自分事の学びをデザインする道徳授業実践~ICTによる相互参照可能な道徳日記の活用~「すれちがい」(第5学年)

※本実践は兵庫教育大学附属小学校に在籍されていた際の実践です。

1.はじめに

 道徳科の授業では、特に自分事の学びが重要視されている。「自己の生き方についての考えを深める」道徳科においては当然のことと言えよう。しかし、実際の授業では、導入場面で生き生きと自分の経験を語っていた子ども達が、教材の内容に入り対話を進める中で、いつの間にか「他人事で考えてしまっていないか?」と感じる場面が少なくない。この理由の一つとして、導入時に自分の生活経験とつながっていたもの(自分の経験を想起できていたもの)が、教材に描かれている事象や話し合いの話題と切り離されてしまうことが考えられる。つまり、導入で扱う話題と展開における話題にズレが生じていることが問題なのである。「自己の生き方についての考えを深める」道徳科では、教材での話し合いが自分たちの生活や生き方とつながっているということを実感し、自分事の学びを実現することを大切にすること、そこに意識を向けるべきである。そこで今回は、「導入と教材内の話し合いをつなぎ、自分事の学びをデザインする」ことができるようにするための“ICT活用”を取り入れた実践を紹介する。

 具体的な方法・手順を、以下に記す。

授業日までに、教材の内容に似たテーマを設定し、家庭学習や、朝学習などの時間に道徳日記を書く。(授業外でも相互参照を可能にするため、ロイロノート等の相互交流が可能な授業支援ソフトを用いる。)
友達が書いた日記を、家庭学習や朝学習などの時間に読み合う。(道徳の次の授業で活用するために行うというよりも、“互いのことを知るため”といったような、学級づくりの目的で交流する理由を伝えると、主体的に取り組む姿につながりやすい。)
日記の中から、共有したいものを教師が選出し、導入時に提示する。
日記の内容と教材の内容の往還を意識しながら授業を展開する。

2.主題設定について

 本授業では主題を「相手をわかろうとすることの意義」と設定した。多様な個性や考えが存在する社会の中で豊かな人間関係を築くためには、自分と異なる意見を互いに認め合い、理解を深めていくことが必要である。しかし、相手の過ちや失敗によって不快な思いをしたときに、異なる意見や立場の相手を理解しようと歩み寄ることは簡単ではない。なぜなら、人は自分が正しいと断定的に考え、一面的に物事を捉えたり、自分の立場を守るため、相手の考えや過ちを一方的に非難したりするなどの自己本位な言動に陥りやすい弱さをもっているからである。ここで大切なことは、自分も同じ過ちを犯してしまうかもしれないという自覚をもち、謙虚になることである。そうすることで、決めつけや思い込みといった偏った見方から抜け出すことができる。そして、視野が広がり、相手の心の内部にまで意識を向け、相手のことをわかろうとする気持ちが醸成されていくのである。そういった[相互理解、寛容]の捉えのもと、ねらいを「相手をわかろうとすることの意義について考え、謙虚な心をもち広い心で異なる意見や立場を尊重する道徳的実践意欲と態度を養う」とした。

3.教材について

 本時で扱う教材「すれちがい」は、ピアノ教室に一緒に行く約束をしたよし子とえり子が、些細なことからすれ違いを起こしてしまい、仲違いしてしまう話である。本教材は、二人の視点から話が描かれていて、読み手側からは二人のすれ違いが客観的に捉えやすい構造になっており、よし子の「許したくない」という気持ちと、えり子の「不快な思いはしているが、謝ろう」とする気持ちの双方から考えやすくなっている。物事を断定的に捉え、寛容になれない人間的な弱さと、わかろうと相手へ意識を向ける意義について考えることができ、主題に迫ることに適した教材だと言える。

4.実践報告

(1)主題名(内容項目)

「相手をわかろうとすることの意義」 B[相互理解、寛容]

(2)本時のねらい

 些細なことから互いにすれ違う二人の姿を通して、相手の過ちや失敗で不快な思いをした時でも、相手をわかろうとすることの意義について考え、謙虚な心をもち広い心で異なる立場や意見を尊重する実践意欲と態度を養う。

(3)展開例

学習活動
(○主な発問 ・予想される児童の反応)

◇指導上の留意点 ☆評価


自分たちの道徳日記に書かれた内容(経験)を見て感想を伝え合う。
(テーマ:ごめんねと言われたけれども許せなかった経験ってある?)
○友達の日記に書いている経験に共感できるかな。
・友達の具体例に共感する姿
・日記に書かれていない新たな具体例を想起する姿
・したことのない経験に驚く姿
○学習テーマを設定する。

◇事前に家庭学習で書いた道徳日記(ロイロノート)を見せながら、共感できる内容の日記はどれかを問うことで自身の道徳的価値観の自覚を促すとともに、一人ひとりが具体的場面を想起し自分事として教材の内容の話し合いに臨むことができるようにする。

学習テーマ:人はいつでもわかり合うことは必要なのだろうか



(前段)

○この話の問題はどこだろう。
・お互い悪くないのにすれ違っているところ。
・よし子が、謝ろうとしてくれているえり子の話を聞こうとしないところ。
○よし子はなぜ、謝ろうとしてきたえり子の話を聞こうとしなかったのだろう。
・自分のことばかり考えているから。
・余裕がないから。
・相手が悪いと思っているから。
・自分が正しいと思っているから。
・自分のことしか考えていないから。
○話を聞こうとできないよし子と、不快な思いをしても謝ろうとしたえり子の違いは何だろう。
・余裕があるかないかの違い。
・相手の思いを大事にしようとしているかしていないかの考え方の違い。
・許す心があるかないかの違い。

◇互いにすれ違い、すれ違う理由には目を向けようとしないとった教材に含まれる道徳的問題に焦点化できるようにするために、図を使って人物がしたことや状況等を時系列に沿って表し、教材理解を促す。
◇よし子に対する共感的発問を子どもに投げかけることで、相手に対して寛容になれない人間的な弱さに共感できるようにする。
◇事前に書いた道徳日記にある具体例を数個選び黒板に提示する。展開の中で、教材の事例と子どもたちの具体的な経験の往還を意識しながら問うことで、価値理解を深めていく一助とする。

☆相手を許すことができないよし子の思いと,不快な思いをしつつも謝ろうとしたえり子の思いを考える際に,自分との関わりで捉えようとしていたか。



(後段)

◎仲よくしなくてもいいと思う相手にだったらわかろうとしなくてもいいのではないだろうか。
・自分から歩み寄ることでそこから共通点が見つかり、仲よくできるかもしれない。
・仲よくなれなくても、新しいことに気づくかもしれない。

◇相互理解の意義を深く考えることができるようにするために、相互理解が必要ではない場合も認め得る状況設定と比較する。
◇表出した考えに対して、「なぜ」と問い返すことで、子どもたちが感じている相手をわかろうとすることのよさの根拠を表出し、自覚することができるようにする。また、人間的弱さの部分にも着目するよう促すことで、弱さを乗り越えていく強さについて考えられるようにする。


○人はいつでも相手をわかり合うことは大切なのだろうか。
・わかり合うことは大切だけど、必ずしもわかり合える必要はないと思った。でもわかろうとすることはどんな時でも大切だと思う。

◇学習テーマについての考えを問うことで、授業を通して変容した自らの考えを明確にもち自己の生き方につなげられるようにする。
☆学習テーマについて自分なりの考えをもち、友達と対話する中で多面的・多角的な見方をしようとしていたか。

5.授業記録

【導入】
自分たちの道徳日記(ロイロノートに記述したものを複数印刷して黒板に掲示したもの)に書かれたそれぞれの経験を見て感想を伝え合う。
(日記のテーマ:「ごめんね」と言われたけれども許せなかった経験って、ある?)
※事前に友達が書いたものを家庭学習で読む活動を行い、クラス全員の経験を共有している。

T 道徳日記で書いてくれたものの中から、みんなが共感してくれそうなものを持ってきたよ。紹介させてね。
C いいよ。
C 読んだ、読んだ。

教師が事前に選出した道徳日記の写真を黒板に貼り、共有する。
共有した日記は以下の6枚である。

1枚ずつ提示しながら、共感したことや、似たような経験を引き出せるよう子どもたちと対話をしていった。その後、学習テーマづくりに進んだ。

T こうやってみんな許せなかったことを書いてくれたんだけど、○○さんは、今振り返った時に、「今度からは許して仲よくしたいです」って書いているね。こんなふうに、許せない経験でも可能ならばわかり合ったらよかったな、と思ったことある?
C うん。
C わかり合うことって大切。
T そうなんだ。なんで? どんどんしゃべっていいよ。
C 人が思っていることがわかるから。
C わかり合うことで、今はわからんけど、「この子はこんな子なんや」ってわかってくるから。
T それがわかったらどんないいことがあるの?
C わかり合っていったら、「こういうことが好きやからこういうプレゼントあげようかなぁ」とか、相手の好きなもの嫌いなものがわかるから、そのために行動できる。
C 人間関係がつながってくる。
C わかり合うことで、友達ができる。
T 友達が増える、人間関係がよくなるってことね。
C わかり合うことで何か人の気持ちがわかって、その人はこう言われたら傷つくなとかがわかるから、傷つけることが減っていく。傷つけにくい。
T なんとなく言おうとしてることわかる?
C わかる。
T じゃあさ、人はいつでもわかり合うことって必要なの?
C ときには。
C いつでもかはわからない。
T なるほどね。では今日はこれをテーマにしていこうか。
T 学習テーマ「人はいつでもわかり合うことは必要なのだろうか。」と黒板に書く。
C 先生、ちなみに○○さんは日記でみんなと違うこと書いていたよ。ぼくも、許せないってなったことはないけど、それと同じで、○○さんは「寝たら全部忘れてしまう」って。
C そうそう。許せなかったことないっていうのがあったね。
C あったあった。

(考察)

子どもたちは導入時、わかり合うことの良さを良好な人間関係のためと捉えていた。そのような現時点での捉えを揺さぶり、考えを深めるために上記の学習テーマを設定した。当たり前のことと思っていたことをあらためて問われ、「いつでもかはわからない。」と発言したことから、深く考えていなかった自己に気付き、これからの学習への意欲を高めていた。
友達の日記の内容に共感し、似た経験を生き生きと語ったり、教師が黒板に提示したもの以外の興味をもった日記について、子どもの側から投げかけがあったりする場面があった。このことから、子どもたちは自分たちの生活につながる事柄や、まだ経験していなくともこれから経験する可能性がある事柄には非常に高い興味関心をもち、自分事として学びを形成していくことが分かった。

