my実践事例:高等学校 情報 No.003 “社会と情報 情報の活用と表現「選挙ポスター制作プロジェクト」~社会の問題点を発見し、解決策を提案する~(第1学年)”を追加しました。
月別アーカイブ: 2020年9月
社会と情報 情報の活用と表現「選挙ポスター制作プロジェクト」~社会の問題点を発見し、解決策を提案する~(第1学年)
1.はじめに
前任校の埼玉県立浦和高等学校ではPBL(課題解決型学習)を意識し、作品制作とプレゼンテーション、相互評価を繰り返しながら、生徒の主体性と問題解決能力、また批判的に情報を読み解く力の育成に取り組んできた。たとえば画像や音、映像等のメディアの特性を学習する場面では、基本的なメディアの特性について学ぶとともに、あえて「情報操作」を意図した作品をつくり、その作品を生徒同士で評価し合うなどの実践を展開してきた。
平成27年公職選挙法改正により、選挙年齢が18歳に引き下げられ、高校生における主権者教育も求められており、政治・経済などの授業で本格的に取り上げられている。情報科でも何かできないかと考え、情報のディジタル化の単元で行うポスター制作のテーマを「選挙ポスターの制作」とし、プロジェクト型学習を意識した授業設計を行った。
2.単元名
情報の活用と表現
「選挙ポスター制作プロジェクト」~社会の問題点を発見し、解決策を提案する~
(実施学年:第1学年)
3.単元の目標
・情報のディジタル化の基礎的な知識を理解させるとともにディジタル化された情報が統合的に扱えることを理解させる。
・情報発信者の意図を的確かつ批判的に読み解く力を向上させる。
・問題解決の手法を理解させる。
4.単元の評価規準
|
ア 関心・意欲・態度 |
イ 思考・判断・表現 |
ウ 技能 |
エ 知識・理解 |
|---|---|---|---|
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・表現し伝える活動に対して積極的に取り組むことができる。 |
・適切な情報手段で情報を集め、問題発見及び解決へ向けた提案を企画書にまとめることができる。 |
・コンテンツを作成するためにコンピュータを活用することができる。 |
・情報のディジタル化の意味を理解できる。 |
5.単元の指導と評価の計画
本単元は10時間構成である。本プロジェクトの概要を説明し、画像編集ソフトの使い方や情報のディジタル化の基本的な知識を抑えた上で、選挙ポスターを企画し、制作する。合わせてレポートも制作し、発表を行い、相互評価を行うことで、情報には発信者の意図が存在することなどに気付く場面を設けている。
(ア:関心・意欲・態度/イ:思考・判断・表現/ウ:技能/エ:知識・理解)
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時 |
学習内容・学習活動 |
評価の観点 |
評価の方法 |
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|---|---|---|---|---|---|---|
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ア |
イ |
ウ |
エ |
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1 |
・プロジェクトの概要を理解する。 |
行動観察 |
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2 |
・画像編集ソフトの練習をする。 |
○ |
○ |
○ |
行動観察 |
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3 |
・企画を検討する。(前時の続き) |
○ |
○ |
行動観察 |
||
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4 |
・ポスター/レポートを制作する。 |
○ |
○ |
○ |
行動観察 |
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7 |
・発表/投票/相互評価(グループ) |
○ |
○ |
行動観察 |
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8 |
・発表/投票/相互評価(クラス) |
○ |
○ |
行動観察 |
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|
10 |
・振り返り |
○ |
○ |
行動観察 |
||
6.発表、質疑応答、相互評価で目指すこと
