年度当初に行いたい生徒指導点検

icon_pdf_small「日文の教育情報 No.134」PDFダウンロード(364KB)

■指導点検の基本

 いま、自校の生徒指導における課題は何か。改善が必要なのはどこか。指導点検に関しては、次のことを中心にまずこの確認を大切にしたい。
 ①学校全体の生徒指導の目標・重点が明確になり、全教職員に共有されているかどうか。
 ②指導組織における各担当の役割と、連携・協力して取り組むべき内容。
 ③仮に緊急対応を必要とする事態が発生したような場合、迅速かつ適正に対応できる体制が整えられている
かどうか。
 ④家庭、地域、関係機関等との連携をどう生かし、校内体制のどこにどう位置づけるか。
 最近起こっている子どもの深刻な問題行動には、学校、家庭、地域の対応のあり方や、子どもの成長過程で形成された意識など、様々な要因が内在する。
 困難な問題のほとんどは、個々の教師の力だけでは解決が難しい。効果的な指導・対応には、全教師の共通理解、各担当の連携が欠かせない。さらに、内容に応じて家庭、地域、関係機関等、あるいはスクールカウンセラーなどの専門家との密接な連携の下で対応体制をつくることが重要になる。そうした全校指導体制が整っているかどうかを点検したい。

■子ども理解に基づく指導の点検

 ①実態調査、面談等を通じて、子どもの抱える課題、個々の子どもの悩みや不安を把握する。
 ②把握された子どもの状況に基づき、生徒指導組織、学年・学級における対応内容を確認する。
 ③すべての子どもが自己指導能力、望ましい人間関係づくりの態度を身につけるための、開発的な指導援助体制が整っているかどうかを確認する。
 生徒指導の基盤は子ども理解にある。
 例えば、いじめに関する指導なども、子どもの発する次のようなサインの受け止めが重要な意味を持つ。
 ①諸活動において仲間はずれ、孤立化の感じられる子どもがいないか。
 ②いじめを誘発することば、持ち物隠し、特定の子どもに対する無視やからかいなどが見られないか。
 ③授業中に元気がなく、教師と目をあわそうとしない子どもがいないか。
 ④休みがちな子ども、遅刻や早退が多くなっている子どもがいないか。
 問題があると思われる場合は、把握された状況に応じ、保護者との協力、個別の相談、学級やグループでの話し合いなどを直ちに実施する必要がある。そうした指導を進めることと重ねて、学級等における人間関係づくり、信頼関係の構築を行い、年間を通じて安定した指導が展開できる基盤を構築することが重要である。

■自己指導の力を育てる体制づくり

 子ども一人一人の人間形成の視点を常に大切にしながら生徒指導を進める。その意味からは、全教育活動を通して学校生活が有意義であり、諸活動によって豊かな人間性、自己指導の力を育てるよう配慮されなければならない。その中心に位置づくのが学級である。
 学級は学習のための集団であると同時に、子どもが協働の活動を展開し人間的な発達を遂げる集団でもある。子どもの規範意識を育て、自己指導力を獲得させるために、学級にどのような課題があるか。把握された実態を大事にしながら、指導計画を実行に移すことのできる体制を年度初めに築くことが大切である。
 4月から5月にかけては、学級として、認め合い励ましあう人間関係づくり、よりよい学級づくりに結び付く活動を配慮したい。学級担任教師としては、次のようなことに留意することが求められる。
 ①みんなの相談を受け止め、直ちに親身になっての指導・対応をすることを徹底する。
 ②みんなの力で学級の問題を解決することを徹底する。
 ③友だちを意味ある他者として認め、ともに学び、活動する、協働の学級づくりを徹底する。
 生徒指導体制構築というと、ややもすると問題行動対応が前面に出やすいが、年度当初の取組としては、次のような子どもの自発的、自律的な実践力への働きかけを配慮したい。
 ①子どもに自己存在感を与える。
 ②教師と子ども、子ども同士の人間関係を育てる。
 ③自己決定の場を与え自発性を育てる。