教材を読んだ後の感想から問題点に焦点化した後、よし子とえり子の違いについて話をしていく場面。

T この話はみんなの感想でもあったけど、よし子さんとえり子さん両方イライラしているよね。同じように見えるんだけど、先生は大きな違いを見つけた。みんなはわかるかな。よし子さんとえり子さんの違いは何だろう。
C えり子さんはよし子さんに1度謝ろうとしている。
C でも、よし子さんはそれを聞こうとしない。
T そう、話を聞こうとしなくて、えり子さんはイライラしているのに、謝ろうすることができたんだよね。ここわかる?
C わかる。
T お互い、同じようにイライラしているのに。なぜだろう?
C よし子さんはえり子さんが家に帰ってからゲームしたり漫画読んだりしていたと考えたからじゃないかな。
C 勝手に思い込んでいたってこと?
C うん。自分がゲームしていたからとか漫画やっていたかなとか思い込んでいたら、話を聞こうともできなくならない?
T なるほど。
C 事情があったから、えり子さんは謝ることができた。えり子さんにも急にお使いを頼まれたっていう事情があったから遅れたって。
C それでレジが混雑していたこともあったから。
C 事情があったら許せる。事情があったら謝れる。
T ○○さんが言っていること、わかる? そんな感じ?
C うん。
C 事情によるかなあと思っていて、○○が言ったように、ゲームとかだったら許せないけど、急にできた用事とか、仕方ない事情があったら許せる。
C よし子さんはずっと思い込んでいたから。事情がもし、何かいい事して遅れたとかやったら許せるかもしれないけど、でもよし子さんは既に思い込んでしまっているから。だから話すら聞いてくれない。
T ということは思い込み、相手が悪いと思い込んでいるって言うのが問題か。で、自分は悪くないっていう思いが、「相手が悪い」という思い込みにつながるということだね。
T これ、プラスの感情、マイナスの感情?
C マイナスの感情。
T マイナスの感情は黒板に何色で書いておく?
C 青色。
T では、青丸つけとくね。
C えーっと、よし子さんの、「自分からピアノ教室に誘っておいて電話もかけてこないし、広場へも来ないなんて。」って、それは思い込みやなぁ。
T 今、思い込みのことをつないでくれたんだ。
T この中で(日記)思い込んでしまっているなーって話はあるかな?
C ○○ちゃんのがそう。
T これか。友達がびっくりさせたけど相手が悪いと思い込んでいるかもしれへん、ってやつね。
C あーなるほど。友達はほんま仲よくなりたくてやっているかもしれへんけど、でも自分は嫌な気持ちして、相手が悪いって思いこんでいるってことか。
T あぁ、似た経験あるんだ。
T なるほど。よし子さんの気持ちはわかってきたね。では、えり子さんの方はなぜ謝ることができた?
T 特にこの○○さんとか○○さんの書いた日記はえり子さんの思いに近いんじゃない? なんで謝ることできたんだろう。
C また自分が悪いって思っているから謝ろうと思った。
C 自分が悪かったから。
C 自分も悪いかなって思っているから謝れたのかな。
T 自分も悪いと思えているんだ。
C ちゃんと自覚している。
C よし子さんは全部えり子さんの責任にしていたけど、えり子さんはそうしてない。
C 全責任はえり子さんにある。
T よし子さんは、全責任を相手に押し付けたんだ。
C 1番最後によし子さんが、えり子さんの話を聞いてくれたら「あぁそういうことがあったんかって許す感情」が出てくんねんけどそれを聞こうともしないから出てこないねん。
T 聞こうともしないというのも問題なんだ。
C この今の問題さ、○○さんのアイスの話と似てる。この「許せなかった」のことにつながってると思う。このアイス事件は全部お父さんが悪いって思い込んでいるから。
C わかる。
T じゃあ、みんなの生活でも思い込みって結構あるんだね。先生もドッキリとしちゃった。
T でも、思い込んでてもいいんじゃない? 話聞かなくてもいいんじゃない?
C ダメでしょ。あかんでしょ。
T 即答されました。悲しい。何でだろう。
C なんかさ。仲が悪くなってさ、二度と口をきかなくなったりする。
C ぼく、よし子さんの悪いとこばっか頭にあるわ、よし子さんの悪いところめっちゃ感じちゃう。
C ぼくはそこまで悪いと思わへん。
C これまでの話を聞いてたけど、なんだかえり子さんも怒ってる気持ちあるけど、よし子さんとまだ仲よくしたい気持ちもあったから、謝れたんじゃない?
C 確かに。
C 教科書を見てたら、えり子さんの1つだけ悪いところ見つけた。「私から後で電話することにした」って約束したのに、それを守れなかった。
C 勝手に思うだけじゃなくて、相手に言わないといけない。
C なんか後で分かってくれるやろうって思うんじゃなくて、ちゃんと自分で言わないといけない。言わないと伝わらない。
C 話聞こうとしないと仲よくなれないから、やっぱ自分から聞くのも大事っていうことだな。
T 話を聞いたら、必ずわかり合えるの?
C そうとも限らん。
T わかろうとしたら、わかり合える?
T 色々話をしたそうだね。ペアで話をしてみようか。

(ペア活動)

C この人の疑問が解決できなければ、多分わかり合うことはできない。
T では、これは解決できないんだ。
T わかろうとするとわかり合おうとするっていう言葉がここまで出てきてるんだけど、この言葉の意味の違いわかる? わかる、わかり合う、どっちが先?
C わかろうとして、わかり合う。
T あってる?そんな感じ?
C うん。
T わかろうとする。まぁ話を聞こうとするっていうことだね。その後わかり合う。か。他に話をしていた人で何かある?
C わかり合える時はわかり合えて、わかり合えない時はなんかまだ怒ってる感じ。
T わかろうとはできるけど、結果としてわかり合えない時もあるってことだね。例えばわかり合えないことって、どんなこと?
C ここのペアで言ってたんだけど、外国って家に土足であがったりするやん。そんなふうに文化が違ったりしたらわかり合えないかもしれない。
T ああ。文化の違いとかやったら受け入れられないことがあるかもしれないということか。
T 今日から土足で家入っていいよって言われたらどう?
C やったります。
T なるほど、あなたはわかるけど、あなたはわかり合えないってことか。面白い。このクラスの中でもそれぞれあるんだね。
C 剣とか銃を持っていっていいとか。
T それも文化の違いであるね。
C ぼくはわかり合えるけど。
C 前に授業でやった個性みたいなことでも言えるかも。家族の個性っていうか。家族によっては例えば私の家は目玉焼きに醤油かけるけど、友達の家ではマヨネーズみたいな。
C 砂糖大さじ2。
T めっちゃ細かいね。さすが料理家。
T 個性によってもわかりあえないこともあるってこと?
C うん。
C 先に自分が謝ろうとしても、相手が聞かなかったらわかりあえないし、相手に伝わらなかったら意味ない。
C だからまずわかろうとしないと意味がない。
T こういう→ってこと?(板書に矢印を書き込む。)

(考察)

初めは道徳日記や自分たちの経験と教材の話合いをつなぐための働きかけを教師から積極的に行っていた。それらを重ねることで、生活経験とのつながりがあることへの気づきが芽生えている様子があり、子どもからも「今の話は日記の○○と似ている。」という声が上っていた。そのことから、子どもは教材の内容についての話し合いをしつつも自分たちの経験と重ねたり、つなげたりしながら話を進めていた。つまり、教材の話をもとに自己の生き方へ内省的な視点を向けて考えることで、話し合いの内容が自分事となり自己の生き方についての考えを深めることにつながっていた。
子どもたちは、よし子とえり子の違いからわかり合う時に必要な寛容の心や謙虚さ(思いこみをせず、そのためには自分が悪いかもしれないという思いをもつことも大切だということ)について自分たちの経験と重ねながら話をしていた。そして話を進めるうちに、「そもそも話を聞こうとしなければ意味がない。」と発言があったように、自然と主題「わかろうとすること」について考える文脈が生まれていた。

【中心発問】

◎ もし初めから仲よくならなくていいと思う相手とか、この人とは人間関係がよくならなくてもいい、っていう相手だったら、わかろうとしなくていいのではないだろうか?
C いやいや、必要。
C 最初は仲がよくないけど、仲をどんどんよくするために必要。
T あーって言っているけど何に言ってるの?
C 可能性にかけるみたいな。
C 可能性あるのに、挑戦しないのはおかしいやろ、みたいな感じ。
T なんで? わかろうとしたら大親友になるの?
C 大親友とかはならなくてもいいんだけど……。
C もしかしたら話してみたら、気があったりするかもしれへんから外見とかそういうので判断したら仲良しになれるかもしれないのになられへんじゃん。だからダメ。
C ぼくと○○君みたいに「可愛いもの好き」みたいなことが話したらわかるかもしれん。
C やっぱりもっと友達とか増やしたい子もおるだろうし、例えば中野先生とか実習の先生とかと仲よくなるときにやっぱりなんかこの人こうやなぁって分かっていくと仲よくなれる。趣味とか好きなものが合わないとしても、またそこから同じ趣味を見つけていけばいいし、好きじゃなくても体験してみたいとぼくは思う。
C なんかさー、新しい挑戦もできる。
C 仮に好みとかが違うかったとしても、違うものに触れて、新しいことに踏み出せるかもしれへんてこと。可能性広がる。
C そう、それがわかろうとするにつながるってこと。
C やってみたらなんかめっちゃ楽しかったっていうような。友達がハーモニカをやってて、それをやってみたらめっちゃ楽しかったっていうのがぼくもある。
T ○○さんは、その時に、まずわかろうとしたってこと?
C YouTubeとかでも同じのありそう。それをやって挑戦してみようみたいな。
C 流行が広がる。
C やりたいこととか。
C 自分の趣味になって、自分の趣味が広がる。
C 自分の個性が周りに広がる。
C 周りに個性が広がっていく可能性がある。
T みんなでも結局これが人間関係につながるみたいなこと言ってるね。
T でもさっきあったようにわかり合えないことってあるよね。仮に絶対にわかり合えないってとき。その場合はどうする?
C それでもいる!!
C 例えばAくんは中遊びが好きで、B君は外遊びが好きとして、それをわかろうとするんやったら、最初はこの遊びにしよう、その後はこの遊びにしようってどっちの思いも大事にしていってあげるとわかり合えていくんじゃないかな。
C そう。どっちも大事にしたらいい。
C 仮に意見が合わなくてもどっちもしたらいいんじゃん。
C そうそう。
T それは分かった。今のはわかり合える可能性があるかもしれないって思っているパターンでしょ? でも、絶対にわかり合えないって仮にわかってたらわかろうとしなくていいんじゃないの?
C 違う。
C やっぱりわかり合おうと思わなければ友達減っていくんです。そういう感じ。
T 今は自分の周りにあるものがどんどん減っていくって感じかな?わかり合おうとしないと。
C うん。クラスのみんながどんどんこっちに寄っていく感じ。(自分から離れているジェスチャーで表現する。)
C 友達が減るから。自分の個性を変えるんじゃなくて、例えば、さっきのA君が外遊び好きで、B君が中遊び好きの例やけど、それが違うなってなったらどちらかに合わせるのではなくて、また違う遊びを見つけたらいい。
C あぁ。三つ目の。
T 個性は変えなくていい。つまり合わせなくても良いってこと?
C そう。
C 一個から二個、二個から三個、三個から四個、にしたらいいねん。
T なんだかかっこいい名言ができたな。
C 名言かざろう。
T 「なかったら作るねん。」 by 5年1組。
T 一から二個、二個から三個にしてあげるってことね。
T じゃあ、最後テーマについてペアで話をして終わろうか。

(ペアでテーマ「いつでもわかり合うことは必要か。」について話す。

(考察)

中心発問として「もし初めから仲よくならなくていいと思う相手や、この人と人間関係はよくならなくていいという相手だったらわかろうとしなくていいのではないだろうか?」と投げかけた。これは、子どもたちの「わかろうとすることが大切だ」という価値観に対して別の状況設定を比較材料として出すことで、価値観を揺さぶり、わかろうとすること(相互理解)について深く考え直すことを意図したものである。子どもたちは、「わかろうとしなくても良いことも認められるような状況であっても、わかろうとすることが大切だ」と言い切り、その理由を一生懸命自分たちなりの言葉で表現していた。結果として下線部のように主題に設定した「わかろうとすることの意味」を自分たちで見出すことにつながっていた。

