情報・美術教科横断型(STEAM型)授業「ボックスアート制作」(第1学年)

※本実践は美術科と連携した取り組みです。美術科としてのmy実践事例はこちら

1.はじめに

 本単元は、聖学院高等学校の高校1年生を対象に実施した、情報科と美術科による教科横断型(STEAM型)授業の実践例である。

 本校にはレギュラー・アドバンスクラスに加え、「ものづくり・ことづくり」を通じてグローバルな人材を育成するコース「GIC(グローバルイノベーションクラス)」が併設されている。このGICが掲げるのは、探求型教育を推し進めた「共創型の学び」で、知識の一方向的伝達ではなく、対話とフィードバックを通じて新たな価値を創造することを重視する。本単元では、情報科と美術科の教員が学習過程を共同で設計し、チームティーチングを行っている。それぞれの専門性を融合させることで、情報デザインで扱う題材の可能性を広げるのと同時に、生徒とともに創造性な学びを実現している。
 本単元のテーマ「ボックスアート」は、蓋のない木製ボックス内に3~4枚のマットボードパネル(レイヤー)を階層状に配置し、限られた空間に奥行きのある世界を生み出す造形表現である。本校では、各レイヤーの図案を、液晶ペンタブレットとAdobe Photoshop、そしてIllustratorを用いて制作し、作成した図案をレーザーカッターで切り出して制作する。これらデジタル技術を導入することで、アナログのみでは困難だった精緻かつ複雑な表現が可能になり、学びにおける創造性は各段に向上した。また、共創型の実践として、教師による生徒へのフィードバックはもちろん、生徒間による相互サポートや改善のための講評の機会を適宜盛り込み、生徒は自らの制作結果を検証・比較することで、都度、学習上の課題を見つけ、新たな目標を設定していく。

本時で使用したデジタル教材の画面。

 この活動は「情報Ⅰ」の「コミュニケーションと情報デザイン」に関わる要素が多分に含まれている。
 情報デザインとは、目的と受け手に応じて情報を整理・構造化し、わかりやすく伝えるための知識、表現および技術である。本単元では、生徒が自らテーマ(伝えたい情報)を設定し、「ボックスアート(=レイヤー構造)」という形式を用いて視覚的・空間的に構造化する。これは、情報を階層化して整理する情報デザインの思考そのものであり、同時に美術科における「構図」や「空間表現」の探究でもある。さらに、その過程では、プロトタイプ段階から生徒や教員、外部企業・講師からのフィードバックを受けるなどして、情報伝達の意図と表現のずれを修正する。
 美術科の観点では、「層の重なり」を核に据えた造形技術・表現の習得を目指す。切り抜いたパネルの階層配置によって、空間性と奥行きを生み出し、工作精度や色彩計画を意図に沿って選択する力を育む。ここでも共創が働き、ピアレビューで構図・配色・形態の根拠を言語化し、他者の視点を取り入れて修正案を表現する。表現と意図、受け手の理解を往還させる過程が学びの要となる。

 なお、本題材に取り組む前段階として、美術科の授業でレイヤー構造を理解するための予備学習を行っている。具体的には、透明シートに描いた絵を重ねて立体表現を探る教材「レイヤーの彫刻」を用いて空間表現の基礎を体感させ、さらに紙上で図形の重なりを利用した「切り絵」の制作を通して、色彩と平面構成力を学ぶ機会を設けている。これらの学習を経て、本単元のボックスアートの制作に取り組むことで、生徒はレイヤーの概念や空間把握の素養を身につけた状態から創作を開始することができる。

2.単元名

情報・美術教科横断型(STEAM型)授業「ボックスアート制作」(実施学年:第1学年) 全18時間

3.単元の目標

【知識及び技能】
 液晶ペンタブレットとPhotoshopを活用し、重なりによる空間表現を意識したオリジナルの図案(線画データ)を制作する技能を習得する。作成した図案データはレーザーカッターで正確に切り出すため、必要な画像データ形式や線の条件を満たすよう適切に編集・調整できることを目指す。完成作品では、複数のレイヤーを配置することで遠近感や奥行きを表現し、デジタルで制作した原画を立体物として的確に出力・組み立てる技能を身につける。

デザインソフトを用いて作品の土台となるデータを作成している様子。

【思考力・判断力・表現力等】
 レイヤーごとの形状や色の違い、重なりによって生まれる空間の見え方や各パーツ間の関係性に着目し、それらを効果的に活かした構成を考える力を養う。自ら設定したテーマに沿って、どのような図像表現をすれば奥行きや物語性が生まれるかを思索し、独創的で動きのある作品構成をデザインする創造的思考力・表現力を育成する。また、デジタル(レーザーカッター)とアナログ(着彩)のそれぞれの特性を理解し、それらを組み合わせて表現する判断力を身につける。

作成したデータをもとに、レーザーカッターで材料を加工。切り出した部材に着色する工程。

【学びに向かう力・人間性等】
 制作の各過程で記録(写真・メモ)を取り、自分の作品を客観的に捉えて振り返る習慣を身につける。作品のコンセプトやねらいを言語化して他者に説明し、自分の表現を見つめ直すことで、よりよい発想や改善点を見出す力を育てる。また、各自のテーマに必要な資料を主体的に収集するリサーチ力や、制作計画を状況に応じて柔軟に見直し改善する力を養う。さらに、協働的な学びの姿勢を重視し、ICTスキルに長けた生徒が周囲をサポートするなど、互いの得意分野を教え合いながら学習を進める風土を醸成する。

作品のコンセプトやねらいを言語化しながら、記録した制作過程を振り返り、彫刻表現について理解を深める。

4.単元の評価規準

ア 知識・技能

イ 思考・判断・表現

ウ 主体的に学習に
取り組む態度

●複数枚のマットボードで構成されるレイヤーを効果的に活用し、作品に遠近感や奥行きを与えた表現ができている。
●背景と各レイヤー(前景・中景・後景)との関係性を理解しながら、デジタル上で原画(線画データ)を正確に作成している。
●液晶タブレットおよびPhotoshop、Illustratorの基本操作を身につけ、レーザーカッターの加工条件(または仕様)に則して素材を正確に切り出すためのデータを用意できる。

●箱の中に配置した素材一つひとつに形状や色彩への工夫が見られ、各自の意図が独自性をもって動きのある構成として表現されている。
●レイヤー同士の重なりや空間構成を工夫することで、自分のテーマに即したイメージを効果的に表現している。
●デジタルツール(レーザーカッター)とアナログ手法(着彩)のそれぞれの特性を理解し、作品に取り入れている。
●制作過程における判断の質(図案の修正・配色の変更等)にも工夫や論理性が見られる。

●各自が設定したテーマに必要な資料を主体的に収集し、アイデアスケッチや試作を丁寧に行っている。
●制作プロセスを写真等で記録し、自分の作品の進捗や完成度を客観的に振り返っている。
●行き詰まった際には計画を修正したり新たな発想を取り入れたりしながら、最後まで粘り強く制作に取り組んでいる。
●ICT操作や表現技法で困っているクラスメイトに自発的に声をかけ、互いに助け合いながら学習を進める協働的な姿勢が見られる。

5.単元の指導と評価の計画

 以下に、本単元(全18時間)の指導計画と評価の概要を示す。各段階における生徒の主な学習活動、教員の指導上の留意点、評価方法を表形式でまとめる。

学習活動・内容

評価の観点

評価の方法

指導上の留意点

1
導入

●ボックスアート制作のテーマや必要な素材について説明を受け、参考作品を鑑賞してイメージを膨らませる。
●事前課題である「レイヤーの彫刻」を鑑賞し直し、レイヤー表現を確認する。
●制作工程全体の見通しを持つ。

●行動観察(口頭で理解度を確認)

●作品例を提示し、具体的な完成イメージを持たせる。
●レイヤー表現の効果を視覚的に理解させる。

2、3
構想

●各自の発想でテーマを設定し、ラフスケッチを行う。
●前景・中景・遠景の配置を考慮しながら、構想を練る。

●行動観察(口頭によるフィードバック)

●生徒の自由な発想を尊重し、多様なアイデアを引き出す。
●出されたアイデアに対して口頭によるフィードバックを行う。
●空間構成のポイントについて助言する。

4、5
実習:液晶タブレット講習

●液晶タブレットのセットアップとPhotoshopの基本操作を学ぶ。
●レイヤーの作成、写真のトレース、ショートカット操作等を習得する。

●ワークシート(操作習熟度合をはかるチェックリスト)

●外部講師等と連携し、操作を確実に習得させる。
●操作習得を確実にするために、チェックリストを配布する。
●レイヤー機能の重要性を徹底して指導する。

6~9
制作:線画デザイン

●テーマに沿って線画データをレイヤーごとに制作し、提出して確認を受ける。
●途中経過をポートフォリオ(Googleスライド)にまとめ、自己評価アンケート(Googleフォーム)に回答する。

●行動観察(ピアレビュー)
●成果物(図案データ、観点別の総合評価)

●出力を見据えた解像度・線幅等について指導する。
●生徒間のピアサポートを促進する。

10
データ変換

●線画データをレーザーカッター用の形式に変換し、必要な調整を行う。

●成果物(形式および内容の達成状況を確認)

●適切なタイミングで一斉説明を行い、手順資料(動画や動的なサイト)を配布する。

11
レーザーカッター出力

●マットボードをレーザーカッターで切り抜く。

●成果物(加工精度の達成状況)
●行動観察(トラブルへの対応状況)

●安全管理を徹底し、加工精度を確認する。

12~15
着彩・組み立て

●マットボードに着彩し、箱の内部に配置して立体作品として組み上げる。

●成果物と行動観察(表現の質/工夫・改善の有無)

●色彩表現および立体構成の工夫を促す。

16
振り返り

●作品を撮影し、ポートフォリオ(Googleスライド)にまとめ、自己評価アンケート(Googleフォーム)に回答する。

●成果物(観点別の総合評価)

●対話的な鑑賞・講評を取り入れる。

17
成果発表(学期末)

●校内展示会で作品を公開し、来場者に向けて作品の意図や制作過程を解説する。

●行動観察(発表態度および言語化の質)

●成功体験を共有し、次への動機づけを図る。

6.本時の目標【1限目】

 単元全体の学習課題である「ボックスアート」制作の目的と概要を理解し、レイヤー構造による空間表現の面白さに気づくことができる。
 事前活動で得た知見を踏まえ、自分がどのようなテーマでどのような世界を表現したいかを思い描くことができる。

7.本時の流れ【1限目】

時間

学習内容・学習活動

導入
10分

●実物の作品例を提示し、本単元で取り組む課題の具体的なイメージを掴む。
●直前に行った「レイヤーの彫刻」を振り返り、重ねる表現の効果について意見交換を行う。

展開
35分

●ボックスアート制作の手順とポイントについて理解する。
●箱内の空間構成(前景・中景・遠景)や配置方法について理解し、データがレーザーカッターでどのようにカットされるかの実演を観察し、理解を深める。

まとめ
5分

●本時の要点を振り返り、次回に向けての宿題として、作品テーマの検討および参照資料の収集について確認する。

8.まとめ

【単元の成果】
 生徒は情報科と美術科の両面にまたがるスキルを習得し、デジタル作画・画像編集・デジタル加工といった高度なICT技能に果敢に挑戦した。完成作品はいずれもレイヤーを活かした奥行きのある仕上がりで、独創的なテーマ表現を実現していた。デジタルツールの活用により、描き直しやレイヤー管理の利点を実感し、テクノロジーを創作に活用する楽しさに気づく契機となった。

細部のデザインを調整し、レーザーカッターの加工条件を踏まえて最終データを完成させる。

【指導上の成果】
 情報科と美術科のチームティーチングにより、それぞれの専門性を活かして弱点を補完できた。
 生徒とともに試行錯誤することを意識し、過剰な先回りを避けて思考の余白を残すことで、生徒の主体性と創造性が引き出された。生徒同士の支え合いも自然に生まれ、協働学習の文化が醸成された。

【課題と対応】
 生徒ごとの進度差が大きく、デジタル作画に時間を要する生徒と早く終える生徒が生じた。作業空間を分けるなど環境面の工夫により、各自に合わせたサポートを提供できた。
 機材・ソフトのトラブルには、バックアップ案の準備や手順のマニュアル化で対応し、次年度に向け改善を図る。

