目標・評価規準の文言の、作成手順を知ろう

教科書題材の目標や評価規準例を読みましたが、一文が長いので文章の構造がよく分からず、理解するのに苦労しています。なぜこのような長い文章になっているのでしょうか? 読み解き方を知りたいです。

たしかに、今回の目標や評価規準例、一見すると長くて分かりづらいかもしれませんね。
教科書題材の目標や評価規準例は、学習指導要領に基づき、評価の観点等及びその趣旨(*1)学習評価に関する参考資料(*2)を参考に作成されています。今回は、その考え方について解説します。

目標・評価規準の作成手順

目標と評価は一体です。目標を考えることは、同時に評価規準を考えることを意味します。そして、題材の目標と評価規準は、学習指導要領の文言をベースにして、自分で作成することができるんです。
今回は、その考え方や手順を動画にしましたのでご覧ください。

知識及び技能/思考力、判断力、表現力等学びに向かう力、人間性等

山田先生からひとこと
今回は目標と評価規準のつくり方について説明しました。けれど、文章ができただけで満足してはいけません。大切なのは、「このクラスの子どもたちは、どんな活動をするかな」と具体的な子どもの姿を思い浮かべながら目標と評価規準を考えることです。そうすることで、机上の空論ではない、児童の実態に即した実効性のある目標・評価規準を設定することができます。

<参考URL>
*1:各教科等・各学年等の評価の観点等及びその趣旨(文部科学省)
https://www.mext.go.jp/component/b_menu/nc/__icsFiles/afieldfile/2019/04/09/1415196_4_1_2.pdf
*2:「指導と評価の一体化」のための学習評価に関する参考資料(国立教育政策研究所)
https://www.nier.go.jp/kaihatsu/shidousiryou.html

「学びに向かう力、人間性等」って、どう見取るの?

「学びに向かう力、人間性等」とは、どのようなことを指すのでしょうか? 「人間性」などと言われると、授業中の子どもの姿から見取ることができるのか、不安です……。

そうですね、確かに「え!人間性?」って思いますよね。でも慌てないでください。ちょっと落ち着いて目標から考えてみましょう。各学年の目標の(3)が「学びに向かう力、人間性等」です。低学年は次の通りです(*1)

(3)楽しく表現したり鑑賞したりする活動に取り組み、つくりだす喜びを味わうとともに、形や色などに関わり楽しい生活を創造しようとする態度を養う。

この文章は、「~とともに」という言葉で、二つの内容をつなげて示しています。「学びに向かう力・人間性等」には、①「主体的に学習に取り組む態度」として観点別学習評価を通じて見取ることができるものと、②(感性、優しさや思いやりなどを含めた幅広い人間性等に関わる)観点別評価にはなじまず、個人内評価を通じて見取るものとがあります(*2)。低学年の目標(3)の文言では、おそらくは前半部分が①、後半部分が②にあたると考えられます。
では、それぞれについて、教科書の題材「ちょきちょき かざり」(1・2上 p.12-13)を基に具体的に考えてみましょう。

1)主体的に学習に取り組む態度の表れ

まず、「主体的に学習に取り組む態度」を考えます。目標(3)の前半「楽しく表現したり鑑賞したりする活動に取り組み、つくりだす喜びを味わう」という部分です。具体的な姿がイメージできそうですよね。

例えば「ちょきちょき かざり」であれば……
題材との出会いから、紙を折ったり切ったりしながら、どんな形ができるか考え、切ってできる形を見付けて、

さらに、切り方を工夫して、どうなるかを確かめることを繰り返し、

最後につくった形を飾って、その成果を味わうところまで

……活動の始めから終わりまでを通して、子どもたちが進んで活動に取り組んでいく姿です。

自ら進んで表現に取り組んでいるかどうかは、「楽しんでいるか」「楽しく取り組んでいるか」で分かります。「学習のめあて」黒板には、「~を楽しむ」「楽しんで~する」として、主体的に学習に取り組む態度が示されています。

2)幅広い人間性等の表れ

一方、目標(3)の後半の「形や色などに関わり楽しい生活を創造しようとする」は、一つの題材に取り組む姿から見取ることは難しそうですよね。この、「感性、優しさや思いやりなどを含めた幅広い人間性等に関わる」部分については、観点別評価にはなじまず、個人内評価(個人のよい点や可能性、進歩の状況について評価する) を通じて見取ることになります(*3)。一つの題材だけでは必ずしも見取ることはできません。複数の題材を経験し、活動を積み重ねることで、その経験が蓄積され、次第に形成され、伸長していきます。