10時間の単元のうち、8時間目と9時間目が作品の発表、質疑応答、相互評価などを通した生徒どうしの意見交換と気付きの時間になる。生徒は相互評価を通じて情報発信者の意図を的確かつ批判的に読み解き表現することや、質疑応答を通して情報発信者の考えを適切に引き出し、思考を深めることを経験する。本時の具体的な流れは、次項の表の通りである。
7.本時の流れ(8時間目)
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時間 |
学習内容・学習活動 |
指導上の留意点 |
評価の方法 |
|---|---|---|---|
|
導入 |
・前時の振り返り(リフレクションシートより) |
・質問することの意義を改めて説明し、積極的に質問することを促す。 |
・行動観察 |
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展開 |
・発表/質疑応答/相互評価を行う。(1~6班) |
・質問に対して、誠実に、正対して答えるように促す。 |
・行動観察 |
|
まとめ |
・本授業の振り返りをリフレクションシートに記入する。 |
・今日の授業の振り返りの中で、次回の発表、評価に向けて課題を記述させる。 |
・リフレクションシート |
8.まとめ
本プロジェクトは、情報のディジタル化の単元に問題解決とメディア・リテラシーの内容を組み合わせたものとも言える。選挙ポスターという題材は、問題の発見や解決策の提案を創造的かつ主体的に行う上で興味深いテーマとなった。生徒は常識にとらわれず自由な発想でストーリーを考え抜き、それを形にする楽しみ(苦しみ)も経験した様子である。相互評価や質疑応答を繰り返す中で、情報受信者は、情報発信者の意図を的確かつ批判的に読み解き、論理的に表現することで、情報受信者として成長することができる。また、情報を効果的に分かりやすく伝える情報発信者の成長にも繋がっていると考える。
「情報Ⅰ」においても「問題解決」をあらゆる単元、場面において繰り返し実践していき、生徒たちの問題解決力の向上を図っていきたい。そして、情報の授業で学んだことを他教科や日常のあらゆる場面で活用できるよう授業設計/計画をしていきたい。
【関連資料】
- 授業スライド(PowerPointファイル)
ZIPダウンロード(655KB) - ワークシート類(Excelファイル)
ZIPダウンロード(113KB)
Webマガジンまなびと:「学び!とPBL」Vol.30
Webマガジン:「学び!とPBL」Vol.30 “生徒国際イノベーションフォーラム③”を追加しました。
生徒国際イノベーションフォーラム③
1.生徒共同宣言
図1 生徒共同宣言を読み上げる生徒たち 生徒、教師、研究者ら400人の参加による生徒国際イノベーションフォーラム2017(ISIF’17)は、ほぼすべてのスケジュールを終え、閉会式を残すばかりとなりました。閉会式では、メッセージで一杯になったシンボルバルーンが全体の前に掲げられ、生徒たちの熱い思いを感じることができました。参加した各国の代表から感想が発表され、メインイベントとなる生徒共同宣言が、三日間の写真をバックに和歌山チームの3人から朗読で提案されました。
図2 生徒共同宣言の概念図 「生徒共同宣言Our Voice in 2017」は、日本国内のみならず海外のパートナーの声や考え方も反映されたものでしたが、議論を踏まえ付け加えてもらいたい事例なども直前に提案され、基本的な枠組みは拍手で了承されましたが、細かい表現については後日再確認するという取り扱いが認められました。
主な枠組みは、社会の現実的な課題を解決するための「生徒中心の学び」が必要で、これは学びの変革と生徒の自覚からなる、具体的には「コミュニティへの参加」「国際協働」が提案されており、この学びには「生徒ならではのパワー」「国内外の仲間との結びつき」「強い意志・計画・行動」「未来に対する共通のヴィジョン」が必要、失敗と成功を繰り返し、イノベーションを起こし、「私たちが望む世界」に近づいていく、というもので、OECDのEducation2030の趣旨にも沿った内容となっています。
2.ISIF’17を終えて
何はともあれ、2年と4ヶ月前にスタートしたISN(OECD日本イノベーション教育ネットワーク)のもとで、「地方創生イノベーションスクール2030」が各地で実践され、ISIF’17として結実させることができました。資金や運営体制をはじめ、必ずしも十全な環境でなかったにもかかわらず、ここまでたどり着けたのは、参加した生徒や教師の情熱と、関係者の日夜を分かたぬ努力の賜だと思います。
図4 司会の大役を務めた生徒たち 本プロジェクトは、「OECD東北スクール」後の日本発の国際共同プロジェクトとして、大げさに言えば、各国の内向きな教育を外向きに変えていく方策を探る野心的な取り組みと言うことができます。私たちにとっては、「日本」と「海外」という棲み分けられた関係を、それぞれが同じ世界の一部として捉えなおす、認識の転換を含んでいると言えます。