 日文の教育情報ロゴ

PISA調査の結果から考えるべきこと

icon_pdf_small「日文の教育情報 No.133」PDFダウンロード(373KB)

■調査結果の国際比較

PISA2012年調査における平均得点の国際比較
(国立教育政策研究所「OECD生徒の学習到達度調査」より)

 昨年12月に、第5回PISA調査(2012年に実施)の結果が発表された。新聞等で報道されたので、ご存じの方も多いと思うが、今回、上位10位を占めた国・地域の結果は右記の通りである。
 上位の中で上海などの地域やシンガポールなどOECD非加盟国を除くと、日本は数学的応用力は韓国についで2位、読解力と科学的応用力は1位ということになる。過去、日本は第1回(2000年)ではトップクラスであったけれども、その後は下がり続け、第3回(2006年)が最低であった。しかし、第4回(2009年)で上昇に転じ、今回さらに上昇という結果である。そこで、「日本トップレベルに回復」ということになる。さて、 この結果から何を考えるか、考えるべきかである。

■学力の回復力

 今回の結果に対しては、多くのマスコミが文科省を中心とする学力向上対策が実を結んだものであると評価している。筆者もそう思う一人である。ただ、ここで注目したいことは、「学力の回復」よりも「学力の回復力」があったということである。
 周知のように、日本では20世紀末からいわゆる「ゆとり教育」が実施され始めた。しかし、21世紀に入り、そのゆとり教育の弊害が強く指摘され、学力とりわけPISA型の学力育成に力が入れられるようになった。その結果、PISA型学力はねらい通りに回復してきた。学力は一度下がると回復が難しいが、日本は短期間で回復した。この回復力に注目したいのである。欧米諸国も努力はしているが思わしい結果には結びついていない。これを可能にしたのは、コストや時間など膨大なエネルギーを注ぎ込むとともに、「文科省―教育委員会―教育現場」の一体化した取り組みによるところが大きいと考える。日本のこのシステムを重要視したい。こうしたシステムを構築できたことを評価したい。

■これから取り組むべきこと

 PISA型学力は応用力に重きを置いており、それが高いということは基礎学力、思考力そして活用力があるということである。したがって、こうした学力は価値あるものであり、今後も重視し、その育成に力を入れていくべきである。しかし、今回のようなよい結果が得られれば、今後教育予算やエネルギーを何に注ぎ込むかを再検討してみる必要がある。既にマスコミ等で指摘されているように、PISA型学力の育成面でもなお課題はある。我が国流に表現すれば、学習意欲の向上、確かな学力の育成、言語活動の充実などがそれである。そうした課題への努力は大切であるが、その他に取り組むべき重要なことはないかという問題提起である。
 PISAを実施しているOECDのシュライヒャー教育局次長は、今後は学校現場において「グローバル人材育成」が求められるとして、その力の調査を検討しているという。世界のグローバル化は、経済はもちろん政治、学問、環境等々あらゆる分野で急速に進んでおり、さすがの着眼点である。ところで、そうした能力面の育成ももちろん重要であるけれども、その基盤をなす人間性の育成も改めて考え直してみるべき状況にある。日本においては、学校内の暴力行為や不登校が非常に増加している。いじめも依然として後を絶たない。社会や学校におけるひずみがこうした形で現れているといえないであろうか。だとすると、教育の原点である人間性の育成にさらに大きなエネルギーを注ぎ込むべきであろう。
 現在の日本の教育は、[生きる力]の育成を目的としており、豊かな人間性はその重要な要素に位置づけられている。PISA学力の向上に注いだエネルギーをそこに向ければ、豊かな人間性を育成できる教育システムを構築することができると考える。それは、21世紀の子どもたちに求められる「生き抜く力」を培う道である。

 日文の教育情報ロゴ

若手教員の指導力向上

icon_pdf_small「日文の教育情報 No.132」PDFダウンロード(364KB)