そこで大切なのは、教師が一つ一つの題材への取り組みを終えた子どもにどのような姿(態度)を期待するかです。例えば、「ちょきちょき かざり」の活動に主体的に取り組んだ後に、「みんなで教室を飾ると、明るく、そして楽しくなるんだな」という思いを抱いた子どもたちは、この経験を生かして日々の生活の中でも身近なものを使って生活空間を飾ることを楽しむようになることが期待できます。

題材ページの右下には、「活動の後で」に題材を終えた子どもたちに感じて欲しいことが例示されています。「主体的に取り組む態度」から、楽しい生活を創造しようとする態度へと変容していく兆しなんですね。

山田先生からひとこと
「学びに向かう力、人間性等」のことが少し見えてきましたでしょうか。これまでの「関心・意欲・態度」に近い部分が「主体的に学習に取り組む態度」といえるかもしれません。ただ、これまでの評価の観点「関心・意欲・態度」については、「学習に関心をもつ」という学習の入口だけで捉えて評価をしてしまったり、正しいノートの取り方や挙手の回数をもって評価したりするなど、本来の主旨とは異なる、誤った捉え方をされることがありました。子どもたちの主体的に学習に取り組む態度が、形や色と関わって生活を楽しく豊かにする態度へとつながっていくように、子どもたちの姿を見取り適切に評価し、支援を行っていただきたいと思います。

*1:今回は低学年の目標(3)を例に考えました。中学年や高学年の目標も文章全体の構造は同じですが、学年が上がるにつれて少しずつ文言が変化しています。低学年の目標(3)の冒頭の「楽しく」は、中学年では「進んで」、高学年では「主体的に」になっています。また、後半の「楽しい生活を」の部分は、中・高学年では「楽しく豊かな」となっており、質的な変化が表されています。
*2:文部科学省「児童生徒の学習評価の在り方について(報告)」平成31年1月21日
*3:*2と同様

※2020年度版小学校図画工作科内容解説資料として扱われます。

「主体的・対話的で深い学び」って、どんな授業?

「主体的・対話的で深い学び」という言葉を最近よく耳にしますが、実際の授業で、どのようなことを意識して取り組めばよいのかが分かりません……。

端的にいえば、題材を通して、また、一回の図工の時間毎といった内容や時間のまとまりの中で、「主体的・対話的で深い学び」を実現する次のような場面をどのように設定して授業を組み立てるか、ということを意識することが大切です。(*1)

  • 学習の見通しを立てたり、学習を振り返ったりして自身の学びや変容を自覚する場面
  • 対話によって自分の考えを広げたり深めたりする場面
  • 子どもが考える場面と教師が教える場面、及びその組み立て

といっても、やはり分かりにくいですよね。そういうときは教科書で具体的に考えるのが一番です。
「ちょきちょき かざり」(1・2上 p.12-13)を参考に、具体的に見ていきましょう。

1)主体的な学びの実現に向けて

主体的な学びの実現のためには、子どもが「学習の見通しをもつこと」と、「学習を振り返り、学びを自覚すること」が大切です。このような場面を授業の中に設定することを意識しましょう。

まず、「学習の見通しを立てる場面」は導入時ですよね。

例えば、絵や立体、工作に表す題材では、導入で「表したいことを見付ける」、「材料や用具を活用して、表し方を工夫する」、「どのように表すか考える」など資質・能力にそって、およその見通しをもてるようにします。
そうです、「学習のめあて」(資質・能力の三つの柱に基づいています)を基に子どもたちとめあてを共有するイメージです。

一方、「学習を振り返ったりして自身の学びや変容を自覚する場面」は終末時(振り返り)です。

友だちと活動の成果を確認し合ったり、教師が言葉かけをしたりすることで、子ども自身が成長や変容したことを自覚できるように導きます。
ここでは、「活動の後で」を基に振り返りをしたり、「学習のめあて」を改めて確認したりするイメージです。

2)対話的な学びの実現に向けて

「対話によって自分の考えを広げたり深めたりする場面」は主として展開時です。
友だちと互いの活動や作品を見合いながら考えたことを伝え合ったり、感じたことや思ったことを話したりできるように、活動場所や授業展開を構成したりします。
教科書の情景写真の子どもの姿のイメージですね。

3)深い学びの実現に向けて

「子どもが考える場面と教師が教える場面、及びその組み立て」を考える上で大切なのは、教師が指示しすぎず、子ども自身で考え、深めていけるように授業を構成することです。
実はこれ、「ちろたん」の立ち位置がヒントになります。ちろたんは、造形的な見方・考え方に基づく子どもの発言や行為を見取って、子どもの気付きを促すヒントを示したり、気付きに共感したりしています。

