誇りとしてどんなことがあっても最後まで責任を果たしていくことが集団の大きな支えとなることを考えさせていきたい。

4.教材分析図

場面

主人公の心の動き(内面)

発問

①船長と船員たちが必死に船を守っていた。

・早く嵐が静まってほしい。
・こんな嵐は初めてだ。
・このままではまずい。
・どうにかして、船と乗客を守らなくては…。

②船は、左に大きく傾いていった。

・もうだめなのか。
・これでは、乗客の命が守れない。
・誰か助けてくれ。
・奇跡が起きてほしい。

③じっと夜のように暗い薄気味悪い空の一角をにらんでいた。

・嵐は止んではくれなさそうだ。
・これからどうしたらいいのだろう。
・船と乗客を守るにはどうしたらいいのだろう。
・どうすることもできないのか。

④やがて、静かにしかし強い声で命令した。

・とにかく乗客だけは助けなければならない。
・この嵐の中を救助ボートで逃げるのは大変だが、このまま船に残っていても助からない。

⑤「お客様を先にお乗せしろ。風は冷たいぞ。毛布、セーター、ありったけお着せしろ。」と声をあげていた。

・乗客を無事に港に避難させなければ。
・この嵐の中、ボートで避難するのも大変だ。最善のことをしなければならない。
・どうにか港まで行ってほしい。

⑥「船長、早く乗ってください。」と、船員たちが口ぐちに叫んだ。

・ありがとう。
・よい船員に会えた。

⑦「船を最後まで守り通すのは、私の責任だ。きみたちの責任は、お客様の命を守ることだ。さあ、早く。」と船長は言った。

・船員たちの言っていることはわかる。でも、私の責任を果たしたい。
・船を守ることは船長の責任だ。乗客を守ることも私の責任だ。
・乗客のことは任せた。お願いだから、乗客を無事に守ってほしい。

⑧遠ざかるボートを、じっと見つめながら船長はつぶやいた。

・この嵐の中で無事にいけるだろうか。
・お願いだ。みんな素晴らしい船員だ。きっと船員は自分たちの責任を果たしてくれるだろう。
・自分の判断に間違いはない。
・自分はこの船を絶対に守るぞ。

○遠ざかるボートをじっと見つめながら、クルト=カールセン船長はどんなことを考えていたでしょう。

⑨傾きかけたエンタプライズ号は、救助船ターモイル号に引かれ、イギリスのファルマス港に向かって進んでいた。

・よかった。これで、船を守ることができる。
・あきらめなくてよかった。
・乗客も無事でよかった。

⑩1週間の後、エンタプライズ号は、その大きな体をぶくぶくと海の中へ沈め始めた。

・あと少しだったのに、ほんとうに残念だ。
・頑張ってきたのに…。
・嵐が憎い。
・ここまで頑張ったんだから仕方ない。
・船を守れなかったから、船長としては失格となるかも。

○クルト=カールセン船長は、どんな思いでフライング=エンタプライズ号が沈み始めるのを見ていたのでしょう。

⑪ファルマス港に入っていくと、人々は船長をほめたたえた。

・みんながこんなに喜んでくれて嬉しい。
・船は残念だが、乗客が無事だったことが何よりだ。
・乗客を守れてよかった。

⑫乗客と船員がみな無事に助かり、しかも、二代目のエンタプライズ号が、船長のために用意されていた。

・乗客も船員の命を救うことができて本当によかった。
・大変だけれど、責任を果たすことができてよかった。
・また、船長として頑張ることができる。
・さらに良い船長になろう。
・今度こそ、船も守りたい。
・自分のやったことが認められた。

◎乗客と船員が無事であり、さらに二代目のエンタプライズ号が用意されていることを知って、クルト=カールセン船長は、どんな思いだったのでしょうか。

5.ねらいに迫るための手立て

(1)座席の工夫
〈教材提示〉教材にじっくりひたらせるために、全員が担任の方を向くようにする。
〈話合い〉座席をコの字にし、みんなの顔が見て話し合いができるようにする。
〈振り返り〉前向きの座席の形にし、一人一人がじっくり自分のことを振り返られるようにする。

(2)教材提示の工夫
 実際にあった映像を教材提示の中で提示し、臨場感あふれるよう工夫する。他にも、場面に応じた写真をパワーポイントで映しながら、教師が範読する。

(3)話合い活動の工夫
 ハンドサインを活用し、児童の考えを把握し、多様な意見が出るようにする。中心発問では、ドキワク発言(手を挙げた児童以外でも教師が意図的に指名された児童が発言する)を活用し、話し合いを深めていくようにする。

