大阪中之島美術館×日本文教出版共同企画『お手紙書こう』:「お手紙紹介」の各作品にみんなのお手紙③④を追加

大阪中之島美術館×日本文教出版共同企画『お手紙書こう』:「お手紙紹介」の各作品にみんなのお手紙③と④を追加しました。

自分事の学びをデザインする道徳授業実践~ICTによる相互参照可能な道徳日記の活用~「すれちがい」(第5学年)

※本実践は兵庫教育大学附属小学校に在籍されていた際の実践です。

1.はじめに

 道徳科の授業では、特に自分事の学びが重要視されている。「自己の生き方についての考えを深める」道徳科においては当然のことと言えよう。しかし、実際の授業では、導入場面で生き生きと自分の経験を語っていた子ども達が、教材の内容に入り対話を進める中で、いつの間にか「他人事で考えてしまっていないか?」と感じる場面が少なくない。この理由の一つとして、導入時に自分の生活経験とつながっていたもの(自分の経験を想起できていたもの)が、教材に描かれている事象や話し合いの話題と切り離されてしまうことが考えられる。つまり、導入で扱う話題と展開における話題にズレが生じていることが問題なのである。「自己の生き方についての考えを深める」道徳科では、教材での話し合いが自分たちの生活や生き方とつながっているということを実感し、自分事の学びを実現することを大切にすること、そこに意識を向けるべきである。そこで今回は、「導入と教材内の話し合いをつなぎ、自分事の学びをデザインする」ことができるようにするための“ICT活用”を取り入れた実践を紹介する。

 具体的な方法・手順を、以下に記す。

授業日までに、教材の内容に似たテーマを設定し、家庭学習や、朝学習などの時間に道徳日記を書く。(授業外でも相互参照を可能にするため、ロイロノート等の相互交流が可能な授業支援ソフトを用いる。)
友達が書いた日記を、家庭学習や朝学習などの時間に読み合う。(道徳の次の授業で活用するために行うというよりも、“互いのことを知るため”といったような、学級づくりの目的で交流する理由を伝えると、主体的に取り組む姿につながりやすい。)
日記の中から、共有したいものを教師が選出し、導入時に提示する。
日記の内容と教材の内容の往還を意識しながら授業を展開する。

2.主題設定について

 本授業では主題を「相手をわかろうとすることの意義」と設定した。多様な個性や考えが存在する社会の中で豊かな人間関係を築くためには、自分と異なる意見を互いに認め合い、理解を深めていくことが必要である。しかし、相手の過ちや失敗によって不快な思いをしたときに、異なる意見や立場の相手を理解しようと歩み寄ることは簡単ではない。なぜなら、人は自分が正しいと断定的に考え、一面的に物事を捉えたり、自分の立場を守るため、相手の考えや過ちを一方的に非難したりするなどの自己本位な言動に陥りやすい弱さをもっているからである。ここで大切なことは、自分も同じ過ちを犯してしまうかもしれないという自覚をもち、謙虚になることである。そうすることで、決めつけや思い込みといった偏った見方から抜け出すことができる。そして、視野が広がり、相手の心の内部にまで意識を向け、相手のことをわかろうとする気持ちが醸成されていくのである。そういった[相互理解、寛容]の捉えのもと、ねらいを「相手をわかろうとすることの意義について考え、謙虚な心をもち広い心で異なる意見や立場を尊重する道徳的実践意欲と態度を養う」とした。

3.教材について

 本時で扱う教材「すれちがい」は、ピアノ教室に一緒に行く約束をしたよし子とえり子が、些細なことからすれ違いを起こしてしまい、仲違いしてしまう話である。本教材は、二人の視点から話が描かれていて、読み手側からは二人のすれ違いが客観的に捉えやすい構造になっており、よし子の「許したくない」という気持ちと、えり子の「不快な思いはしているが、謝ろう」とする気持ちの双方から考えやすくなっている。物事を断定的に捉え、寛容になれない人間的な弱さと、わかろうと相手へ意識を向ける意義について考えることができ、主題に迫ることに適した教材だと言える。

4.実践報告

(1)主題名(内容項目)

「相手をわかろうとすることの意義」 B[相互理解、寛容]

(2)本時のねらい

 些細なことから互いにすれ違う二人の姿を通して、相手の過ちや失敗で不快な思いをした時でも、相手をわかろうとすることの意義について考え、謙虚な心をもち広い心で異なる立場や意見を尊重する実践意欲と態度を養う。

(3)展開例

学習活動
(○主な発問 ・予想される児童の反応)

◇指導上の留意点 ☆評価


自分たちの道徳日記に書かれた内容(経験)を見て感想を伝え合う。
(テーマ:ごめんねと言われたけれども許せなかった経験ってある?)
○友達の日記に書いている経験に共感できるかな。
・友達の具体例に共感する姿
・日記に書かれていない新たな具体例を想起する姿
・したことのない経験に驚く姿
○学習テーマを設定する。

◇事前に家庭学習で書いた道徳日記(ロイロノート)を見せながら、共感できる内容の日記はどれかを問うことで自身の道徳的価値観の自覚を促すとともに、一人ひとりが具体的場面を想起し自分事として教材の内容の話し合いに臨むことができるようにする。

学習テーマ:人はいつでもわかり合うことは必要なのだろうか



(前段)

○この話の問題はどこだろう。
・お互い悪くないのにすれ違っているところ。
・よし子が、謝ろうとしてくれているえり子の話を聞こうとしないところ。
○よし子はなぜ、謝ろうとしてきたえり子の話を聞こうとしなかったのだろう。
・自分のことばかり考えているから。
・余裕がないから。
・相手が悪いと思っているから。
・自分が正しいと思っているから。
・自分のことしか考えていないから。
○話を聞こうとできないよし子と、不快な思いをしても謝ろうとしたえり子の違いは何だろう。
・余裕があるかないかの違い。
・相手の思いを大事にしようとしているかしていないかの考え方の違い。
・許す心があるかないかの違い。

◇互いにすれ違い、すれ違う理由には目を向けようとしないとった教材に含まれる道徳的問題に焦点化できるようにするために、図を使って人物がしたことや状況等を時系列に沿って表し、教材理解を促す。
◇よし子に対する共感的発問を子どもに投げかけることで、相手に対して寛容になれない人間的な弱さに共感できるようにする。
◇事前に書いた道徳日記にある具体例を数個選び黒板に提示する。展開の中で、教材の事例と子どもたちの具体的な経験の往還を意識しながら問うことで、価値理解を深めていく一助とする。