先生方も、教えたい気持ちをぐっとこらえて、ちろたんのセリフを参考に子どもたちの学びへの共感的な言葉かけを工夫してみてください。

山田先生からひとこと
さて、「主体的・対話的で深い学び」の授業を少しはイメージしていただけましたか。
今回は主体的・対話的で深い学びを、それぞれの学びを実現する場面に分けて考えましたが、実際にはこれらは相互に深く関連しています。
特に「主体的な学び」は全てに関わる重要な視点です。子ども自身が「面白そうだ!」「やれそうだ!」「やってみたい!」という気持ちをもって自ら活動を進めようとしなければ、上記の場面を設定しても「主体的・対話的で深い学び」は実現できません。「子ども自身が題材を進めていく」というイメージを大切していただけたらと思います。
また、「対話的な学び」における対話の対象は、子ども同士や教師だけではなく、保護者や地域の方々、専門家など広い視野で捉え、必要に応じて対話の場面を設定することも大切です。
★「主体的・対話的で深い学び」については、内容解説動画も参考になります。

*1:小学校学習指導要領(平成29年告示)解説 図画工作編 p.104-105

※2020年度版小学校図画工作科内容解説資料として扱われます。

「造形的な見方・考え方」って何?

図画工作科の教科の目標に、「造形的な見方・考え方を働かせ」とありますが、「造形的な見方・考え方」とは、何でしょうか? 「造形的な見方・考え方」を働かせている子どもの姿とは、例えばどのような姿でしょうか?

「造形的な見方・考え方」も新学習指導要領の注目ワードですね。解説には、「造形的な見方・考え方とは、『感性や想像力を働かせ、対象や事象を、形や色などの造形的な視点で捉え、自分のイメージをもちながら意味や価値をつくりだすこと』であると考えられる(*1)」と示されています。「~であると考えられる」と書かれているぐらいのものですし、そもそも「造形的な見方・考え方」は、直接それを育成することを目的としているのではなく、「三つの資質・能力を育成するために子どもが働かせるもの」です。ですから、「造形的な見方・考え方とはどういうものなのか」と深く掘り下げて言葉で理解しようとするよりも、造形的な見方・考え方を働かせている子どもの姿を思い描きながら指導を行うことを大切にしていただきたいです。

具体的な子どもの姿を思い描くには、教科書の情景写真の子どもの姿や、吹き出しの言葉が参考になります。二つの題材を例に考えてみましょう。

例1:「ちょきちょき かざり」(1・2上 p.12-13)

この題材は、1年生で最初に掲載されている工作の題材です。紙を折ってはさみで切って様々な形をつくり、つくった形で教室を飾ります。

折った紙を真剣なまなざしで見つめながら切っている姿(①)や、切った紙を開いて嬉しそうにしている姿(②)があります。「長く伸びていくよ」と言いながら紙を回して切っている姿(③)や、「引っ張ると伸びる形になったよ」と笑顔で言っている姿(④)も見られます。

つまり、紙を折ってできる形や、切ってできる形、切った紙を開いたときの形、そして紙を折ったり切ったり開いたりしたときに感じる手応えなど(対象や事象を、形や色などの造形的な視点で捉え)に対して、不思議に感じたり、面白がったり、納得したりしながら活動を進めている(自分のイメージをもちながら意味や価値をつくりだす)姿が、この題材で「造形的な見方・考え方を働かせている」姿なのです。

例2:「絵のぐ+水+ふで=いいかんじ!」(3・4上 p.8-9)

この題材は3年生で最初に掲載されている絵の題材です。水彩絵の具を初めて使うことを想定した題材で、絵の具と水と筆の使い方を試しながら思い付いたことを絵に表します。

画用紙に筆でかきながら「わたしだけの色と形を見つけたよ」と言っている子ども(①)や、筆の持ち方を工夫しながらかいている子ども(②)がいます。「水をたっぷり混ぜて」(③)、「色を重ねると」(④)といった工夫を示した写真もあります。

つまり、絵の具の色や水の量、筆の使い方などを工夫することによって生まれる形の感じや色の感じ、色の組み合わせの感じ、画用紙の上を筆が滑る感じや手応えなど(対象や事象を、形や色などの造形的な視点で捉え)に対して、不思議に感じたり、面白がったり、発見したり、納得したりしながら活動を進めている(自分のイメージをもちながら意味や価値をつくりだす)姿が、この題材で「造形的な見方・考え方を働かせている」姿なのです。

山田先生からひとこと
どうでしたか? 造形的な見方・考え方を働かせている子どもの姿が少し想像できたでしょうか。造形的な見方・考え方は、子どもの「主体的・対話的で深い学び」の実現に向かって授業を進められているかを確認する上でも大切な視点ですので、二つの事例を参考に、他の題材ページでも考えてみていただければと思います。

*1:小学校学習指導要領(平成29年告示)解説 図画工作編 p.11

※2020年度版小学校図画工作科内容解説資料として扱われます。

図画工作科の「知識」って?

