中学校 道徳
2026.05.22 <No.008>
自分や仲間の思いを大切にして、よりよい生き方を考える道徳科の授業(第3学年)
※この実践事例は、日本文教出版主催の道徳セミナーで使用する授業映像用に取り組んだものです。
1.はじめに
近年、道徳科の授業を要として学校全体での道徳教育に力が注がれている。他教科との関連を示した別葉の作成を各校独自のものとして作成し、学校生活の中で道徳的価値に触れられるような環境づくりに力を入れる場面がよく見られるようになっている。生徒たちの心の成長を感じる場面を何度も目にし、日常的に道徳教育を意識して生徒と関わり合っていくことはとても意義があるものだと感じる。しかし、その道徳教育の要である道徳科の授業に悩みをもつ教職員が多いのが現状である。生徒たちが考えたくなる発問づくりはじめ、授業展開に頭を悩ませながら日々の道徳科の授業を迎えている。試行錯誤は大切だが、生徒の「道徳性を養う」という道徳科の目標に到達しない授業もある。生徒にとって浅い学びにならないよう努めることが大切であり、本実践では、道徳的価値についての生き方、考え方を議論し、道徳科の授業の中で級友の意見に納得し、そこから学んだことを今後の生き方に生かそうとする生徒の姿に期待する。
本実践では、「自分や仲間の思いを大切にして、よりよい生き方を考える道徳科の授業」というテーマのもと、中学生の実態に合ったねらいの設定、ねらいに迫り、深く議論するための発問の工夫をはじめとした授業を展開することを目指した。
2.教材について
本教材は、電車の中でよく行われる高齢者に席をゆずる行為について書かれたものである。「初めから席に座らずにいた主人公たちの行為」と「席をゆずった女の子二人の行為」を比べて、本当の思いやりについて多様な意見を交換できる教材である。基本発問では、席に座らずにいた行為をとった主人公の思いに迫る。高齢者から「ありがとう」と言われたはずなのにモヤモヤする主人公の行動は、決して本当の思いやりとは言えないだろう。心が伴っていないのに相手を喜ばせてしまった、主人公と同じような経験はないか、意図的に自我関与させることで、相手を大切にすることはたやすいことではない弱さに共感させたい。中心発問では、そんな主人公たちの行為と「席をゆずった女の子二人の行為」を比較して思いを巡らせる主人公に迫る。その行いの表面を比較すると、女の子二人の行為が、相手を思う素直な行為であることは一目瞭然であり、生徒たちもすぐに気付けることである。よって、その行いのよさと主人公たちに欠けていたものを学級全体で深く話し合うことで、二人の行為は「相手に気を遣わせない思いやり」になっていることに気付かせたい。その後、教材中の二つの行為に立ち返らせると「席に座らずにいる行為」も、捉え方によっては、相手に気を遣わせない思いやりのある行動だと考える生徒もいるだろう。しかし、主人公たちのとった行為は、「ひたすら相手のことを考えた思いやり」とは異なるものである。自分の利益ではなく、相手にとって何が喜ばしいことなのかを中心に考える思いやりや、そのような思いやりのある人間関係や社会の温かさについても深く追究して、今後の生き方を考えていける議論の雰囲気を生み出していきたい。
3.実践事例
(1)教材名
教材「電車の中で」(令和7年版『中学道徳 あすを生きる 3』日本文教出版)
(2)主題名・内容項目
本当の思いやりとは(内容項目:B-(6)思いやり、感謝)
(3)本時のねらい
本当の思いやりとは、自分の利益ではなく、相手にとって何が喜ばしいことなのかを中心に考えるものであり、心がこもればこもるほどその行いはさりげなく、相手に気付かれにくいものになることや、そのような思いやりのある人間関係や社会の温かさに気付き、これからも相手の喜びを生むことを大切にして生きていこうとする態度を養う。
(4)展開例
5.まとめ
本実践では、複数回の授業を重ねたうえで中心発問や補助発問を精選していった。複数回の授業で生徒の意見が出されるたびに、議論する視点や発問の細かな言葉遣いを改めていったが、今後の授業も、授業実践を繰り返してよりよい発問を追究していくことを大切にしたい。また、本実践はねらいに迫る意見を出させるための発問というよりは、反対意見をはじめとした多様な意見が想定される発問を大切にした。これについては、賛成か反対かを話し合うだけでは、深い議論には至らないという反省も生まれたため、生徒が考えたいと思う仲間の意見を取り上げ、その意見についてより深く考えることに時間を多く使うべきだと感じた。本実践を発表したセミナーでは、授業動画を視聴した多くの参加者から「生徒が自分の言葉で語ることができる。」「道徳科の授業を楽しんでいる。」といったご意見をいただき、この授業のスタイルは今後も続けていくべきだと感じた。しかし、発問については、こちらが事前に準備していたものをそのまま投げかけると、どうしても誘導的になってしまうというご意見もいただいた。授業の流れを読み、生徒が考えたいこと、あくまで生徒の意見をもとにして焦点を絞っていくことの大切さに気付かされた。ご意見いただいたことを、今後の実践に生かしていきたい。