【今後の展望】
 アナログ素材・技法への触れ直しと最新デジタル技術の融合をさらに推進し、日常とは異なる視点や素材に触れる体験を意図的に組み込む。ゼミ形式の探究活動にも、本単元で培ったデザイン思考・情報デザイン・デジタルファブリケーションの知見を横展開し、生徒が自らの探究で自在に活用できるよう支援する。

【実施学年・時間数】
高校1年生・2時間/1コマ×全9コマ=18時間

【連携】
美術科(伊藤隆之教諭)とのチームティーチング
外部講師(液晶タブレット講習)

情報Ⅰ「第2章 コミュニケーションと情報デザイン 3節 情報デザイン」(第2学年)

1.はじめに

 本校は千葉県北東部の成田市に所在する私立学校であり、一学年は原則、付属中学校からの内進クラス3クラス、高校からの入学者クラス5クラスの計8クラス(1クラス40名程度)で構成されている。高校新課程情報科の授業は、「情報Ⅰ」を2年次に2単位で実施している。
 2つあるコンピュータ教室は令和5年度にリニューアルを行い、両教室のコンピュータには主なアプリとしてGoogle Chromeブラウザ、Googleドライブ、MS-Office、Minecraft Education、Python環境などをインストールしている。第1教室はWindows 11のデスクトップを導入し、秀丸エディタ、Visual Studio、VirtualBOX(Ubuntu仮想マシン)などをインストールしており、プログラミングに関する実習だけでなく、Linux環境を通じたネットワーク環境構築の実習もできるようにした。第2教室ではMacBook Airを導入し、Apple純正のアプリに加えて、Adobe Creative Cloud(Adobe CC)も取り入れることでクリエイティブな作業の実習環境を充実させた。同時に、移動式の生徒机を導入して生徒がグループワークを進めやすい設備を整えている。これにより、これまでのプレーンなWindows PC環境とは一線を画した、単元に応じた教室の使い分けが可能になっている。なお、当校の付属中学校では、技術科においてLEGOマインドストームやポスターセッションの実習を行い、高校情報科との連携を図っている。さらに、1人1台必須購入のiPadにはGoogle for Educationがインストールされており、他教科でもICTを活用した授業を行っている。
 情報科はiPadと教室のPC環境をうまく使い分けられるように、授業を展開している。
 例えば、Googleドライブを導入して校内生徒用のファイルサーバーを廃止し、実習用ファイルはすべて、クラウドのGoogleドライブにアップするようにした。そして、実習で作成したファイルは、Google Classroomを通じて提出させるようにしている。さらに、Google Classroomでは日々の授業の連絡を発信しており、当日の授業内容も予告することで、授業の導入部分の説明時間の削減に努めている。なお、Googleアプリは他にも活用している。
 旧課程時も実施していたグループワークのプレゼン実習では、作業はPCで行い、実際の発表で提示するときはiPadを活用するなど生徒は自発的に機器を使い分けている。アプリについてはPowerPointとGoogleスライドのどちらを活用してもよいと指導したところ、こちらは多くの生徒がGoogleスライドで作業を進めていた。理由としては、共同作業のしやすさはGoogleスライドの方がよいとのことであった。
 しかしながら、課題も感じている。直感的に扱えるコンピュータが今日の世の中には溢れていることで、コンピュータに対する技術的なハードルは過去の生徒と比較して明らかに下がっているが、PC環境でのファイル保存やフォルダ(ディレクトリ)の概念、キーボード操作など、昔からコンピュータを扱っている大人であれば体得しているであろうスキルや知識が身についていない生徒が多い。消費者として情報の活用はできても、発信者となるための基礎的なスキル・知識が不十分なまま次のステージに送り出すわけにはいかない。消費者と発信者両方の立場を理解した、バランス感覚を持つデジタル・シティズンシップの指導が欠かせないと考えている。
 本実践で紹介する情報デザインは、プロのクリエイターも活用しているAdobe Photoshopを取り入れたものである。「防犯ステッカーの作成」を実習課題として設定しており、防犯ステッカーの目的や組み込むべき情報をコンパクトにまとめるにはどうすれば効果的かを考える時間としている。

2.単元名

「第2章 コミュニケーションと情報デザイン 3節 情報デザイン」(実施学年:第2学年) 4時間

3.単元の目標

【知識及び技能】
 情報デザインの考えを通じ、情報技術の活用により問題の発見・解決する力を身につけていく。

【思考力・判断力・表現力等】
 問題の発見・解決に向けて、集めた情報と情報技術を適切かつ効果的に活用する力を身につけていく。

【学びに向かう力・人間性等】
 情報や情報技術を適切かつ効果的に活用し、社会の発展に寄与していく態度を育み、資質・能力を高めていく。

4.単元の評価規準

ア 知識・技能

イ 思考・判断・表現

ウ 主体的に学習に
取り組む態度

・情報デザインの意味について理解している。
・情報デザインの作業手順、問題発見の重要性を踏まえ、デザインの要件に必要な事項を理解している。
・作品を製作するソフトウェアを操作する技能を身につけている。

・情報デザインの考えをもとに、伝えたい情報を表現することができる。
・身近な問題を考え、その解決方法として、情報デザインの手法を適切に選択できる。
・要件の定義など情報デザインの視点から考えることができる。

・情報デザインを通じ、問題解決に取り組もうとしている。
・グループの話し合いに積極的に関与しようとしている。
・積極的にアイディアを出し、他者の意見を尊重しながら問題を解決しようとしている。
・問題への当事者意識を持っている。
・評価・改善の取り組みの重要性を理解し、よりよいものをつくろうとしている。

5.単元の指導と評価の計画

学習活動・内容

評価の観点

評価の方法

1

・情報デザインとは
・情報デザインのプロセスと問題の発見
―3人1グループで「防犯ステッカー」を作成することを説明する。

行動観察
・抽象化・可視化・構造化の3つの手法を理解しているか。
・情報デザインの活用例に関心があるか。
・作業手順を実践しようとする意欲はあるか。

2

・デザインの要件と設計・試作
・評価と改善・運用
<3人1グループでの話し合い活動>
―iPadアプリGoogle Jambordでグループ用のボードを作成する(内容は話し合い用のボード、各々のラフスケッチ用のボードを1ファイルで作成)。
<情報収集→意見の集約→デザインのラフスケッチ作成(まとめた意見をもとに個人で作成)>

行動観察
・デザイン要件を理解しているか。
・情報収集と分析を通じ、解決すべき問題は何かを捉えることはできるか。
・iPadアプリを効果的に活用しようとする意欲はあるか。
・主体的・積極的に話し合い活動に参加しているか。

3

・前時の続き
<3人1グループでの話し合い活動と作成の実習>
―ラフスケッチの意見交換→Photoshop(MacBookを使用)を使ったデザインの組み立て。

行動観察
・主体的・積極的に話し合い活動に参加しているか。
・要件定義を理解しているか。
・PCでの作業における保存とファイル管理を理解できるか。

4

・前時の続き
<作成の実習>
―前時の続きとして、Photoshop(MacBookを使用)を使ったデザインの組み立て。

同上

5

・前時の続き
<実習で作成した作品の完成と提出>

行動観察
・期限を守り完成させることができたか。
・アップロード作業が難なくできるか。

6.本時の目標

 学んだ情報デザインを効果的に表現するための考えと技術を向上させる。

7.本時の流れ

時間

学習活動・内容

指導上の留意点

評価

導入
5分

・前回までの知識の確認。
・本時で使用するアプリへのログイン。

・3人1グループ体制で作業を進めていくことを確認する。
・成果物となる作品は話し合い活動で得た見解を各々でデザインすることを確認する。

ア、イ、ウ
行動観察

展開1
10分

・話し合い活動の続き。
―話し合いにはGoogle Jamboardを使用し、意見の集約や方向性をまとめていく。
―ラフスケッチから各々で話し合った内容を設計していく。

・クラウドベースのアプリはiPadでもMacでもどの端末でも利用できることを再確認する。
・ラフスケッチから、各々が話し合いを通じてデザインをどのようにイメージしているかを可視化していくことを確認する。

イ、ウ
行動観察

展開2
10分

・Mac端末によるPhotoshopの活用。
・ファイルの生成と保存。

・Photoshopの起動とファイル保存について説明する。
・ファイルの保存先はクラウド内の領域であることを説明する。

ア、ウ
行動観察

展開3
15分

・ラフスケッチをもとに本番デザインの組み立て。

・作業はMac、ラフスケッチの参照やチュートリアルの確認はiPadを使用することを説明する。
・何らかのトラブルが発生しても被害を最小限にできるように、上書き保存はこまめに行うよう指導する。

ア、イ、ウ
行動観察

まとめ
5分

・ファイルを保存する。
・次回の作業の展望を確認する。

・保存は各々で対応する。
・グループで次回に向けての意思や方向性を定める。

ア、イ、ウ
行動観察

8.まとめ

 作業で使用するAdobeのアプリはPhotoshopとした。画像編集等はスマホアプリを上手に活用している者も多いが、プロも使用する高度な画像編集アプリを使用させることで、デザインの編集などがなぜ職として成り立つのかを考えるきっかけにもなると考える。
 たとえば、画像の明るさの変更など、近年はスマホアプリのおかげでボタンを押せば簡単に実現できることが増えているが、ゼロベースで作業を行うことがいかに難しいかを知ることも重要である。そのため、今回の授業における成果物の出来不出来は問わない。伝わりやすいデザインを考察し、今後の社会生活にどう寄与していくかを考えるきっかけにさせたいと考える。
 2単位という限られた時間の中で、授業展開における他の単元とのバランスやつながり、また、共通テスト対策までを意識すると、どの程度この内容を深く掘り下げるべきかを考える必要もある。情報デザインそのものは日常生活にあふれているものであり、それを学問的見地から掘り下げるということには少なからず違和感も抱かれる。さらに設定した課題は、一見、適当にデザインすればなんとなく完成しそうなくらいシンプルなものである。しかし、自分で目的を持って創作しようとすると難しいものであることにも気づく。問題解決の手順を活用し科学的にひも解くことで、情報をわかりやすく発信することのできる担い手になってほしいものである。
 コンピュータを実務的に使用することにおいて、高校生世代のスキルは大人世代よりも低いことを実感している。教科情報の学びを通して情報と情報技術を適切に扱える人材を輩出したいという想いを込めて今後も授業の質を向上させたい。

9.大学入試との関連

 従前から本校では大学入試科目として情報を選ぶ者はいない状況であるが、大学入学共通テストにおいて情報Ⅰが追加されることから、教科として以下の対応を行っている。
 まず、教科書とは別に、副教材として共通テスト対応のワークを授業の携行品としている。また、オンラインの教材として「ライフイズテック レッスン」、「スタディサプリ高校講座」を導入している。これらを活用し、実習と座学のバランスを取っている。
 普段の授業を大学入試に特化した展開で行っているわけではないため、座学の内容については教科書に準拠した学習内容の定着とその充実を図っている。座学の定着度を測るために、Google Classroomと連携したGoogleフォームによる小テストを行うことで、基礎的な知識が定着するようにもしている。

複数チームで1つの「情報モラルポスター」作成 ~オンラインでつながり、データ活用力やデザイン構成力を高め合おう~(第1学年)

※この実践記録は2021年に執筆されたものです。

1.はじめに

 本校情報科では次期学習指導要領「情報Ⅰ」を見据え、情報教育の3観点を生徒同士で高められる授業に取り組んでいる。その一環として、入学後すぐの授業で電子メールアドレスを個人で取得させている。電子メールアドレスに無料で付与されているMicrosoft Office Online(以下、MOO)を活用し、生徒同士でリアルとオンラインのつながりを生み、主体的に問題解決能力を身につけさせることに取り組んできた。MOOは、デスクトップ版よりも機能が制限されているため、特徴としてシンプルに表現ができる。
 本実践では、昨今のSNSをはじめとする著作権やセキュリティ意識を高めるために、テーマに関するアンケートの1人1問作成および結果のデータ分析と、情報デザインの考え方で問題を解決する授業を考えた。
 各チームが作成したポスター作品を、クラスの生徒同士で評価し合う。また、学年全体にはMicrosoft Teamsで公開し共有する。具体的には、1枚のポスターを上下の半分に分け、それぞれを同一テーマとし2チームで担当させた。内容は、情報モラルに関する30テーマ(各クラスで異なる5テーマ)と時事問題(全クラス)を割り当てた。

