使ってみよう!ずがこうさくの教科書

使ってみよう!ずがこうさくの教科書

「造形的な見方・考え方」って何?
2019.05.10
使ってみよう!ずがこうさくの教科書 <第6回>
「造形的な見方・考え方」って何?
山田 芳明(やまだ・よしあき)

図画工作科の教科の目標に、「造形的な見方・考え方を働かせ」とありますが、「造形的な見方・考え方」とは、何でしょうか? 「造形的な見方・考え方」を働かせている子どもの姿とは、例えばどのような姿でしょうか?

「造形的な見方・考え方」も新学習指導要領の注目ワードですね。解説には、「造形的な見方・考え方とは、『感性や想像力を働かせ、対象や事象を、形や色などの造形的な視点で捉え、自分のイメージをもちながら意味や価値をつくりだすこと』であると考えられる(*1)」と示されています。「~であると考えられる」と書かれているぐらいのものですし、そもそも「造形的な見方・考え方」は、直接それを育成することを目的としているのではなく、「三つの資質・能力を育成するために子どもが働かせるもの」です。ですから、「造形的な見方・考え方とはどういうものなのか」と深く掘り下げて言葉で理解しようとするよりも、造形的な見方・考え方を働かせている子どもの姿を思い描きながら指導を行うことを大切にしていただきたいです。

具体的な子どもの姿を思い描くには、教科書の情景写真の子どもの姿や、吹き出しの言葉が参考になります。二つの題材を例に考えてみましょう。

例1:「ちょきちょき かざり」(1・2上 p.12-13)

この題材は、1年生で最初に掲載されている工作の題材です。紙を折ってはさみで切って様々な形をつくり、つくった形で教室を飾ります。

折った紙を真剣なまなざしで見つめながら切っている姿(①)や、切った紙を開いて嬉しそうにしている姿(②)があります。「長く伸びていくよ」と言いながら紙を回して切っている姿(③)や、「引っ張ると伸びる形になったよ」と笑顔で言っている姿(④)も見られます。

つまり、紙を折ってできる形や、切ってできる形、切った紙を開いたときの形、そして紙を折ったり切ったり開いたりしたときに感じる手応えなど(対象や事象を、形や色などの造形的な視点で捉え)に対して、不思議に感じたり、面白がったり、納得したりしながら活動を進めている(自分のイメージをもちながら意味や価値をつくりだす)姿が、この題材で「造形的な見方・考え方を働かせている」姿なのです。

例2:「絵のぐ+水+ふで=いいかんじ!」(3・4上 p.8-9)

この題材は3年生で最初に掲載されている絵の題材です。水彩絵の具を初めて使うことを想定した題材で、絵の具と水と筆の使い方を試しながら思い付いたことを絵に表します。

画用紙に筆でかきながら「わたしだけの色と形を見つけたよ」と言っている子ども(①)や、筆の持ち方を工夫しながらかいている子ども(②)がいます。「水をたっぷり混ぜて」(③)、「色を重ねると」(④)といった工夫を示した写真もあります。

つまり、絵の具の色や水の量、筆の使い方などを工夫することによって生まれる形の感じや色の感じ、色の組み合わせの感じ、画用紙の上を筆が滑る感じや手応えなど(対象や事象を、形や色などの造形的な視点で捉え)に対して、不思議に感じたり、面白がったり、発見したり、納得したりしながら活動を進めている(自分のイメージをもちながら意味や価値をつくりだす)姿が、この題材で「造形的な見方・考え方を働かせている」姿なのです。

山田先生からひとこと
どうでしたか? 造形的な見方・考え方を働かせている子どもの姿が少し想像できたでしょうか。造形的な見方・考え方は、子どもの「主体的・対話的で深い学び」の実現に向かって授業を進められているかを確認する上でも大切な視点ですので、二つの事例を参考に、他の題材ページでも考えてみていただければと思います。

*1:小学校学習指導要領(平成29年告示)解説 図画工作編 p.11

※2020年度版小学校図画工作科内容解説資料として扱われます。