6.板書例

7.授業への工夫など

(1)教材の問題を自分事として考えるために、事前に教材に似た場面を道徳日記に書く工夫
 教材内での話し合いを自分事として考えていくことができれば、より実生活に結び付いた学びになり、生き方について考えを深めていくことにつながる。しかし、子どもたちの中には、教材から具体的な経験を想起できない子どもがいる。結果、どうしても抽象的な話し合いに終始してしまう場合がある。そうすると教材から離れて自己を見つめ考えることができない。そこで、事前に道徳日記として、相手をわかろうとすることができなかった経験を書く活動を設定する。また、友達が書いた日記の内容を事前に共有しておく。そうすることで、教材に出合ったときに具体的な場面が想起され、教材の内容を自分事として考え、主体的に話し合っていく手がかりにしたい。

(2)価値理解を深めるため、子どもたちが想起した具体的場面である個別の状況下を展開内で問う工夫
 道徳的価値の捉え方は、立場や状況により変わることがある。このことから、教材内の一事例のみで考えるよりも、いろいろな状況下で考える方が、様々な見方で道徳的価値を捉えることができるため、価値理解が深まる。事前に日記に書かれた子どもたちの経験は教材とは異なる様々な状況が描かれている。教材内の出来事から主題に関わる話し合いをする際に、導入で活用した子どもの道徳日記を数枚掲示し、比較しながら違いを問うていくことで、価値理解が深まる対話ができるようにした。
 これは、導入と展開を自分事での学びでつなぐ一つの手立てとなり得ると考える。

8.考察

本実践は自分事の学びをデザインしていくために、道徳日記を活用した。教材と似た場面を授業前に個人で想起したこと、また友達の日記内容を共有しておくことで授業内の話し合いの際には日記内容と教材の話し合いを結びつけることができていた。それは授業内の子どもの発言と主体的に話し合いに参加する姿から見取ることができた。また、道徳科の授業では、道徳的価値に関する話し合い(意義や意味)になればなるほど話が抽象化する傾向になり、話し合いが噛み合わなくなることが課題としてある。今回の手立てに用いた道徳日記では、[相互理解、寛容]に関わる具体的な場面を多数共有していたことで、抽象的な話し合いの際の理解の助けになっていた。
今回は授業内の話し合いと自分たちの経験を往還させる実践として、道徳日記を用いた初めての試みであった。そのため、教師から「今の話し合いはみんなの日記と重なることがある?」などといった働きかけを多く行った。授業内で次第に子どもから日記の内容とつなぐ場面も出ていたものの、中心発問以降は日記内容とつなぐ姿は見られなかった。これは子どもたちの中に学び方として積み上がっていないことが理由として挙げられる。継続的に手立てとして取り入れることで、子どもたちは教材での話し合いを生活経験と結びつける学び方を学んでいくだろう。そして次第に「道徳科の学びは自分たちの生き方につながっているのだ。」と実感し、道徳科を学ぶ意義を高く感じる子どもたちの姿につながっていくだろう。今後もこの取り組みを継続していきたい。

「青の洞門」(第6学年)

1.主題名

心が心を動かす D[感動、畏敬の念]

2.教材名

青の洞門(東京書籍)

3.主題設定の理由

(1)ねらいとする価値について
 人は、相手が精一杯取り組む場面や自分の可能性に挑戦する姿を見た時に心を打たれることがある。また相手を思いやる心や優しさに触れた時、素直に感動する心をもっている。
 高学年になると、人間の力を超えるようなことに挑戦する姿勢や人の心の美しさに目を向けられるようになる。人の心や行為の素晴らしさを素直に受け止め、尊敬や畏敬の念を深めることで、自分の在り方を見つめるきっかけとなる。
 今回の学習を通して人のために尽くす心や姿に、素直に感動したり尊敬したりする心を育てたい。さらに自分の在り方を考える機会としたい。

(2)児童の実態について
 「手品師」の学習では、「どんなにうれしい話でも最初の約束を守った主人公を見て、自分も最初の約束を大切にしていきたいと思った。」と人の心がもつ誠実さに気づき、自分の生活と結び付けて考える姿が見られた。また、「主人公が男の子を優先することが優しくて、すごいと思った。」という記述が多く見られた。他の道徳の授業でも、登場人物の心の優しさや思いやりに目を向けて考える児童が多い。
 今回の学習を通して、人のために尽くす心に加えて、人の力では達成が難しいと感じる目標にも立ち向かう気持ちや最後まで諦めない心などの、人間がもっている様々な心に触れさせたい。そして、その思いが偉業を成し遂げることに繋がり、人の心を大きく動かすことがあることに気づかせたい。

(3)教材について
 菊池寛の「恩讐の彼方に」を原作とする教材である。罪を償う旅をしていた了海は、多くの人が命を落とさないように絶壁に道を通すことを目指す。そこに了海が殺した主人の息子、実之助が敵討ちに来る。しかし石工達に止められる。実之助は隙を狙って了海の命を狙うが、一心に槌ふるう了海の姿を見て完成まで敵討ちを待つ決心をする。1年以上かけて完成した時、実之助は了海の手を握りしめ、二人は感激の涙にむせびあう。
 21年の歳月を、道を通すために費やす了海の気高い心に触れ、復讐心を忘れて感激する実之助の気持ちを考えることを通して、人の心や姿に素直に感動する心を育てたい。

4.研究主題~確かな学力を培い、たくましく生きる力を育む道徳授業の創造~との関連

(1)教材を理解しやすくするための取り組み
 教材の時代背景を先に説明して登場人物の関係を理解することで、心情を考えやすくする。また、出てくる言葉の意味を確認したり、道具の実物を示したりして教材理解の一助としたい。教材提示はBGMを用いながら語り聞かせることで、教材の世界に浸れるようにする。

(2)児童の発言を生かす
 児童の発言を予想して、あらかじめ価値項目に合わせた分類を考えておく。児童の思考が深まるように補助発問を用意して、ねらいに迫れるようにする。また、板書計画に児童の発言を記録しながら整理して、児童が理解しやすい板書を目指す。

(3)自己を見つめる時間
 感動した経験を振り返りやすくするために、ワークシートの発問に登場人物の「実之助のように」という言葉を入れて、児童が今日の授業を思い出しながら、自分の経験を記入できるように工夫した。また、感動した時の心情を「心がじーんとした」という言葉でも表現することで、児童が経験した心の動きを感じられるようにした。
 【ふり返り】の4項目は毎時間同じ内容で、児童に授業の振り返りをさせている。書くことが苦手な児童もこの欄は記入することができている。さらに、授業によって児童が描く顔の表情が変わるため、教師自身が授業を振り返るときにも生かすことができている。

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※本実践は、町田市内小学校在籍時、同市の道徳教育研究会における研究をベースに取り組んだものである。

5.教材分析

場面

登場人物の心情
<考えられる発問> ・予想される児童の反応

関連する価値

①1~14行目
了海が山国川を訪れ、水死人に念仏を唱える。

村人
可哀そうだ。成仏してほしい。
了海
年に何人も亡くなる鎖渡しを何とかしたい。

D[生命の尊さ]

②15~32行目
了海が鎖渡しを通る。そして大絶壁に道を通す決心をする。

了海
鎖渡しで命を落とす人を救いたい。人の役に立ちたい。ようやく自分が追い求め続けていたものを見つけた。

D[生命の尊さ]
B[親切、思いやり]
A[希望と勇気、努力と強い意志]

③33~35行目
了海は道を作るため寄付を求めて、村を歩き回る。

了海
道を作るために力を貸してほしい。
村人
道を作ることは不可能だ。無理な計画だ。

D[生命の尊さ]
B[親切、思いやり]
A[希望と勇気、努力と強い意志]

④36~39行目
了海は岩壁に第一の槌を振るった。

了海
少ししか進まない。この計画は無理かもしれない。でも諦めるわけにはいかない。

A[希望と勇気、努力と強い意志]

⑤40~48行目
主人殺しの大罪を犯した了海が僧となり、諸国を巡り歩く。

了海
自分が犯した罪を少しでも償いたい。世のため、人のために力を尽くしたい。自分にできることは何だろうか。そのために旅をして探し続けよう。

D[生命の尊さ]
B[親切、思いやり]

⑥49~53行目
了海は岩壁の側に小屋を建て、槌を振るい続ける。村人は寄り付かなかった。

了海
毎日少しずつでも取り組んでいくぞ。いつか道を通すことができるだろう。
村人
絶対に無理だ。関わりたくない。

D[生命の尊さ]
A[希望と勇気、努力と強い意志]

⑦54~61行目
了海は15mほど掘り進め、村人は石工を雇った。

了海
少しずつだが進んできた。いつか道ができると信じて、続けるぞ。
村人
道ができるかもしれない。手伝おう。

D[生命の尊さ]
B[親切、思いやり]
A[希望と勇気、努力と強い意志]

⑧62~64行目
石工はいなくなり、了海だけが掘り続ける。

了海
自分は諦めないぞ。人の役に立ちたい。
村人
やっぱり無理だ。手伝うのをやめよう。

D[生命の尊さ]
B[親切、思いやり]
A[希望と勇気、努力と強い意志]

⑨65~74行目
18年もの間、了海は槌を振り続けて半分まで進んだ。村人は再び石工を集めた。

了海
半分までできたぞ。先は長いが頑張るぞ。
村人
一人で半分も進めた了海はすごい。この前は辞めてしまって申し訳なかった。手伝おう。

D[生命の尊さ]
B[親切、思いやり]
A[希望と勇気、努力と強い意志]

⑩75~85行目
了海が殺した主人の息子、実之助がやってくる。実之助は敵討ちの旅の苦労が報われる時を迎える。

実之助
ようやく了海に会える時がきた。岩壁を掘り続けるような奴はきっと強いだろう。負けられないから、しっかり準備をしよう。

D[生命の尊さ]
C[家族愛、家庭生活の充実]

⑪85~96行目
実之助は人間とは思えない姿をしている了海に会い、張り詰めていた気持ちが怯む。しかし敵を討つ宣言をする。

実之助
このような弱々しい人を殺して良いのだろうか。しかし父を殺された悔しさは忘れられない。中川家の将来がかかっているから殺す。

<発問①>
「父のかたき、かくご!」と言った時、実之助はどのような気持ちだったのでしょう。
・ようやくこの日がきた。これで父の思いを晴らすことができる。
・よくも父を殺したな。やっと敵を討てる。
・お前のせいで、中川家がなくなったのだ。許せない。絶対に殺してやる。

D[生命の尊さ]
C[家族愛、家庭生活の充実]

⑫97~100行目
了海は殺される覚悟を決めた。

了海
道を通したかった。自分が罪を犯したから、ここで切られるのだ。仕方がない。

D[生命の尊さ]

⑬100~106行目
石工達が了海を殺すのをとめる。実之助は仕方なく引き下がる。

石工
了海に最後まで完成させてほしい。
実之助
気持ちが揺らいでしまったことが悔しい。隙をみて了海を殺すぞ。

D[生命の尊さ]
C[家族愛、家庭生活の充実]