☆相手を許すことができないよし子の思いと,不快な思いをしつつも謝ろうとしたえり子の思いを考える際に,自分との関わりで捉えようとしていたか。



(後段)

◎仲よくしなくてもいいと思う相手にだったらわかろうとしなくてもいいのではないだろうか。
・自分から歩み寄ることでそこから共通点が見つかり、仲よくできるかもしれない。
・仲よくなれなくても、新しいことに気づくかもしれない。

◇相互理解の意義を深く考えることができるようにするために、相互理解が必要ではない場合も認め得る状況設定と比較する。
◇表出した考えに対して、「なぜ」と問い返すことで、子どもたちが感じている相手をわかろうとすることのよさの根拠を表出し、自覚することができるようにする。また、人間的弱さの部分にも着目するよう促すことで、弱さを乗り越えていく強さについて考えられるようにする。


○人はいつでも相手をわかり合うことは大切なのだろうか。
・わかり合うことは大切だけど、必ずしもわかり合える必要はないと思った。でもわかろうとすることはどんな時でも大切だと思う。

◇学習テーマについての考えを問うことで、授業を通して変容した自らの考えを明確にもち自己の生き方につなげられるようにする。
☆学習テーマについて自分なりの考えをもち、友達と対話する中で多面的・多角的な見方をしようとしていたか。

5.授業記録

【導入】
自分たちの道徳日記(ロイロノートに記述したものを複数印刷して黒板に掲示したもの)に書かれたそれぞれの経験を見て感想を伝え合う。
(日記のテーマ:「ごめんね」と言われたけれども許せなかった経験って、ある?)
※事前に友達が書いたものを家庭学習で読む活動を行い、クラス全員の経験を共有している。

T 道徳日記で書いてくれたものの中から、みんなが共感してくれそうなものを持ってきたよ。紹介させてね。
C いいよ。
C 読んだ、読んだ。

教師が事前に選出した道徳日記の写真を黒板に貼り、共有する。
共有した日記は以下の6枚である。

1枚ずつ提示しながら、共感したことや、似たような経験を引き出せるよう子どもたちと対話をしていった。その後、学習テーマづくりに進んだ。

T こうやってみんな許せなかったことを書いてくれたんだけど、○○さんは、今振り返った時に、「今度からは許して仲よくしたいです」って書いているね。こんなふうに、許せない経験でも可能ならばわかり合ったらよかったな、と思ったことある?
C うん。
C わかり合うことって大切。
T そうなんだ。なんで? どんどんしゃべっていいよ。
C 人が思っていることがわかるから。
C わかり合うことで、今はわからんけど、「この子はこんな子なんや」ってわかってくるから。
T それがわかったらどんないいことがあるの?
C わかり合っていったら、「こういうことが好きやからこういうプレゼントあげようかなぁ」とか、相手の好きなもの嫌いなものがわかるから、そのために行動できる。
C 人間関係がつながってくる。
C わかり合うことで、友達ができる。
T 友達が増える、人間関係がよくなるってことね。
C わかり合うことで何か人の気持ちがわかって、その人はこう言われたら傷つくなとかがわかるから、傷つけることが減っていく。傷つけにくい。
T なんとなく言おうとしてることわかる?
C わかる。
T じゃあさ、人はいつでもわかり合うことって必要なの?
C ときには。
C いつでもかはわからない。
T なるほどね。では今日はこれをテーマにしていこうか。
T 学習テーマ「人はいつでもわかり合うことは必要なのだろうか。」と黒板に書く。
C 先生、ちなみに○○さんは日記でみんなと違うこと書いていたよ。ぼくも、許せないってなったことはないけど、それと同じで、○○さんは「寝たら全部忘れてしまう」って。
C そうそう。許せなかったことないっていうのがあったね。
C あったあった。

(考察)

子どもたちは導入時、わかり合うことの良さを良好な人間関係のためと捉えていた。そのような現時点での捉えを揺さぶり、考えを深めるために上記の学習テーマを設定した。当たり前のことと思っていたことをあらためて問われ、「いつでもかはわからない。」と発言したことから、深く考えていなかった自己に気付き、これからの学習への意欲を高めていた。
友達の日記の内容に共感し、似た経験を生き生きと語ったり、教師が黒板に提示したもの以外の興味をもった日記について、子どもの側から投げかけがあったりする場面があった。このことから、子どもたちは自分たちの生活につながる事柄や、まだ経験していなくともこれから経験する可能性がある事柄には非常に高い興味関心をもち、自分事として学びを形成していくことが分かった。