 作成にあたり、主にMOOの電子メール、表計算ソフト、プレゼンテーションソフトを複合的に活用し、ポスター形式で作成させた。ポスター形式としたのは、デザインの構成が視覚的に分かりやすく、他教科でも導入してもらいやすいからである。

2.単元名

情報社会に生きるわたしたち(実施学年:第1学年)
「サイバー犯罪とその対策」「知的財産とその保護」「個人情報とプライバシー」

3.単元の目標

  • 情報モラルの内容について、情報の取捨選択を行ったうえ、適切で効果的なデザインを表現させる。
  • チーム内およびチームを超えて、主体的なコミュニケーションを行い、問題解決能力を向上させる。
  • MOOの機能を駆使し、オンライン上で共同の成果物が作成できるようにする。

4.単元の評価規準

学習評価の4観点・現行学習指導要領

ア 関心・意欲・態度

イ 思考・判断・表現

ウ 技能

エ 知識・理解

・表現し伝える活動に対して積極的に取り組むことができる。
・他者のコンテンツを適切に評価しようと努める。

・適切な情報手段で情報を集め、問題発見及び解決へ向けた提案ができる。
・ポスターの白黒とカラーの場合を考慮して、作成することができる。

・分かりやすく情報を表現することができる。
・電子メールやMOOの共有機能を使い、共同編集ができる。

・これまでの実習を通じて学んだ知識を活かして取り組むことができる。

学力の3要素・次期学習指導要領

オ 知識及び技能

カ 思考力、判断力、表現力等

キ 学びに向かう力、人間性等

・既知の活用:これまでの実習を通じて学んだ知識を活かして取り組むことができる。
・情報技術の選択と活用:電子メールやMOOの共有機能を使い、共同編集ができる。

・目的の明確化:適切な情報手段で情報を集め、問題発見及び解決へ向けた提案ができる。
・受け手の考慮:ポスターの白黒とカラーの場合を考慮して、作成することができる。

・対話:伝えたい情報モラルの内容を分かりやすく伝えるために、チーム内やチーム間で対話ができる。
・他者評価:他者のコンテンツを適切に評価しようと努める。

5.単元の指導と評価の計画

学習内容・学習活動

評価の観点(上記表参照)

評価の方法

現 4観点 ○ 新 3観点 ●

1

・実習の概要を理解する。
・担当テーマのチームを編成する。

 

 

 

 

 

行動観察

2

・担当テーマに関する内容を吟味し、問題(アンケート)を考える。
・出題する問題を担当者に電子メールで提出する(各自)。

 

 

 

 

行動観察
成果物(提出した問題とその内容)

3

・出題された問題をオンラインフォームで回答する(各クラス)。

 

 

 

 

 

行動観察
回答に参加

4
5

・回答結果の分析、グラフ等作成。
・1チームでポスターを作成する。

 

 

 

行動観察

6
7

・同一テーマ2チームの内容を合わせる。
・デザインの統一化。
・成果物を電子メールで提出する。

 

行動観察
成果物

8

・カラー版とモノクロ版ポスターを比較して、自己/相互評価(各クラス)。
・振り返り。
・Microsoft Teamsでポスターを共有。

 

 

 

 

行動観察
評価入力シート

6.本時の目標【4限目】

 本単元は8時間で構成され、今回は単元全体の中で山場を迎える4限目の内容を紹介する。
 生徒が担当する内容を、発信者および受信者双方の視点からチーム内で対話し、分担しながら適切な手段や手法で分かりやすく伝えるためのポスターを作成できるようにする。また、生徒間の思考を深め合い、分かりやすいポスターを作成させるため、実習時間に幅を持たせ2時間で実施した。

7.本時の流れ【4限目】

時間

学習内容・学習活動

指導上の留意点

評価

導入
5分

・本時の流れを確認する。
・MOOにサインインする。

・発信者および受信者双方の視点をもって作成させる。

行動観察

展開
35分

・前時で回答された結果を各自確認する。
・結果を分析後必要に応じてデータ化、デザインの構成、ポスター作成をチーム内で分担し、オンライン上で共有する。

・チーム内で実習分担が偏らず、誰一人取り残さないよう、適宜進捗の確認をさせる。

行動観察

まとめ
5分

・次時で行うことを整理し、チーム内で共有する。
・MOOをサインアウトする。

・行動観察時に気づいた点を講評して、生徒の次時につなげる。

 

8.まとめ

 本実践では、1学期から生徒が積み上げて学習した内容を活かせる形となっている。情報モラルに関するデータ分析・活用、デザイン構成を通じてリアルとオンライン双方の問題解決力を養うことを目標に置いた。特筆するのであれば、生徒をチャレンジングな環境に置いたことである。通常ならば成果物を1チームで形にすることが多いが、今回初めて複数チームで共同の成果物を作成させた。生徒同士で意見をぶつからせ、分かりやすい表現を求めて試行錯誤を繰り返す姿に、生徒一人ひとりの成長を感じることができた。
 実践の最後に実施したアンケートでは、「データを分析して、見やすくまとめる難しさ」「伝える内容に合わせた図表の有無や配色の選定」「思い切って自分の意見を言う力」「チーム全員で協力する大切さ」など、生徒自身の率直な気づきの意見があった。
 今後、先行きが不透明な時代を生き抜く生徒には、1人で行う実習はもとより、チーム内やチーム間で進捗状況を把握しつつ、互いが助け合いながら物事を進めていく力がより一層必要である。つまり「社会的洞察力」「戦略的学習力」を、社会人の一歩手前である高校生で養うことが求められていくと考えている。それを実現するには、情報科だけではなく、各教科との横断的な取り組みによる相乗効果が必要である。

情報の科学 アルゴリズムとプログラム(第1学年)

※この実践記録は2021年3月28日に執筆されたものです。

1.はじめに

 全日制普通科高校の本校は、1学年4クラス(うち総合科学コース1クラス)で全校生徒460名である。教科「情報」は、第1学年で「社会と情報」と「情報の科学」を開講しており、総合科学コースが「情報の科学」を履修している。
 総合科学コースの生徒は3分の2程度が男子生徒で、明るく元気な生徒が多い。また、グループワークや実習を積極的に取り組む生徒が多い。一方で、座学のみの授業になると集中力の持続が難しい。また、3分の2程度の生徒はタイピング速度が遅く、コンピュータ操作が苦手である。
 アルゴリズムについて中学校で学習した生徒は3分の1程度であり、フローチャート記号の意味や使い方を理解していない生徒が多くいた。順次・反復・分岐のアルゴリズムの基本構造を理解し、フローチャートを記述できるようにしたいと考え、この授業を実施した。

2.単元名

「アルゴリズムとプログラム」(実施学年:第1学年)

3.単元の目標

  • フローチャートやアルゴリズムの基本構造について理解する。
  • 問題文に合わせてアルゴリズムをフローチャートで記述する。
  • アルゴリズムに合わせてプログラミングができる。
  • プログラミングを問題解決に生かす方法を理解する。

4.単元の評価規準

ア 知識・技能

イ 思考力・判断力・表現力

ウ 学びに向かう力・人間性

・身近な手順をフローチャートで表現すことができる。
・フローチャートやアルゴリズムの基本構造について理解している。
・簡単なアルゴリズムのプログラムを作成できる。

・フローチャートで表された処理手順の意味を読み取ることができる。
・フローチャートとプログラムについて、それぞれの対応を考えられる。

・興味をもって、体験的な学習や授業に積極的に取り組んでいる。
・アルゴリズムとプログラムについて関心を持っている。
・グループでの活動に積極的に参加している。

5.単元の指導と評価の計画

(ア:知識・技能/イ:思考力・判断力・表現力/ウ:学びに向かう力・人間性)

学習内容

学習活動

評価の観点

評価の方法

1

アルゴリズムとフローチャート

身近な手順をもとにアルゴリズムの考え方とフローチャートの書き方を理解する。

行動観察
ワークシート

2

アルゴリズムの基本構造

フローチャートやアルゴリズムの基本構造について学び、簡単なプログラムを考える。

ワークシート

3

基本構造とプログラム

順次・反復・分岐の構造をもとに表計算ソフト(VBA)を利用してプログラムを作成し、実行する。

ワークシート

4

基本構造とプログラム

順次・反復・分岐の構造をもとに表計算ソフト(VBA)を利用してプログラムを作成し、実行する。

ワークシート

5

プログラムの作成

手順に従ってプログラム(VBA)を作成することにより、問題解決について学ぶ。

行動観察
ワークシート

6.本時の目標【2限目】

  • フローチャートやアルゴリズムの基本構造について理解する。
  • フローチャートを用いて簡単なプログラムを考える。

7.本時の流れ【2限目】

時間

学習活動・内容

指導上の留意点

評価

導入
5分

前時の復習
・コンピュータ室のパソコンにログインする手順をフローチャートで記述する。

・教科書に記載されているフローチャート記号を参考にしながら記述させる。
・時間をかけなすぎないように注意する。

ウ 行動観察

本時の学習内容の理解
3つの基本構造を学ぶことを理解する。

展開1
10分

順次
・「おはよう」「こんにちは」「おやすみ」の順に画面にメッセージを表示するプログラムをフローチャートで記述する。

・上から下へ記述された順に処理を実行する「順次」を理解させる。

ア、イ
ワークシート

・練習問題に取り組む。

・時間があれば、練習問題を進めるように指示する。

ア、イ
ワークシート

展開2
15分

分岐
・30点以上であれば「合格」、それ以外であれば「不合格」と画面にメッセージを表示するプログラムをフローチャートで記述する。

・教科書の例題を利用して書き方をイメージさせる。
・条件により処理を選択する「分岐」を理解させる。
・定期考査では同様の処理を行っていることを説明し、身近な処理であることを意識させる。

ア、イ、ウ
行動観察
ワークシート

・他者とフローチャートを見比べ、違いを理解する。

・解答が複数あることを理解させる。

ウ 行動観察

・練習問題に取り組む。

・時間があれば、練習問題を進めるように指示する。

ア、イ
ワークシート

展開3
15分

反復
・数字が0から100になるまで、25ずつ数字を増やしながら画面に表示するプログラムをフローチャートで説明する。

・処理を繰り返し実行する「反復」を理解させる。
・25mプールで何回泳ぐと100mになるかを考えさせ、身近な処理を意識させる。

ア、イ、ウ
行動観察
ワークシート

・数字が0から1000になるまで、50ずつ数字を増やしながら画面に表示するプログラムをフローチャートで記述する。

・50mプールで何回泳ぐかを考えさせる。

まとめ
5分

学習目標の確認
3つの基本構造の理解度を確認する。

・理解度を計るためにFormでアンケートを作成し、配布する。

ウ 行動観察

8.まとめ

 多くの生徒はアルゴリズムとプログラミングに対して、「記号の意味が分からない」「中学校で分からなかった」「難しそう」などのマイナスなイメージを持っており、苦手意識が強かった。しかし、今回の授業でフローチャートの学習から段階を踏むことで、生徒は物事を整理して考えることができるようになり、最終的にはVBAを用いたプログラミングへと進むことができた。

 特に今回の授業では、次の点を心掛けた。①アルゴリズムと生活を関連させる。②考える時間を長くとる。プログラミング的な考え方が日常生活で、どのように役立つのかを時間をかけて生徒に考えさせることで、生徒の苦手意識が軽減されると考えている。
 今回の授業案は、文部科学省が提供している「高等学校情報科『情報Ⅰ』教員研修用教材(本編)」の第3章を参考に作成したものであり、令和4年度から実施される「情報Ⅰ」の中でも取り入れることができる。令和7年度から実施される大学入学共通テストに向けて、アルゴリズムの理解は非常に重要なことであり、時間をかけて丁寧に指導するべきであると考えている。

 生徒の評価では、ルーブリックと教育用クラウドサービスによるフォームを利用しており、その評価を成績の一部に取り入れている。教員はルーブリックを用いて生徒の活動を評価し、生徒は教育用クラウドサービスを利用したフォームで自己評価を教員へ送信している。GIGAスクール構想により教育用クラウドサービスの導入が進むことが予想されるため、有効な評価方法になると考えている。

【関連資料】

社会と情報 Google ClassroomとGoogleスライドを活用した、参加型情報モラル(第1学年)

※この実践記録は2020年8月27日に執筆されたものです。

1.はじめに(学校の状況、生徒観、この授業を考えた背景 など)