6.本時

(1)ねらい
 乗客と船員の命を守り、また新しい船で船長ができることを知った船長の気持ちを考え、自分の役割の責任を果たすことが集団の支えとなることを自覚し、どんなことがあっても最後まで責任を果たそうとする心情を育てる。

(2)本時の展開

□学習の流れ ○発問 ・予想する児童の活動

・指導上の留意点
☆ねらいにせまるための工夫


□価値への導入
○6年生として責任をもってやってきたことはどんなことがありますか。また、その時はどんな気持ちでしたか。
・1年生のお世話…言うことを聞いてくれなくて大変だった。でも、かわいかった。
・委員会の仕事…みんなの前で言う時はちゃんと言わなきゃとドキドキした。

・全員に発言させる。展開に入る前に、「その責任が重いなあと思うことはあったか。」と問いかける。





□教材を視聴し、話し合う。
①遠ざかるボートをじっと見つめながら、クルト=カールセン船長はどんなことを考えていたでしょう。
・この嵐の中で無事にいけるだろうか。
・お願いだ。みんな素晴らしい船員だ。きっと船員は自分たちの責任を果たしてくれるだろう。
・自分の判断に間違いはない。
・自分はこの船を絶対に守るぞ。

☆パワーポイントで映しながら、教師が範読する。
・ここでは、乗客を助けるという責任だけでなく、船長は、船を守るという責任があることをしっかり考えさせる。

②クルト=カールセン船長は、どんな思いでフライング=エンタプライズ号が沈み始めるのを見ていたのでしょう。
・あと少しだったのに、ほんとうに残念だ。
・頑張ってきたのに…。くやしい。
・嵐が憎い。
・船を守れなかったから、船長としては失格となるかも。
・ここまで頑張ったのだから仕方ない。
・帰ったら、船を守れなかったことを責められるかもしれない。

☆ハンドサインを活用し、多様な意見が出るようにする。
・船を守れず、船長として責任を果たせてないという意見と、乗客の命は守っているし、ここまで守ろうとして守れなかっただけだから船長としての責任は果たせたという意見の両方を出させ、「船長としての責任」に着目させて話し合わせる。どちから一方の意見しか出なれば、補助発問によって、他方の意見も出るようにする。

③乗客と船員が無事であり、さらに二代目のエンタプライズ号が用意されていることを知って、クルト=カールセン船長は、どんな思いだったのでしょうか。
・乗客も船員の命を救うことができて本当によかった。
・大変だけれど、責任を果たすことができてよかった。
・また、船長として頑張ることができる。
・さらに良い船長になろう。
・今度こそ、船も守りたい。
・自分のやったことが認められた。

☆ドキワク発言を活用する。
・ただ船をもらって嬉しいという気持ちだけではないことに気付かせる。





□自己を振り返る。
○自分が責任をもってやったことで、みんなが喜んでくれたり、その集団がよりよい方向にいったりして充実感をもち、またその役割を頑張りたいなと思ったことはありますか。
・リレーのキャプテンをやって、みんなが生き生きと楽しくやっていたので、またやりたいなと思った。

・ワークシートに書く。


□教師の説話を聞く。

(3)評価
・乗客と船員が無事であり、さらに二代目のエンタプライズ号が用意されていることを知った時のクルト=カールセン船長の気持ちを考えることを通して、自分の役割を最後まで全うし、責任をもつことの大切さを考えることができたか。(ワークシート)
・自分の役割の責任を果たすことが集団の支えとなることを自覚し、どんなことがあっても最後まで責任を果たそうとする心情をもつことができたか。(発言、ワークシート)

(4)板書計画

画像提供:PPS通信

(5)ワークシート

児童が考えを深める道徳授業(1) ―発言方法の工夫を取り入れて―(第6学年)

1.主題名

まっすぐな心を貫く  C[公正、公平、社会正義]

2.資料名

アンパイアの心(出典:文部省「小学校 道徳の指導資料 第2集 第5学年(1965年)」)