■緊急課題としての若手育成

 第三者評価委員として学校にうかがった折のことである。「現在の時点での本校の課題は?」という質問に対し、「若手教員の指導力です」と答える学校が多くなっていることに気づかされた。
 若手教員の授業力が弱く、保護者から厳しい指摘を受けた。学級経営がうまくいかず、子どもの問題行動が発生し広がった。校務分掌での役割が十分に果たせず、学校運営に支障が生じた。問題の中身は様々だが、若手教員が関連する問題が発生し、その解決のためには指導力向上が欠かせないというのである。若手教員の増加傾向が、さらにこの問題の緊急度を高めているという。
 新学習指導要領に基づく指導が本格的に展開している。学習指導を取り上げても、そこで求められるのは単なる知識や技術の伝達ではない。基礎・基本の徹底と同時に、活用する力、自ら学習を展開する力の育成が求められている。社会の信頼に応える学校づくりには教員の指導力が欠かせない。全校すべての教員の指導力向上が学校経営の重要な課題になっているのである。

■指導力アップの基礎基本

 指導力に課題を抱える教員の存在が把握された場合、管理職はその課題が主として次のどの内容に該当するかを分析的に捉えることが必要になっている。

ア 指導計画に基づき、工夫を加えて授業を展開し、ねらいを確かに達成する力。
イ 自校の子どもを深く理解し、効果的に生徒指導・学級経営を進める力。
ウ 全校指導体制の一員として自分がなすべきことを理解し、校務分掌の役割を果たす力。
エ 保護者の願いを受け止め、適切に対応して連携協力の関係をつくる力。

 把握した内容に基づき、いま起こっている問題の改善に必要な取組を全校的な取組に位置づけることが求められる。その際、次のことを押さえることが大切になる。

ア 若手を育てることを視野に入れて、全校の研修を充実・強化する。
イ 校長・教頭、主任等を中心として、指導にかかわる相談・支援体制を強化する。
ウ 各種委員会、教科部会、学年会等の機能を高め、組織を生かして全教師の指導力向上を図る。
エ 学習評価を中心に、教育活動に対する評価活動を活発にし、プロセスの評価力を高める。

 全校体制の中で、いま児童生徒につけようとする力を明らかにする。目標実現のための指導組織を整備し、目標実現に向けて全教職員の力を統合する。その中で、指導力不足の解消を図るのである。まずは、管理職を中心にし、重層的な体制で指導力に課題を抱える教員に対し指導助言を行う。組織を通じて若手教員を含む、すべての教員の指導力に働きかける。そのための指導体制を確立することが重要になっている。

■効果を上げた工夫とは

 若手育成が当面する課題になっている学校では、様々な工夫がなされていた。

〔A校〕校長・教頭の授業観察のあと、問題になる場面を再現し、協働で改善方策を話し合うことによって効果をあげていた。
〔B校〕授業公開を重視する。その後の保護者等の感想、意見に基づく改善点の明確化、効果を上げる授業のポイントについての協議、改善策の作成を重視していた。

 多くの学校で実施し、効果を上げていたのは、リフレッシュ研修会、パワーアップ研修会などのネーミングで実施する各校独自の若手教員研修会だった。
 時間設定、講師選定、実施方法に各校さまざまな工夫が凝らされていた。そして、共通するのは、いずれの学校も大きな成果を収めていることだった。ピンポイントの課題を取り上げ、その内容に適した中堅教員が指導に当たる。事例に即した多様な資料が準備される。方法が工夫される。それは中堅教員の指導力向上、人間関係づくりにも結びついたということであった。
 優れた教員の条件としては①教職に対する熱情、②教育の専門家としての力量、③総合的な人間力、があげられるが、指導力という観点からは、やはり、②にかかわって、教科に関する指導力、深い子ども理解に基づく人格形成に関する指導力、学級等の集団に対する指導力が大切になる。そうした点を中心とする、工夫を凝らした働きかけが多くの学校で必要になっている。

 日文の教育情報ロゴ

地域とともにある学校づくりで目指すこと

icon_pdf_small「日文の教育情報 No.131」PDFダウンロード(360KB)