新学習指導要領では図画工作科にも「知識」が新しく位置付きましたが、図画工作科の「知識」とは、どのようなことを指すのでしょうか? 色の明度や彩度、有名な美術作品の題名や作家名、表現技法などをしっかり覚えさせないといけない、ということなのでしょうか。

図画工作科の「知識」は、「対象や事象を捉える造形的な視点」のことで、〔共通事項〕(1)アには、「自分の感覚や行為を通して、形や色などの造形的な特徴を理解すること」と示されています。つまり、端的に言えば、図画工作科の「知識」は「形や色などの造形的な特徴を理解すること」となります。ただし、それは「自分の感覚や行為を基に」理解するものだということを忘れてはいけません。教師が「○○は△△なんですよ」と解説して言葉として覚えさせるのではなく、学習活動の中で、子ども自身が自分の感覚や行為を通して「○○は△△なんだ!」と気付いたり、分かったり、理解したりするものだということです。

では、題材の活動の中で子どもたちが気付く(分かる、理解する)知識とはどのようなことなのか。「自分の感覚や行為を通して気付く」とはどのような姿なのか。そのためにどのように指導するのか。教科書の題材、「ごちそうパーティー はじめよう!」(1・2上)を基に、もう少し具体的に考えてみましょう。

1.学習のめあて黒板

学習のめあて黒板の一つ目(手のマーク)が知識及び技能に対応しています。「つくり方を工夫して、思いに合う形を見付ける」と示されています。この、「つくり方を工夫する」というのは発揮して欲しい「技能」のことです。そして、感覚や行為を通して気付いて欲しい「知識」は、「(自分の)思いに合う形」、つまり子ども自身が「これがいい!」と感じたごちそう(食べ物)の形ということになります。

2.情景写真の子どもたちの姿

では「自分の思いに合う形を見付ける」とは具体的にどういうことか。それは、情景写真の子どもの姿で分かります。例えば27ページ右上の子どもは「ながくしたねんどをまいたよ」と言っています。子どもの視線は巻き上げている粘土に注がれています。「粘土に触れる」という行為をする中で、「粘土を伸ばして巻く」という活動を思い付き、それを丁寧に行っていく中で「自分の思いに合う形」が見付かった瞬間です。
ただ、この時の気付きは、まだ不確かで微かなものです。ひとつの題材の中で同じ形を何度もつくってみたり、別の機会にまたつくってみたりする中で、手触りや手応えといった子ども自身の身体感覚を伴った「知識」として形成されていくのです。
(※情景写真からの資質・能力の読み取りについては、連載第2回が参考になります。)

3.ちろたん

思いに合った形を見付けられるように、教師はどのように子どもたちに関わればよいのでしょうか。そんな時は、ちろたんに注目してみましょう。この題材でちろたんは「まるめたりのばしたりすると、いろいろなかたちがつくれるね」と言っています。子どもが感覚や行為を通して形を見付けたことを捉えて、共感的に受け止め、言葉にして確認することで、「気付き」を促しているのですね。ちろたんの言葉を参考にして、自身の学級の一人一人の活動に寄り添い、言葉がけをしていけばよいのです。

山田先生からひとこと
さて、新年度の第1回は、新学習指導要領でみなさんが気になっている「知識」について考えました。図画工作科で「知識」と言われると、少し身構えてしまいそうですよね。でも、もう大丈夫ですよね。「知識は、子どもたちが自分の感覚や行為を通して捉えるものなんだ」ということをしっかりと意識して、そんな子どもの姿を思い描いて授業を行ってみましょう。

※2020年度版小学校図画工作科内容解説資料として扱われます。

教科書を使って、授業をしてみよう!

授業中、教科書を開いていますか?
これまで教科書の構成や内容について読み解き、理解を深めてきました。いよいよ今回は、教科書を活用した授業を具体的に解説します。1・2上の題材「チョキチョキ かざり(*1)」を例に、「導入(であい)」「展開(ひろがり)」「振り返り(終末)」の授業の流れに沿って、教科書の活用を考えていきましょう。
★ちなみに:第1回連載の内容を先にお読みいただくと、より分かりやすいです!