3.主題設定の理由

(1)ねらいとする道徳的価値について
 社会生活の中で、人として公正に判断し行動していくことが、よりよい社会を作っていく中でとても重要である。そしてそれが社会正義でもある。その根底には、相手に対する思いやりの心、善悪の判断が働いてなければならない。しかし、それは決して容易なことではない。人間は、自分とは異なる考え方や感じ方に対して不安になったり、多数ではない立場や意見などに対して偏ったものの見方をしたり、自分より強い相手に恐れを抱き、つい自分の思いや考えを曲げてしまったりしてしまう弱さをもっている。また、自分より弱い存在があることで優越感を抱きたいがために偏った接し方をする弱さももっている。それが、差別や偏見につながっていくのである。
 社会に所属する一人一人が確かな自己実現を図ることができる社会を実現するためには、そのような人間の弱さを乗り越えて、自らが正義を愛する心を育むようにすることが不可欠である。しかし、それは簡単にできることではない。人間誰もが弱さをもっており、それに打ち勝つには強い意志が必要である。そのためには、自他の不公正を許さないという姿勢と共に、一時的な周囲の雰囲気や感情、人間関係に流されることなく自分の考えをしっかりもつことが重要である。自分の心に迷いがあったり、周りに流されて自分の心と反した行動をとったりすれば、他人を傷つけるだけでなく、自身の心が納得することはないということをじっくり考えさせていくことが大切である。
 誰に対しても、一時的な自分の感情に惑わされることなく、公正、公平な態度で、正しいことを迷わずに堂々と行っていこうとする心情を育てていきたい。

(2)児童の実態について
 本学級の児童は、人としてよくない行動は許してはいけないと思っている児童が多い。いじめの事件など人として許せないような話をすると、「そんなひどいことあるの。」と心を痛めている。また、相手のことを思いやる気持ちをもっている児童が多く、クラスで意見が対立した時などでも、対立する意見に対しても、相手の意見をうまく取り入れたり、相手に気を遣ったりしながら自分の意見を表出していることが多い。
 6年生の2学期になり、思春期に入っていく時期である。友達との関係も今までとは違ってくる。それでも、相手のことを考えることのできる心を大切にしながら、たとえ、状況が自分にとって不利であっても、また相手が誰であったとしても一時的な自分の感情に惑わされることなく、公正、公平な態度で、正しいことをやっていくことの大切さを考えさせていきたい。

(3)教材について
 この教材は、文部省「小学校 道徳の指導資料 第2集 第5学年(1965年)」の中の「アンパイアの心」の一部である。
 いつも公平な審判をするので「公平君」とあだ名で呼ばれるほどの主人公「公一」が、頼まれて引き受けた野球の試合の話である。
 公一は野球の審判をしていた。キリンクラブの友だちの広は調子が悪く、苦しい局面になっていた。相手チームのバッターは、感じが悪い。広のチームの味方をしたい気持ちに傾くが、公平な判断をすることを曲げず正しい審判をする。試合が進んでいくうちに、ライオンクラブの道男の打った球がギリギリのところでファールになる。1点を争うゲームの中での出来事で、ライオンクラブの応援団の中学生2人に「ホームランだ。」と殴られるかと思うほどの勢いで言い寄られる。しかし、判断は曲げなかった。結果は、ライオンクラブが負けてしまう。「負けたのはおまえのせいだ。」と帰り際にまた中学生に言われ悔しい思いになる。
 しかし、二週間後、公一は公平な判断をした公一の行動をたたえたスミ子の書いた校内新聞の記事を読み自分の判断の正しさを再確認する。また、その記事を読んだライオンクラブの道男と文句を言った中学生が自分たちの行動を謝罪し、また審判を公一に頼むというお話である。
 この教材を通して、自他の不公正を許さないという姿勢と共に一時的な周囲の雰囲気や感情、人間関係に流されることなく、公正、公平な態度で正しいことを迷わずに堂々とやっていくことの大切さを考えさせていきたい。

4.教材分析表

場面

主人公(公一)の心の動き・内面

発問

①広投手が力いっぱい投げた球はボールだった。

・残念。
・にらまれてもなあ。
・にらむことないのに。
・ボールに間違いない。
・くやしい気持ちはわかる。

②友だちの広は、今日は調子が悪い。

・どうしたのかな?
・体の調子がわるいのかな?
・ずっとボールが続いてつらいだろうな…。
・ストライクと言ってやりたいのはやまやまだが…。

③公一はえこひいきせず、公平な審判をするので審判を頼まれている。

・審判は公平にするべきものだ。
・友だちが苦しんでいるのを見ていると友だちに肩入れしたくなるが、ここは審判として我慢しなくてはいけない。
・みんなに公平な審判を認められていることは誇りだ。

④ライオンクラブの打者は感じが悪い。

・あんな失礼な打者にはいい思いをさせたくない。
・広がかわいそうだ。広の味方になってあまく審判をしてやりたい。
・でも、審判は公平でなくてはいけない。でも、相手があんな態度なのになあ…。