教材を読んだ後の感想から問題点に焦点化した後、よし子とえり子の違いについて話をしていく場面。

T この話はみんなの感想でもあったけど、よし子さんとえり子さん両方イライラしているよね。同じように見えるんだけど、先生は大きな違いを見つけた。みんなはわかるかな。よし子さんとえり子さんの違いは何だろう。
C えり子さんはよし子さんに1度謝ろうとしている。
C でも、よし子さんはそれを聞こうとしない。
T そう、話を聞こうとしなくて、えり子さんはイライラしているのに、謝ろうすることができたんだよね。ここわかる?
C わかる。
T お互い、同じようにイライラしているのに。なぜだろう?
C よし子さんはえり子さんが家に帰ってからゲームしたり漫画読んだりしていたと考えたからじゃないかな。
C 勝手に思い込んでいたってこと?
C うん。自分がゲームしていたからとか漫画やっていたかなとか思い込んでいたら、話を聞こうともできなくならない?
T なるほど。
C 事情があったから、えり子さんは謝ることができた。えり子さんにも急にお使いを頼まれたっていう事情があったから遅れたって。
C それでレジが混雑していたこともあったから。
C 事情があったら許せる。事情があったら謝れる。
T ○○さんが言っていること、わかる? そんな感じ?
C うん。
C 事情によるかなあと思っていて、○○が言ったように、ゲームとかだったら許せないけど、急にできた用事とか、仕方ない事情があったら許せる。
C よし子さんはずっと思い込んでいたから。事情がもし、何かいい事して遅れたとかやったら許せるかもしれないけど、でもよし子さんは既に思い込んでしまっているから。だから話すら聞いてくれない。
T ということは思い込み、相手が悪いと思い込んでいるって言うのが問題か。で、自分は悪くないっていう思いが、「相手が悪い」という思い込みにつながるということだね。
T これ、プラスの感情、マイナスの感情?
C マイナスの感情。
T マイナスの感情は黒板に何色で書いておく?
C 青色。
T では、青丸つけとくね。
C えーっと、よし子さんの、「自分からピアノ教室に誘っておいて電話もかけてこないし、広場へも来ないなんて。」って、それは思い込みやなぁ。
T 今、思い込みのことをつないでくれたんだ。
T この中で(日記)思い込んでしまっているなーって話はあるかな?
C ○○ちゃんのがそう。
T これか。友達がびっくりさせたけど相手が悪いと思い込んでいるかもしれへん、ってやつね。
C あーなるほど。友達はほんま仲よくなりたくてやっているかもしれへんけど、でも自分は嫌な気持ちして、相手が悪いって思いこんでいるってことか。
T あぁ、似た経験あるんだ。
T なるほど。よし子さんの気持ちはわかってきたね。では、えり子さんの方はなぜ謝ることができた?
T 特にこの○○さんとか○○さんの書いた日記はえり子さんの思いに近いんじゃない? なんで謝ることできたんだろう。
C また自分が悪いって思っているから謝ろうと思った。
C 自分が悪かったから。
C 自分も悪いかなって思っているから謝れたのかな。
T 自分も悪いと思えているんだ。
C ちゃんと自覚している。
C よし子さんは全部えり子さんの責任にしていたけど、えり子さんはそうしてない。
C 全責任はえり子さんにある。
T よし子さんは、全責任を相手に押し付けたんだ。
C 1番最後によし子さんが、えり子さんの話を聞いてくれたら「あぁそういうことがあったんかって許す感情」が出てくんねんけどそれを聞こうともしないから出てこないねん。
T 聞こうともしないというのも問題なんだ。
C この今の問題さ、○○さんのアイスの話と似てる。この「許せなかった」のことにつながってると思う。このアイス事件は全部お父さんが悪いって思い込んでいるから。
C わかる。
T じゃあ、みんなの生活でも思い込みって結構あるんだね。先生もドッキリとしちゃった。
T でも、思い込んでてもいいんじゃない? 話聞かなくてもいいんじゃない?
C ダメでしょ。あかんでしょ。
T 即答されました。悲しい。何でだろう。
C なんかさ。仲が悪くなってさ、二度と口をきかなくなったりする。
C ぼく、よし子さんの悪いとこばっか頭にあるわ、よし子さんの悪いところめっちゃ感じちゃう。
C ぼくはそこまで悪いと思わへん。
C これまでの話を聞いてたけど、なんだかえり子さんも怒ってる気持ちあるけど、よし子さんとまだ仲よくしたい気持ちもあったから、謝れたんじゃない?
C 確かに。
C 教科書を見てたら、えり子さんの1つだけ悪いところ見つけた。「私から後で電話することにした」って約束したのに、それを守れなかった。
C 勝手に思うだけじゃなくて、相手に言わないといけない。
C なんか後で分かってくれるやろうって思うんじゃなくて、ちゃんと自分で言わないといけない。言わないと伝わらない。
C 話聞こうとしないと仲よくなれないから、やっぱ自分から聞くのも大事っていうことだな。
T 話を聞いたら、必ずわかり合えるの?
C そうとも限らん。
T わかろうとしたら、わかり合える?
T 色々話をしたそうだね。ペアで話をしてみようか。

(ペア活動)

C この人の疑問が解決できなければ、多分わかり合うことはできない。
T では、これは解決できないんだ。
T わかろうとするとわかり合おうとするっていう言葉がここまで出てきてるんだけど、この言葉の意味の違いわかる? わかる、わかり合う、どっちが先?
C わかろうとして、わかり合う。
T あってる?そんな感じ?
C うん。
T わかろうとする。まぁ話を聞こうとするっていうことだね。その後わかり合う。か。他に話をしていた人で何かある?
C わかり合える時はわかり合えて、わかり合えない時はなんかまだ怒ってる感じ。
T わかろうとはできるけど、結果としてわかり合えない時もあるってことだね。例えばわかり合えないことって、どんなこと?
C ここのペアで言ってたんだけど、外国って家に土足であがったりするやん。そんなふうに文化が違ったりしたらわかり合えないかもしれない。
T ああ。文化の違いとかやったら受け入れられないことがあるかもしれないということか。
T 今日から土足で家入っていいよって言われたらどう?
C やったります。
T なるほど、あなたはわかるけど、あなたはわかり合えないってことか。面白い。このクラスの中でもそれぞれあるんだね。
C 剣とか銃を持っていっていいとか。
T それも文化の違いであるね。
C ぼくはわかり合えるけど。
C 前に授業でやった個性みたいなことでも言えるかも。家族の個性っていうか。家族によっては例えば私の家は目玉焼きに醤油かけるけど、友達の家ではマヨネーズみたいな。
C 砂糖大さじ2。
T めっちゃ細かいね。さすが料理家。
T 個性によってもわかりあえないこともあるってこと?
C うん。
C 先に自分が謝ろうとしても、相手が聞かなかったらわかりあえないし、相手に伝わらなかったら意味ない。
C だからまずわかろうとしないと意味がない。
T こういう→ってこと?(板書に矢印を書き込む。)

(考察)

初めは道徳日記や自分たちの経験と教材の話合いをつなぐための働きかけを教師から積極的に行っていた。それらを重ねることで、生活経験とのつながりがあることへの気づきが芽生えている様子があり、子どもからも「今の話は日記の○○と似ている。」という声が上っていた。そのことから、子どもは教材の内容についての話し合いをしつつも自分たちの経験と重ねたり、つなげたりしながら話を進めていた。つまり、教材の話をもとに自己の生き方へ内省的な視点を向けて考えることで、話し合いの内容が自分事となり自己の生き方についての考えを深めることにつながっていた。
子どもたちは、よし子とえり子の違いからわかり合う時に必要な寛容の心や謙虚さ(思いこみをせず、そのためには自分が悪いかもしれないという思いをもつことも大切だということ)について自分たちの経験と重ねながら話をしていた。そして話を進めるうちに、「そもそも話を聞こうとしなければ意味がない。」と発言があったように、自然と主題「わかろうとすること」について考える文脈が生まれていた。