「チョキチョキ かざり」では、2つの活動例を紹介しています。今回は、左ページの「おって チョキチョキ」の活動を例にお話しします。

導入(であい)で

まず、導入(であい)で大切なことは、およそ次の3つです。

ア)子どもたちが活動内容に関心をもつこと
イ)子どもたちが活動内容をつかむこと
ウ)子どもたちが活動のめあてをもつこと

今回はア→イ→ウの順で授業を進めますが、イ→ア→ウの順でもできます。
教科書の題材名概要文リード文学習のめあて黒板情景写真などを活用します。

ア)活動内容に関心をもつ

題材名を板書(掲示)した後、子どもたちと一緒にメインの情景写真に目を向けます。
子どものつぶやきを受け止めながら、言葉を投げかけて意欲を高めます。

 ★声かけの例 
「きれいだね!」
「楽しそうだね!」
「どうやってつくっているんだろうね?」

イ)活動内容をつかむ

活動の方向性をしっかりともてるように、題材名の上にある文章(=概要文)を読みます。
その上で、リード文を参考に主発問を投げかけます。

 ★声かけの例 
「今日は、色紙(色画用紙)を切って、いろいろな形の飾りをつくります」
「さあ、みんなも色紙を折って、切ってみよう! どんな形ができるかな? 教室を素敵に飾れるといいね」

ウ)活動のめあてをもつ

一人一人が活動にめあてをもてるように、学習のめあて黒板を活用します。
一つ一つ読み上げながら板書(掲示)して、子どもたちとめあてを共有します。

その他、色紙を「折って切って開く」一連の手順の写真を確認したり、材料・用具ページの「はさみの つかいかた」を活用したりします。

展開(ひろがり)で

教師は、一人一人の活動に目を配り、必要に応じて支援します。
支援が必要な状況としては、大きく以下の3つが想定さます。

ア)次の活動(アイデア)が思い浮かばない
イ)思うようにつくれない
ウ)めあての意識が薄れてきた

こんなときは、教科書の情景写真作品写真つくりかたチーロさんなどを活用します。

ア)次の活動(アイデア)が思い浮かばない

相談にのって一緒に考えます。情景写真作品写真などを見ながら一緒に考えるのもよいですね。

イ)思うようにつくれない

手を貸したり、教師がつくって見せたりします。つくりかたを参考に、一緒につくるのもよいですね。

ウ)めあての意識が薄れてきた

はさみで切ることだけが楽しくなったりして、めあての意識が薄れてくることがあります。こういうときは、学習のめあて黒板を再登場させるのもよいのですが、チーロさん登場というのもよい方法です。子どもの意欲を高めるように問いかけましょう。

 ★声かけの例 
「チーロさんが、『おもしろい かたちが できたら、ともだちに みせて あげよう』って言っているよ。みんなは、どんな形ができたかな? どうやってつくったのかな?」

振り返り(終末)で

ここでは学習のめあて黒板活動のあとでを活用します。
まず、導入(であい)で板書(掲示)した、めあてを確認します。実はそうしている時点で既に、自身の活動をめあてに照らして振り返っています。そして「どうでしたか?」と問いかけます。子どもが発表しなくても、表情を見れば気持ちは読み取れますよね。

そして最後に、活動のあとでを参考にしつつ、活動を通して感じたことや考えたことを問いかけます。

 ★声かけの例 
「ケイさんとアヤさんは~と思ったんだって。みんなはどんな気持ちになったかな?」

学習活動において、導入から終末までが首尾一貫していることは大切です。
授業の初めにもっためあてに照らして活動を振り返ることで、活動への成就感を得たり、活動に自信がもてたりします。それが、次の活動への意欲につながります。

山田先生からひとこと
授業のどの場面で教科書を活用するか考えていくうちに、題材の流れやポイントを押さえられたのではないでしょうか。教科書は、題材の大切なポイントを押さえるための情報が詰まっています。今回の内容を基に、是非、他の題材でも授業の流れを考えてみてください。今までよりも、授業の流れがはっきりするのではないでしょうか。

*1:平成27年度版 小学校図画工作科教科書 1・2上 P10-11

題材の「系統性」を意識してみよう!

ざっくり「絵の題材」、なんて言ってませんか?
そろそろ「今年は絵の題材がちょっと多かったかな?」などと1年間の題材分野の配分などを振り返る時期ですね。
でも、ちょっとまってください! ざっくり「絵の題材」なんて言ってしまいがちですが、同じ分野の題材でも、「系統」によってさらに細分化されているんです。
今回は、絵に表す題材を例に、題材の系統性について考えていきましょう。

題材の系統性って?