⑭107~124行目
数日後の夜更け、実之助は敵討ちに向かう。しかし了海が振るう槌の音と念仏の声に決心が打ち砕かれる。。

了海
絶対に道を通すぞ。自分はどうなってもいい。世のため、人のために尽くすのだ。
実之助
どうしてそんなに続けられるのか。一心に槌を振るう姿がすごい。今、殺してはいけない。

<発問②>
槌を振るい続ける了海の姿を見た実之助はどのようなことを考えたのだろう。
・了海が精一杯槌を振るう姿がすごすぎる。道を通そうとする強い思いが伝わる。
・殺してはいけない気がしてきた。
・でも父の敵は討たないといけない。

D[生命の尊さ]
B[親切、思いやり]
A[希望と勇気、努力と強い意志]

⑮125~131行目
実之助も石工達に交じって働き始める。了海と実之助が並んで槌を振るう。

了海
道を完成させたい。絶対に成し遂げる。
実之助
1日も早く完成させて、敵を討つぞ。

D[生命の尊さ]
B[親切、思いやり]
A[希望と勇気、努力と強い意志]

⑯132~141行目
了海が槌を振るった時、小さな穴から山国川の流れが見えた。了海から泣き笑いが起こる。

了海
ようやく山国川の流れが見えた。自分の願いが叶った。何年もかかったが、成し遂げられて本当に嬉しい。諦めなくて良かった。

D[生命の尊さ]
A[希望と勇気、努力と強い意志]

⑰142~146行目
了海は実之助に山国川の流れを見せた。二人は手を取り合って喜びの涙にむせんだ。

実之助
山国川が見える。夢みたいだ。
二人
21年間も続けてきて、本当に大変だったが、やりがいがあった。できないと思っていたことが達成できて嬉しい。

A[希望と勇気、努力と強い意志]

⑱147~151行目
了海は実之助に自分を切るように伝える。

了海
このような願いを達成できた日に死ぬなら幸せだ。敵として自分を切ってほしい。

D[生命の尊さ]

⑲152~166行目
実之助は復讐心よりも偉大な事業に対する驚きと感激で胸がいっぱいになる。再び了海の手を取り、感激の涙にむせびあう。

実之助
このようなことが、人の手で達成されたことが凄すぎる。父の敵よりも、今は道が完成した喜びを一緒に分かち合いたい。

<中心発問>
再び了海の手を取り、固く握りしめているとき、実之助はどのようなことを考えていたのだろう。
・長い時間をかけて、続けてきたことに感動した。
・了海の手でこのような大きなこと成し遂げられたことがすごい。
・父の敵を討つことよりも、一緒に取り組んで道が通った喜びを分かち合いたい。

D[生命の尊さ]
B[親切、思いやり]
A[希望と勇気、努力と強い意志]

6.本時の学習

(1)ねらい
 実之助が、了海の長い年月をかけて道を通した姿を見て、復讐する気持ちを超えて心を動かされたときの思いを考えることを通して、人の心や姿に素直に感動する心情を育てる。

(2)展開の計画

学習活動
○主な発問 ◎中心発問 ・予想される反応

◇指導上の留意点 ●評価


1 実之助の立場を説明して、教材への導入を図る。
○実之助の父が了海に殺されたことについて
○江戸時代の敵討ちについて
○青の洞門と洞門を掘るための道具について

◇登場人物の関係や時代背景を簡単に説明する。
◇青の洞門の写真と槌とのみの実物を見せる。


2 教材「青の洞門」を読み、話し合う。
○「父のかたき、かくご!」と言った時、実之助はどのような気持ちだったのでしょう。
・ようやくこの日がきた。これで父の思いを晴らすことができる。
・よくも父を殺したな。やっと敵を討てる。
・お前のせいで、中川家がなくなった。許せない。絶対に殺してやる。

◇BGMを用いた語り聞かせを行う。

○槌を振るい続ける了海の姿を見た実之助はどのようなことを考えたのだろう。
・了海が精一杯槌を振るう姿がすごすぎる。道を通そうとする強い思いが伝わる。【D感動、畏敬の念】
・殺してはいけない気がしてきた。【D生命の尊さ】
・でも父の敵は討たないといけない。【葛藤】

◇槌とのみを振るう姿を教師が動作化する。
◇了海のどのような姿に実之助の決心が揺らいだのか、また実之助の敵討ちに対する葛藤を考えられるように、必要に応じて補助発問をする。

◎再び了海の手を取り、固く握りしめているとき、実之助はどのようなことを考えていたのだろう。
・長い時間をかけて道を作り続け、成し遂げたことに感動した。【A希望と勇気、努力と強い意志】
・父の敵を討つことよりも、今は喜びを分かち合いたい。このような偉業を成し遂げた了海には生きてほしい。【D生命の尊さ】
・了海の手で、このような大きなことを成し遂げられたことがすごい。【D感動、畏敬の念】

◇隣同士で話し合う時間を設けて、自分の考えを整理する時間をとる。(3分程度)
●了海の思いや姿を見た実之助の復讐する気持ちを超えて心を動かされたときの思いについて、考えを広げたり深めたりしている学習状況を把握する。【観察、記録】

3 人の心や姿に感動した経験を振り返る。
○実之助のように人の心や姿から、心がじーんとしたり、感動したりしたことはありますか。
・テレビで、治らない病気と言われていても治そうとお医者さんや看護師さんが頑張っていて感動した。
・スポーツ選手が頑張って、成果を出している姿を見てすごいと思った。自分も諦めそうになった時に、そのことを思い出して頑張れた。

◇ワークシートを活用する。
●自分との関わりの中で、人の心や姿に素直に感動した経験について振り返り、考えを深めている学習状況を把握する。【ワークシート、記録】


4 教師の説話を聞きながら、本時の学習を振り返る。

◇教師が人の心や姿勢に感動した経験を話す。

(3)1組の児童の反応

学習活動
○主な発問 ◎中心発問 ・予想される反応

◇指導上の留意点 ●評価


1 実之助の立場を説明して、教材への導入を図る。
○実之助の父が了海に殺されたことについて
○江戸時代の敵討ちについて
○青の洞門と洞門を掘るための道具について

◇登場人物の関係や時代背景を簡単に説明する。
◇青の洞門の写真と槌とのみの実物を見せる。


2 教材「青の洞門」を読み、話し合う。
○「父のかたき、かくご!」と言った時、実之助はどのような気持ちだったのでしょう。
・やっと敵を討てる。殺してやる!
・探し続けた人にようやく会えた。
・悲しみや憎しみ、恨みの気持ちがある。

◇BGMを用いた語り聞かせを行う。(教科書は見ずに)
◇実之助の悲しみや了海に対する憎しみなどを考え、人間理解に繋げる。

○槌を振るい続ける了海の姿を見た実之助はどのようなことを考えたのだろう。
・年をとっているのに掘っていることがすごい。
・ずっと掘っているから、ごめんなさいという気持ちが伝わる。
・手伝って完成したら殺そう。

◇槌とのみを振るう姿を教師が動作化する。
◇了海のどのような姿に実之助の決心が揺らいだのか、また実之助の敵討ちに対する葛藤を考えられるように、必要に応じて補助発問をする。

◎再び喜びを分かち合いながら了海の手を取り、固く握りしめているとき、実之助はどのようなことを考えていたのだろう。
・よくやった。
・一生懸命村のためにしてきたことがすごい。
・許そう。
・二人の気持ちが打ちとけた。「道を通すぞ」という目標を達成した気持ち。

◇隣同士で話し合う時間を設けて、自分の考えを整理する時間をとる。(3分程度)
●了海の思いや姿を見た実之助の復讐する気持ちを超えて心を動かされたときの思いについて、考えを広げたり深めたりしている学習状況を把握する。【観察、記録】

3 人の心や姿に感動した経験を振り返る。
○実之助のように人の心や姿から、心がじーんとしたり、感動したりしたことはありますか。
・夢のために頑張っている人。
・人と人とのつながり。人の心の強さ。
・応援したくなるような人。

◇ワークシートを活用する。
●自分との関わりの中で、人の心や姿に素直に感動した経験について振り返り、考えを深めている学習状況を把握する。【ワークシート、記録】


4 教師の説話を聞きながら、本時の学習を振り返る。

◇教師が人の心や姿勢に感動した経験を話す。

(4)2組の児童の反応

学習活動
○主な発問 ◎中心発問 ・予想される反応

◇指導上の留意点 ●評価


1 実之助の立場を説明して、教材への導入を図る。
○実之助の父が了海に殺されたことについて
○江戸時代の敵討ちについて
○青の洞門と洞門を掘るための道具について

◇登場人物の関係や時代背景を簡単に説明する。
◇青の洞門の写真と槌とのみの実物を見せる。


2 教材「青の洞門」を読み、話し合う。
○実之助が「父のかたき、かくご!」と言った時、どのような思いが込められていたのでしょう。
・やっと敵が討てる。これで心が楽になるかも。お父さんの敵が晴らせる。
・これで中川家が復活するかもしれない。

◇BGMを用いた語り聞かせを行う。(教科書を見ながら)
◇実之助の悲しみや了海に対する憎しみなどを考え、人間理解に繋げる。

○槌を振るい続ける了海の姿を見た実之助はどのようなことを考えたのだろう。
・何でここまでやるのだろう。頑張れるのだろう。
・それは了海のためになるのだろうか。
・反省している気持ちが伝わる。
T「父のかたき、かくご!」と言った時の気持ちはなくなっている?
・忘れてはいない。でも苦労している気持ちは分かる。

◇槌とのみを振るう姿を教師が動作化する。
◇了海のどのような姿に実之助の決心が揺らいだのか、また実之助の敵討ちに対する葛藤を考えられるように、必要に応じて補助発問をする。

◎再び了海の手を取り、固く握りしめているとき、実之助はどのようなことを考えていたのだろう。
・やっとここまできた。
・21年間もの間続けてきたことがすごい。
・やったー!一緒に作ったことに対する思い。
・殺さなくてよかった。
T実之助の思いを変えたのはどんな心?
・了海の頑張り。真意。みんなのために取り組む気持ち。

◇隣同士で話し合う時間を設けて、自分の考えを整理する時間をとる。(3分程度)
●了海の思いや姿を見た実之助の復讐する気持ちを超えて心を動かされたときの思いについて、考えを広げたり深めたりしている学習状況を把握する。【観察、記録】

3 人の心や姿に感動した経験を振り返る。
○実之助のようにだれかの人の心や姿から、心が温かくなったり、「すごいな」と感動したりしたことはありますか。
・一生懸命に取り組んでいる人がすごい。
・失敗しても諦めない人がすごいと思う。自分も頑張ろうと思う。

◇ワークシートを活用する。
●自分との関わりの中で、人の心や姿に素直に感動した経験について振り返り、考えを深めている学習状況を把握する。【ワークシート、記録】


4 教師の説話を聞きながら、本時の学習を振り返る。

◇教師が人の心や姿勢に感動した経験を話す。

(5)板書計画

<参考>
○事前におさえたい内容

実之助の父が了海に殺されたことについて
主人殺しの罪

江戸時代では、親殺し以上の凶悪な犯罪であった。のこぎり引きの上、磔の刑となる。また殺された家も家事不取締(自分の家の名を汚した)として、所領が没収される。つまり家が亡くなることになる。中川家が亡くなった実之介は縁者(親戚)に育てられた。

江戸時代の敵討ちについて
敵討ち

原作は「恩讐の彼方に」という題名で、恩讐には「情けや恩と恨み」という意味がある。原作では仇討ちという表現を用いていて、親を殺した者を打ち取ることで、家の汚名を返上したことになる。敵討ちには一家再興(再構)の期待が込められている。