■学校運営協議会設置の現状

 全国153市区町村、1570校(平成25年4月1日現在)に学校運営協議会が設置され、いわゆるコミュニティ・スクールが指定されている。
 本県でも5市町、91校の公立学校に学校運営協議会が設置され、学校だけでは多種多様なニーズに十分に応えることが困難になっている学校の現状と、児童生徒や学校周辺の組織と連携することで地域活動の活性化を図りたいという地域の願いから両者の連携がつくり出されているといえる。
 先日、平成25年度文科省指定研究推進モデル校・都城市立山田中学校で研究公開が開催され、「コミュニティ・スクールによる地域とともにある学校運営協議会づくり」をテーマとしたパネルディスカッション(コーディネーター・大阪教育大・新崎国広准教授)のパネラーとして参加する機会を得た。
 山田中学校では、学校の教育活動を支援(あるいは地域住民に学校支援を依頼)するボランティア組織として社会福祉協議会等を委員とした「学校支援地域本部(学校支援ボランティアの会)」が位置付けられている。
 また、「目指す地域像」を設定するなど「地域や家庭において、学校と同じ方向性で教育すること」を共通理解し、主に福祉教育を中心として地域と協働した教育活動を展開している。
 研究公開では、学校運営協議会制度のメリット・デメリット及び学校の主体性について協議された。

■学校運営協議会制度のメリット・デメリット

 学校運営協議会制度のメリットとして児童生徒が地域の一員としてのアイデンティティを確立するのに有効であることは多くの実践校で指摘されている。一方、デメリットとして教職員の多忙があげられている。
 学校経営方針等に対する「承認」という参画度の高い仕組みを活かすには熟議が欠かせないという意味では教職員には多忙感が伴う。
 教職員の多忙解消には行政の具体的なサポートも必要だが、学校で完結する教育システムとしての学校観というパラダイムを転換することが多忙感の解消には必要であると考える。地域とともにある学校というシステムへと教職員が自覚的にスタンスを変えていくことが重要である。
 また、学校運営協議会が教職員人事に関与することに慎重な教育委員会が多いが、学校運営方針やそれに関わる当該校の求める教員像が明確になるに伴いガバナンスの在り方として避けられない課題であることを視野に入れておく必要がある。

■学校運営協議会制度における学校の主体性

 地域住民の意向を反映した学校運営の推進は、学校評議員制度や学校関係者評価制度でも意図されたものであったが、両制度は学校の「正統性」を前提としたものであり、学校としては導入に対して抵抗感の少ない制度であったといえる。
 学校と地域の連携による開かれた教育活動・学校運営の実践をとおしてソーシャルキャピタルの醸成というベクトルが主体相互に自覚されてきたことに伴い、地域住民のニーズと学校の「主体性」を調整する仕組みが必要となってきた。このことがガバナンスの概念を導入した学校運営協議会制度の背景にあると考える。
 したがって、学校は課題解決のために地域の支援を得るという意識から、学校をよくする事が地域をよくする事につながるという方向性を地域に明示し、地域と学校が双方向で関わっていくことが必要である。
 また、地域に在る様々なコミュニティは学校を媒介とすることで「子どものため」にという共通項で集いやすいことから学校は地域コミュニティを発展させる核となる可能性を持っている事を自覚しておく必要がある。

 先述のパネルディスカッションでは、「私たちは子どもの頃、地域の人たちから温かく叱られながら育った。」という意見が出された。都城市には薩摩藩・郷中教育の伝統がある。郷中教育は、一定区域のなかで行われる異年齢による自治的な教育であったことを特徴とした。
 地域とともにある学校とは地域の教育的伝統・文化を継承・発展させ、地域自治の将来の担い手を育成することが期待されていると考える。その一つのシステムとして学校運営協議会制度(コミュニティ・スクール)の実践に取り組まれている都城市教育委員会、山田中学校に敬意を表したい。

 日文の教育情報ロゴ

子ども理解 (1)「友達関係の変化」

icon_pdf_small「日文の教育情報 No.130」PDFダウンロード(360KB)