 本校では、年度初めに情報モラル教育を実施している。学習者一人ひとりが「自分事」としてSNS上でのトラブルの要因を分析し、予防策、対応策について考え、トラブルの未然防止をめざしている。
 そのため、生徒は入学するまでに他者を尊重することの大切さ、SNSにおけるトラブルについて学習し、道徳や情報モラルに関する具体的な知識をある程度獲得している。それらの既有知識を踏まえつつ、今回は、情報の受け取り方が多様であることや、「人によって嫌と思う事」は異なるということがコミュニケーションの前提にあることを、他者との対話を通して確認する。また、コミュニケーションにおけるトラブルがどのような時に起こるか、注意すべきポイントは何か、実際にトラブルが発生した時にどのように対応するか、Google ClassroomとGoogleスライドにおける他者との対話を通じ、理解を深めてもらう。

2.単元名

「参加型情報モラル」(実施学年:1年生)

3.単元の目標

  • 人によって嫌と思うポイントが異なることを理解させる。
  • 各種トラブルはどのような時に起こるか、注意すべきポイントは何か、実際にトラブルが発生した時にどのように対応するか考えさせる。

4.単元の評価規準

ア 関心・意欲・態度

イ 思考・判断・表現

ウ 技能

エ 知識・理解

・情報モラルや望ましい情報社会の構築の視点から、情報化が社会に及ぼす影響について理解しようとしている。
・他者と自らの意見を比較し、共通点と相違点を発見し、考え方が多様であることを理解しようとしている。

・個人の責任を自覚した情報発信に必要な観点を具体的に思考できている。
・他者と自らの意見を積極的に比較し、共通点と相違点を分析している。

・情報社会における各種トラブルの予防策、対応策を具体化することができる。
・クラウド上でファイル共有、共同作業ができる。
・チャットやコメント欄を活用し、効果的にコミュニケーションを行うことができる。

・情報化がもたらす利便性とそれが悪用されたときの危険性や、危険を防止するための法律による規制や保護及び情報技術によるセキュリティ対策を理解している。
・情報の受け止め方は多様であることを理解している。

5.単元の指導と評価の計画

(ア:関心・意欲・態度/イ:思考・判断・表現/ウ:技能/エ:知識・理解)

学習内容

学習活動

評価の観点

評価の方法

1

・自己紹介を作ってみよう

・個人特定に結びつく情報を書かずに、自己紹介をクラス全員で共有編集できるスライドに記入する。

・自己紹介スライドの記述内容

2

・受け取り方の違いを知ろう

・チャットで人から言われて嬉しいこと、嫌なことを各自ランキングにし、理由を記述する。
・人それぞれ嬉しいこと、嫌なことが異なることを体験を通じ学ぶ。

・共有編集スライドへの記述内容
・限定コメント欄へのふりかえり記述内容

3

・グループチャットの適切な活用について考える

・グループチャットでトラブルにならないようメッセージを送る時間、スタンプの活用、言葉の選び方について考え、スライドに意見をまとめ、他者と共有する。

・共有編集スライドへの記述内容
・限定コメント欄へのふりかえり記述内容

4

・スマホ依存にならないために

・「どれくらい使うと使い過ぎなのか」、「どのような時にスマホ依存になるのか」、「依存にならないためにどうするか」、「依存を解決する方法」をスライドにまとめ、アイディアを共有する。

・共有編集スライドへの記述内容
・限定コメント欄へのふりかえり記述内容

5

7

・各種トラブルとの向き合い方を考える

・個人情報流出、炎上・誹謗中傷、ネット上での人間関係のトラブル、ネット上での詐欺被害、著作権侵害がそれぞれどのような時に起こるのか、どうやって防ぐのか、トラブル発生時にどのように対応するのかグループで考え、共有編集スライドにまとめる。

・共有編集スライドへの記述内容
・限定コメント欄へのふりかえり記述内容

8

・相互評価

・各グループが作成したスライドをPDFにし、グループ間で共有し、記述内容の具体性について相互評価する。

・限定コメント欄へのふりかえり記述内容

6.本時の目標【5~7限目】

  • 個人情報流出、炎上・誹謗中傷、ネット上での人間関係のトラブル、ネット上での詐欺被害、著作権侵害が「どのような時に起こるのか」、「どうやって防ぐのか」、「トラブル発生時にどのように対応するのか」グループで考える。

7.本時の流れ【5~7限目】

時間

学習活動・内容

指導上の留意点

評価

導入
5分

【Google Classroomの質問機能を利用】
・出席確認
・授業のねらい
【各グループにスライドを配布】
・スライド作成にあたっての観点の整理

・各種トラブルを以下の観点でまとめるよう指示する。
◇どのような時にトラブルが起きるのか
◇どのようにして防ぐか
◇トラブル発生時にどのように対応するか

ア.行動観察

展開1
20分

・教科書、Webページ等から参考になる情報を検索する。
・各自スライドにテキストボックスを配置し、自分の考えを記述する。

・以下の内容を具体化するよう指示する。
◇関連する法律、トラブル発生時の相談先等
◇どのような法律によって人々の権利は保護されているか

ア.行動観察
イ、エ.
テキストボックスに記述されている内容

展開2
10分

・各自作成したテキストボックスをメンバーと協力して分類する。
・他の人のテキストボックスに対してコメント(質問)を残す。

・以下の観点で分類するよう指示する。
◇テキストボックスの記載内容に共通点がないか
・5W1Hで他の人のテキストボックスにコメント(質問)するよう指示する。

イ、エ.
スライドの状態、画面上に残されたコメント(質問)

まとめ
5分

【限定コメント】ふりかえり
・出欠確認の限定コメント欄に活動を通じて理解が深まったことは何であったかを記述する。

・学習した内容を具体的に記述するよう指示する。

イ、エ.
限定コメントに記述されている内容

8.実践の成果と課題

【成果】
 本活動の後、情報社会におけるリスクマネジメントに関するアンケートを実施したところ、以下のような結果となった。

 リスクマネジメントができると答えた生徒、情報の授業が影響したと答えた生徒が全体の96%を占め、多くの生徒が活動の意義を理解したようだ。また、自由記述において生徒は、以下のように述べていた。

自分に起こりうる詐欺トラブルや炎上、ネットトラブルなどについて、どのような場合に起こってしまうのか、どのようにすれば防ぐことができるのか、起こってしまった場合、どのように対処すればいいのかについて周りの人の意見を取り入れながら学んだ。
情報の授業で個人情報流出の起こり方を学んでからSNSのアカウントに鍵をかけた。

 授業における他者との対話がリスクマネジメントに向けた観点の具体化につながり、実際の行動の変容に結び付いたようだ。

【課題】
 活動の何をもって総括的評価がされるのかが、伝わっていないことがあった。最終的なゴールは、生徒それぞれが限定コメントに学習内容のふりかえりを記述し思考を深めることであり、グループワークにおけるアウトプットは理解を深めるための手段であることを明確に伝える必要がある。

【関連資料】

  • Google Classroom上での活動場所作成(PDFファイル) ダウンロード
  • Googleスライドを活用したテンプレート例(PDFファイル) ダウンロード

「プログラミング」(第1学年)

1.はじめに

 本校は青森県弘前市にある私立の高等学校で、2022年に創立150周年を迎えた。全校生徒は630名程度で、それぞれの卒業後の進路に合わせ、3つのコースに分かれている。「情報Ⅰ」は3コースとも1年生で履修している。
 新学習指導要領の実施に伴い、「社会と情報」から「情報Ⅰ」へと科目が移行したが、内容が大きく変わることから、思い切ってそれまでの一斉授業をなくし、新しい指導計画を立てることにした。
 一斉授業をなくすことで、生徒の個別最適化が図られるのと同時に、自ら学ぶ力が育まれると考えた。年間の指導は次のような構成になっている。

 年間を通じて、まず基本となるのが、教科書の記述内容をまとめる活動である。単にまとめるのではなく、発表するまでのパフォーマンス課題として設定している。教員側は先々まで取り組める課題をあらかじめ用意しておき、生徒は自分のペースで用意された課題に取り組む。
 生徒はまず出席番号に基づいて指定された教科書のページ(単元)の「まとめ」に取り組む。最初の「まとめ」は、『ロイロノート・スクール』(*1)を用いて10枚の規定枚数でプレゼン資料を作成する。

 ロイロノートでの提出は仮提出と位置づけ、本提出は『Google Classroom』(無料)で行う。本提出にあたっては、課題と一緒にルーブリックを配信し、ロイロノートで作成した資料をルーブリックに基づいて改善する。期限内にルーブリックで示された要件を満たす内容が作成できれば満点とし、修正が必要な場合は限定コメントでアドバイスをし、再提出させる。ルーブリックによって、生徒たちは何をすればよいかが理解できる。換言すれば、自分に不足している力が何であるかが明らかになる。個人が直面する課題はさまざまだが、自分に足りないことが明らかなため、生徒は課題を解消しようと自発的に学習に向き合う。
 生徒たちはこの学習に一年を通じて各自が取り組む。各課題の提出期間は1か月程度と十分な期間を設けており、生徒は自分のペースで進めることができるように配慮している。さらに、後述するが、この学習と併行して、個人あるいはグループでさまざまな課題に適宜取り組む。
 なお、教師は、授業中に机間巡視を行い、個別に質問に答えて生徒の疑問を解消させる。ただし、だんだん生徒の情報検索能力が高くなっていくため、日を追うごとに質問が少なくなる傾向がある。
 その一方で、教科書の内容によっては、自力での学習がむずかしい場合もある。その場合は、教科書の「まとめ」をするまえに反転授業形式で動画を視聴させている。動画は『Edpuzzle』(*2)を使用し、Google Classroomで配信する。Edpuzzleは『YouTube』にある教育教材を好みの箇所でカットすることができる。また、生徒がどの程度、学習に取り組んでいるかがパーセンテージで表示されるため、学習への取り組み状況に応じて、個人に合わせた声がけもできる。さらに、Edpuzzle経由でYouTubeの動画を観る場合は「早送り」できないように設定できるため、じっくり視聴してもらいたいときにも好都合である。そのうえ、問題も挿入でき、その解答を点数化することもできる。

 生徒たちはこの教科書のまとめ課題を基本学習とし、併行してさまざまな課題に取り組む。たとえば、情報デザインの単元として、本校が所有する白黒写真を『Adobe Photoshop』(有料)のAI機能を利用してカラー化する課題や、情報通信ネットワークの単元では、カテゴリ5eのLANケーブル作成課題(▶生徒用の説明動画 )などに取り組む。そのため、ある時点でクラスを見渡すと、教科書のまとめを行う生徒もいれば、情報デザイン単元の課題に取り組む生徒もいるし、プログラミング単元の課題に取り組む生徒もおり、それぞれがまったく異なる課題に取り組んでいる。

▼『Adobe Photoshop』で白黒写真をカラー化(左:元写真、右:カラー化した画像)

▼LANケーブル作成課題

※Photoshopでカラー化した画像は、『Adobe Express』(小中高は無料)の機能を用いてWebページを作成し、一般公開している。 
『東奥義塾高等学校 創立150周年記念』

 さて、今回取り上げるのはプログラミングの単元になる。
 プログラミング教育は、2020年度から小学校で、’21年度から中学校、’22年度から高等学校ではじまった。開始当初の高校生は、まったくといってよいほどプログラミング教育を受けておらず、教科書に載っている内容をすぐに実施しにくい状況であった。プログラミングは、とくに言語の規則性を理解する必要があるが、生徒が理解するペースは一律ではない。一斉授業であれば十分な時間をとることができず、理解が遅い生徒は理解できないまま授業が進んでしまう。プログラミングの単元は個別最適化がとくに重要な単元であり、この実現にはe-ラーニングの導入が大いに役立った。
 同単元の導入では、Googleが提供しているブラウザベースの『Blockly Games 』(無料)や『MOONBlock 』(無料)のビジュアルプログラミングを利用し、プログラミング的思考を身につけさせようと試みた。Blockly Gamesは、理解到達段階を丁寧に踏んだ課題が各種用意されている。とくに、課題『迷路』は「順次処理」、「分岐処理」、「反復処理」の3つの組み合わせでプログラムが実現できることを理解させるのに最適である。
 もう一方のMOONBlockは、Scratchとよく似ているが、ゲームを作ることに特化しており、簡単にゲームを作ることができる。生徒たちには「ゲームクリエーターになろう」と投げかけ、プログラミングの楽しさを知ってもらうことも狙いとしている。
 これらの取り組みでビジュアルプログラミングにある程度慣れたところで、実際のプログラム言語へと移行する。
 このとき、本校では『Progate』(*3)を利用している。はじめに情報デザインの学習を趣旨としてマークアップ言語である『HTML&CSS』を実施し、テキストを使った記述に慣れさせてからプログラム言語『Python』に取り組む。Progateの最大の特長は、自分が記述した文字列と模範解答の文字列を簡単に比較でき、間違っているところはハイライトで表示されるところである。生徒は自分の間違いをすぐに確認できるため、大部分の生徒がつまずくことなく自分のペースで進めることができる。