青の洞門と洞門を掘るための道具について
槌とのみ

人の手で成し遂げられた偉業だと感じさせるために、実物を示し、音を聞かせる。太いのみを用いると、良い音が出る。

理解が難しいと考えられる言葉
むせぶ

息を詰まらせて泣くこと。今回は喜びや感動で胸がいっぱいになって涙する。

敵討ち

人物の関係と江戸時代の背景を説明する時に伝える。

「すれちがい」(第5学年)

1.はじめに

 本教材を通して、友達と意見を交流し合い、その共通する思いや違いを理解することから、自分本位な考えのままでは問題は解決しないことに気づかせることが重要である。相手の立場や意見を尊重することのよさを十分に感じ取り、謙虚で広い心をもって相手に接していくことの意味を捉えさせたい。
 よって、本時の学習活動において、児童がいかに自分のもつ価値観を広げることができたか、その気付きや学びを道徳ノートに記し、確かな学びとしていくことが大切である。道徳ノートの在り方や板書において、ねらいに向けた児童の思考の整理をしっかりと行うことが求められる。

2.教材について

 自分と異なる立場や意見に対して、謙虚で広い心をもつことの大切さを感得させる学習である。自分と異なる立場や意見に対してどのように考えることが豊かな人間関係の構築につながるか、児童一人一人が自分との関わりの中で理解していくことが必要である。

3.実践報告

(1)主題名

相手の立場もたいせつに B[相互理解、寛容]

(2)教材名

「すれちがい」(出典:日本文教出版 令和2年度版『小学道徳 生きる力5』)
※参考:pp.140-141「すれちがい 学習の手引き」

(3)本時のねらい

 よし子とえり子のすれちがいの原因や、お互いを理解するために大切な気持ちを考えることから、自分と異なる意見や立場を尊重しようとする態度を養う。

(4)展開例

学習活動
(○主な発問 ・予想される児童の反応)

◇指導上の留意点 ☆評価


1 日常生活での身近なトラブルについて話し合う。
○相手をなかなか許せず、嫌な気持ちになったことはありませんか。
・ある。約束をすっぽかされて、開き直ってしまった。今でも嫌な思い出として覚えている。
・ある。相手が悪かったのに仲直りのために自分から声を掛けた。複雑な思いだった。

◇相手の気持ちについて考えさせることで、ねらいとする指導内容への意識を高めさせる。



(前段)

2 教材を読んで考え、話し合う。
○よし子とえり子が、もとのように仲よくするには、どのような思いを大切にしていけばよいでしょう。よし子、えり子のどちらかの立場を選んで、自分なりの解決の方法を考えましょう。

◇道徳ノートを活用し、自分の意見をじっくりと整理するとともに友達の考えのよさについても捉えさせる。

よし子
・まずはえり子の話を聞いてあげる。
・あやまろうとしているえり子の気持ちを受け止める。
・一度約束を破ったとしても許してあげる。
・約束は全部自分で決めるのではなく、相手の立場を考えてから決める。
えり子
・スーパーでのことなど、まずは事情をよし子に話す。
・伝言メッセージを残せばよかった。
・事情があったことが伝わるまで、時間をかけてよし子に話をしていく。
・もしものことを考えて事前に約束をしておく。

◇児童によし子、えり子のどちらかの立場を選択させることで主体的に自分の考えをもたせる。

○「よし子」の立場で考えた人どうし、「えり子」の立場で考えた人どうしで意見を交流しましょう。

◇似ている意見や異なる意見、新たに気づかされたことなど、話し合う視点をもたせ、友達の意見から自分の意見をより深めさせる。

○次に、「よし子」の立場と「えり子」の立場で意見を交流しましょう。

◇事情があったとはいえ、相手の立場を考えていなかった二人の考えに気づかせる。

○わかっていても、相手の立場を大切にできないことがあります。それをのりこえて、たがいにわかり合うためには、どんな考え方が大切なのか、学級全体で話し合いましょう。

◇単なる方法論の話し合いに終始するのではなく、すれちがいや過ちは誰にでもあるもので、どのような心でいることが大切なのかを考えさせる。

・冷静に考えて、いま、何が問題なのかを考えることが必要。
・お互いに、相手の立場になって、相手の気持ちを理解していくことが大切。
・気持ちを切りかえて考えてみる。
・深呼吸をし、時間をおいて冷静になってよく考えてみる。

☆相手の立場を考えられる広い心をもつことの大切さを考えているか。(発言・道徳ノート)



(後段)

3 自分の生活を振り返る。
○広い心で相手の立場を大切にすることについて、自分なりの考えや思いをまとめましょう。

◇ふだんの生活や過去の経験を振り返り、これからの自分の生き方についてじっくり考えさせるようにする。

・感情的にならずに冷静に相手の気持ちを考えてやりとりを行っていくことが大切である。
・相手の悪いところばかりに注目するのではなく、相手がもつ良いところにも注目し、一緒に生活していくことを大切にしていく。
・言葉で気持ちを伝え合っていく。

☆自分と異なる人の意見や立場を受け入れようと、ふだんの生活を振り返り考えているか。(発言・道徳ノート)


4 教師の話を聞く。
○みなさんの思いを大切にして、これから出会う人々との関わりをよりよいものにしていきましょう。

◇導入に戻りながら、相手の立場を理解し尊重する姿勢をもつことが、自分たちの生活をより高めていくことについて語る。

4.板書例

5.考察

(1)導入時において、「相手を許せなかった経験」について問うが、児童自身が本時の課題を自分ごととして捉えられるように、事前にアンケートを取って児童の経験を把握するなどの工夫を行うとよい。
(2)学習の手引き 「問題をつかもう」において、課題の提示をしっかりと行うことで、本時の学習活動を確実に進行させることができる。
(3)学習の手引き 「問題について話し合おう」において、「よし子」の立場で考えた人どうし、「えり子」の立場で考えた人どうしで意見の交流をする際には、友達の意見を書き留めたいという児童もいた。道徳ノートにメモ書きをさせたいところであったが、先に自分の考えを書いており記入する場所に余裕がない場合があり、事前にメモ用紙等を用意しておく必要があった。道徳の授業では、書くことによって深く自分を見つめことができるので、日頃の授業でノートのまとめ方等をしっかり指導することが大切であると再認識した。
(4)それぞれの立場で考え意見を発表させる際には、より感情移入させるために「よし子」と「えり子」の顔のイラスト画を持って意見を述べさせるとよい。
(5)板書は、右から左へと記入していくだけではなく、二人の立場を黒板の左右に分けて書いていく対照的な板書の在り方なども有効である。
(6)この教材のように、様々な考えを交流し合いながら、自分の考えをじっくり整理させる必要がある場合、本時のねらいに即した詩・言葉・歌の紹介を行うなど、余韻を残す終末を設定するのもよい。
(7)児童自身が、友達との交流活動によって価値観を広げることができたと認識することも、本時では大事な他者理解であると考える。授業の最後に、道徳ノートの自己評価欄において、そのことを価値づけながら振り返らせるとよい。

6.まとめ

 本実践において、単なる方法論の話し合いに終始せず、相手の立場を考えられる広い心の大切さを考えることができるようにするためには、教師が、児童の等身大の意見を受容しつつ、問い返しを行ったり適切に判断を加えた意見を提案したりしながら、多様な他者との共存の在り方について考えられるようにしていくことが求められる。また、多様である「広い心」そのものの在り方を、児童とともに検討することも必要になるかもしれない。児童の発達段階に即し、建設的な学習活動を設定していく大切さを改めて感じた教材であった。

※本実践は前任校での取り組みをまとめたものである。

「やめろよ」(第1学年)

1.はじめに

 道徳が特別の教科として出発して5年が経過した。教科化には、道徳授業の質的改善だけでなく、いじめなどの問題に対応できる児童の資質・能力を育むことも期待され、それをねらいとした教材も多く開発されてきている。道徳の授業では、このような教材を通して、人間の強さや弱さを見つめ、自分ごととして理解し、児童がよりよく生きるための力を養っていくことが求められている。
 本教材も、いじめを題材にした教材である。「いじわるはよくないことです。」と児童に模範解答を求めるような授業にならないように、教材にしっかりと自我関与し、自分ごととして生活を振り返ることができるような発問を工夫することが大切である。また、友達の思いや考えに耳を傾けながら自分の考えをつなげ、さらに深めていくことを目指した授業を構想しなければならない。

2.教材について

 ぽんたたちは学校の帰り道で、ぴょんこに意地悪をするこんきちと会う。注意をしようか悩みながらも、ぽんたたちは一度通り過ぎようとする。しかし、ぴょんこが泣き出しても意地悪を続けるこんきちに、ぽんたは勇気を出して「やめろよ。」と言うことができた。
 正しいことをすることに悩むぽんたに自我関与しながら、人の心の弱さにも触れ、どんなときも正しいことを進んで行おうとする態度を養う。

3.実践報告

(1)主題名

正しいことを、ゆうきを出して A[善悪の判断、自律、自由と責任]

(2)教材名

「やめろよ」
(出典:日本文教出版 令和2年度版『しょうがくどうとく いきるちから1』)

(3)本時のねらい

 ぽんたの行動や心情を通し、正しいと思うことができたときとできなかったときの気持ちを理解し、正しいと思うことをすすんで行おうとする態度を養う。

(4)展開例

学習活動
(○主な発問 ・予想される児童の反応)

◇指導上の留意点 ☆評価


1 ねらいとする価値への導入を図る。
○意地悪とは、どんなことですか。
・たたく ・悪口 ・仲間外れ
・友達が嫌がること
○意地悪をしている人を見ると、どんな気持ちになりますか。
・いやだな。 ・悲しい。
・やめてほしい……。
・やめさせなきゃ。

◇意地悪について考えることで、ねらいとする価値への導入を図る。
◇個別の児童の名前が挙がらないように配慮し、一般的な問題として捉えさせる。



(前段)

2 教材を読んで考え、話し合う。
○ぽんたがそのまま通り過ぎようとしたのは、どんな気持ちからでしょう。
・やり返されることが怖い。
・自分が意地悪されるようになるかも……。
・ぴょんこみたいになりたくない。
・関わりたくない。

◇場面絵を提示して、登場人物を確認できるようにする。
◇いけないことだとわかっているうえで、ぽんたの関わりたくないという気持ちに気付き、人間の心の弱さについて理解する。

◎どんな考えから、ぽんたは「いじわるは、やめろよ。」と言えたのでしょう。
・これ以上、見ていられない。
・こんきち、ひどい。ぴょんこを助けたい。
・怖いけど、やめさせなきゃ。
・逃げるのは、格好悪い。
・そんな自分になりたくない。
・勇気を出して、言おう。

◇どんな考えから、「やめろよ。」と言えたのか、児童の意見をつなげたり、問い返したりして、多面的・多角的に考えを深められるよう工夫する。

○「やめろよ。」と言えたとき、ぽんたはどんな気持ちになったでしょう。
・怖かったけど、言えてよかった。
・言えてすっきりした。
・ぴょんこを助けられてよかった。
・言えた自分が嬉しい。

◇役割演技をしながら、「やめろよ。」と言えたときのぽんたの心情から、正しいことができたときの気持ちについて考える。また、言えたときだけでなく、言えなかったときの気持ちについても迫る。
☆正しいと思うことを行うことのよさについて、自我関与しながら考えている。【発言】