⑤満塁の後、広が投げた第一球もボール。続く球もボールで押し出しの1点になってしまった。

・広が不満そうにしている。辛いのはよくわかるが間違ったことは言えない。
・とうとう1点が入ってしまった。広は辛いだろうな。
・友だちだとしてもどうもしてあげられない。

⑥投手が代わり、広がぼくをうらめしそうににらんだ。

・ぼくが悪いわけではない。
・広、悔しいんだろうな。
・ぼく、恨まれているのかな…。
・ぼくは正しい判断をしただけだ。

⑦同点のまま7回を迎えた時、よい音がして、球がレフトの上を超え、ホームランかと思われたが、「ファール」と公一が叫んだ。

・あれは、ファールだ。
・確かにギリギリのラインだが、ファールだ。
・みんながホームランと勘違いするのも分かる。
・ぼくはずっと見ていたんだ。間違いない。

⑧ライオンクラブの選手や応援団が、「ホームランだ。」と騒ぎ出した。

・ほんのちょっとだから、そう思いたいのだろう。
・分かりにくいのは確かだが、ファールだ。
・間違っていないはずだが…。
・ぼくは、しっかり見ていたんだ。

⑨体の大きな中学生2人が詰め寄って、「ホームランだと言いなおせ。」となぐるような勢いで言ってきたが、ファールだと言い切った。

・ちょっとこわいな。
・なぐられてしまうかな?
・でも、ぼくは間違っていないから、堂々としていよう。
・きちんとここで言わなければ!公平な審判をすることで認められているんだから。
・負けないぞ。

⑩ライオンクラブは、負けてしまって、「さっきのホームランで勝っていたのになあ。」と悔しがっていた。

・負けたのはかわいそうだ。
・悔しいのは分かる。
・ホームランだとまだ言っているのか。
・正しい判断をしたとしても、うらまれてしまうのだろうな。
・悔しさも分かるけれど、ぼくは間違っていない。

⑪先ほどの中学生がまた公一のところに来て、「負けたのはおまえのせいだ。」と怒鳴り、公一はだまったまま唇を噛んでいた。

・ぼくの判断は間違っていない。それなのになんでこんなにまで言われなくてはいけないんだ。
・これでは、ぼくが悪いみたいだ。
・悔しいからって、ぼくのせいにするのはおかしい。
・こんなに言われるのなら、ホームランと嘘でも言えばよかった。
・みんなにぼくの判断が間違っていると思われているのかな?
・よく見ていたつもりだが、ホームランだったのかな?
・もう、アンパイアなんてしたくない。

①中学生の2人に「負けたのはおまえのせいだ。」と言われ、だまったまま唇を噛んでいた公一はどんなことを考えていたのでしょう。

⑫校内新聞を見て、ちゃんと見ていてくれた人がいたことが分かった。

・ぼくの判断は間違っていなかったんだ。
・負けないで、正しい判断をしてよかった。
・あそこで自分の信念を曲げなくてよかった。
・あの中学生に負けなくてよかった。
・中学生にもわかってほしいな。

②自分が正しかったと認めてくれた校内新聞を読んで、公一は、どんな気持ちだったでしょう。

⑬公一の家にライオンクラブの主将の道男と応援団の中学生2人が来た。

・また、文句を言いに来たのかな?
・怖いな。また、何か言われるのかな…。
・何の用事なんだろ。

⑭ライオンクラブの道男や中学生に謝られ、次の試合にもアンパイアになってほしいと言われた。

・どんなことがあっても正しい判断をすることが大事だ。
・いろいろあったけれど、分かってくれてよかった。
・公平にやったことで、またアンパイアを任せられた。嬉しい。
・正しいことはいずれ分かってもらえる。
・中学生にも分かってもらえて、すっきりした。

③公一に詰め寄ってきた中学生たちに、「次の試合にもアンパイアになってほしい。」と言われて、どんな思いになったでしょうか。

5.ねらいに迫るための手立て

(1)座席の工夫
〈教材提示〉教材理解にじっくりひたらせるために、全員が担任の方を向くようにする。
〈話合い〉座席をコの字にし、みんなの顔を見て、話し合いができるようにする。
〈振り返り〉前向きの座席の形にし、一人一人が集中してじっくり自分を見つめられるようにする。

(2)アンケートの活用
 児童に「公平にしたくても、その時の状況に負けて、公平にできなかった時はどんな時ですか。」というアンケートを事前にとっておく。導入では、アンケートに多く出てきた事例をもとに、その時の気持ちを児童に考えさせることで、具体的にねらいとする価値項目について考えられるようにする。また、振り返りの時に、なかなか思いつかない児童に対して、活用できるようにする。