*1 ロイロノート・スクール……教員のみで使用する場合は無料。職員会議等の職員間での情報共有や電子黒板での教材提示も無料で使用可能。生徒用端末での使用は、生徒数による課金制。
*2 Edpuzzle……動画は20コンテンツまで無料で作成できる。本数制限なしの場合は有料になる。
*3 Progate……学校(小中高)として契約することで、原則無料で2つの言語まで進捗管理機能付きで登録が可能。

2.単元の目標

【知識及び技能】

  • プログラミングを学ぶことによって、コンピュータを活用する方法について理解し、プログラムの基本構造を理解したうえで、簡単なプログラムを作成する技能を身に付ける。

【思考力・判断力・表現力等】

  • 社会や自然にある事象を、プログラミングを手段として用いることで表現できる。

【学びに向かう力・人間性等】

  • 自ら作成したプログラムや既存のプログラムの課題を発見し、自分が作成したプログラムの改善につなげる態度を養う。

3.単元の評価規準

ア 知識・技能

イ 思考・判断・表現

ウ 主体的に学習に
取り組む態度

・アルゴリズムの基本構造について理解している。

・プログラムの構成要素である変数、データ型、演算の意味や種類を理解している。

・基本構造を組み合わせてアルゴリズムを構造化することができる。

・演算例をもとにして、プログラミングの構成要素について考え、正しい結果を出力することができる。

・処理内容を自分で考え、アルゴリズムを構造化、可視化しようとしている。

・既存のプログラムを改良することで、プログラミングの理解を深めようとしている。

4.単元の指導と評価の計画

(ア:知識・技能/イ:思考・判断・表現/ウ:主体的に学習に取り組む態度)

 Blockly Games、MOONBlockといったビジュアルプログラミングは、小中学校でプログラミング教育を受けてこなかったときの橋渡し教材として位置づけている。逆に、小中で十分にプログラミングを学習しているときは、Progate(HTML & CSSやPythonなど)からスタートしてもまったく問題はないと考える。
 また、本校では、Microsoftの『マインクラフト』(有料)も導入している。こちらは『Microsoft MakeCode』(無料)を利用してマインクラフトのエージェントにブロックを置かせるプログラムを作成させている。MakeCodeでは、ブロックで作成したコードを、ボタン1つでPythonのコードに変換、表示できる。マインクラフトは大半の生徒にとって馴染みがあることから、テキスト型プログラミング言語に興味を持たせるためのしかけとしても有効である。なお、このとき本校では青森県津軽に古くから伝わる伝統芸能の「こぎん刺し」の模様を表現することを課題に設定している。場合によっては、家庭科で作成したオリジナルデザインを情報の授業でプログラミングしてもよいだろう。
<参考>こぎん刺し(かちゃらず) https://www.youtube.com/watch?v=1x-tbezaT5k
<参考>こぎん刺し(石畳) https://www.youtube.com/watch?v=UQ1L9k6g-G8

学習活動・内容

評価の観点

評価の方法

1

・Google Blockly Games (ビジュアルプログラミング)

行動観察
成果物
https://www.youtube.com/playlist?list=PLgMXw6a_Zkz6zhrrnwrbde2wF6GsxMFgF

2

MOONBlock (ビジュアルプログラミング)

行動観察
成果物
https://www.youtube.com/watch?v=2OnErvwct18

3
|
10

Progate (HTML & CSS、Python)
※HTML & CSSとPythonを実施する。HTMLとCSSについては教科書「2章 コミュニケーションと情報デザイン」で事前に座学で学習する。その後「3章 コンピュータとプログラミング」としてProgate で再度取り組む。

行動観察
成果物

5.単元の流れ

【1限目】『Blockly Games』

時間

学習活動・内容

指導上の留意点

導入
5分

・アルゴリズムの基本構造について理解する。
・『Blockly Games』内にある課題「パズル」を選択しビジュアルプログラミングの操作について理解する。

・ブラウザベースのため端末に依存しないことを確認する。

展開
40分

・課題『迷路』に取り組み、「順次構造」、「分岐構造」、「反復構造」の3つの組み合わせでプログラムが実現できることを理解する。
・クリアすると表示される「JavaScript」を確認し、ビジュアルプログラミングのブロックがソースコードとしてどのように表現されるかを理解する。

・「迷路」の後半は比較的難しいため、事前に教師側が正解動画を収録し用意しておくと、生徒の理解に役立つ。

まとめ
5分

・アルゴリズムの基本構造について振り返る。

・「順次構造」、「分岐構造」、「反復構造」の3つの組み合わせでプログラムが実現できることを理解する。

【2限目】『MOONBlock』

時間

学習活動・内容

指導上の留意点

導入
5分

・基本操作について理解する。

・ブラウザベースのため端末に依存しないことを確認する。

展開
40分

・見本の「くまさんのりんごがりゲーム」を作成する。
※このゲームは、キャラクター(くまさん)を動かし、画面上にたくさん表示されたリンゴに触れると点数が加算されるという単純なゲームである。
・見本を作成できたら、各自がプログラミングを改変する。

・見本を作成後、プログラミングを改変し、どのように変化するかを体験させ、プログラムの構成を理解させる。

まとめ
5分

・プログラムを改変する際、一箇所の変更だけでなく関連する複数箇所の変更が必要になることを確認する。

・「順次構造」、「分岐構造」、「反復構造」の3つの組み合わせでプログラムが実現できることを確認する。

【3~10限目】「HTML & CSS」と「Python」

時間

学習活動・内容

指導上の留意点

8時間
程度

・座学として一度学習した「HTML & CSS」をProgateで実施する。
・Progateで「Python」を実施する。

・途中で困ったら「答えをみる」をクリックし「自分のコードと比べてみる」を押し、模範解答と自分のコードを比較させる。

6.まとめ

 一斉授業をしないためには、年間授業計画をしっかり立てる必要がある。初年度は、年間を通じた課題をあらかじめ用意しておく必要があり、準備に大変時間がかかるが、一度作成さえすれば、その後は部分的にブラッシュアップすればよいのでむしろ負担は少ない。
 理解の早い生徒は次々に課題を進めることができる。フォローする教員は年間すべての学習内容を頭に入れておく必要があるが、先々まで自発的に学習するその様子を見ると、一斉授業を止めたことの成果を強く感じることができた。
 とくに、個別最適化においてe-ラーニングの利用は大変有効である。とりわけプログラミングの単元ではそれが顕著であり、たとえばProgateでは、学習の進捗状況を教員側で管理できる。そのため、長期にわたる課題でも、学習が遅れている生徒を見逃すことがなく、適切なタイミングで声がけできた。そのうえ、学校として同サービスを契約しており、履修年だけでなく、2年生に進級しても、在学中はいつでも自分のペースでプログラミング言語の学習に取り組める環境を用意できた。Progateでは、こちらが授業計画に盛り込んだHTML & CSSとPythonだけでなく、JavaScriptやRuby、SQL、PHP、Javaなど16の言語を学ぶことができる。理解の早い生徒がHTML & CSSとPython以外の言語を学習する様子を見られたのも、同サービスを導入した大きな成果だったと考える。
 Progateにかぎらず、Blockly GamesもMOONBlockも、同様にそれぞれに特長がある。生徒の学習到達に応じて活用すれば非常に有用であり、個別最適化をはかるうえでこれらのe-ラーニングの導入は非常に有効だったと考えている。

情報Ⅰ (1)情報社会の問題解決、情報Ⅱ (1)情報社会の進展と情報技術「人工知能の『学習』を通して、人工知能と人間との関わり方を考える[他教科連携]」(第2学年)

1.はじめに

 これからの社会では、自動運転のみならず、医療、軍事、政治など、人間でさえ判断に迷う場面を、人工知能(AI)がサポートするようになると思われる。このとき、利用者であるわたしたち自身は、そのAIがどのようなデータを「学習」して、どのようなアルゴリズムで動いているのかなど、その仕組みや傾向を知っておく必要がある。
 「AIに仕事を奪われる」、「AIに意思決定を支配される」といった懸念が示される世の中で、生徒自身がAIに振り回されるのではなく、「人が得意な分野」と「AIが得意な分野」を切り分け、互いの良いところを出し合えるようになることが望ましい。当実践はこのような視点を養うことを目的として、公民科(倫理)との他教科連携授業(教科横断型)として実施したものである。
 本時の内容は、内閣府、文部科学省、経済産業省が協力して制定した「数理・データサイエンス・AI教育プログラム認定制度(リテラシーレベル)」へのつながりを意識したものであり、内閣府発信の「AI戦略2019」において、中等教育に求める内容ともいえる。
 本校では、2021年度まで1コマ65分の授業展開を行っており、情報科の授業は高等部第1学年で週1、第2学年で隔週の実施であった。高等部第1学年では「情報Ⅰ」を見据えた授業を、第2学年では「情報Ⅰ」を掘り下げた内容に加え、「情報Ⅱ」へのつながりを意識した題材を取り上げている。本事例紹介は2021年度に高等部2年生を対象に65分授業で実施したものである。生徒同士のディスカッションや実習機会が多いことから、授業時間数に余裕がある場合には2コマにかけて実施をしても良いと考えている。

2.単元名

「(1)情報社会の問題解決」(実施学年:第2学年)

3.単元の目標

【知識及び技能に関する目標】

  • 情報技術の発展の歴史や、情報技術の発展による社会の変化について理解する。
  • 情報技術の発展による情報社会の進展について考え、情報社会が抱える問題や、それらの問題を解決していくことの重要性について理解する。

【思考力、判断力、表現力に関する目標】

  • 情報と情報技術の適切かつ効果的な活用と、望ましい情報社会の構築や在り方について考える。
  • 情報システムが人の知的活動に与える影響について考える。

【学びに向かう力、人間性等に関する目標】

  • 情報社会の問題解決を通して、望ましい情報社会の構築に寄与しようとする。

4.単元の評価規準

ア 知識・技能

イ 思考・判断・表現

ウ 主体的に学習に
取り組む態度

・情報技術の発展の歴史や、情報技術の発展による社会の変化について理解している。
・情報技術の発展による情報社会の進展について考え、情報社会が抱える問題や、それらの問題を解決していくことの重要性について理解している。

・情報と情報技術の適切かつ効果的な活用と、望ましい情報社会の構築や在り方について考えている。
・情報システムが人の知的活動に与える影響について考察している。

・情報社会の問題解決を通して、望ましい情報社会の構築に寄与しようとしている。

5.単元の指導と評価の計画
(※人工知能に関する学習単元のみ抜粋[1コマ65分換算])

(ア:知識・技能/イ:思考・判断・表現/ウ:主体的に学習に取り組む態度)

学習内容

学習活動

評価の観点

評価の方法

1

・AI概論

・AIの分類、AIの定義付け(専門家による定義に違いがあること)について知る。
・人工知能研究の歴史(探索、推論、知識表現、判断、チャットボット[人工無能]、強いAI・弱いAI 等)について理解する。
・機械学習・ニューラルネットワーク・ディープラーニングの違いについて理解する。
・トロッコ問題、動物裁判(*1)、アシロマAI 23原則(*2)(アシモフ「ロボット工学3原則」)について知る。
・MITモラルマシン(*3)に取り組み、他の人の結果と比較する。

・ワークシート
・行動観察

2

・人工知能の「学習」を通して、AIと人間との関わり方を考える。
[他教科連携授業]