【中心発問】

◎ もし初めから仲よくならなくていいと思う相手とか、この人とは人間関係がよくならなくてもいい、っていう相手だったら、わかろうとしなくていいのではないだろうか?
C いやいや、必要。
C 最初は仲がよくないけど、仲をどんどんよくするために必要。
T あーって言っているけど何に言ってるの?
C 可能性にかけるみたいな。
C 可能性あるのに、挑戦しないのはおかしいやろ、みたいな感じ。
T なんで? わかろうとしたら大親友になるの?
C 大親友とかはならなくてもいいんだけど……。
C もしかしたら話してみたら、気があったりするかもしれへんから外見とかそういうので判断したら仲良しになれるかもしれないのになられへんじゃん。だからダメ。
C ぼくと○○君みたいに「可愛いもの好き」みたいなことが話したらわかるかもしれん。
C やっぱりもっと友達とか増やしたい子もおるだろうし、例えば中野先生とか実習の先生とかと仲よくなるときにやっぱりなんかこの人こうやなぁって分かっていくと仲よくなれる。趣味とか好きなものが合わないとしても、またそこから同じ趣味を見つけていけばいいし、好きじゃなくても体験してみたいとぼくは思う。
C なんかさー、新しい挑戦もできる。
C 仮に好みとかが違うかったとしても、違うものに触れて、新しいことに踏み出せるかもしれへんてこと。可能性広がる。
C そう、それがわかろうとするにつながるってこと。
C やってみたらなんかめっちゃ楽しかったっていうような。友達がハーモニカをやってて、それをやってみたらめっちゃ楽しかったっていうのがぼくもある。
T ○○さんは、その時に、まずわかろうとしたってこと?
C YouTubeとかでも同じのありそう。それをやって挑戦してみようみたいな。
C 流行が広がる。
C やりたいこととか。
C 自分の趣味になって、自分の趣味が広がる。
C 自分の個性が周りに広がる。
C 周りに個性が広がっていく可能性がある。
T みんなでも結局これが人間関係につながるみたいなこと言ってるね。
T でもさっきあったようにわかり合えないことってあるよね。仮に絶対にわかり合えないってとき。その場合はどうする?
C それでもいる!!
C 例えばAくんは中遊びが好きで、B君は外遊びが好きとして、それをわかろうとするんやったら、最初はこの遊びにしよう、その後はこの遊びにしようってどっちの思いも大事にしていってあげるとわかり合えていくんじゃないかな。
C そう。どっちも大事にしたらいい。
C 仮に意見が合わなくてもどっちもしたらいいんじゃん。
C そうそう。
T それは分かった。今のはわかり合える可能性があるかもしれないって思っているパターンでしょ? でも、絶対にわかり合えないって仮にわかってたらわかろうとしなくていいんじゃないの?
C 違う。
C やっぱりわかり合おうと思わなければ友達減っていくんです。そういう感じ。
T 今は自分の周りにあるものがどんどん減っていくって感じかな?わかり合おうとしないと。
C うん。クラスのみんながどんどんこっちに寄っていく感じ。(自分から離れているジェスチャーで表現する。)
C 友達が減るから。自分の個性を変えるんじゃなくて、例えば、さっきのA君が外遊び好きで、B君が中遊び好きの例やけど、それが違うなってなったらどちらかに合わせるのではなくて、また違う遊びを見つけたらいい。
C あぁ。三つ目の。
T 個性は変えなくていい。つまり合わせなくても良いってこと?
C そう。
C 一個から二個、二個から三個、三個から四個、にしたらいいねん。
T なんだかかっこいい名言ができたな。
C 名言かざろう。
T 「なかったら作るねん。」 by 5年1組。
T 一から二個、二個から三個にしてあげるってことね。
T じゃあ、最後テーマについてペアで話をして終わろうか。

(ペアでテーマ「いつでもわかり合うことは必要か。」について話す。

(考察)

中心発問として「もし初めから仲よくならなくていいと思う相手や、この人と人間関係はよくならなくていいという相手だったらわかろうとしなくていいのではないだろうか?」と投げかけた。これは、子どもたちの「わかろうとすることが大切だ」という価値観に対して別の状況設定を比較材料として出すことで、価値観を揺さぶり、わかろうとすること(相互理解)について深く考え直すことを意図したものである。子どもたちは、「わかろうとしなくても良いことも認められるような状況であっても、わかろうとすることが大切だ」と言い切り、その理由を一生懸命自分たちなりの言葉で表現していた。結果として下線部のように主題に設定した「わかろうとすることの意味」を自分たちで見出すことにつながっていた。

6.板書例

7.授業への工夫など

(1)教材の問題を自分事として考えるために、事前に教材に似た場面を道徳日記に書く工夫
 教材内での話し合いを自分事として考えていくことができれば、より実生活に結び付いた学びになり、生き方について考えを深めていくことにつながる。しかし、子どもたちの中には、教材から具体的な経験を想起できない子どもがいる。結果、どうしても抽象的な話し合いに終始してしまう場合がある。そうすると教材から離れて自己を見つめ考えることができない。そこで、事前に道徳日記として、相手をわかろうとすることができなかった経験を書く活動を設定する。また、友達が書いた日記の内容を事前に共有しておく。そうすることで、教材に出合ったときに具体的な場面が想起され、教材の内容を自分事として考え、主体的に話し合っていく手がかりにしたい。

(2)価値理解を深めるため、子どもたちが想起した具体的場面である個別の状況下を展開内で問う工夫
 道徳的価値の捉え方は、立場や状況により変わることがある。このことから、教材内の一事例のみで考えるよりも、いろいろな状況下で考える方が、様々な見方で道徳的価値を捉えることができるため、価値理解が深まる。事前に日記に書かれた子どもたちの経験は教材とは異なる様々な状況が描かれている。教材内の出来事から主題に関わる話し合いをする際に、導入で活用した子どもの道徳日記を数枚掲示し、比較しながら違いを問うていくことで、価値理解が深まる対話ができるようにした。
 これは、導入と展開を自分事での学びでつなぐ一つの手立てとなり得ると考える。

8.考察

本実践は自分事の学びをデザインしていくために、道徳日記を活用した。教材と似た場面を授業前に個人で想起したこと、また友達の日記内容を共有しておくことで授業内の話し合いの際には日記内容と教材の話し合いを結びつけることができていた。それは授業内の子どもの発言と主体的に話し合いに参加する姿から見取ることができた。また、道徳科の授業では、道徳的価値に関する話し合い(意義や意味)になればなるほど話が抽象化する傾向になり、話し合いが噛み合わなくなることが課題としてある。今回の手立てに用いた道徳日記では、[相互理解、寛容]に関わる具体的な場面を多数共有していたことで、抽象的な話し合いの際の理解の助けになっていた。
今回は授業内の話し合いと自分たちの経験を往還させる実践として、道徳日記を用いた初めての試みであった。そのため、教師から「今の話し合いはみんなの日記と重なることがある?」などといった働きかけを多く行った。授業内で次第に子どもから日記の内容とつなぐ場面も出ていたものの、中心発問以降は日記内容とつなぐ姿は見られなかった。これは子どもたちの中に学び方として積み上がっていないことが理由として挙げられる。継続的に手立てとして取り入れることで、子どもたちは教材での話し合いを生活経験と結びつける学び方を学んでいくだろう。そして次第に「道徳科の学びは自分たちの生き方につながっているのだ。」と実感し、道徳科を学ぶ意義を高く感じる子どもたちの姿につながっていくだろう。今後もこの取り組みを継続していきたい。