以下、本フォーラムのホスト国としての日本から見た総括を記しておきたいと思います。
まず、最も重要な視点は、「2030年の教育」を生徒と大人が協働して探究することができたかどうかという点です。それは、生徒達が生きる近未来の課題を客観的に理解し、自分事として引き受け、問題の所在を探り、自分たちにできることを発見し、他者と協働し、実践することによって学ぶという、一連のプロセスによって実現されます。多くの参加者はフォーラムまでに各地域で実践を重ねており、ポスターセッションからスムーズにグループワークに移行したと言えます。ではそれが、教育のイノベーションに結びつけることができたかどうかは、今後の生徒や教師の実践に委ねられます。率直に言えば、「イノベーション」の一語は往々にして置き去りにされがちです。
国際協働はいかに組み立てられたのでしょうか。本フォーラムは日本がホストとなり、各国をつなぎながら作業が進められました。各国・各地機によって生徒と教師の関係はまちまちであるため、一律に作業を委ねることはできませんでした。
しかし、協働宣言のとりまとめでは、和歌山チームが中心となって内容を組み立て、各地域からレビューをもらいながら、何度も書き直し、そうした苦労によってオリジナリティあふれる宣言にまとめ上げることができたと言えます。ここには生徒達の生の姿が反映されており、生徒の主体性を探る重要な手掛かりを残したと言えます。
図5 閉会式の様子 国際間のコミュニケーションはどうだったでしょうか。ホスト国である日本の英語力は他国に比して弱く、コミュニケーションでは相当な困難が予想されたことから、メモ書きや図表、写真など、グラフィカルなツールを利用したコミュニケーションを目指しましたが、国際会議に必要なレベルの語学の獲得は一朝一夕には成しえません。
本フォーラムの最大の特徴は、大人が枠組みを決めるのではなく、大人の援助を受けながらも生徒達が会議を組み立てるということでした。そのメリットは開閉会行事や異文化交流セッションなどに顕著に表れています。大人とは異なる生徒の視点が、本フォーラムの成否の鍵を握っていたと言っても過言ではありません。生徒が議論し、決定し、準備し、具体化するには通常とは全く異なる複雑なプロセスと時間が必要です。この試行錯誤の自由が許された環境こそが、生徒達を大きく成長させる条件だということを強調しておきたいと思います。
図6 フォーラムを終えて全員で記念撮影
3.生徒たちの成長
このプロジェクトはISNの共同研究も兼ねており、クラスターごとに評価指標を設定し、生徒の能力の変化を継続的にモニタリングしてきました。本フォーラムにおいても参加者に対して、多様な形で調査を行い、クラスターや国を超えた共通の指標で生徒の成長の様子を描き出そうと努力しています。
Word Cloudで示された図7は、生徒ラウンドテーブルで「多様な他者と協力しながら課題を解決するために大切な力」は何かを問うた結果です。出現頻度によって大きさや色が異なっていますが、「スキル」においては圧倒的にコミュニケーションの必要性が際立っています。「価値観」においては、「他者」「思考」「尊敬」「試行」「差異」などの言葉が目立ちます。スキルと価値観を合わせた「全体」でも、やはり「コミュニケーション」が大きく、日本人の英語能力が反映されているのがわかります。
図8は、一連のプロジェクトによって、どの様なコンピテンシーが伸びたのかを自己評価してもらい、その集計をグラフ化したものです。「新規性への関心」「異文化理解志向」「役割とチーム貢献」「意見の表明」などが伸長している反面、「偏見排除志向」「インクルージョン」などの複雑なものは伸びていないことがわかります。
信州大学教育学部附属特別支援学校公開研究発表会
信州大学教育学部附属特別支援学校公開研究発表会を追加しました。
小学校 生活:「生き活きうぃーくる」第75回
小学校 生活 ブログ:「子どもがかわる 授業がかわる『生き活きうぃーくる』」第75回
を追加しました。
和歌山大学教育学部附属小学校 2020教育研究発表会Online
和歌山大学教育学部附属小学校 2020教育研究発表会Onlineを追加しました。
ポスト・コロナ時代の教育 ‘ESD for 2030’からの示唆 ~その3~
前回は‘ESD for 2030’を概説し、ESDもSDGsも共に目標として掲げる‘D’(開発)もしくは‘SD’(持続可能な開発)そのものの捉え直しが今後の重要な役割として示されていることを確認しました。これは、脱グローバル化が声高に叫ばれるウィズ・コロナの時代からすれば先見の明とも捉えられなくもないですが、グローバル化の負の側面に対する危機感がESD関係者につとに共有されていたことの現れであると言えましょう。野放図の開発の挙句に新型コロナウィルスと遭遇した人類に対しては、「その2」で紹介したスターリン氏が論じたように、教育の向かうべき方向性にも警鐘が鳴らされていたのです(スターリン氏は「ユネスコ/日本ESD賞」国際選考委員会の副委員長を務めたESDの論客であり、国際的にも知られるプリマス大学名誉教授です(写真の右から2番目))。