・日常生活でAIに任せても良いこと、人間が行っておきたいことについてグループで考え、意見をまとめて発表する。
・「AIを用いた人事採用」について、事例をもとに考え、自分の意見を述べる。
・機械学習における「学習」・「推論」について理解する。
・機械学習における「教師あり学習」をTeachable Machine(*4)を用いて、体験的に理解する。
・AI技術が引き起こす社会課題・無意識のバイアス(アンコンシャス・バイアス)について知る。
・AIと人間との関わりについて、授業を踏まえて再考し、自分の意見を述べる。
【使用ICTツール】
・Teachable Machine
・Google Jamboard
・ロイロノート

・ワークシート
・行動観察
・振り返りフォーム(Google Forms)

3

・死後デジタル労働「D.E.A.D.(Digital Employment After Death)」(*5)について考える。

・テクノロジーの発達によって個人データを利用して故人を疑似的に復活させることの是非について考え、自分の意見をまとめる。
・各班、メンバーの意見をまとめ、班ごとに発表を行う。

・ワークシート
・行動観察
・振り返りフォーム(Google Forms)

用語説明
*1 動物裁判……中世ヨーロッパなどにおいて行われた裁判。人間に危害を加えるなどした動物を事件の被告として法廷に立たせ、法的責任を問うために行われた。
*2 アシロマAI 23原則……2017年、全世界からAIの研究者や経済学・法律・倫理・哲学などの専門家がカリフォルニア州アシロマに集まり、「人類にとって有益なAIとは何か」を議論の上、発表されたガイドライン。 人工知能が人類全体の利益となるよう、倫理的問題や安全管理対策、研究の透明性などについて23の原則としてとりまとめたもの。
*3 MITモラルマシン……トロッコ問題の考え方をもとに2014年にMITメディアラボの研究者が考案した、究極の選択をする実験Webサイト。クイズ形式で全13問のお題が出題され、自動運転車を用いた人工知能の道徳的な意思決定に関して、人間の視点を収集するプラット・フォーム。
*4 Teachable Machine……Googleが提供する、簡単にAI(機械学習)のモデルを作成できるサービス。Teachable Machineでは「画像プロジェクト」「音声プロジェクト」「ポーズプロジェクト」の3種類のモデルが作成可能。
*5 D.E.A.D.(Digital Employment After Death)……自身の死後、個人のデータとAIやCGなどのテクノロジーを駆使し、デジタル上で「復活(蘇生)」することを許可するか、しないか、意思表明ができるプラットフォーム。

6.本時の目標【2限目】

 クラスでの対話や、Teachable Machineを用いた「教師あり学習」の体験、その他AI技術が引き起こす社会課題を通じて、「人工知能(AI)と人間との関わり」について、自分の考えや意見をもつことができるようになる。

7.本時の流れ【2限目】

時間
(65分)

学習活動・内容

指導上の留意点

評価

導入
5分

・本時のテーマ共有
「人工知能の『学習』を通して、人工知能と人間との関わり方を考える」

・前時の授業スライドを提示しながら、学習内容の確認を行う。

ア.行動観察

展開1
18分

・日常生活でAIに任せても良いこと、人間が行っておきたいことについてグループごとに考え、Google Jamboardに自由に記述する。
・AIに任せるのか、人間が行うのか、各班話し合った内容を、その判断基準とともに、クラス内で共有する。

・AIか人間か、意見を左右に分け、発言者がわかるよう、付箋の色を使い分けるように指示する。

・生徒が発表する際には、当該班のJamboard画面を教室前方のスクリーンに映す。

・各班の発表の中から、AIに意思決定・判断を委ねる意見に触れ、AIによる判断・意思決定に恐怖や懸念がないか問う。

ア.行動観察
イ.ワークシート
(Google Jamboard)

展開2
15分

・AIによる判断・意思決定することについて、「AI採用」を例に考える。
・サッポロビール、ソフトバンクなどの実例を参考に、「もし大学入試(推薦入試等)でAIが合否判定に関与する」となった場合、どのように考えるか、意見をロイロノートに提出する。

・AIを活用した採用では、基本的には、最終的に人間が関与していることを理解する。
・ブラックボックス化・説明可能なAIについて理解する。

・サッポロビール、ソフトバンクなどの企業を例に、採用選考過程にAIを活用している実態を紹介する。
※ここでは、あえて具体的な選考過程のプロセスに言及しない。
・採用側・応募者側双方の意見を勘案して回答するよう説明する。
・ロイロノートにカードを提出する際には、賛成は「青色」、反対は「赤色」、どちらともいえない場合(このような制度設計であれば部分的利用は良いなど)には黄色カードを用いるよう指示する。
・就活生が嫌がる「AIによる採用」(東洋経済記事)を紹介する。
・AIを活用した採用のカラクリ(最終的には人間が関与していること)について説明する。
・「AI採用」に関する記事内で、ソフトバンク採用担当者がブラックボックスについて触れている記事を紹介する。
・ブラックボックス・説明可能なAIについて説明する。

ア.行動観察
イ.ワークシート
(ロイロノート)

展開3
15分

・機械学習における「学習」「推論」のイメージ、教師あり学習、教師なし学習、強化学習について理解する。
・Teachable Machine(画像認識のモード)を用いて、機械学習(教師あり学習)におけるモデル作りを体験する。
<実習内容>
⓪画面上のClass1、Class2にモノA・Bの画像(3枚ずつ)を認識させる。
–以下ペアで作業–
①相手が用意したモノA・Bに関連する画像を画像検索で探し、認識させる(精度の確認)。
②モノAと誤認識を起こすであろうモノBの画像(またはその逆)を画像検索から探し出し、自分の端末の画面を相手の端末のWebカメラに向けて画像を認識させる。

・人間(0歳の赤ちゃん)を例に説明する。
・教師あり学習、教師なし学習、強化学習の違いについて具体的な事例を踏まえて説明する。
・あらかじめ、授業までに2種類の画像を3枚ずつ用意するよう周知しておく。
・②の実習を通して、自分自身がどのような観点で画像を収集したか考えさせる。
・ペア(相手)が選んだ画像(3枚)にはどのような関連性があるか(どのような要素が不足しているか)考えさせる。
・本来であれば、モデル作りには膨大なデータを用いるが、この実習では、1つのモノに対して「画像3枚」という少ない枚数の画像を用いて学習させる。
データの「量」と「質」の重要性に気づかせる。

ア.行動観察
イ.作業データ
(Teachable Machine)

展開4
8分

・AI技術が引き起こす社会 課題について認識する。
・「データの偏り」で起きる社会的影響として、Googleフォトの誤タグ付けや、AmazonがAI採用を取りやめた事例があることを理解する。
・無意識のバイアス(アンコンシャス・バイアス)について理解する。

・悪用と誤情報、公平性と差別、個人情報とプライバシー、人間の尊厳、アクセス不平等、安全とセキュリティ、軍事利用などAI技術が引き起こす社会課題には様々な側面があることを説明する。
(本時の授業内容では、悪用と誤情報・公平性と差別・人間の尊厳などと関連していることを意識させる)
・データの偏りで起こる社会的影響、AI採用を取りやめた事例について説明する。
・データの偏りには、「無意識のバイアス(アンコンシャス・バイアス)」が働いていることを理解させる。

(公民[倫理]・情報ともに、次回の授業につなげる説明を行う)

ア.行動観察

まとめ
4分

○まとめ・振り返り
人間と人工知能(AI)との関わり方を再考する。

・当日中にGoogle Formsに授業の振り返りを入力するよう周知する。

ア.行動観察
イ.ワークシート
(Google Forms)

8.まとめ

 授業を終えて、生徒の「振り返りフォーム」を見ると、ほとんどの生徒がAI(人工知能)との向き合い方について、自分自身の言葉で考えや意見を述べており、本時の目標は概ね達成できた。また、生徒の記述には、学習させるデータの「量」と「質」の重要性や、「説明可能なAI」の必要性について言及しているものも多く、これらの観点においても生徒に認識させることができた。今回は、隔週実施の65分授業であったため、1回の授業としてはボリュームのある内容であったが、本時限の内容を50分授業2コマで展開ができると、特に授業前半の「日常生活で人工知能(AI)に任せても良いこと、人間が行っておきたいことについての分類」部分などは、議論結果(班での見解)を各班ごとに詳しく発表させたり、教員と生徒・生徒(班)同士の対話を行ったりする時間として、「より深く」他者の考えを伺い知る機会になる。
 以下、高等部第2学年のあるクラス(受講者38名)の「振り返りフォーム」を例に、テキストマイニングを用いた分析結果と、生徒の感想をいくつか紹介する。(本文そのまま掲載)

※ユーザーローカルAIテキストマイニングによる分析
https://textmining.userlocal.jp/

  • 「AIは人間を助けられる場面もあるため、人間にとって利益になることもあるが、一方でAIに学習させる際にバイアスがかかると人間が不利益を被ることもあるのだと思った。バイアスがかかるという問題については、AIにデータを読み込ませる時に様々なバックグラウンドを持つ人が多く関わることが大事だと考える(例えば、特に性別や人種に対するバイアスに気づくという点などで)。AIに仕事を取られるという話をよく聞くが、どのように共生していくかを考えていく必要があると思う。」
  • 今回の授業の班の中での話し合いで、「人間の気持ちに関するようなことは人間が行うべきである」という考え方が皆の意見の軸として存在していたことがとても印象的でした。私は人間とAIの違いとして「心」というものを考えていました。いくら学習しようとも、人間が持つ心を機械のAIが超えることは出来ないのではないか、もしくはそのように私が「思いたい」のではないかと感じます。なぜ「思いたい」という表現を使ったのかというと、AIが発達するこの時代の流れに少なからず恐怖のようなものを感じているからです。AIという存在が完全な人間の代替物になってしまったらどうなるのか、様々な事が効率化されていき「無駄な時間」がこの世から消えたらどうなるのか、などといった未来の形に対する不安があります。授業内で推薦入試へのAIの導入に対して反対する姿勢を取ったり、用意する画像をわざと分かりづらいものを選んだりしたのも、このような考えが自分の中にあるからだと考えました。AIの技術の進歩を目の前にした時に、人間は「人間にしかできないこと」を無意識の内に模索しているのだろうと思いました。
  • 今回の授業中の生徒の意見だけでも、物事を分けるのにAI派と人間派でそれぞれ意見が違ったことから、何をもってAI化すると判断するのかは人によって基準が違うと思った。条件として、正確性やスピードなど様々なことが挙げられるが、人間が気持ちを込めて行いたい動作もそれぞれ違って、はっきりと正解がない話題である。ある人はこの動作は単純作業だからAI化したいと言うかもしれないし、一方で、ある人はしっかり気持ちを込めて人間の手で行いたいと言うかもしれない。また、”AIは果たして人間を超えられるのか”というのも1つ話題に上がることである。今回の授業中に画像を覚えさせるアプリを使ったときに、これからの未来私達人間はAIに支配されてしまうのではないかと恐怖を感じた。人間が作ったものとはいえ、力を制御出来なくなってしまう前に人間が想像しなければならないリスクはたくさんある。これからの未来を生きていく上で、あくまでもAIは人間の生活を便利にするもので、人間を管理するものではないということを念頭に置いて考えていきたいと思った。
  • AIの発展はこれからも続くと思うし、人間を大いに助けてくれる存在になると思った。今は人の手でやっていることも、AIに代用してもらえて世の中がもっと豊かになったり、生活が楽になる部分もあると思った。しかしその反面AIの普及は様々な問題も引き起こすことを改めて考えさせられた。今までに入れられたデータの分析から新たな作業をするというAIの最大の特徴が、思わぬ方向に働くこともあると知った。人間には、何をAIに学ばせるかという無意識のバイアスがかからないようにしなければいけないと思った。そのためには、AIに学ばせるだけで、様々なことを発展させようと丸投げにするのではなく、今後も人間が未知のことへも興味を持ち、深く多角的に学ぶことが大切だと感じた。

【関連資料】

情報Ⅰ (3)コンピュータとプログラミング「アルゴリズムとプログラム」(第3学年)

1.はじめに

 本校では、教科書の内容に加え、P検を活用した情報リテラシーの習得、ポスター制作による画像処理、PR映像制作による動画処理、HTMLとCSSを用いたWEBデザイン、3DCGモデリングや3Dプリンタの活用、ボーカロイドによる音源制作などを行っている。様々なコンピュータ実習を体験させることで、それらの背景にある理論や仕組みを帰納的に気づかせ、理解させることを狙いとしている。その結果、これからの情報社会に参画するための資質や態度が育つことを期待している。
 ここでは、人型ロボット『RoBoHoN(ロボホン)』を活用したプログラム教材の開発についての実践を記述する。誰が見ても「かわいい」と感じるRoBoHoNを活用することで「プログラミングはおもしろくなさそう」という多くの生徒が抱く負の印象を払拭し、生徒のモチベーションを保ちながら、その先にある達成感を全員が体験できることを目的とした。