(後段)

3 自分を振り返る。
○正しいと思うことができたとき、どんな気持ちになりますか。
・気持ちがいい。
・すっきりする。
・できなかったら、ずっと気になる。
・できた方が、自分のためにもなる。

◇本時の学習を振り返り、道徳ノートに自分ごととして考えたことをまとめ、学びを確かなものにする。
☆よいことや正しいと思うことができたときのよさについて、経験から考えようとしているか。【発言・道徳ノート】


4 教師の説話を聞く。

○正しいことを行うことのよさについて、説話をする。

4.授業記録

【導入】

T 意地悪って、どんなことですか。
C 暴力。
C 悪口。
C 相手が嫌がること。
T では、意地悪している人を見ると、どんな気持ちになりますか。
C いやな気持ち。
C やめさせる。

(考察)
いじめや意地悪は、当たり前のようにいけないことで、いやな気持ちになったり、止めようとしたりすることが一般的であることを確認する。

【展開前段】

T ぽんたがそのまま通り過ぎようとしたのは、どんな気持ちからでしょう。
C 注意したいけど、怖い。
C やり返されたら、どうしよう。
C 自分が意地悪されるようになるかもしれない。
C 巻き込まれたくない。
C 誰かが、止めてくれるかな。

(考察)
やめさせることが正しいことだと分かりながらも、できない人の心の弱さにしっかりと触れさせたい。すぐに言えなかったことについて、その理由について自我関与させながら考える。

T どんな考えから、ぽんたは「いじわるは、やめろよ。」と言えたのでしょう。(中心発問)
C 泣くまでやるなんて、ひどい。
C やりすぎ……。
C 怖いけど、助けたい。
C 怖いけど、やめさせなきゃ。
C 逃げるのは、意地悪しているのと一緒。
C そんな自分になりたくない。
C 勇気を出して、言おう。

(考察)
正しいことを行うことが、周りの人だけでなく、自分としてもどういう意味があるのか、多角的に捉えさせたい。また、通り過ぎようとしていたとき、どのように考えが変容したのか、児童の発言をつなげながら、深めさせる。

T 「やめろよ。」と言えたとき、ぽんたはどんな気持ちになったでしょう。
C 助けられてよかった。
C (できて、言えて)すっきりした。
C 言えなかったら、後悔する。
C (言えないと)格好悪い。
C 自信がついたから、今度はすぐ言える。

(考察)
「やめろよ。」と言えたときの心情に触れ、正しいことを進んで行えたときの気持ちを問い、正しいことができたときの喜びやよさを確認し、後段の自己への振り返りにつなげた。

【展開後段】

T 正しいと思うことができたとき、どんな気持ちになりますか。
C 気持ちがいい。
C すっきりする。
C できなかったら、ずっと気になる。
C できた方が、自分のためにもなる。
C 自信をもって行動できる。

(考察)
生活経験が少ない低学年において、後段の自己への振り返りは課題の一つである。一学期から意識をもって関連する場面を取り上げて考えることを通して、後段での発問に関する経験が思いつかない児童には、「あのときは、どうだったかな。」と、学級共有の経験について振り返ることができるよう声を掛ける。

【終末】

主題やねらいに沿った教師の説話

5.板書例

6.授業への工夫など

(1)板書の工夫
 場面絵だけでなく、教材の人物の絵を掲示することで、話の内容を正しく理解できるようにした(教材への導入など)。また、児童の発言について、関連している意見をまとめたり、線でつないだりすることで、考えを深められるように板書した。

(2)役割演技の活用
 「いじわるは、やめろよ。」と言えたときの心情について、自我関与しながら考えられるように、役割演技を行った。言えたときだけでなく、通り過ぎようとしていた場面からぽんたの気持ちを考えさせ、それらを対比させることによって心情の変化を捉えやすくした。

7.考察

ねらいを「正しいと思うことを進んで行おうとする態度を養う。」としたため、中心発問では心情ではなく、考えを問うことにした。そのうえで、正しいと思うことを行うことができたときの心情を重ねて確認することで、そのことのよさについて、さらに感じられるようにした。
善悪の判断について、低学年の発達段階では他律的に捉える児童が多い。そのことから、発言を問い返したり、ときには揺さぶったりすることも必要となる。本授業においても、教材を通して、正しいとわかっていても迷う心の弱さについて十分に触れ、他者ではなく自分としてはどうなのかを考えられるようにした。
自己の振り返りで、経験があまりなく悩んでいる児童も見られたが、学校生活を振り返り、同じような場面を想起できるよう声掛けを行った。

「あいさつがきらいな王さま」(第2学年)

1.はじめに

 児童一人一人が、本時の学習内容をいかに自分ごととして捉え、主体的に考えられるかどうかが大切であり、課題や展開、振り返りを工夫したいところである。
 挨拶をすることに関しては、日頃から生活指導などでもされていることであるが、「なぜ、挨拶をすることが大切なのか。」について、教材を通してじっくりと考えさせ、児童自身の中で、挨拶することの意義について深めさせていきたい。今回は、課題を提示し、教材を通して考え、自分なりの答えを導き出していく展開を行った。

2.実践報告

(1)主題名

あいさつっていいね B[礼儀]

(2)教材名

「あいさつがきらいな王さま」 (出典:日本文教出版 令和2年度版『小学どうとく 生きる力2』)

(3)本時のねらい

 間違いに気づいた王様の気持ちを考えることから、挨拶は相互の人の心を明るくすることを理解し、気持ちのよい挨拶をしようとする心情を養う。

(4)展開例

学習活動
(○主な発問 ・予想される児童の反応)

◇指導上の留意点 ☆評価


1 本時の課題をつかみ、教材への関心をもつ。
○あなたにとって、どうして挨拶は大切なのでしょうか。
・元気が出るから。
・いい気持ちがするから。
・落ち着くから。

◇ねらいとする道徳的価値について触れ、本時の課題をつかませる。現段階での考えを黒板に書く。
◇「あなたにとって」という発問で、自分ごととして考えさせるようにする。



(前段)

2 教材「あいさつがきらいな王さま」を読み、話し合う。

◇場面絵を黒板に掲示し、BGMを流し、教材に入り込みやすくする。

○朝から夜まで、何度も挨拶をされる王様は、どんな気持ちだったでしょうか。
・うるさいなあ。
・面倒くさいなあ。
・もういいよ。ひっついてくるようだ。

◇うんざりしている王様の気持ちを、自分ごととして考えさせる。(相互指名・意図的指名)

○楽しそうな歌声を聞いて、「なにかおかしい。」と言った王様は、どんなことを考えていたのでしょうか。
・挨拶があったほうがいいのかなあ。
・挨拶をして心がすっきりした方がいいのかなあ。
・挨拶がないと、さびしくて暗くなってしまうなあ。

◇王様の気持ちが変わってきたことを理解させる。

◎王様は、ついうっかり挨拶をしてしまって、どんなことに気づいたのでしょうか。
・挨拶をすると、心があたたかくなる。
・気持ちが良い。
・すがすがしい気持ちになる。

◇王様が「おはよう。」と言って気づいた挨拶のよさについて考えさせる。(ノート・相互指名・意図的指名)
◇挨拶の大切さに気づいた王様の気持ちに共感させるようにする。
◇小集団で話し合い、全体で話し合う。
◇ノートに自分の考えを書かせる。(意図的指名)
☆挨拶のよさに気づいた王様に共感し、考えることができたか。(話し合いの様子・発言・ノート)



(後段)

3 自分を振り返る。
○あなたにとって、挨拶をすることには、どのようなよさがありますか。
・自分もみんなもうれしくなる。
・周りの人の心も自分の心もいい気持ちになる。
・心が落ち着く。

◇ノートに自分の考えを書かせる。(意図的指名)
☆挨拶をした時のさわやかな気持ちや、相手と心が通じ合うことのよさなどを考えることができたか。(ノート・発言)


4 教師の説話を聞く。

◇挨拶をすることのよさについて教師の経験談を話し、気持ちよい挨拶をすすんでしようとする心情を高め、余韻をもって終わるようにする。

3.板書

4.授業への工夫

(1)課題を明確にし、自分ごととして考えさせていく展開の工夫
 日常で当たり前のように行っている挨拶について、改めて自分ごととして考え、児童一人一人が自分なりの答えを主体的に考えられるように課題を設定した。
 本時では、「あなたにとって、どうしてあいさつは大切なのでしょうか。」という課題を設定することで、より自分自身の課題として捉えられると考えた。「あなたにとって~」と問うことで、より主体的に捉えることができると考える。
 自分なりの答えを探求していくために教材を通して道徳的価値について考えていく。展開後段では、その答えを一人一人がもつことができるように展開を工夫した。

(2)話し合いの工夫
①意図的指名での話し合い
②相互指名での話し合い
③小集団での話し合い
 対話的な授業展開をすすめるにあたり、教師の意図的指名、児童同士の相互指名、小集団での話し合いの形式を適宜取り入れた。
 なかなか考えがまとまらない児童や発表が不得手な児童にとっては、小集団での話し合い活動をすることで自身の意見もまとまり、発表への自信をもてるようになってくると考える。小集団の意見をまとめるために話し合うのではなく、児童一人一人が考えをもてるようになることが目的である。小集団での話し合いの場を設けることにより、自分の考えや思いを伝え合うことができる。伝え合うことにより、考えが広がったり深まったりすることもある。また、互いを認め合う活動としても有効である。
 全体では相互指名をしたり、意図的指名をしたりしながら考えを共有し、ねらいとする道徳的価値について深めさせていく。

(3)書く活動の工夫
 書く活動を取り入れ、考える時間を十分に確保する。発言を不得手とする児童も、書くことで自分の考えをもち表現することができる。中心発問と展開後段で書く活動を取り入れ、自分ごととして価値について考えさせる。また、ノートを継続的に使用することで、1年間の記録となり変容も見取ることができる。

(4)教材提示及び展開の工夫
 教材提示に際しては、効果的な場面絵を提示したりBGMを流したりすることにより、教材への共感を高める工夫をする。教師が教材を読むときは、ゆっくりと表現豊かに読む。板書の際は、場面絵で教材の内容が分かりやすくなるようにレイアウトを考えた。教材提示をしながら場面絵を黒板に貼っていくことで、教材の内容が児童に分かりやすくなるように工夫した。

5.考察

場面絵が有効であった。場面絵を追うだけでも話の内容が理解しやすいようであった。
児童の意見から、「挨拶をすると落ち着く。」という考えをもった児童が多数いた。おそらく挨拶を交わし合うことで、互いを認め合えているという認識がもてているのではないかと考察する。
本教材は挨拶をすることの意義について考え深めさせる教材である。生活指導との関連も図りやすい年度初めや学期初めの時期に授業を行うことで、児童がより自分ごととして捉えることができると考える。

「やさしいユウちゃん」(第5学年)

1.はじめに

 内容項目B「親切、思いやり」の学習指導要領における高学年の目標は「だれに対しても思いやりの心をもち、相手の立場に立って親切にすること。」とある。この「相手の立場に立つ」というところに焦点化し、親切の行為について考えさせたい。
 この時期の児童は、相手の置かれている立場を、ある程度自分自身に置き換えて想像できるようになってくる。「親切」という価値について問うと、「優しくすること」「助けること」とその行為の具体的姿が返ってくるだろうと予想できる。また、児童は、相手に手を差しのべることが望ましい「親切」であると捉えがちである。そこでさらに「よくない親切はあるのか?」と揺さぶりの発問をしたり、教材における「親切のちがい」を考えたりする中で、相手にとって何が必要かを考えたり、相手にとっての一番を考えたりすることこそ、「相手の立場に立った親切」なのだと気づくような学習展開としていきたい。
 また、対比的に考える学習展開から、横書きの板書に取り組んでみたい。