十和田市現代美術館

十和田市現代美術館 十和田市現代美術館では、教科書に掲載している塩田千春やロン・ミュエクなど、現代で活躍する作家の作品を数多く展示しています。
 今回はエデュケーターの青山真樹さんに、十和田市現代美術館における展示の工夫や、作品の魅力、そして学生を対象にした教育普及活動についてお話を伺いました。

――教科書では塩田千春の《掌の鍵》や《集積―目的地を求めて 2014-2019》を掲載しています。塩田は糸や鍵、鞄など身の回りものを用いて制作を行っています。十和田市現代美術館で公開している《水の記憶》ではどのような特徴が見られますか?作品の見どころと共に教えてください。

青山:この作品は、赤い糸と船という、塩田千春の作品においてしばしば登場する2つの要素で構成されています。
 何層にも重なり編まれた糸は、頭上を埋めつくし壁面にまで広がっています。展示室がコンパクトな空間だからこそ、部屋の中に足を踏み入れると、まるで繭に包み込まれているかのような感覚を覚えます。しかし、複雑に絡み合う糸は、どこかに焦点を合わせようとすれば、それ以外はぼやけてしまい、一本一本を目で捉えきることはできません。
 部屋の中央には、その糸に繋がれた一艘の古びた木船が置かれています。この船は、過去に十和田湖にあったものです。塩田にとって「未知の場所へ導くと同時に、危険もつきまとう、“死” と隣り合わせの存在」だと言う船。その表面の至るところには、小さな傷やひび割れ、塗料の剥がれなどが見られ、その一つ一つに、船に起こった過去の出来事が刻まれているようです。
 「誰がどんな風に使っていたのだろう?」
 「この船は、どこでどんな経験をしてきたのだろう?」
 船のありし日の姿や、関わってきた人の存在に思いを馳せてみると、場所やものに宿る数多くの記憶や重ねられた時間があるということに気がつくのではないでしょうか。糸の状態を示すさまざまな表現―張り詰めたり、緩んだり、結んだり、切れたり、もつれたり―には、人や物の「関わり」を連想させるものが多くあります。編み込まれた無数の赤い糸は、この船にまつわる、そんな目には見えない無数のつながりを表しているのかもしれません。

塩田千春《水の記憶》
撮影:小山田邦哉
©2021 JASPAR, Tokyo and Shiota Chiharu

――教科書は、様々な作品を見ることや学ぶことで、新たな物の見方や考え方を知るきっかけに繋がることを大切にしています。十和田市現代美術館では、教科書でも取り上げている塩田千春や、ロン・ミュエクの作品など多くの作品を常設展示しています。作品の魅力を鑑賞者に伝えるために、特に意識して行っていることを教えてください。

青山:当館の大きなテーマは、「体験型」であること。作品を目の前にした時の、来館者の体験こそを大切にしたいと考えています。そのため、キャプションや館内リーフレット、音声ガイドなど、来館者が初期にアクセスするツールにおいては、情報や知識を過度に提供しすぎてしまわないように留意しています。それは来館者が、情報を読むことによって作品を「みたつもり」になってしまうことを避けるためです。それよりも、その人自身が作品から何を受け取り、どのようなことを感じ考えたのか―そこから鑑賞の一歩が踏み出されることこそが、重要だと考えています。
 「作品のよさ」や「魅力」といったものに、固定の答えがあるわけではありませんので、こちらから「伝える」のではなく、みる人それぞれに「考えてもらう」ためのきっかけをつくるという意識で各種ツールやプログラムを設計しています。

ロン・ミュエク《スタンディング・ウーマン》
撮影:小山田邦哉
Courtesy Anthony d’Offay, London

――教科書では、美術館に行くことを掲載したり、美術に関する仕事を取り上げたりするなど、学校外での美術との繋がりも紹介しています。十和田市現代美術館では学生を対象に、どのような教育普及活動を行っていますか?

青山:高校生向けには、美術館スタッフが学校に出向く出張授業のほか、団体観覧の受け入れ時には、学校の要望に応じオリエンテーションやグループ鑑賞などを組み合わせた対応を行なっています。また、10代の若者を対象としたユース・プログラムとして、「鑑賞」と「表現」を組み合わせ、作品世界をより深く体験するワークショップや、中高生とアーティストが出会い、ひとつのテーマのもとで共に考え・つくり・まなびあうプログラムなどを企画、実施しています。

美術館情報

■十和田市現代美術館
住所:〒034-0082 青森県十和田市西二番町10-9
公式サイト:https://towadaartcenter.com
問い合わせ:0176-20-1127
休館日:月曜日(月曜日が祝日の場合は、その翌日)、年末年始
開館時間:9時~17時(展示室入場は閉館の30分前まで)
観覧料:一般1800円(企画展転換期1000円)、高校生以下無料

【関連作品 教科書掲載情報】

  • 「高校美術」p4-5.
    集積―目的地を求めて 2014-2019[赤いロープ・スーツケース・モーター]2019
    森美術館での展示[東京都]
    塩田千春
  • 「高校美術」p54.
    スタンディング・ウーマン[ミクストメディア/405×155×110cm] 2008
    十和田市現代美術館蔵[青森県]
    ロン・ミュエク
  • 令和5年度版「高校生の美術2」p36.
    掌の鍵[古い鍵・赤い毛糸・ヴェネチアの木製の船] 2015
    第56回ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展(日本館)での展示[イタリア]
    塩田千春

「青の洞門」(第6学年)

1.主題名

心が心を動かす D[感動、畏敬の念]

2.教材名

青の洞門(東京書籍)

3.主題設定の理由

(1)ねらいとする価値について
 人は、相手が精一杯取り組む場面や自分の可能性に挑戦する姿を見た時に心を打たれることがある。また相手を思いやる心や優しさに触れた時、素直に感動する心をもっている。
 高学年になると、人間の力を超えるようなことに挑戦する姿勢や人の心の美しさに目を向けられるようになる。人の心や行為の素晴らしさを素直に受け止め、尊敬や畏敬の念を深めることで、自分の在り方を見つめるきっかけとなる。
 今回の学習を通して人のために尽くす心や姿に、素直に感動したり尊敬したりする心を育てたい。さらに自分の在り方を考える機会としたい。