絵に表す題材にどんなものがあるか思い起こしてみてください。
「風景画」「人物画」「静物画」……。ん?? 確かに、絵画には主題によって分ける方法もありますが、日文の教科書では、別の捉え方で分類しています。下の表を見てください。

※画像クリックでPDFを開きます。

これは、絵の題材の系統表です。左側に注目してください。同じ「絵の題材」でも、大きく3つ、細かく見ると5つの系統に分かれています。「何をかくか」ではなく、「何を基に発想や構想の能力を働かせて、表すか」によって系統が立てられているんです。

絵(や立体、工作)に表す活動は、「感じたことや想像したこと、見たこと(中学年から)、伝え合いたいこと(高学年から)」を表す活動です(*1)。子どもたちは、表したいことを思い付いたり考えたりして(=発想や構想の能力)、表したいことに沿って表し方を工夫します(=創造的な技能)。この「表したいこと」の基になるのが、「材料や用具に触れること」「生活経験」「(テーマなどから)想像したこと」「物語」なんです。これらに加えて、「かく」とは異なる表し方の系統として、「版に表す」というのもあります。

系統が違うと、働かせる力もちょっと違ってくる

具体的に4年生の教科書題材で見てみましょう。

「わすれられないあの時」は、生活経験から表す題材です。日々の生活の中で心に残ったことを、そのときの気持ちが伝わるように工夫します。

「大すきな物語」は、物語から感じたこと、想像したことから表す題材です。物語を読んで、心に残った場面や好きな場面を思い浮かべて表したいことを考え、場面の様子や自分の気持ちに合わせて表し方を工夫します。

このように、前者が「子ども自身が経験した出来事」からそのときの心情を思い起こして表したいことを考えるのに対して、後者は「物語の世界」から想像を膨らませて感情移入することから表したいことを考えます。

また、「絵の具でゆめもよう」は、材料や用具に触れることから思い付いたことを表す題材です。初めに表したいことを決めるのではなく、材料に触れて操作しながら表したいことを考える中で、発想や構想の能力が発揮されます。

バランスよく題材をチョイスする

たとえば、4年生の1年間で3つの絵に表す題材に取り組んだとします。「物語」系統の題材が1つ、「生活経験」系統の題材が2つだったとすると、「材料や用具に触れること」や、「想像したこと」から表したいことを考える題材で働く資質・能力を発揮するチャンスが少なくなっていることになりますよね。もし、6年間ずっと「物語」と「生活経験」だけだったとすると……。バランスが悪いですよね。
子どもたちが「感じたことや想像したこと、見たこと、伝え合いたいこと」を思いのままに表現する力を育てていくためには、様々な系統の題材をバランスよく経験することが大切なんです。

山田先生からひとこと
どうでしたか? 今回は、題材の系統性について考えました。もちろん、「造形遊び」「立体」「工作」にもそれぞれ系統性があります。
どんな系統性があるのか関心を持ってくださった先生方は、是非、ご自身の学校で購入しておられる教師用指導書セットの中の「教科書題材配列一覧」や、日文のウェブページ https://www.nichibun-g.co.jp/textbooks/zuko/textbook/ (ページ下方の「題材配列一覧」より)をご覧になってくださいね。

おっと、前回の「謎」が残っていました

あ、そうでした。第2回の最後に紹介した、子どもの情景写真のことをお話ししますね。
図画工作科では、手や体全体を使って材料に触れたり働きかけたりする中で手応えや手ざわりを感じ取ったりすることを大切にしている教科です。この写真の子どもの右手と表情からは、そうしたことが伝わってくるように思いませんか? 授業中に子どもたちが時折見せるこうした姿を大切にしたいものです。それではまた次回。

*1:現行及び新しい学習指導要領の解説において、以下のように示されている。「低学年において表したいことは、自分の感じたことや想像したことが中心となるが、中学年から高学年になるにつれて、見たことや伝え合いたいことなどに広がる。」

情景写真・作品写真を読み解こう!

あなたは「ぼんやり」見る派?「じっくり」見る派?
前回は、題材ページ全体から授業の流れをイメージできることをお話ししました。今回は、情景写真(=子どもの活動風景の写真)と作品写真に注目します。
教科書には、魅力的な子どもの姿や活動の様子と、素敵な作品が数多く掲載されています。「ぼんやり」見ているだけでも楽しさが伝わってきますが、視点を定めて「じっくり」捉え直すと、その題材で大切にしたいことが見えてきます。
「ボーっと見てんじゃねーよ!」と誰かさんに叱られないよう、一緒に読み解いていきましょう。