2.教材について

 おっとりしたハルカを助けることの多いユウコ。同じ委員会になりたくて、二人とも飼育委員を希望したが定員より一人多い状態になる。二人で別の委員会に行こうと言うハルカに、「わたしは別の委員会に行くね。」とはっきり言うユウコ。ハルカに一緒の委員会になれなくても、自分のやりたいことをやったほうがいいと言ったユウコの姿から、本当に相手のことを思う親切について考えさせる。
 また、今までと違い、ユウコがいなくても別の友達と楽しそうに飼育委員活動に打ち込むハルカの姿を見て、これからの自分にもワクワクするユウコのすがすがしい心情に気づかせたい。

3.実践報告

(1)主題名

相手のための親切(内容項目:B 親切、思いやり)

(2)本時のねらい

 時には言いにくいことも言うユウコの姿から、相手のため(立場)を考えることが本当のやさしさであることに気づき、進んで親切にしようとする心情を育てる。

(3)展開例

学習活動
(○発問 ・予想される児童の反応)

◇指導上の留意点 ☆評価


○親切とは、どんな行為だろう。
・優しくする。
・助ける。
・教えてあげる。

・親切は、した方もされた方もうれしい行為であると、親切の行為から生まれる互いの心のつながりを確認する。
・「よくない親切もあるのかな。」と切り返し、価値への方向づけを行う。



(前段)

①「ユウちゃんといっしょになれてよかった。もう安心だよ。」と言われたユウコがほっとしたのは、どのような気持ちからでしょう。
・これで大丈夫。
・いっしょだから楽しい。
・私が助けてあげる。

・二人が幼なじみで、いつも一緒に過ごしていた仲であることを押さえたうえで、二人の特性を整理しておく。
・ユウコは、再びハルカと一緒のクラスになれたことで、彼女を助けられるといううれしさや期待感を感じていたことに気づかせる。

②ユウコが「わたしは別の委員会に行くね。」とはっきり言ったのは、どんなことを考えたからでしょう。
・ハルカは、動物が好きなんだから、飼育委員をやった方がいいと思う。
・自分のやりたいことをやってほしい。

・ユウコがハルカのことを考えて決断したことから、今までのハルカへの親切と質の異なる高次の親切に変わってきたことを感じさせたい。(道徳ノート)
・その後、ユウコが今後の自分にワクワクしているすがすがしさにも触れ、相手のことを思う親切の気持ちよさを感じられるようにする。



(後段)

◎①②の親切のちがいは、何だろう。
・相手の将来のことまで考えている。
・その人にとって何がいいかまで考えている。

・友達のため、より深い関係になるため、といった「信頼、友情」の価値に偏らないようにする。
・①も②もどちらも親切であるからこそ、その違いを考える中で、ねらいとする価値に迫りたい。

○相手のための「親切」とは、どういう行為のことだろう。
・相手にとって何が必要かを考えて行動する。
・相手にとっての一番を考えて行動する。

・導入と同じく「親切」について問うことで、価値の深まりを児童自身に実感させる。
☆相手の立場を考えて、親切にすることの大切さを記述しているか。(道徳ノート)


○相手のことを考えて、親切にしてよかったという教師の体験を話す。
・車いすの人が、段差を乗り越える練習をしていた。「手助けしよう!」と思ったが、一生懸命頑張っている様子に、そばで見守ることにした。その後の清々しい様子を見て、私は「やりましたね!」と思わず声をかけた。

・相手のことを考えて行う行為について話すことで、互いに高め合うことも親切につながることを捉えさせる。

4.授業記録

【導入】

T 親切はどんな行為だろう。
C 手伝ってくれること。
C 相手のことを思ってすること。
C おせっかいではない。
T では、「よくない親切」もあるかな。
C ん~。あ~。

(考察)
「親切」という行為が、自分本位でないということは理解しているようである。
児童の実態を前提に、価値への方向付けを行う。

【展開前段】

T 「ユウちゃんといっしょになれてよかった。もう安心だよ。」と言われたユウコがほっとしたのは、どのような気持ちからでしょう。
C ハルカの悲しむ顔を見なくて済む。
C ハルカが安心してくれた。
T ユウコが「わたしは別の委員会に行くね。」とはっきり言ったのは、どんなことを考えたからでしょう。
C ハルカのやりたいことをやってほしい。
C ハルカは一人でできるだろう。
C ハルカも自立しないと、将来困る。

(考察)
どちらの発問に対しても「ハルカ」という親切の対象が返ってきた。
これらをもとにして「どちらもハルカのことを考えての親切だけど…」と比較の視点にしていきたい。

【中心発問】

T どちらも「ハルカ」のことを考えているよね。この親切の違いは何だろう。
C 将来のことまで考えている。
C 「今する親切」と「これからの親切」
C ハルカのことを本当に考えるなら、厳しくしたり、エールを送る立場でいることも大切。

T 最初も聞いたことですが、相手のための「親切」とはどういう行為のことだろう。
C 今できる親切と、これから役に立つ親切。
C 本当に相手にとって親切かを考える。
C 自己満足は親切とは言えない。

(考察)
導入に比べ、相手のこれからを考えた発言が多く見られ、価値の深まりを感じる。また、具体的な言葉かけを考えたり、自分なりの言葉で表現したりできている。
それが「相手のための」の親切であり、児童の学びの成果であると伝え、児童の手柄にしたい。

5.板書例

6.授業への工夫など

(1)「親切」についての比較が視覚的に分かるようにし、また、導入との価値の違いも分かるように、板書を工夫した。
(2)考えさせたい価値が「相手のこと」「将来のことを考えて判断」という児童の発言で授業を想定していたため、発問を精選し、考えることが焦点化された。

7.考察

「親切」について「相手のための」という価値を付随させることで、深い考えへと発展できた。
また、「親切」は、心の中で思っているだけでなく、行為として表出されることも大切だということも理解できたようであった。

「その思いを受けついで」(第6学年)

1.はじめに

 児童が教材を通して道徳的価値の理解を図ったり、自己を見つめたりすることができるように、教材の内容を自分事としてとらえさせることが重要である。そのために授業をどのように工夫すべきかを考えることが道徳科の授業の醍醐味でもある。児童が物語に入り込めるような教材提示、みんなで考え、多様な考えに触れることで、さらに自分の考えを広げ深める時間の設定の仕方、自分事としてとらえた一時間一時間の学びの連続性に重点を置いて、今回の授業実践を行った。

2.教材について

 祖父の寿命があと3か月と迫っていることを母から聞いた「ぼく」は、残された祖父との時間を大切に過ごし、祖父の最期を看取る。祖父の死後に見つけた手紙から、「ぼく」へ向けられた祖父の温かくも強い思いに触れるという内容である。
 身近な祖父の死と必死に向き合う「ぼく」の思いや、死期が近づいてきてもなお、孫への愛情を持ち続けた祖父の思いを考えることを通して、自分の生命が、祖父母や父母から大切に受け継がれたつながりの中にある素晴らしく尊いものであることを感じさせたい。そのうえで、「その思いを受けついで」、限りある命を精一杯生きること、自他の命を尊重することが大切であることに気付かせたい。

3.実践報告

(1)主題名

つながる命 D[生命の尊さ]

(2)教材名

「その思いを受けついで」 (出典:文部科学省 『私たちの道徳 小学校5・6年』)

(3)本時のねらい

 大好きな祖父の死に向き合う「ぼく」の気持ちを考えることを通して、自他の命が生命のつながりの中にある尊いものであることを理解し、自他の命を尊重しようとする心情を育てる。

(4)展開例

学習活動
○発問・予想される児童の反応

◇指導上の留意点 ☆評価


(1)学習課題を設定する。
○「命」について、どのように思いますか。

◇「命」についての様々な考えを出させる。同内容項目の授業の板書とノートを振り返り、これまで「命」についてどう考えてきたか想起させる。そのうえで、本授業を通して、なぜ大切にしなければならないのか、自分なりの考えを深められるようにする。


(2)教材「その思いを受けついで」を読み、なぜ命が大切なのかについて考える。

◇教師が範読する。教材文の世界観に浸ることができるよう、BGMを流す。

○じいちゃんの命があと三か月だと知って、「ぼく」はどんなことを考えたでしょう。
・嫌だ。 ・悲しい。
・信じられない。 ・信じたくない。
・うそであってほしい。 ・別れたくない。
・時間が足りない。 ・もっと一緒にいたい。
・早く教えて欲しかった。そしたらもっと一緒に過ごせたかもしれないのに。

◇小さい頃からかわいがってくれたじいちゃんが、あと三か月で死ぬかもしれないと知ったときに、ぼくが感じた複雑な感情を考えさせるようにする。

○毎日お見舞いに行った「ぼく」は、どのような気持ちだったのでしょう。
・僕が行ったら、元気になるかもしれない。
・少しでも長く生きてほしい。
・励ましたい。
・一緒に過ごす1分1秒を大切にしよう。
・少しでも長くおじいちゃんと一緒にいたい。
・おじいちゃんとの思い出を増やしたい。

◇じいちゃんの病状の変化と、それに伴う「ぼく」の気持ちの変化も捉えさせる。

◎じいちゃんから受け継いだ思いとは、いったいどのような思いでしょう。

手紙を受け取ったぼくが感じた思いをペアで考え、短冊に書く。

・じいちゃんが見守ってくれている。命を大切に生きよう。
・じいちゃんの思いに恥じない生き方をしよう。
・じいちゃんが教えてくれたことを大切にして前に進もう。
・じいちゃんの分まで、全ての経験を大切にして生きていこう。
・じいちゃんが大切にしてくれたように、ぼくも周りの人を大切にして生きていこう。

◇じいちゃんがのし袋のメッセージに込めた「ぼく」への思いを考えさせるようにする。

☆生命のつながりやかけがえのなさを感じとり自他の命を尊重することの大切さを考えることができたか。(観察)

(3)自己を見つめる。
○なぜ「命は大切」なのでしょう。命を大切にすることについて感じたり考えたりしたことを書きましょう。
・自分の命は自分だけのものではない。受け継がれてきた命を無駄にしてはいけないし、精一杯生きなければいけない。

●いつものように、学習したことから、今までの自分やこれからの自分について振り返るよう促す。

☆自らの命も先祖から受け継がれてきた大切な限りある命であり、今後とも大切にしようとする気持ちをもつことができたか。(発言・ワークシート)


(4)学習のまとめをする。

●合唱「つながる命」を、歌詞を見ながら聴き余韻をもたせて終わる。

4.授業記録

T  これまで命について2回、みんなで考えてきました。第11回「命と平和」、第20回「命のかがやき」の2回です。自分が考えたこと、みんなで考えたことを振り返ってみましょう。
(道徳ノートや板書写真で振り返る。)
T  では、命についてどう思う?
01 失くしたらもうない。1つしかないかけがえのないもの。
02 生きることの源。
03 生き物には必ず1つある 失ってはいけないもの。
04 最も大切なもの。