(2)児童の実態について
 「手品師」の学習では、「どんなにうれしい話でも最初の約束を守った主人公を見て、自分も最初の約束を大切にしていきたいと思った。」と人の心がもつ誠実さに気づき、自分の生活と結び付けて考える姿が見られた。また、「主人公が男の子を優先することが優しくて、すごいと思った。」という記述が多く見られた。他の道徳の授業でも、登場人物の心の優しさや思いやりに目を向けて考える児童が多い。
 今回の学習を通して、人のために尽くす心に加えて、人の力では達成が難しいと感じる目標にも立ち向かう気持ちや最後まで諦めない心などの、人間がもっている様々な心に触れさせたい。そして、その思いが偉業を成し遂げることに繋がり、人の心を大きく動かすことがあることに気づかせたい。

(3)教材について
 菊池寛の「恩讐の彼方に」を原作とする教材である。罪を償う旅をしていた了海は、多くの人が命を落とさないように絶壁に道を通すことを目指す。そこに了海が殺した主人の息子、実之助が敵討ちに来る。しかし石工達に止められる。実之助は隙を狙って了海の命を狙うが、一心に槌ふるう了海の姿を見て完成まで敵討ちを待つ決心をする。1年以上かけて完成した時、実之助は了海の手を握りしめ、二人は感激の涙にむせびあう。
 21年の歳月を、道を通すために費やす了海の気高い心に触れ、復讐心を忘れて感激する実之助の気持ちを考えることを通して、人の心や姿に素直に感動する心を育てたい。

4.研究主題~確かな学力を培い、たくましく生きる力を育む道徳授業の創造~との関連

(1)教材を理解しやすくするための取り組み
 教材の時代背景を先に説明して登場人物の関係を理解することで、心情を考えやすくする。また、出てくる言葉の意味を確認したり、道具の実物を示したりして教材理解の一助としたい。教材提示はBGMを用いながら語り聞かせることで、教材の世界に浸れるようにする。

(2)児童の発言を生かす
 児童の発言を予想して、あらかじめ価値項目に合わせた分類を考えておく。児童の思考が深まるように補助発問を用意して、ねらいに迫れるようにする。また、板書計画に児童の発言を記録しながら整理して、児童が理解しやすい板書を目指す。

(3)自己を見つめる時間
 感動した経験を振り返りやすくするために、ワークシートの発問に登場人物の「実之助のように」という言葉を入れて、児童が今日の授業を思い出しながら、自分の経験を記入できるように工夫した。また、感動した時の心情を「心がじーんとした」という言葉でも表現することで、児童が経験した心の動きを感じられるようにした。
 【ふり返り】の4項目は毎時間同じ内容で、児童に授業の振り返りをさせている。書くことが苦手な児童もこの欄は記入することができている。さらに、授業によって児童が描く顔の表情が変わるため、教師自身が授業を振り返るときにも生かすことができている。

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※本実践は、町田市内小学校在籍時、同市の道徳教育研究会における研究をベースに取り組んだものである。

5.教材分析

場面

登場人物の心情
<考えられる発問> ・予想される児童の反応

関連する価値

①1~14行目
了海が山国川を訪れ、水死人に念仏を唱える。

村人
可哀そうだ。成仏してほしい。
了海
年に何人も亡くなる鎖渡しを何とかしたい。

D[生命の尊さ]

②15~32行目
了海が鎖渡しを通る。そして大絶壁に道を通す決心をする。

了海
鎖渡しで命を落とす人を救いたい。人の役に立ちたい。ようやく自分が追い求め続けていたものを見つけた。

D[生命の尊さ]
B[親切、思いやり]
A[希望と勇気、努力と強い意志]

③33~35行目
了海は道を作るため寄付を求めて、村を歩き回る。

了海
道を作るために力を貸してほしい。
村人
道を作ることは不可能だ。無理な計画だ。

D[生命の尊さ]
B[親切、思いやり]
A[希望と勇気、努力と強い意志]

④36~39行目
了海は岩壁に第一の槌を振るった。

了海
少ししか進まない。この計画は無理かもしれない。でも諦めるわけにはいかない。

A[希望と勇気、努力と強い意志]

⑤40~48行目
主人殺しの大罪を犯した了海が僧となり、諸国を巡り歩く。

了海
自分が犯した罪を少しでも償いたい。世のため、人のために力を尽くしたい。自分にできることは何だろうか。そのために旅をして探し続けよう。

D[生命の尊さ]
B[親切、思いやり]

⑥49~53行目
了海は岩壁の側に小屋を建て、槌を振るい続ける。村人は寄り付かなかった。

了海
毎日少しずつでも取り組んでいくぞ。いつか道を通すことができるだろう。
村人
絶対に無理だ。関わりたくない。

D[生命の尊さ]
A[希望と勇気、努力と強い意志]

⑦54~61行目
了海は15mほど掘り進め、村人は石工を雇った。

了海
少しずつだが進んできた。いつか道ができると信じて、続けるぞ。
村人
道ができるかもしれない。手伝おう。

D[生命の尊さ]
B[親切、思いやり]
A[希望と勇気、努力と強い意志]

⑧62~64行目
石工はいなくなり、了海だけが掘り続ける。

了海
自分は諦めないぞ。人の役に立ちたい。
村人
やっぱり無理だ。手伝うのをやめよう。

D[生命の尊さ]
B[親切、思いやり]
A[希望と勇気、努力と強い意志]

⑨65~74行目
18年もの間、了海は槌を振り続けて半分まで進んだ。村人は再び石工を集めた。

了海
半分までできたぞ。先は長いが頑張るぞ。
村人
一人で半分も進めた了海はすごい。この前は辞めてしまって申し訳なかった。手伝おう。

D[生命の尊さ]
B[親切、思いやり]
A[希望と勇気、努力と強い意志]

⑩75~85行目
了海が殺した主人の息子、実之助がやってくる。実之助は敵討ちの旅の苦労が報われる時を迎える。

実之助
ようやく了海に会える時がきた。岩壁を掘り続けるような奴はきっと強いだろう。負けられないから、しっかり準備をしよう。

D[生命の尊さ]
C[家族愛、家庭生活の充実]

⑪85~96行目
実之助は人間とは思えない姿をしている了海に会い、張り詰めていた気持ちが怯む。しかし敵を討つ宣言をする。

実之助
このような弱々しい人を殺して良いのだろうか。しかし父を殺された悔しさは忘れられない。中川家の将来がかかっているから殺す。

<発問①>
「父のかたき、かくご!」と言った時、実之助はどのような気持ちだったのでしょう。
・ようやくこの日がきた。これで父の思いを晴らすことができる。
・よくも父を殺したな。やっと敵を討てる。
・お前のせいで、中川家がなくなったのだ。許せない。絶対に殺してやる。