■「先生! 親友が分業しています。」

 秋になって、中学3年生が部活動を引退し、野球部も2年生が中心になった。
 放課後、「オーイ、部活に行こうー!」と声をかけながら、新しいチームでバッテリーを組むことになった2人は、いつも肩を組むようにしてグランドに急いだ。
 「この子らは、たまたまクラスも同じで、日頃からとても仲良しなんです。」
 中学校で数学を教えている先生が私にこんな話をしてくれた。
 「プリントを配って数学の問題を解きなさいと言って机間巡視をしていたんです。ピッチャーの子が、“分からん”と私の方を見るので、同じ班にいたキャッチャーの子に、“おい、分からんと言うてるぞ、なんとかしたれ、君ら親友やろ!” と言ったら、“ウン、野球の親友”と言うんです。勉強の親友は塾にいて、遊ぶ親友は家の近所におると言うんですよ。先生、この頃は親友が分業してますよ。」と教えてくれた。
 子どもと子どもの友達関係・つながり方が部分的、断片的なものになってきたのかなあ、全人格的、運命共同体のような親友という関係も残っていて欲しいなあと数学の先生はつぶやいていた。

■一緒に遊んでるやん

 少し前の話だが、私の一人娘が小学校の6年生の時、こんなことがあった。
 「お母さん、今度の土曜日、お友達が3人遊びに来るよ!」
 「はいはい、おやつ買っとくね。」
 土曜日の午後、私が帰宅すると玄関にクツがいっぱいあった。
 「あー、もうお友達が来てるんだ」と奥へ行くと、子ども部屋におやつを持って行ったお母さんが出てきて、「チョットお父さん、あの部屋のぞいておいで!」と言う。
 私も子ども部屋をのぞいて、「なるほど、お母さんが驚くはずだ」と思った。
 娘は入口のそばで、下を向いてマンガの本を読んでいた。一人はピィッピィッと音のでるゲームをしていた。一人はテレビを見ていた。皆、一人ずつ別々に遊んでいるではないか。
 「せっかくお友達が、たくさん来てくれているんだから、一緒に遊べば?」と私が言うと、娘が顔をあげて、「一緒に遊んでるやん!」と言う。
 「いや、一緒に遊んでへん。一人ずつ別々に遊んでる。4人で一緒にトランプでもすれば?」と言ったら、「楽しいよ」と言われて、「アー、ソー」と引きさがった。
 10年余り前の話だが、最近ますます一人遊びの傾向が強くなってきている。群れて遊ぶ機会が減ってきている。
 友達と群れて遊んで、時には友達を怒らせてしまったり、もめてしまったりという体験を通じて、友達と仲良くできる距離感覚などが身についていくのに…。

■さみしい子が増えた

 私が高等学校の校長をしている時、毎日立ち寄った部屋がある。保健室だ。
 「おなか痛い」「しんどい」「頭痛い」などと生徒たちが寄ってくる。本当は養護の先生に話を聞いて欲しいのだ。
 「家がおもしろくない」、「つきあっている男の子に冷たくされる」、「学校へ来るのが嫌」、養護教諭からの情報は、私の想像を超える深刻なものが多かった。
 中学校での不登校生の数もなかなか減少しない。
 各県にある児童自立センターや、DVなど、家庭にいられないで施設にあずけられている子どもたちも年々増加していると聞いている。
 最近、仲間の女の子を車の中で殺害し、山の中に遺棄した事件があったが、家出をくり返し、ネットでつながった子ども同士の生活の実態は深刻なものである。
 あたたかい、ぬくもりのある、愛情いっぱいの家族や友人に囲まれた子どもたちも多くいるが、その逆に、さみしい、孤独、愛情不足という人間関係が切れた環境にいる子どもたちが増えている。

■環境を変える工夫を

 「子どもは環境によってつくられる」と言われるが、人間は「環境を変える力をもっている」のも事実である。
 子ども同士の関係が希薄になってきた要因は、インターネット社会の広がりだけでなく、少子化の進行や高齢化、社会構造の二極化など様々である。
 21世紀が生みだした子どもの環境を、家庭も、学校も、地域も、行政も、それぞれの立場で、もう一度あたたかい絆で結び合えるように工夫したい。