2.単元名

「(3)コンピュータとプログラミング」(実施学年:3年生)

3.単元の目標

  • RoBoHoNプログラミングによって、プログラミングの基礎(計算・変数・乱数、条件分岐、繰り返し処理、関数、リスト)を理解する。(知識及び技能に関する目標)
  • アルゴリズムの基本構造をPythonとロブリックでしっかりと理解し、試行錯誤しながら自分の思い通りにRoBoHoNを動かす。(思考力、判断力、表現力等に関する目標)
  • ロボットを実際に動かすことを通じて、ロボットと共生する未来の可能性について主体的に考えようとする。(学びに向かう力、人間性等に関する目標)

※ロブリック…タブレットやパソコンから、RoBoHoNのセリフや動きをプログラミングするアプリ

4.単元の評価規準

ア 知識・技能

イ 思考・判断・表現

ウ 主体的に学習に
取り組む態度

・ロブリックにおけるプログラムを論理的に理解している。
・Pythonのコードをヒントに正しくブロックプログラミングしている。
・Pythonで学んだプログラミングの基礎がRoBoHoNのプログラミングに生かされている。

・自分が思い描いた動きを表現するために適切なアルゴリズムを考えることができる。
・人とロボットとのインタラクティブを意識してプログラミングできる。
・プログラミングによって思い通りの動きを表現できる。

・試行錯誤する中でも、終始楽しんでプログラミングしようとしている。
・演習問題を最後まであきらめずに取り組もうとしている。
・学んだことをもとに、創意工夫しながらプログラムしようとしている。

5.単元の指導と評価の計画

(ア:知識・技能/イ:思考・判断・表現/ウ:主体的に学習に取り組む態度)

学習内容

学習活動

評価の観点

評価の方法

1

・アルゴリズムとフローチャート。
・アルゴリズムによるプログラムの効率化。
・RoBoHoNとは。
・音声認識と自然言語処理とAIプログラミング。
・Pythonを学ぶための準備。

・教科書を使いアルゴリズムとフローチャートについて学ぶ。
・JavaScriptにより記述された素数を求めるプログラムを使って、アルゴリズムによる効率化の実証実験を行う。
・グループごとに対話し遊ぶことでRoBoHoNの扱いに慣れる。
・コンピュータからGoogleにログインし、Colaboratoryで新規に作成する。

・じゃんけんのフローチャートを理解できているか。
・「エラトステネスのふるい」のアルゴリズムの方が効率的であることに気が付いているか。
・RoBoHoNと対話できているか。
・RoBoHoNとの対話がプログラミングとAI技術の活用により実現できていることに気が付いているか。

2

・プログラミング言語Pythonの基本①(インデント、変数の名前、データ型、画面への表示と計算、演算子、配列)。

・Colaboratoryで記述し実行することで、教科書に則って、Pythonの基本を学ぶ。
・うまく実行されないときは、エラーメッセージを見てデバッグする。

・Hello world!と画面に表示できたか。
・変数、データ型、演算子、計算に慣れたか。
・リストの定義、要素の追加と削除、リストの長さの取得ができるようになったか。

3

・プログラミング言語Pythonの基本②(for文とwhile文によるループ、if分岐、グラフ出力)。
・まとめのプログラミング。

・Colaboratoryで記述し実行することで、教科書に則って、Pythonの基本を学ぶ。
・乱数を用いてゲーム性のあるプログラミングを作成する。

・for文を用いてリスト作成を効率的にできたか。
・リストを利用してwhile文を理解できたか。
・if分岐を理解した後、乱数と組み合わせてゲーム性を実現できたか。

4

・プログラミング実習~基礎編
「STEP1:計算・変数、STEP2:条件分岐、STEP3:繰り返し処理」のうちポイントとなる数問を一緒に解き、演習問題は時間制限を設け自力で解く。

・学内サーバにある「プログラミング実習~目指せRoBoHoNマスター」サイトにアクセスする。
・iPadでSafariから指定されたRoBoHoNのIPアドレスにアクセスする。
・サイト上にある問題と動画、ヒントのPythonコードを参考にロブリックでプログラミングする。

・RoBoHoNに計算をさせられているか。
・ランダムな整数の利用を理解できているか。
・変数を理解できているか。
・条件分岐のプログラミングが正しくできているか。
・繰り返し処理を正しく理解し実行できたか。

5

・プログラミング実習~応用編
「STEP4:関数、STEP5:リスト」のうちポイントとなる数問を一緒に解き、演習問題は時間制限を設け自力で解く。
・気に入ったプログラムをアレンジする。

・前回と同様にiPadとRoBoHoNをロブリックでつなぎ、サイト上のプログラミングの問題を解いていく。
・制限時間内に演習問題を解き、正しくプログラミングをして、思い通りにRoBoHoNを動かす。
・これまで習ったことを総動員してプログラムを独自にアレンジする。

・関数として分離できていることを理解したか。
・じゃんけんの手を決める関数を作成することができたか。
・乱数、for文を利用し、リストの中身を言わせることができたか。
・for文と複数リストを組み合わせることができたか。
・創意工夫できたか。

6.本時の目標【4限目】

  • 練習問題を教師と一緒に取り組むことによって、プログラミングの基礎を理解し習得する。
  • 順次処理、分岐処理、反復処理を実際にブロックプログラミングすることで、アルゴリズムの基本構造を実感し理解する。
  • 演習問題を制限時間内に自力で解くことによって、論理的思考力を鍛える。
  • 最後まで諦めずに、試行錯誤の中、楽しみながらプログラミングの実習をする。

本時の流れ【4限目】

時間

学習活動・内容

指導上の留意点

評価

導入
5分

・PCを起動し、「プログラミング実習~目指せRoBoHoNマスター」サイトにアクセスする。
・PC起動中の待ち時間は復習も兼ねて、乱数を用いたPythonゲームプログラミングを紹介。(Colaboratory)
・iPadでSafariから指定されたRoBoHoNのIPアドレスにアクセスする。

・PCは起動しておき、生徒はログインするだけの状態にしておくとよい。
・RPGゲームの一部、戦闘シーンのPythonプログラミングを提示し、どのようにすれば勝率が上がるかを考えさせる。
・生徒を4グループに分け、列ごとに近くに置いてあるRoBoHoNのIPを割り振る。

ア.行動観察

展開1
30分

・STEP1:計算・変数
Ex1-1は練習⇒Ex1-2は問題として自力で解く。Ex1-4練習⇒Ex1-6問題。Ex1-3ははじめ自力で考えさせ、すぐに答え合わせをして乱数を習得。
・STEP2:条件分岐
Ex2-2⇒Ex2-1Ex2-3は任意。
・STEP3:
Ex3-2⇒Ex3-1Ex3-3は任意。

・練習は、iPadの画面を提示し、教示しつつそれをマネて一緒にプログラミングする。
・自力で解く問題(下線の問題)は相談や質問は禁止。3~5分の時間制限を設け、できた人は加点をする。
※採点のためRoBoHoNに自分の出席番号と氏名を倍速で言わせる。

ア.行動観察
イ.送信されたプログラムを確認して加点

展開2
10分

・演習問題
Practice1-1:年齢予想ゲーム再考を制限時間(10分)以内に解く。
※早く終わった人Practice1-2にチャレンジする。創意工夫し、独自にアレンジしてもよい。

・相談や質問は禁止。自力で解く。
・プログラムができたらエミュレーターで正しくできたかを確認し、RoBoHoNに送信する。
・制限時間内にできた人は加点。ロブリックも確認する。

ア.行動観察
イ.送信されたプログラムを確認して加点

まとめ
5分

・演習問題の答えを画面で提示し、RoBoHoNに送信してプログラムの正解を実感する。
・次回は応用編になるので、今日やったこととPythonを復習しておくように指示する。

・正解は教師用のRoBoHoNに予め正解プログラムを保存しておき、ロブリックアプリから開く。
・次回は、関数とリストを扱うため、変数、乱数についての生徒の理解度を把握しておく。

ア.行動観察

7.まとめ

 授業後にFormsで事後アンケートをとったところ、「見た目もかわいくてすきです」「とても楽しかった」「プログラミングの面白さを知った」「ロボホンを自分で動かせるというところが面白かった」「動いた時、すごく面白い」「達成感でいっぱいになりました」「他のプログラミングもやってみたい」「ロボホンが動いた時にワクワクする気持ちがあった」等実習に対する好意的なコメントが多かった。全アンケート(回収123人分)をテキストマイニングで分析しても図のように「できる」や「楽しい」が目立って大きくなり、概ね当初の目的を達成できた。

※ユーザーローカルAIテキストマイニングによる分析
https://textmining.userlocal.jp/

 動いて実感でき、誰もが可愛いと感じることのできるプログラミング教材として、RoBoHoNは生徒たちの「モチベーションの持続」とその先にある「達成感」を体験させるのにとても有効である。今後、PythonとRoBoHoNのプログラミング教材の更なる改善を行い、未来につながるプログラミング教育をアップデートしつつ実践していく。

【本教材ができるまで】
・2019年度
青山学院大学 大学院理工学研究科の今村優斗氏とプログラミング教材の開発をスタート
ロボットAI体験として中学生や高校生に体験型の授業を実施
韓国人留学生に習いたての日本語でRoBoHoNと対話してもらう授業を実施
・2020年度
選択「情報の科学」にてインタラクティブなロボットプログラミングの授業を実施
https://youtu.be/yba4Rd3ka5I
・2021年度
必修「社会と情報」にて、プログラミングの基礎をRoBoHoNで学ぶ授業を実施
https://youtu.be/FoqPoZJNo60
選択「情報の科学」にて、Pythonを学んだ後にゲーム性のあるプログラミングの授業を実施
・プログラムの説明
https://youtu.be/gk4njaVU45I
・生徒作品
https://youtu.be/tNpsr8rXUPQ
・2022年度
EDIXのSHARPブースにて「動いて実感~もえるロボットプログラミング~RoBoHoN導入4年目の授業実践レポート」を発表
https://youtu.be/aOxeU50ph1k

【教材】
2021社会と情報RoBoHoN(生徒配布用) 
Wordダウンロード(964KB)
授業用のPPTデータ 
PPTダウンロード(2.3MB)
PythonとRoBoHoN玉聖プログラミング教材

情報の科学 情報社会に生きるわたしたち「情報社会の未来について考えてみよう!」「よいパスワードってどんなパスワード?」(第1学年)

1.はじめに

 Society 5.0が近い将来到来すると予想されている。変化する社会の中で学校教育は,生徒が持続可能な社会の担い手として自立的に生きることや,よりよい社会の形成に積極的に参画するための資質・能力と態度を育成することを求められている。これを踏まえて本校情報科は,「生徒が自分で学び,考えるための足がかりをつくる」ことを学習指導の基本方針としている。教員は,生徒が学びと自らの人生や社会との間につながりを感じることができるように,授業の工夫に努めている。生徒には授業での学びが自らの能力を引き出し,実生活の中で出会う様々な課題の解決に活かしていけることに気づかせたい。
 本校は,定時制課程・総合学科・単位制の公立学校である。生徒は自身の興味や関心に合わせて自由に授業を選択し,学びを広げ深めていく。本校の生徒は,学校生活を通じ,自分のやりたいことや自分に合うこと,安らぎの場所や友人を見つけ,共に学び合う中で,自分の個性や能力を伸ばし,自分を鍛え,力を蓄えていく。そして大きな可能性を持つ自分を認め,未来に向かって更なる挑戦をする意欲や態度を身に付けることを目指している。
 本報告では「情報の科学」における授業オリエンテーションでの実践を紹介する。現任校には情報科の教員が複数名在籍し,日々連携しながら授業を行っている。今回の実践事例は,本校の情報科の教員が共同で構想した授業案を整理したものである。

2.題材名

情報社会に生きるわたしたち
「情報社会の未来について考えてみよう!」
「よいパスワードってどんなパスワード?」

3.題材の目標

・情報技術の進展が社会に果たす役割と社会や⼈間に与える影響を考えさせる。
・情報社会の安全とそれを支える情報技術の活用を理解し,情報社会の安全性を高めるために個人が果たす役割と責任を考えさせる。

4.本時の流れ

【第1回】情報社会の未来について考えてみよう!