では、そうした時代の教育にはどのような学習が求められるのでしょう。ESDは多義的で、その守備範囲は広く(「その2」の図1)、時代の趨勢の中で強調される側面はシフトしてきました。ここでは、ウィズ・コロナもしくはポスト・コロナの時代に求められる学習とはどのような性格の学びなのかについて考えます。
出典:ユネスコ本部ホームページ “Internatioanl Jury”(https://en.unesco.org/prize-esd/jury
)
ポスト・コロナ時代の学習の方向性
「その2」でも述べたとおり、ESDは常に進化している概念です。ときには時代のニーズを受け入れ、ときには時代をも捉え直すようなダイナミズムの中で変容を遂げてきました。
「ESDの10年」(2005-2014)はグローバル化が加速的に進んだ時期と重なり、当初はグローバル化に対応できるスキルの習得が強調されていました。ユネスコが策定した国際実施計画では「高次の思考スキル」として批判的思考や創造的思考、協働的思考、問題解決能力などが21世紀を生きる術(すべ)として強調され、これらを通してグローバル化の時代を生きる市民を育成しようとする実施計画がユネスコ加盟国で共有されていたのです。
しかし‘ESD for 2030’では「10年」の当初から強調されていた批判的思考以外のスキルはトーンダウンし、「その1」で触れた「ヒューマニスティック・アプローチ」の系譜上に位置づけられる諸概念が強調されるに至りました。その背景には、冒頭で触れた「開発」、換言すれば、グローバル資本主義に対する疑念が高揚していたことが指摘されてよいでしょう。
‘ESD for 2030’では、上記のスキルを代替するかのごとく次のキーワードが登場しています。すなわち、これからは地球規模の課題と深い次元でつながることが重要であり、そうしてはじめて「共感(エンパシー)」が生まれ、「慈愛(コンパッション)」へと深化していく。さらに「本質的な問い」を通して課題を〈自分ごと化〉し、学習者を問題解決の行動へとエンパワーするような学びが求められるのです(詳しくは、参考文献の「‘ESD for 2030’を読み解く」を参照)。
こうした一連の深い次元での学びの過程をユネスコは「変容的行動(トランスフォーマティブ・アクション)」と呼んでいます。つまり「国連ESDの10年」の頃はスキル習得が前面に出されていたのが、‘ESD for 2030’では習得されたスキルが上滑りして環境破壊や戦争などに活かされることがないように、常に「本質的な問い」と共に歩むような、より深い次元の変容が志向されています。
図1 持続可能な暮らしから持続可能性の文化へ 今後、「持続可能な開発」の代わりに目指されるべきキーワードを‘ESD for 2030’から挙げるとすれば、それは「持続可能性の文化(カルチャー・オブ・サスティナビリティ)」となるでしょう。これは、持続可能な環境のみならず循環型の経済と多文化共生型の社会の基層もしくは土壌であり、こうした文化を醸成するために、地球規模の課題を自身の暮らしと関連づけて捉えられる資質を備えた市民性の育成が求められているのです。つまり、身近な課題として持続可能性を捉え、変容的行動を通して社会全体で持続可能性の文化を醸成していくイメージです(図1参照)。
また、学習者にとって創造的に伝統的慣習を変えていくようなディスラプティブ(破壊的)な着想を試すための「余白」が必要であることも強調されています。さらに、注記ではありますが、複雑な現実課題への気づきと理解、共感、慈愛、エンパワメントという順に直線的に学習が成立していくとは限らず、エンパワメントに至るまで多様なプロセスがあってよい、とも記されています。
ここで留意したいのは、「思考スキル」が好ましくないというわけではなく、それが正義にも不正義にも使われ得るということです。安彦忠彦は、「実践的思考能力」は流行であり、その一方で不易は基礎基本と並んで人格形成であることを主張しています。また、知っている学力から知っていることを活用する学力はもちろん大切なものの、より重要なのは何のために活用するかであり、近年は人格的要素のうち学力の中に通用するものだけが重視され、そうでないものは価値のないものと見なされる危険性が見られる、と述べています(『「コンピテンシー・ベース」を超える授業づくり』)。
思考スキルが「持続可能な未来」へと活かされるか否かは、パンデミック後の社会の舵取りをする私たち次第なのだと言えるでしょう。そのために「本質な問い」をもって自分たちの社会の方向性を常に問い直すという不断の努力なくしては、持続可能な暮らし、ひいては持続可能な文化の実現は覚束ないと言えるでしょう。
【引用・参考文献】
- 安彦忠彦『持続可能な社会と学力:現行および次期の学習指導要領をめぐって』みくに出版(オンライン版講演記録), 2015年.