著者経歴
元 大阪府堺市教育長
元 大阪府教育委員会理事 兼教育センター所長
元 文部省教育課程審議会委員

 日文の教育情報ロゴ

地域と学校

icon_pdf_small「日文の教育情報 No.129」PDFダウンロード(322KB)

■ 学力の向上

 一昨年から文科省の委託で「運営組織と学力の相関関係に関する調査研究」を行っている。「学力向上を」という地域住民、保護者の声に対して学校は従来からの教師の教育技術の向上という手段を中心に対応してきたが、これに対して「学力向上」に組織力がどのように影響を与えているかということを調査研究したものである。調査の結果、学力の高い学校については以下のような結果が得られた。

①学力向上について、具体的な数値目標を設定し学校外に公開している。
②学力向上に関して地域の影響力を強く感じている。
③校長の双方向的かつ弾力的組織運営の意識が強く、その意識が教員に浸透、共有されている。

 また、校長を対象とした聞き取りから、学力の高い学校は次のような結果が得られた。

①客観的なデータにより児童・生徒の現状を把握している。
②具体的な目標設定を行っている。
③対話と共有によって組織で目標をつくり上げている。

■ 学校運営組織

 これらのことから、注目すべきことは、学校が組織で動いているということである。と同時に、校長はその組織運営の技術を獲得しなければならないということである。ややもすると、校長個人の教育方法を押しつけていないか。または、校長個人の思いをどの学校に赴いても目標としていないか。つまり、私たちは、学校の置かれている現状を把握する技術や方法の開発が遅れているのではないのだろうか。前回教育長の調査結果を書いた時と同じように(教育情報No.126参照)、その校長のタイプが重要ではなくて、その学校が置かれた状況が最も重要であって、その状況に対して、校長がどのような目標や方法を設定・実施するかが重要なのである。
 これには、現状を把握する技術の向上がまず最初であるが、現状把握の次は、校長のタイプ把握の技術が続く。そしてこのことをマッチさせる人事があることで終結する。これらのことを合わせて人事と言うが、現在の教職員の人事は「適材適所」という言葉は使うが、内容・技術が伴わないために、その学校の在職年数等を基準にせざるを得ないのである。人事技術の獲得も重要な課題である。

■ コミュニティ・スクール

 さて、この調査からもう一つ注目すべきことは、調査結果に「具体的な数値目標を設定し学校外に公開している。」、「地域の影響力を強く感じている。」とあるように、地域と学校の関係である。今年度、いわゆるコミュニティ・スクールは全国で1800校を超えているが、このコミュニティ・スクールの重要性である。学校と地域との関係を重視し、地域とともに学校をつくることが、結果的に子どもの「学力向上」をはじめとする子どもの能力を引き上げるより良い方法であるということである。
 問題は、コミュニティ・スクールを実施している多くの学校は、法律を適用し地域運営協議会を設置していることでコミュニティ・スクールであると思っていることである。一昨年度の研究の結果を基に昨年度からは、上記の学校と地域の関係の在り方に注目して、さらに調査研究を進めてきた。その結果、学校と地域の関係を5段階のスケールに分けられること、そして、それぞれの段階においてとるべき方法(処方)はどのようなものであるか、ということがみえてきた。
 研究内容を簡潔に記す。スケールとは、第1段階(学校と地域の関係が未成熟モデル)、第2段階(成熟進行モデルⅠ)、第3段階(成熟進行モデルⅡ)、第4段階(成熟モデル)、第5段階(発展モデル)の5段階である。このうち、第1段階から第3段階の途中までを、学校と地域が関係を形成する時期、第3段階途中から第5段階までを、学校と地域が共同運営する時期として、調査する学校と地域の関係がどの段階であるかを明らかにし、その学校ごとにどのようなことをするべきかの処方を行う研究である。
 この研究では、第4段階目をコミュニティ・スクールとしているが、残念ながら第4段階目にあるコミュニティ・スクールはわずかで、ほとんどが第1段階目から第3段階目であるということである。しっかりと地域とともに学校をつくっていかなければいけない。

日文の教育情報ロゴ