D[生命の尊さ]
C[家族愛、家庭生活の充実]

⑫97~100行目
了海は殺される覚悟を決めた。

了海
道を通したかった。自分が罪を犯したから、ここで切られるのだ。仕方がない。

D[生命の尊さ]

⑬100~106行目
石工達が了海を殺すのをとめる。実之助は仕方なく引き下がる。

石工
了海に最後まで完成させてほしい。
実之助
気持ちが揺らいでしまったことが悔しい。隙をみて了海を殺すぞ。

D[生命の尊さ]
C[家族愛、家庭生活の充実]

⑭107~124行目
数日後の夜更け、実之助は敵討ちに向かう。しかし了海が振るう槌の音と念仏の声に決心が打ち砕かれる。。

了海
絶対に道を通すぞ。自分はどうなってもいい。世のため、人のために尽くすのだ。
実之助
どうしてそんなに続けられるのか。一心に槌を振るう姿がすごい。今、殺してはいけない。

<発問②>
槌を振るい続ける了海の姿を見た実之助はどのようなことを考えたのだろう。
・了海が精一杯槌を振るう姿がすごすぎる。道を通そうとする強い思いが伝わる。
・殺してはいけない気がしてきた。
・でも父の敵は討たないといけない。

D[生命の尊さ]
B[親切、思いやり]
A[希望と勇気、努力と強い意志]

⑮125~131行目
実之助も石工達に交じって働き始める。了海と実之助が並んで槌を振るう。

了海
道を完成させたい。絶対に成し遂げる。
実之助
1日も早く完成させて、敵を討つぞ。

D[生命の尊さ]
B[親切、思いやり]
A[希望と勇気、努力と強い意志]

⑯132~141行目
了海が槌を振るった時、小さな穴から山国川の流れが見えた。了海から泣き笑いが起こる。

了海
ようやく山国川の流れが見えた。自分の願いが叶った。何年もかかったが、成し遂げられて本当に嬉しい。諦めなくて良かった。

D[生命の尊さ]
A[希望と勇気、努力と強い意志]

⑰142~146行目
了海は実之助に山国川の流れを見せた。二人は手を取り合って喜びの涙にむせんだ。

実之助
山国川が見える。夢みたいだ。
二人
21年間も続けてきて、本当に大変だったが、やりがいがあった。できないと思っていたことが達成できて嬉しい。

A[希望と勇気、努力と強い意志]

⑱147~151行目
了海は実之助に自分を切るように伝える。

了海
このような願いを達成できた日に死ぬなら幸せだ。敵として自分を切ってほしい。

D[生命の尊さ]

⑲152~166行目
実之助は復讐心よりも偉大な事業に対する驚きと感激で胸がいっぱいになる。再び了海の手を取り、感激の涙にむせびあう。

実之助
このようなことが、人の手で達成されたことが凄すぎる。父の敵よりも、今は道が完成した喜びを一緒に分かち合いたい。

<中心発問>
再び了海の手を取り、固く握りしめているとき、実之助はどのようなことを考えていたのだろう。
・長い時間をかけて、続けてきたことに感動した。
・了海の手でこのような大きなこと成し遂げられたことがすごい。
・父の敵を討つことよりも、一緒に取り組んで道が通った喜びを分かち合いたい。

D[生命の尊さ]
B[親切、思いやり]
A[希望と勇気、努力と強い意志]

6.本時の学習

(1)ねらい
 実之助が、了海の長い年月をかけて道を通した姿を見て、復讐する気持ちを超えて心を動かされたときの思いを考えることを通して、人の心や姿に素直に感動する心情を育てる。

(2)展開の計画

学習活動
○主な発問 ◎中心発問 ・予想される反応

◇指導上の留意点 ●評価


1 実之助の立場を説明して、教材への導入を図る。
○実之助の父が了海に殺されたことについて
○江戸時代の敵討ちについて
○青の洞門と洞門を掘るための道具について

◇登場人物の関係や時代背景を簡単に説明する。
◇青の洞門の写真と槌とのみの実物を見せる。


2 教材「青の洞門」を読み、話し合う。
○「父のかたき、かくご!」と言った時、実之助はどのような気持ちだったのでしょう。
・ようやくこの日がきた。これで父の思いを晴らすことができる。
・よくも父を殺したな。やっと敵を討てる。
・お前のせいで、中川家がなくなった。許せない。絶対に殺してやる。

◇BGMを用いた語り聞かせを行う。

○槌を振るい続ける了海の姿を見た実之助はどのようなことを考えたのだろう。
・了海が精一杯槌を振るう姿がすごすぎる。道を通そうとする強い思いが伝わる。【D感動、畏敬の念】
・殺してはいけない気がしてきた。【D生命の尊さ】
・でも父の敵は討たないといけない。【葛藤】

◇槌とのみを振るう姿を教師が動作化する。
◇了海のどのような姿に実之助の決心が揺らいだのか、また実之助の敵討ちに対する葛藤を考えられるように、必要に応じて補助発問をする。

◎再び了海の手を取り、固く握りしめているとき、実之助はどのようなことを考えていたのだろう。
・長い時間をかけて道を作り続け、成し遂げたことに感動した。【A希望と勇気、努力と強い意志】
・父の敵を討つことよりも、今は喜びを分かち合いたい。このような偉業を成し遂げた了海には生きてほしい。【D生命の尊さ】
・了海の手で、このような大きなことを成し遂げられたことがすごい。【D感動、畏敬の念】

◇隣同士で話し合う時間を設けて、自分の考えを整理する時間をとる。(3分程度)
●了海の思いや姿を見た実之助の復讐する気持ちを超えて心を動かされたときの思いについて、考えを広げたり深めたりしている学習状況を把握する。【観察、記録】

3 人の心や姿に感動した経験を振り返る。
○実之助のように人の心や姿から、心がじーんとしたり、感動したりしたことはありますか。
・テレビで、治らない病気と言われていても治そうとお医者さんや看護師さんが頑張っていて感動した。
・スポーツ選手が頑張って、成果を出している姿を見てすごいと思った。自分も諦めそうになった時に、そのことを思い出して頑張れた。