情景写真を「じっくり」見てみよう

前回に引き続き、教科書3・4上「カラフルフレンド」(*1)の題材ページを見ていきましょう。
まずは、こちらの写真。

「ぼんやり」見ていると、楽しそうだなという感じです。もう少し「じっくり」見てみましょう。二人の子どもは、黄色とクリーム色のお花紙が交互に詰められた細長い袋を、くねっと曲げた様子を眺めて何かを話しています。「キリンに見えてきたよ」とイメージが広がってきたようです。実際に材料を組み合わせたり形を変えたりしながら、つくりたいものを思い付いていますね。「発想や構想の能力」を働かせている姿です。
さらに、左の女の子の視線は折れ曲がった袋の方に向いています。友だちの活動や作品に目を向け、そのよさや面白さを感じ取る「鑑賞の能力」を働かせているんですよね。

次に、こちらの情景写真を見てみましょう。

作品を置く場所を探している様子ですよね。よく見ると、女の子の視線は作品に向かっていませんねぇ。友だちと会話をしているのかもしれません。いろいろな場所に置いてみて、置いたらどんな感じがしたか、友だちと率直な感想を語り合う。これも、「鑑賞の能力」を働かせている姿なんですよね。

作品写真を「じっくり」見てみよう

さて、次は作品写真を「じっくり」見てみましょう。
題材をより深く理解するための大切な情報が、たくさん見つけられますよ。

まずは、こちらの二つの作品を見比べてみましょう。

「ビッグ犬」の体は一つの色だけを使ってつくっていますね。一方「みにまめちゃん」はいろいろな色を組み合わせてつくっています。このことから、この題材では子どもが自由に色を使っていいんだ、ということが分かります。

今度は、こちらの二つの作品を見比べてみましょう。

「ミミちゃんロボット」は26cm、「ロボ」は58cmです。このことから、子どもがつくりたいと思う「フレンド」の大きさは自由でよい、ということが読み取れます。つくる作品の大きさや何枚袋を使うかは、子どもが自由に選べるように保障することが大切ですね。

このように、作品写真を「じっくり」みることで、「題材における活動の幅をどのように設定したらよいのか」を捉えることができます。

ところで、情景写真と同様に、作品写真からも資質・能力を読み取ることができます。例えばさきほどの「ロボ」という作品は、一つの袋の中に少しずつ色の違うお花紙を詰める、という工夫が見て取れます。「色の組み合わせを工夫する」という「創造的な技能」を働かせたのだな、ということが分かりますね。

その他にも、大切なことがいっぱいつまっています

写真から読み取れることはまだまだあります。
ではここで練習です。こちらの写真を「じっくり」見てみましょう。

図工で大切にしたいことが読み取れそうな予感がします。
私の考えは次号の最後でお話しすることにして、今は謎のままにしておきます。
この写真からどんなことが読み取れるか、ぜひ親しい先生と話をしてみてください。

山田先生からひとこと
いかがでしたか?
今回は、情景写真や作品写真から活動の幅や資質・能力などを読み取ることで、題材を一歩深く理解できることについてお話ししました。写真という視覚的な情報は、みなさんの直観に働きかけてきます。だからこそ、「ぼんやり」見るのではなく、「じっくり」読み解く、という見方を身に付けましょう。もうワンステップ、授業をレべルアップすることができると思いますよ。

*1:平成27年度版 小学校図画工作科教科書 3・4上 P18-19

題材ページの見方を知り、授業の流れをつかもう!

題材ページの見方、知っていますか?
教科書の題材を授業で実施している、教科書の題材をもとに年間指導計画を立てている、という先生は多いと思います。ところで、教科書をどのように見て、情報を読み取り、活用しているでしょうか? 題材ページの仕組みをもっとよく知ると、題材のポイントがはっきりと分かり、授業のイメージをしっかりともって、子どもたちと授業に挑めるようになります。
第1回は、教科書の「題材ページ全体の見方」を探っていきましょう。

題材ページのレイアウトを知り、授業の流れを捉えよう

これは、教科書3・4上「カラフルフレンド」(*1)の題材ページです。教科書は、基本的に「一つの題材につき、1見開き」です(一部、例外もあります)。また、見開きの左上から右下へ向かって、「導入→展開→振り返り」のおおよその授業の流れに沿うように構成されています。(*2)

左上から順に見ていきましょう。まず「題材名」と、「子どもたちを活動へといざなうための言葉(=リード文)」、「学習のめあて黒板」があります。

導入から、徐々に活動が展開していきます。左上の材料を選んだり組み合わせ方を考えたりするところから始まり、その右下には「キリンに見えてきたよ」などとイメージが膨らみ始めた様子が分かる写真があり、中央から右ページにかけてつくりあげたカラフルフレンドの写真が並んでいます。