(3)表現活動の工夫
 主人公がいろいろな考えで揺れている第2発問の場面で、役割演技を行う。役割は交替して、「何を言われてもゆるがない」という気持ちと、状況に負けてしまいそうな気持ちの両方の思いについて考えられるようにする。

(4)発言方法の工夫
 児童一人一人に考えを深めさせたい場面で、ドキワク発言を行う。ドキワク発言とは、手を挙げていない児童でも教師の意図的な指名をし、発言を促すものである。

*他にも、たけのこ発言(教師が指名を行わず、児童が自主的に立ち、発言する)、ドキドキ発言(挙手はなく、教師が意図的に指名する)などがある。

6.本時

(1)ねらい
 自分に詰め寄ってきた中学生たちにも正しい判断を認められた時の公一の気持ちを考え、その時の一時的な思いや状況に負けず、誰に対しても公正、公平な態度で接していこうとする心情を育てる。

(2)本時の展開

□学習の流れ ○発問 ・予想する児童の活動

・指導上の留意点


□価値への導入
○「仲の良い友だちが試合をしていた時の審判」
「自分より強い人に自分とは違うことを言われた時」などに公平にできない経験がある人が多かったのですが、このような時、どのような気持ちになるでしょうか?
・あとで、何か言われたら嫌だなあ。
・すっきりしないけれど、怖いから言えない。
・モヤモヤして、本当のこといいたいなあ。

・児童に事前に「公平にしたくても、その時の状況に負けて、公平にできなかった時はどんな時ですか。」というアンケートをしておく。





□教材「アンパイアの心」を視聴し、話合う。

・野球の簡単なルールを説明してから、教材の範読を行う。教材提示は、パワーポイントを使い、効果音を入れ、臨場感あふれる提示をする。
・公一が「公平くん」とあだ名をつけられるほど公平な判断をし、それを誇りとしていることや、最初はいくら中学生に詰め寄られても正しい判断を通したことをおさえてから第1発問に入る。

①中学生の2人に「負けたのはおまえのせいだ。」と言われ、だまったまま唇を噛んでいた公一はどんなことを考えていたのでしょう。
・ぼくの判断は間違っていない。それなのになんでこんなにまで言われなくてはいけないんだ。
・これでは、ぼくが悪いみたいだ。
・悔しいからって、ぼくのせいにするのはおかしい。
・こんなに言われるのなら、ホームランと嘘でも言えばよかった。
・みんなにぼくの判断が間違っていると思われているのかな?
・よく見ていたつもりだが、ホームランだったのかな?
・もう、アンパイアなんてしたくない。

・役割演技を2人組で行う。公一の「正しいことを貫く。」という気持ちと、状況に負けてしまいそうな気持ちの両方の思いについて考えられるようにする。役割交替をする。

・第1発問の後で、「何を言われてもゆるがない」という気持ちと、状況に負けてしまいそうな気持ち)どちらの気持ちが強いと思いますか。」と児童に補助発問をする。

②自分が正しかったと認めてくれた校内新聞を読んで、公一はどんな思いになったでしょうか。
・ぼくの判断は間違っていなかったんだ。
・負けないで、正しい判断をしてよかった。
・あそこで自分の信念を曲げなくてよかった。
・あの中学生に負けなくてよかった。
・中学生はわかってくれるのかな?

③公一に詰め寄ってきた中学生たちに、「次の試合にもアンパイアになってほしい。」と言われて、どんな思いになったでしょう。
・どんなことがわっても正しい判断をすることが大事だ。
・いろいろあったけれど、分かってくれてよかった。
・公平にやったことで、またアンパイアを任せられた。嬉しい。
・正しいことはいずれ分かってもらえる。

・ドキワク発言にし、教師の意図的指名を行う。





□自分を振り返る
○いろいろな思いや状況に負けずに、公平にできたことはありますか。その時、どんな気持ちでしたか。
・給食の時に友達に「減らして。」と言われたけれど、みんなと同じように配った。「えー。」とか言われたけれど、ずるいことはしたくなかったからしなかった。

・座席を全員前に向かせる。
・ワークシート(B6)に書かせる。
・なかなか思いつかない児童には、アンケートをもとに助言をする。


□教師の説話を聞く。

(3)評価
・自分が正しかったことを認めてくれた校内新聞を読んだ時の公一の気持ちを考えることができたか。(③の発言)
・誰に対しても自分の弱さに負けることなく、公正、公平な態度で接していこうとする心情をもつことができたか。(ワークシート)

(4)板書計画

(5)ワークシート