◇ワークシートを活用する。
●自分との関わりの中で、人の心や姿に素直に感動した経験について振り返り、考えを深めている学習状況を把握する。【ワークシート、記録】


4 教師の説話を聞きながら、本時の学習を振り返る。

◇教師が人の心や姿勢に感動した経験を話す。

(3)1組の児童の反応

学習活動
○主な発問 ◎中心発問 ・予想される反応

◇指導上の留意点 ●評価


1 実之助の立場を説明して、教材への導入を図る。
○実之助の父が了海に殺されたことについて
○江戸時代の敵討ちについて
○青の洞門と洞門を掘るための道具について

◇登場人物の関係や時代背景を簡単に説明する。
◇青の洞門の写真と槌とのみの実物を見せる。


2 教材「青の洞門」を読み、話し合う。
○「父のかたき、かくご!」と言った時、実之助はどのような気持ちだったのでしょう。
・やっと敵を討てる。殺してやる!
・探し続けた人にようやく会えた。
・悲しみや憎しみ、恨みの気持ちがある。

◇BGMを用いた語り聞かせを行う。(教科書は見ずに)
◇実之助の悲しみや了海に対する憎しみなどを考え、人間理解に繋げる。

○槌を振るい続ける了海の姿を見た実之助はどのようなことを考えたのだろう。
・年をとっているのに掘っていることがすごい。
・ずっと掘っているから、ごめんなさいという気持ちが伝わる。
・手伝って完成したら殺そう。

◇槌とのみを振るう姿を教師が動作化する。
◇了海のどのような姿に実之助の決心が揺らいだのか、また実之助の敵討ちに対する葛藤を考えられるように、必要に応じて補助発問をする。

◎再び喜びを分かち合いながら了海の手を取り、固く握りしめているとき、実之助はどのようなことを考えていたのだろう。
・よくやった。
・一生懸命村のためにしてきたことがすごい。
・許そう。
・二人の気持ちが打ちとけた。「道を通すぞ」という目標を達成した気持ち。

◇隣同士で話し合う時間を設けて、自分の考えを整理する時間をとる。(3分程度)
●了海の思いや姿を見た実之助の復讐する気持ちを超えて心を動かされたときの思いについて、考えを広げたり深めたりしている学習状況を把握する。【観察、記録】

3 人の心や姿に感動した経験を振り返る。
○実之助のように人の心や姿から、心がじーんとしたり、感動したりしたことはありますか。
・夢のために頑張っている人。
・人と人とのつながり。人の心の強さ。
・応援したくなるような人。

◇ワークシートを活用する。
●自分との関わりの中で、人の心や姿に素直に感動した経験について振り返り、考えを深めている学習状況を把握する。【ワークシート、記録】


4 教師の説話を聞きながら、本時の学習を振り返る。

◇教師が人の心や姿勢に感動した経験を話す。

(4)2組の児童の反応

学習活動
○主な発問 ◎中心発問 ・予想される反応

◇指導上の留意点 ●評価


1 実之助の立場を説明して、教材への導入を図る。
○実之助の父が了海に殺されたことについて
○江戸時代の敵討ちについて
○青の洞門と洞門を掘るための道具について

◇登場人物の関係や時代背景を簡単に説明する。
◇青の洞門の写真と槌とのみの実物を見せる。


2 教材「青の洞門」を読み、話し合う。
○実之助が「父のかたき、かくご!」と言った時、どのような思いが込められていたのでしょう。
・やっと敵が討てる。これで心が楽になるかも。お父さんの敵が晴らせる。
・これで中川家が復活するかもしれない。

◇BGMを用いた語り聞かせを行う。(教科書を見ながら)
◇実之助の悲しみや了海に対する憎しみなどを考え、人間理解に繋げる。

○槌を振るい続ける了海の姿を見た実之助はどのようなことを考えたのだろう。
・何でここまでやるのだろう。頑張れるのだろう。
・それは了海のためになるのだろうか。
・反省している気持ちが伝わる。
T「父のかたき、かくご!」と言った時の気持ちはなくなっている?
・忘れてはいない。でも苦労している気持ちは分かる。

◇槌とのみを振るう姿を教師が動作化する。
◇了海のどのような姿に実之助の決心が揺らいだのか、また実之助の敵討ちに対する葛藤を考えられるように、必要に応じて補助発問をする。

◎再び了海の手を取り、固く握りしめているとき、実之助はどのようなことを考えていたのだろう。
・やっとここまできた。
・21年間もの間続けてきたことがすごい。
・やったー!一緒に作ったことに対する思い。
・殺さなくてよかった。
T実之助の思いを変えたのはどんな心?
・了海の頑張り。真意。みんなのために取り組む気持ち。

◇隣同士で話し合う時間を設けて、自分の考えを整理する時間をとる。(3分程度)
●了海の思いや姿を見た実之助の復讐する気持ちを超えて心を動かされたときの思いについて、考えを広げたり深めたりしている学習状況を把握する。【観察、記録】

3 人の心や姿に感動した経験を振り返る。
○実之助のようにだれかの人の心や姿から、心が温かくなったり、「すごいな」と感動したりしたことはありますか。
・一生懸命に取り組んでいる人がすごい。
・失敗しても諦めない人がすごいと思う。自分も頑張ろうと思う。

◇ワークシートを活用する。
●自分との関わりの中で、人の心や姿に素直に感動した経験について振り返り、考えを深めている学習状況を把握する。【ワークシート、記録】


4 教師の説話を聞きながら、本時の学習を振り返る。

◇教師が人の心や姿勢に感動した経験を話す。

(5)板書計画

<参考>
○事前におさえたい内容

実之助の父が了海に殺されたことについて
主人殺しの罪

江戸時代では、親殺し以上の凶悪な犯罪であった。のこぎり引きの上、磔の刑となる。また殺された家も家事不取締(自分の家の名を汚した)として、所領が没収される。つまり家が亡くなることになる。中川家が亡くなった実之介は縁者(親戚)に育てられた。

江戸時代の敵討ちについて
敵討ち

原作は「恩讐の彼方に」という題名で、恩讐には「情けや恩と恨み」という意味がある。原作では仇討ちという表現を用いていて、親を殺した者を打ち取ることで、家の汚名を返上したことになる。敵討ちには一家再興(再構)の期待が込められている。

青の洞門と洞門を掘るための道具について
槌とのみ

人の手で成し遂げられた偉業だと感じさせるために、実物を示し、音を聞かせる。太いのみを用いると、良い音が出る。

理解が難しいと考えられる言葉
むせぶ

息を詰まらせて泣くこと。今回は喜びや感動で胸がいっぱいになって涙する。

敵討ち

人物の関係と江戸時代の背景を説明する時に伝える。