使ってみよう!ずがこうさくの教科書

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図画工作科の「知識」って?
2019.04.23
使ってみよう!ずがこうさくの教科書 <第5回>
図画工作科の「知識」って?
山田 芳明(やまだ・よしあき)

新学習指導要領では図画工作科にも「知識」が新しく位置付きましたが、図画工作科の「知識」とは、どのようなことを指すのでしょうか? 色の明度や彩度、有名な美術作品の題名や作家名、表現技法などをしっかり覚えさせないといけない、ということなのでしょうか。

図画工作科の「知識」は、「対象や事象を捉える造形的な視点」のことで、〔共通事項〕(1)アには、「自分の感覚や行為を通して、形や色などの造形的な特徴を理解すること」と示されています。つまり、端的に言えば、図画工作科の「知識」は「形や色などの造形的な特徴を理解すること」となります。ただし、それは「自分の感覚や行為を基に」理解するものだということを忘れてはいけません。教師が「○○は△△なんですよ」と解説して言葉として覚えさせるのではなく、学習活動の中で、子ども自身が自分の感覚や行為を通して「○○は△△なんだ!」と気付いたり、分かったり、理解したりするものだということです。

では、題材の活動の中で子どもたちが気付く(分かる、理解する)知識とはどのようなことなのか。「自分の感覚や行為を通して気付く」とはどのような姿なのか。そのためにどのように指導するのか。教科書の題材、「ごちそうパーティー はじめよう!」(1・2上)を基に、もう少し具体的に考えてみましょう。

1.学習のめあて黒板

学習のめあて黒板の一つ目(手のマーク)が知識及び技能に対応しています。「つくり方を工夫して、思いに合う形を見付ける」と示されています。この、「つくり方を工夫する」というのは発揮して欲しい「技能」のことです。そして、感覚や行為を通して気付いて欲しい「知識」は、「(自分の)思いに合う形」、つまり子ども自身が「これがいい!」と感じたごちそう(食べ物)の形ということになります。

2.情景写真の子どもたちの姿

では「自分の思いに合う形を見付ける」とは具体的にどういうことか。それは、情景写真の子どもの姿で分かります。例えば27ページ右上の子どもは「ながくしたねんどをまいたよ」と言っています。子どもの視線は巻き上げている粘土に注がれています。「粘土に触れる」という行為をする中で、「粘土を伸ばして巻く」という活動を思い付き、それを丁寧に行っていく中で「自分の思いに合う形」が見付かった瞬間です。
ただ、この時の気付きは、まだ不確かで微かなものです。ひとつの題材の中で同じ形を何度もつくってみたり、別の機会にまたつくってみたりする中で、手触りや手応えといった子ども自身の身体感覚を伴った「知識」として形成されていくのです。
(※情景写真からの資質・能力の読み取りについては、連載第2回が参考になります。)

3.ちろたん

思いに合った形を見付けられるように、教師はどのように子どもたちに関わればよいのでしょうか。そんな時は、ちろたんに注目してみましょう。この題材でちろたんは「まるめたりのばしたりすると、いろいろなかたちがつくれるね」と言っています。子どもが感覚や行為を通して形を見付けたことを捉えて、共感的に受け止め、言葉にして確認することで、「気付き」を促しているのですね。ちろたんの言葉を参考にして、自身の学級の一人一人の活動に寄り添い、言葉がけをしていけばよいのです。

山田先生からひとこと
さて、新年度の第1回は、新学習指導要領でみなさんが気になっている「知識」について考えました。図画工作科で「知識」と言われると、少し身構えてしまいそうですよね。でも、もう大丈夫ですよね。「知識は、子どもたちが自分の感覚や行為を通して捉えるものなんだ」ということをしっかりと意識して、そんな子どもの姿を思い描いて授業を行ってみましょう。

※2020年度版小学校図画工作科内容解説資料として扱われます。