そして最後に右下、完成したカラフルフレンドをお気に入りの場所に連れて行って撮影して活動が終了する、というような授業の流れであることが分かります。

この「題材ページの見方」を知っておくと、授業の流れが一目でつかみやすくなります。

<導入>「学習のめあて黒板」と「リード文」をおさえよう

授業の始まり、導入の場面で大切になるのは、次の2つです。

①「主発問」で、子どもたちを活動へといざなう
②「学習のめあて」を子どもたちと共有する

これらを考えるヒントが、教科書の中にあります。

教科書の左上のあたりに注目してみましょう。題材名の下に、「リード文(=子どもたちを活動へといざなうための言葉)」が示されています。子どもたち自身が、題材名とリード文を読むことで、活動のイメージが膨らみ期待感や意欲が高まるように考えられています。もちろん、先生が学級の子どもたちの姿を思い起こしながら主発問を考えるときにも役立ちます。

また、題材名の右側には、4つの文章が書かれた「学習のめあて黒板」があります。活動に取り組む際に大切にしたいことが、子どもたちに向けて書かれています。上から順に「造形への関心・意欲・態度」、「発想や構想の能力」、「創造的な技能」、「鑑賞の能力」に対応しています。導入の場面でめあてを子どもたちと確認することで、この題材で大切にしたいことを学級全体で共有することができます。

<展開>「情景写真」や「作品写真」から、資質・能力や子どもの思いを読み取ろう

子どもの活動風景の写真(=情景写真)や作品の写真(=作品写真)は、単に活動例や作品例を示しているだけではありません。その題材で発揮されるであろう資質・能力や、大切にしたい子どもの思い等を読み取ることができます。また、「学習のめあて黒板」に示された4つの観点とも対応しています(詳しくは次回説明したいと思います)。

<振り返り>「活動のあとで」は、学びを実感している子どもの姿

題材ページの一番右下には、吹き出しで示された「活動のあとで」の言葉があります。題材を終えた後、活動を振り返って子どもたちからこんなつぶやきが聞こえてきてほしい、ということを表しています。

「見つけた場しょに友だちをおいたら、もっとすてきに見えたよ」という言葉からは、「自分がつくった大切な友だちが素敵に見えてうれしかった」という心情とともに、「作品は置く場所や飾る場所で印象が変わるんだな」という、つくることだけで完結しない造形活動の奥深さや面白さを感じている子どもの姿が読み取れます。

「活動のあとで」は、活動を通して得た学びを、授業の中だけにとどまらず、「次の活動や生活の中にも生かしていきたいな」と思っている子どもの姿です。これは、新学習指導要領(*3)に示された「学びに向かう力・人間性等」と重なる部分ですね。

活動を終えた後、この文を見ながら「みんなはどう感じた?」と投げかけ、子どもたちそれぞれが「活動のあとで」感じたことを話し合ってみてもよいでしょう。

山田先生からひとこと
教科書は、学習指導要領の考え方を踏まえてつくられています。教科書の見方が分かると、授業の見方や子どもの見方、そして図画工作科という教科への理解を深めることにつながります。授業に自信がもてないという先生も、教科書の仕組みを知って、授業のレベルアップに生かしてください!

補足:複数の活動例を紹介している題材ページ

ちなみに、1つの題材ページの中で、複数の活動例を紹介しているものもあります。

これは、教科書1・2下「ともだち見つけた!」の題材ページです。左ページでは、ルーペ(理科の授業でも使いますよね)を持ってともだちを探す、という活動例が示されています。右ページでは、まず自分のカメラをつくり、それを持ってともだちを探す活動例が示されています。

どちらも、「ともだち(顔の形に見えるもの)を見つける」という活動を通して、身の回りの形や色に着目する」ことをめあてとした鑑賞の活動ですが、「虫めがね」と「カメラ」というアイテムが異なります。児童や学校の実態に合わせて、適した方を選ぶことが大切です。

複数の活動例を紹介している題材ページは、「虫めがねで」「つくったカメラで」といった「見出し」がついているので、気をつけて見てみるといいですね。(*4)

*1:平成27年度版 小学校図画工作科教科書 3・4上 P18-19
*2:1見開き内で、2つの題材を掲載しているページも少しですがあります。また、「左上→右下へと流れていく」ことを原則としつつ、活動のゴールイメージから始まる題材ページや、作品写真を中心に構成しているページもあります。題材のポイントとなる場面が分かりやすいように、適したレイアウトを考えてつくられています。
*3:小学校学習指導要領(平成29年文部科学省告示第63号)
*4:右ページ下の「えに かいて しょうかいしよう」は、「虫めがね(もしくはカメラ)を持って友だちを探した後、見付けた友だちを絵に表す」という、鑑賞を表現へと関連付けた活動例を示しています。