小学校 道徳

小学校 道徳

主題について自分事として考える道徳の授業(第5学年)
2017.10.03
小学校 道徳 <No.013>
主題について自分事として考える道徳の授業(第5学年)
東京都中野区立塔山小学校 主任教諭 高橋晶子

はじめに

 本主題を自分事としてとらえさせるには、人間理解が大切であると考える。いじめ問題は、児童の身近に潜む、差別や偏見に関わる大きな問題の一つである。いじめ問題を生む、「差別や偏見の芽」となる心、例えば「あの人なら許せるけど、この人だとなんだか許せない。」のような心は、多くの人の心に潜むものである。そのような人間の弱さを知った上で、差別や偏見を絶対に許さないという道徳的態度を養うことが大切だと考える。
 人種差別は、日本の児童にとってあまり身近な問題ではないと考える。だからこそ、人種差別について考える時、児童は憤りや悲しみを感じ許さないという心を強くもつであろう。その心を児童の身近な生活にもつなげて考えさせたいと思い、授業作りを行った。

1.主題名

差別のない世の中に  C[公正、公平、社会正義]

2.ねらいと教材

○ねらい
 誰に対しても差別をすることや偏見をもつことなく、公正、公平な態度で接し、正義の実現に努めようとする道徳的態度を養う。

○教材名
 マーチン少年の夢―キング牧師(文溪堂)

3.主題設定の理由

(1)ねらいとする道徳的諸価値について
 本主題は民主主義の基本である社会正義の実現に努め、公正、公平に振る舞うことに関するものである。小学校高学年においては、差別や偏見がいじめなどの問題につながることを理解できるようになる。傍観的な立場に立ち、問題から目を背けようとすることは、自分自身の問題であるという意識が足りないことから生ずるものである。その上で、社会正義の実現は容易ではないが、身近な差別や偏見に向き合い、公正、公平な態度で行動できるようになることが求められている。
 人種差別など多くの差別について、児童は身近には感じていないかもしれない。本時では、そういった世の中にある差別を客観的に捉えるのではなく、「仲の良いあの子なら許せるけど、この子については許せない。」などの自分の心の中にも潜むかもしれない差別や偏見の芽に目を向け、公正、公平に振る舞おうとする態度を養いたい。

(2)児童の実態
 本学級では、日頃から、違いを受け入れて、仲良くすることを指導している。互いにその人らしさを理解し、仲良く過ごすことができている。人それぞれの良さを理解するだけでなく、人それぞれの苦手さ、生まれながらの個性における違いも受け入れて、誰に対しても公正、公平に振る舞おうとする態度を養いたい。

4.本時の展開

学習活動 ○主な発問 ・予想される児童の反応

・指導上の留意点 ☆評価


1 マーチン=ルーサー=キングについて知る。
○みなさん、この方を知っていますか。

・教材への導入として、マーチン=ルーサー=キングや人種差別について説明する。


2 「マーチン少年の夢」を読み、話し合う。
①友達のお母さんに「うちの子とは、もう遊んではいけないよ。」と言われた時、どんな気持ちだったでしょう。
・どうしていけないの。
・遊びたいよ。もう会えないの。
・ひどい。

・マーチンの気持ちになって聞くよう伝える。
・突然友達と遊ぶことを拒否された時の悲しみや怒りの気持ちについて考えさせる。

②お父さんに連れられて店を出た時、マーチンはどんなことを考えたでしょう。
・お父さん、かっこいいな。
・決してぼくたちが悪いわけではないんだ。
・差別を許さないと、きっぱりと言おう。
・みんな平等に仲良くするべきだ。

・父親の姿に感銘を受けたマーチンに共感することを通して、差別や偏見に対して、どう向き合えば良いかを考えさせる。

③マーチンはどんな思いで、人種差別をなくす働きを続けたのでしょう。
・子供のころの悔しさが忘れられない。
・差別は絶対にあってはいけない。
・黒人も白人も平等であるべきだ。
・あきらめてはいけない。
・よりよい世の中を作るのだ。

・マーチンに共感することを通して、差別や偏見のない世の中を実現するために大切な思いについて多面的・多角的に考えさせる。
[多面的]
・差別は許されないもの。
・偏見は人を傷つける。
・人は皆平等である。
[多角的]
・あきらめずに続ける。
・より良い世の中を作りたい。
・悔しさをばねに頑張る。

☆差別や偏見のない世の中を実現するために大切な思いについて考えているか。(発言・挙手)

3 差別や偏見のない世の中を作るために大切なことを考える。
○差別や偏見のない世の中を作るために、必要な「心構え」とは何だろう。
・差別は許さないという強い心。
・誰とでも仲良くする心。
・相手を知ること。知ろうとする心。
・法律を作ればいいと思う。

・差別や偏見の例を挙げ、人種差別に限らず、身近な問題としてとらえさせる。
・友達と話し合うことを通して、差別や偏見のない世の中を作るために必要なことについてより身近に考えさせる。

○みなさんはそういう心をもって、生活することができていますか。

・ワークシートに書かせる。
☆自分との関わりで差別や偏見のない世の中を作るためにできることを考えている。(ワークシート)

5.板書