T  命は大切じゃないと思っている人はいる? (いないよー。)
では、どうして命は大切にしなければいけないのかな?
みんなで考えてみましょう。

T  (教材の確認後)大好きなじいちゃんの命があと3か月だと知りました。その瞬間、ぼくはどんなことを考えただろう。
05 信じられなくて混乱している。
06 唐突なことで信じられない。
07 どうしよう。焦る。
02 お母さん、何言っているの?(信じられない気持ち)
08 受け入れたくない。
01 どうにかして治せないの?
04 おどろいている。
09 死んでしまう悲しさと、いつ死んでしまうのかという不安。

T  ぼくは毎日お見舞いに行きます。そのときはどんな気持ちだっただろう。
(ペアで話してから)
01 あと3か月。いつからやつれていってしまうのかこわい。
09 今日は元気にしているかなぁ。不安。
08 今日死んでしまうかもしれない。
05 いつ死んでしまうのかな。
02 行くときは不安。でも顔をみると安心する。
03 今日、会えるかな。話ができるかな。
10 最初のころはじいちゃんが元気で、死んでしまうなんて信じられない。
07 きっと元気になるよ。
06 顔を見ると、今日は元気でよかった。

T  「ぼく」は自分が安心したい気持ちだけでお見舞いに行き続けたのかな?(首を振る)
02 より多くじいちゃんと過ごしたい。
01 後で後悔したくない。今のうちにたくさん会いたい。
09 3か月でも1年分、2年分と同じくらいの時間を過ごしたい。
12 大丈夫だよと、じいちゃんを安心させたい。
13 会わない後悔をしたくない。最後まで送りたい。
14 じいちゃんのためにできるだけのことをしたい。

T  じいちゃんは亡くなってしまったけれど、まくらの下からしわくちゃののし袋が出てきたんだよね。とても悲しいけれど、じいちゃんから受け継いだ思いがあったのではないかと思います。ペアで話し合って、短冊に書いて下さい。
  ・じいちゃんが見守ってくれているから、前向きに生きよう。
  ・じいちゃんが最後の力をふりしぼって自分を勇気づけてくれたから、その命を大切にしていこう。
  ・じいちゃんの分まで生きよう。
  ・じいちゃんの優しい気持ちのおかげでぼくが成長できた。これからは自分でしっかりと成長していきたい。

5.板書例

6.授業への工夫及び考察

(1)導入
 本時の前に二回、生命の尊さに関する授業を行っている。ノートや板書の振り返りをしたうえで、本時のねらい示すことで、「命」について自分が学び考えたことを意識して本時にのぞむことができる。
※実施した授業の板書写真は教室に掲示してある。児童は休み時間等に話題にすることもある。

 ワークシートを見ると、生命の有限性・連続性に加えて、今生きていることの奇跡や、受け継がれた命を輝かせる等、これまでの「生命の尊さ」に関する授業で考えてきたことを絡めて考えている児童が多かった。身近な死には直面したことがほとんどない児童だが、自分なりに命の大切さに対して考えを深めている様子がみてとれた。

(2)BGMの使用
 身近な死に直面したことがない児童も多い。BGMを使用して教材提示を行うことで教材の世界観に浸り、「ぼく」の気持ちに寄り添いやすくする。また、終末も説話ではなく本時に関連する歌詞の歌を流した。自分事としてとらえた命のつながりをかみしめて終わることができると考えた。

 教材提示では、教材の世界に入り込み涙ぐんでいる児童もいた。表面にあらわれる子ばかりではないが、世界観に入り込むことができている児童が多かったように感じる。終末でも、歌詞を見ながら真剣なまなざしで音楽に耳を傾けていた。授業後、歌詞について話しているグループもあった。

(3)多様な考えに触れるために
 本学級の児童は、高学年になり、小グループであれば活発に話すことができても、自分の考えを挙手して発表することに恥ずかしさを感じる児童も多い。ペアで話すこと、短冊に書き黒板に貼ることで多くの考えに触れ、自分の考えを広げ、深められるようにした。(中心発問は小グループで話し合う予定だったが、緊急事態宣言中であったため、対面を避けペアで話すこととした。)

 自分の考えを伝え合うことで、「ぼく」に自我関与できていたのではないかと思う。しかし、ペアによっては会話が一方通行になっていたので、やはり小グループが適していたと考える。

ノンフィクション教材を活用した授業づくり(第6学年)

1.はじめに

 小学校学習指導要領「特別の教科 道徳」において、多様な教材の活用の視点として、「生命の尊厳、自然、伝統と文化、先人の伝記、スポーツ、情報化への対応等の現代的な課題など」が挙げられている。
 また、スポーツに関する教材の活用については、「例えば、オリンピックやパラリンピックなど、世界を舞台に活躍している競技者やそれを支える人々の公正な態度や礼儀、連帯精神、チャレンジ精神や力強い生き方、苦悩などに触れて道徳的価値の理解やそれに基づいた自己を見つめる学習を深めることが期待できる。」と示されている。
 ノンフィクション教材は、多面的・多角的に考えることができる一方で、多様な道徳的価値が含まれているため、ねらいが曖昧になってしまうことも考えられる。そこで、導入を工夫したり、発問を精選したりすることで、ねらいを明確にした授業を展開できると考えた。

2.実践報告

(1)主題名

生きる喜びを感じて D[よりよく生きる喜び]

(2)教材名

「真海のチャレンジ―佐藤真海―」 (出典:文部科学省『私たちの道徳 小学校5・6年』)

(3)本時のねらい

 佐藤真海さんの生き方を考えることを通して、人間は心の弱さと同時に心の強さや気高さをもっていることを理解し、夢や希望をもち、喜びのある生き方をしようとする態度を養う。

(4)学習指導過程

学習活動

○主な発問
・予想される児童の反応

◇指導上の留意点
☆評価


1 「よりよく生きる」ことの意味について考える。

○「よりよく生きる」とはどういうことだと思いますか。
・目標に向かって努力すること
・仲間と助け合って頑張ること

◇事前アンケートの結果を提示し、ねらいとする価値への導入を図る。


2 教材「真海のチャレンジ―佐藤真海―」を読んで話し合う。

①大学へ復帰したとき、真海さんはどんな気持ちだっただろうか。
・また大学に戻れてうれしい。
・これからの自分はどうなってしまうのだろう。
・友達は楽しそうでうらやましい。

◇範読する前に、佐藤真海さんのプロフィールを簡単に紹介し、教材への興味・関心を高められるようにする。
◇右足を失い、悩み苦しむ真海さんの心情を共感的に捉えさせる。

真海さんがパラリンピックを目指したのはどんな考えからだろうか。【中心となる発問】
・このままではだめだ、何とかしなければいけない。
・目標をもって頑張れば、自分を変えることができる。
・つらいことにも負けず強くなりたい。

◇目標に向かってチャレンジし続けることに生きる喜びを見出した真海さんの思いについて、多面的・多角的に考えられるようにする。

③真海さんはどんな生き方を大切にしてきただろうか。
・目標に向かってチャレンジする。
・どんな困難にもめげない。
・前向きに生きようとする。

◇展開後段の学びがより効果的に進められるように、教材を通して考えたことをまとめられるようにする。

3 自分自身の生活を振り返る。

○「よりよく生きたい」と思ったり考えたりして、頑張ったことやくじけそうになったことはありますか。
・サッカーの試合に勝つために毎日練習した。
・目標に向かって学習すると決めたのに、ついさぼってしまった。

◇学習シートを活用する。
◇ペア学習による学び合う場を設定する。
☆自分なりの「よりよく生きる」について考えることができたか。


4 教師の説話を聞く。

◇困難や障害と向き合いながら生きる喜びを味わった教師の経験を話し、余韻をもって終わらせるようにする。

(5)指導の工夫

○導入の工夫
 本教材は、A[希望と勇気、努力と強い意志]、D[生命の尊さ]などの内容項目と関連していると考えた。内容項目D[よりよく生きる喜び]を明確にした授業を展開するために、「よりよく生きる喜び」についての意味について考え、課題意識をもたせる。展開前段以降の活動時間を確保するために、事前にアンケートをとり、その結果を紹介する形にとどめ深入りはしない。

○板書の工夫
 教材の場面絵やプロフィールなどを提示することで長文の教材の理解を助ける支援を行ったり、主人公の心情の変容を捉えやすくするための工夫を行ったりする。
 また、題名「真海のチャレンジ」を中心に書くことで、本時で中心的に考えたいテーマが明確なものとなるようにし、構造的な板書となるような工夫を図る。
 さらに、教材に関する授業展開の板書の他に、補助黒板を活用する。補助黒板には、導入で活用したアンケート結果と展開後段での活動を結び付けて考えられるように示すことで、本学習を通して道徳的価値についての理解がどのように変容したのか実感し、道徳的価値の自覚を深められるようにする。

板書(展開前段での教材「真海のチャレンジ」における学習内容)

補助黒板(「よりよく生きる」をテーマとした事前アンケートの結果、展開後段における学習内容)

○発問の工夫

第1発問では、真海さんが悩み苦しんでいる場面の心情を問う。内容項目D[よりよく生きる喜び]には、強さや気高さだけではなく、自分の弱さを意識し、乗り越えるという側面も示されている。道徳的価値の深い理解につなげるために、誰しもが「弱い自分」を内包して生きていることに気付かせたい。
中心発問では、困難と向き合い力強く生きようと決断した真海さんの思いについて考える。真海さんにとっての「よりよく生きる」とは、自分の決めた目標に向かってチャレンジし続けることだと捉えた。真海さんにとってのチャレンジについて多面的・多角的に考えられるようにするために、補助発問として「普通のチャレンジとはどのように違うのか」と投げかける。
第3発問では、展開後段を効果的に進められるようにするために、真海さんの生き方について考える。教材における道徳的価値の理解と自己の生き方とを結び付けて考え、展開後段での学習がより主体的なものとなるようにする。

○話し合いの工夫
 展開後段では、感染症対策を十分にした上で、ペア・トリオの意見交換、「伝え歩き」による学び合いなどの対話型の学習の場を設定し、友達の感じ方・考え方との共通点や相違点を比べながら、道徳的価値についての理解を一層深められるようにする。

○書く活動の工夫
 展開後段では、適切な時間を確保した上で、学習シートを活用し、自分自身の生き方について深く考えられるようにする。事前アンケートを実施し、授業後にどのような変容が見られたかを把握するなど、児童の道徳性に係る成長の様子を継続的に把握していくことが重要である。

(6)児童の反応

児童の学習シートから

バレエの発表会までの間、自分の役に入り込めるように毎日努力をした。

水泳記録会に向けて練習した。よい記録が出ず、目標が高すぎたかなと思ったが、本番は目標を達成できた。

英語を習っている。何回もまちがってしまいやりたくないと思う時もあった。けれど、英検に受かりたいので毎日続けている。

サッカーの試合で負けたとき、もうだめだと思ったときもあった。だけど、前を向いてがんばろうと思っている。

書道を習っていて、最初は全然上手に書けなかったが、「もっと級が上がりたい」と思って努力してたくさん級が上がった。今でももっと上手になりたいと思って頑張っている。

3.おわりに

 ノンフィクション教材を扱う際の留意点として、登場人物の生き方を自分事として捉えることの難しさがあると考えている。発問や話し合い等の工夫を通して、自分自身の経験と照らし合わせながら、自己の生き方について考えを深められるようにすることが重要である。

※本実践は前任校での取り組みをまとめたものである。