- 安彦忠彦「グローバル化時代の日本人の育成:カリキュラム開発の観点からの検討」『神奈川大学心理・教育研究論集』第46号 2019年, 5-20頁
- 安彦忠彦『「コンピテンシー・ベース」を超える授業づくり』図書文化社, 2014年.
- セルジュ・ラトゥーシュ『経済成長なき社会発展は可能か?―〈脱成長〉と〈ポスト開発〉の経済学』(中野佳裕訳), 作品社, 2010年.
- 永田佳之「‘ESD for 2030’を読み解く:「持続可能な開発のための教育」の真髄とは」『ESD研究』日本ESD学会, 2020年9月.
Webマガジンまなびと:「学び!とESD」Vol.09
Webマガジン:「学び!とESD」Vol.09 “ポスト・コロナ時代の教育 ‘ESD for 2030’からの示唆 ~その3~”を追加しました。
「個性が浮かび上がる!? 油彩グリザイユ静物」 ~実物大で体育館シューズを描く~(第1学年)
2.目標
特性を理解した上で,油彩絵の具を工夫して扱う。
モチーフを観察し,光や陰影,面などを把握して形態を表す。
モチーフを観察し,感じ取ったことを工夫して表現する。
自身および他者の見方や感じ方について味わう。
学んだことを生かして主体的に制作や鑑賞に取り組む。
作品制作が個性の発見につながることを理解する。
3.準備(材料・用具)
4.評価規準
ペインティングナイフを用いた表現など,工夫して油彩絵の具を扱うことができる(技能)。
モチーフを観察し,光や陰影,面などを把握して形態を表現することを理解している(知識)。
モチーフの質感や存在感を観察し,感じたことを表現することができる(発想・構想)。
生徒同士で互いの作品のよさや美しさを感じ取り,創造的な表現の工夫などについて考え,見方や感じ方を深めている(鑑賞)。
モチーフを観察し,その形態を理解して表現を追究しようとしている(知識)。
油彩絵の具の扱い方を工夫して表現を追究しようとしている(技能)。
対象を観察し,感じたことを表現しようとしている(発想・構想)。
生徒同士が作品のよさを感じ取り,制作を通じて生徒自身の個性を発見することに興味を持ち,考えを深めようとしている。(鑑賞)。
5.本題材の指導にあたって
本題材は観察と表現について学びながら,制作を通じて自身の見方や感じ方を発見したり追究したりできることを理解していく。高校生活を通してこれからの生き方を模索していく生徒たちには,まだ知らない様々な能力が自分自身にあり,可能性に満ちた存在であるということを感じてもらいたい。対象を観察して,表現を追究することの楽しさを十分に味わえるように授業を進めていくとともに,制作によって自身の内面を追究していくことを学習の意義として共有していく。
また主体的で対話的な深い学びを展開するために,次の工夫を行う。
○何度も修正ができる油彩絵の具の利点を活かして,のびのびと制作できるようにする。
○絵具を白黒のモノトーンに限定し,明暗に集中して描けるようにする。
○自然光がモチーフの横からに当たるように照明を消して,机といすの配置を調整し,陰影を捉えやすい環境をつくる。
○定規で対象の長さを計測した上で原寸大でキャンバスに描くようにし,構図のバランスをとりやすくする。
○場合に応じて,教員が補助線を描き入れ,生徒が自信を持って制作できるようにする。
○コピー用紙をモチーフとして加えることで,影を観察しやすくする。また床との接地面を捉える手がかりを増やす。
○始めは筆による厚塗りに限定し,油彩絵の具の特質を掴みやすくする。
○授業ごとに活動のポイントや達成すべき課題を明確にすることで,活動がイメージしやすいようにする。
○授業の始めと終わりに美術室に全員のキャンバスを並べることで,相互鑑賞がしやすい環境をつくる。
○中間講評を実施することで,互いの作品から互いの作品から見方や感じ方,表現の仕方を学び合う。
○廊下にキャンバスを掲示することで,友人同士での相互鑑賞がしやすい環境をつくる。
○作品を校内に展示することで,多くの人の鑑賞を想定した制作を心がけるように指導する。
○自身の内面の追究を学習の意義とすることで,絵画表現の習得だけにとどまらず,日常生活における自身の成長と結び付けて制作を進めていけるようにする。
○制作後にワークシートに取り組むことによって,自身の学びについて振り返ることができるようにする。
6.題材の指導計画
16時間(2時間×8回)
※事前の単元で鉛筆デッサンに取り組む。
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時間 |
学習活動 |
指導上の留意点 |
評価規準,評価方法 |
|---|---|---|---|
|
下地づくり |
①単元や用具について説明を受けて,準備する。 |
①下地を塗りながら,油彩絵の具の特性について説明をする(乾燥のしくみ,可塑性,濡れ色の保持など)。 |
【知識・技能】(技能) |
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おつゆ描き |
①モチーフの組み方や構図について理解する。 |
①構図はF6号キャンバスに,実物大に体育館シューズを描くことで自然とバランスが整う。シューズが収まる長方形の長さを計測し,長方形を画面に配置してから描いていく。 |
【知識・技能】(知識) 【主体的に学習に取り組む態度】(知識) |
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下塗り |
①シューズから描き始め,徐々に画面全体に色の調子を付けていく。 |
①筆を使って厚塗りで色の調子を付けていく。 |
【知識・技能】(知識) 【主体的に学習に取り組む態度】(知識) |
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固有色について |
①画面全体に色調を付けていく。 |
側面のラインや靴底のゴムなど色がついた部分は,モチーフの写真とその白黒コピーを比較して説明する。 |
【知識・技能】(知識) 【主体的に学習に取り組む態度】(知識) |
|
質感について |
①質感について理解する。 |
①モチーフの手触りや重さなど目に見えない情報について確認する。 |
【知識・技能】(技能) 【主体的に学習に取り組む態度】(技能) |
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中間講評会 |
①教員や生徒同士による講評を受け,気づいたことなどをワークシートに書く。 |
①キャンバスを並べ,良いところや足りないところを学び合えるように講評する。 |
【思考・判断・表現】(鑑賞に関する資質・能力) 【主体的に学習に取り組む態度】(鑑賞) |
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絵づくりについて |
①絵づくりについて理解する。 |
①鑑賞者の視点を意識して,色調を整えることで強調したい部分が明確に伝わるように画面を整えていく。 |
【思考力・判断力・表現力等】(発想・構想の能力) 【学びに向かう力,人間性等】(発想・構想の能力) |
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仕上げ |
①気になるところを描き込み,最後にサインを入れる。 |
①ワークシートで振り返り,感想や学ぶことができたことなどを考察する。 |
【思考・判断・表現等】(鑑賞に関する資質・能力) 【学びに向かう力,人間性等】(鑑賞) |
7.授業を終えて
始めは教員の指示による活動が多かったものの,授業が進むにつれて始める前から自主的に準備をするなど,生徒が主体的に授業に参加する様子が見られるようになった。また生徒からは,どのように制作を進めていくかを考えながら,最後まで一生懸命に制作に取り組む様子が伺えた。
序盤において生徒の実態に合わせつつ,活動に適度な制限を設けながら進めたことが,生徒全員が制作に前向きに取り組むことにつながったのではないかと思う。段階に応じて自由に選び取れる要素を増やしていくことで,個々の表現へと自然に移行し,様々な作品が出来上がった。生徒の学ぶ力や意欲をいかに引き出せるかが,授業の学びの成果を大きく左右する。扱う題材に精通することや,生徒の実態を把握することを追究した上で,活動の内容や順序,その組み立てを工夫して,さらに学ぶ力や意欲の向上につなげていきたい。
また並べてあるキャンバスを見比べたり,友人と話をしながら感想を言い合ったりなど,生徒が楽しみながら対話的な学びに取り組む様子が見られた。これらの活動は学びや気づきが生まれることにつながるため,今後も大いに盛り上げていきたい。教員が自己の表現を追究し高めるように指導をしていくと,対話的な学びも自ずと活発になっていくように感じられた。これらはまさに両輪のような関係で,授業の原動力となっていったと考える。
作品のタイトルは,制作中に追究したことや自分と向き合ったときに見えてきたものなどが伺える。生徒によっては,遊び心を発揮してつけたタイトルも見受けられる。タイトルのつけ方を含めて表現になっており,全員がそれぞれの表現することができたことは教員にとって大きな喜びである。自身の内面を見つめることや,また他人の良さについて認め合うことは、美術を学ぶ基本的な姿勢であり,次の単元の学びにつながっていって欲しい。