学習目標

情報技術の進展が社会に果たす役割と社会や⼈間に与える影響を考える。

期待される学習成果

・情報技術が社会を支える重要な要素になっていることを理解する。
・自分自身で情報を管理することの必要性と配慮すべき事項を考える。
・現状として一部の法律の整備が,情報技術の進展に追いついていないことを理解する。
・今後情報技術をどのように活用していくべきか考える。

時間

学習内容・学習活動

導入
5分

・「情報科」と聞いて,どのような教科か想像する。
・教科書を読み,これから学習していく内容を確認する。

展開1
15分

・次の問いに対する自分の考えをまとめる。
(a)もしも,携帯電話やスマートフォンがなかった場合,どのような不便なことが起こるでしょうか。
(b)例えば,交通系IC カードを利用すれば,乗車や下車の時刻,区間などが自動的に記録されます。このように情報が「記録される」ことが私たちにもたらすよい面と悪い面にはどのようなものがあるでしょうか。
(c)「お客さんが乗車している無人自動運転タクシーが,移動中に,道から飛び出してきた歩行者にぶつかってしまい,交通事故を起こしてしまいました」この場合,歩行者に対してけがをさせてしまった責任は誰がとるのでしょうか。次の選択肢から1つ選び,その理由を考え,書きましょう。
選択肢:乗車していたお客さん,無人自動運転タクシー,タクシー会社,自動運転車の販売店,自動運転車の設計者,その他(具体的に書く)

・上記の問いに対する考えを,次の視点でそれぞれ整理する。
(a)情報技術が利用できなくなった場合に想定される社会への影響を考える。
(b)「記録される社会」において,自分自身の情報をどのように管理していけばよいのかを考える。
(c)今後,情報技術の進展に一部の法律の整備が追いつかず空白の期間も想定されるが,個人として,社会としてどのように対応すればいいのか考える。

展開2
20分

・情報社会の未来像を描いた動画を視聴する。
経団連「20XX in Society 5.0~デジタルで創る,私たちの未来~」(4分45秒)
https://www.youtube.com/watch?v=xQnnAih8KIo

・動画内で紹介された技術を1つ挙げ,次の問いに対する自分の考えをまとめる。
(a)その技術であなたがしたいこと,または,社会に対してためになることは何だろう。
(b)その技術を利用する際に気を付けないといけないこと,または,問題になりそうなことは何だろう。
(c)これらの技術を組み合わせることで, 新たにどのようなことができそうだろう。その組み合わせと,できそうなことを書こう。

まとめ
5分

「情報の科学」の授業を通して,できるようになりたいことは何か。意気込みを書く。

【第2回】よいパスワードってどんなパスワード?

学習目標

情報社会の安全とそれを支える情報技術の活用を理解し,情報社会の安全性を高めるために個人が果たす役割と責任を考える。

期待される学習成果

・パスワードの安全性と利便性のアンチノミー(二律背反)に関する視点を理解する。
・パスワードへの攻撃方法や推測されにくいパスワードの条件を理解する。
・安全性と利便性の両立を目指した持続可能なパスワードを自分なりに考え設定できる。
・習得した見方・考え方が,今後SNSなどでパスワードを設定する場合に活用できる。

時間

学習内容・学習活動

導入
5分

・パスワードの必要性を理解する。
・「よいパスワードとはどんなパスワードか」を自分なりに考える。

展開1
15分

・パスワードを推測する体験を通して,よく使われていそうなパスワードの例を考える。
次のヒントをもとに,佐藤進さんが設定したパスワードを推測しよう。
(a)レベル1:「4桁のパスワードである」,「佐藤進さんの誕生日は6月13日である」
(b)レベル2:「8桁のパスワードである」,「佐藤進さんの誕生日は6月13日である」,「佐藤さんが生まれたのは1980年である」
(c)レベル3:「氏名は佐藤進である」,「4桁のパスワードである」
(d)レベル4:「氏名は佐藤進である」,「6桁のパスワードである」
(e)レベル5:「8桁のパスワードである」,「佐藤進さんの誕生日は6月13日である」,「佐藤さんが生まれたのは1980年である」,「パスワードはアルファベットと数字の組み合わせである」
(f)レベル6:「佐藤進さんの娘の名前はサキさんである」
(g)レベル7:「佐藤進さんの娘の名前はサキさんである」,「佐藤進さんは娘をとても愛している」
(h)レベル8:「佐藤進さんの誕生日は6月13日である」,「佐藤進さんが生まれたのは1980年である」,「佐藤進さんの娘の名前はサキさんである」,「パスワードは2つの要素の組み合わせである」
(i)レベル9:「佐藤進さんの誕生日は6月13日である」,「佐藤進さんが生まれたのは1980年である」,「佐藤進さんの娘の名前はサキさんである」,「パスワードは2つの要素のクロスが使われている(○○○○ ×××× → ○×○×○×○×)」
(j)レベル10:「佐藤進さんの誕生日は6月13日である」,「佐藤進さんが生まれたのは1980年である」,「佐藤進さんの娘の名前はサキさんである」,「パスワードは2つの要素のクロスが使われている(○○○ ×××× → ○×○×○×○×)」,「パスワードの始めと終わりに記号がある」

・パスワードを推測する体験を通して,推測されにくいパスワードの条件を考える。
・実在のアカウントやデータに攻撃すると不正アクセスに該当することを理解する。
・次の一般的なパスワードへの攻撃方法について理解する。
(a)パスワード類推攻撃
(b)辞書攻撃
(c)総当たり攻撃
(d)ソーシャルエンジニアリング
(e)パスワードリスト攻撃

展開2
15分

・スマホのロック画面に関して,次の問いを考える。

(a)安全だと思う順番に並べよう。また,一番高いものと低いものの理由を書きましょう。
(b)便利だと思う順番に並べよう。また,一番高いものと低いものの理由を書きましょう。
(c)安全と便利を兼ね備えていると思うものを1つ挙げ,選んだ理由を書きましょう。

・安全性と利便性のアンチノミーと両立を目指すことの必要性を理解する。

・安全と安心,危険と不安は必ずしも一致しないことを理解する。
・安全と便利を両立した持続可能なパスワードを考えることが大切であることを理解する。

まとめ
10分

学んだことを踏まえて「よいパスワードとはどのようなパスワードか」を考える。

5.授業をふり返って

 今回報告した事例は,「情報の科学」の第1回と第2回の実践を整理したものである。授業では,生徒が科目の内容に興味を持ち,今後の学習に意欲を持って取り組めるように,生徒が日常生活で獲得した知識を授業の出発点として,多面的な視点で物事を捉え,実験と考察を通して自分なりの考えを整理する活動を行った。
 第1回の授業の中で生徒は,情報社会の未来について考えた。生徒からは実用化が予想される技術について,利便性だけでなく危険性や課題についても真剣に考えている印象を受けた。また,複数の技術を組み合わせて新たな活用方法を検討する問いに対して,多視点から物事を捉えるように意識していた。生徒は想像力に加え創造力を発揮し情報社会の未来について理解を深めることができたと思われる。
 第2回の授業では,よいパスワードとはどのようなものかを考えた。生徒は架空の人物が設定したパスワードを推測する実験を通して,設定されがちなパスワードの特徴を予想したり,実験の結果から推測されにくいパスワードの条件を考えたりしていた。また,いくつかのスマートフォンのロック画面を比較し,安全性と利便性を両立するパスワードを考える活動を行った。ロック画面を比較して設定できるパスワードの特徴を想像したり,運用面でのメリットとデメリットを考慮したりしながら,自分なりに考えをまとめていた。生徒は授業での実験と考察から,パスワードに関する理解をより深めることができたと思われる。

6.まとめ

 新学期から一年間の科目全体の学習指導内容を計画する上で,授業を構想しやすくするために,飛行機を学習者と見立てた。飛行機の進行方向を「学びに向かう力,人間性等」として,両翼のジェットエンジンを「知識及び技能」と「思考力,判断力,表現力等」とするモデルを考えた。

 両エンジンは,学習目標となる目的地まで進むために必要な推進力と捉えることができる。エンジンが片方だけでは,飛行機が目的地まで十分に進むことは難しい。しかし両エンジンをうまく運用できるようになれば,目的地をさらに超えて飛んでいくことができるかもしれない。つまり学習者が「知識及び技能」と「思考力,判断力,表現力等」を適切に習得することができれば,実生活の中で出会う様々な課題の解決においても,授業で得た学びを活かすことができるだろう。そのため授業者は,学習者が「知識及び技能」と「思考力,判断力,表現力等」をさらに発揮できる様な学習目標を設定したり,題材を構想したりする必要がある。
 また進行方向である「学びに向かう力,人間性等」が目的地に向いていなければ,たとえエンジンを掛けても,目的地に到着することは難しい。つまり「学びに向かう力,人間性等」は「知識及び技能」と「思考力,判断力,表現力等」と同様に,学習目標を達成したり,授業での学びを実生活で活かしたりする上で重要な要素である。そのため授業者は,学習者が「取り組みたい!」「解決したい!」と思うような題材や問いをつくることが大切である。魅力的な目標であれば,ゴールまでの道中が険しくとも辿り着こうとする意識を持つことができるだろう。いっぽうで,最初は「学びに向かう力,人間性等」が学習目標に向いていなくても,「知識及び技能」と「思考力,判断力,表現力等」が使いこなせるようになるにつれて,学習者が自立的に「学びに向かう力,人間性等」を目的地に向けることができるという面も考えられる。最終的に,学習者自身が目標を定め,主体的に学習を進めることができる力を身に付けられるとよい。

 飛行機が目的地を目指す上で特に重要な場面は,離陸と着陸であると思われる。ここでは離陸を「学習者が自由に考えたり理解したりする準備ができた状態」と捉えて,着陸を先述した目的地である「学習目標」に到達することとして考えたい。飛行機が離陸すれば,あとは進行方向に従って自由に飛び回ることができるだろう。しかし離陸後,飛行機は必ずしもまっすぐ目的地に向かうとは限らない。場合によっては,寄り道をしたり,元の道を戻ったり,迷ったりと進路は変わるかもしれない。重要なことは,飛行機が自分の進路を適宜確認しつつ,目的地を見失わないように進路をとることである。そのため授業者は,学習者が自由に考えたり理解したりすることのできる環境を整えた上で,学習者それぞれに応じた助言や支援をすることが必要である。
 円滑に学習を進めるための手法として,学習目標と評価規準の提示による学習活動の明確化が挙げられる。特に「思考力,判断力,表現力等」を発揮する発問の場合,下図のように,学習者の思考や行動は一点に向かうのではなく,様々な方向に広がっていくと考えられる。そのため学習目標を提示し主体的な思考や行動が発揮されるべき方向性を示すことで,学習者が確実に学習目標を達成できるように支援することができるだろう。また,学習目標に対する段階的な評価規準も示すことで,学習者の意欲の向上や,活動の明確化につながると考えられる。

 今後も「生徒が自分で学び,考えるための足がかりをつくる」ことを学習指導の基本方針とし,生徒が授業での学びと自分の人生や社会とのつながりを感じられるように,丁寧に授業を実践していきたい。そして,生徒が学習したことを活用して自らの能力を引き出し,実生活の中で出会う様々な課題の解決に活かすことのできる学力の育成を目指していきたい。

【解説】

「よいパスワードってどんなパスワード?」より

(a)安全だと思う順番に並べよう。また,一番高いものと低いものの理由を書きましょう。
(b)便利だと思う順番に並べよう。また,一番高いものと低いものの理由を書きましょう。
(c)安全と便利を兼ね備えていると思うものを1つ挙げ,選んだ理由を書きましょう。

 問(a)(b)(c)は,生徒によって結論に違いが出てくる。そのため,仲間と議論する場面を取り入れることで「安全性とは何か」「利便性とは何か」「持続可能とは何か」についてより理解を深めることができると考えられる。

・問(a)について
 上図のようにスマホのロック画面を左からA・B・C・D・Eとする。例えばパスワードの組み合わせ数が多いほど(推測することが難しいため)安全性が高いと考えた場合,パスワードの組み合わせ数がAでは数字のみが使われていることはわかるが推測は困難,Bでは100万通り,Cでは英数字記号が使われていることがわかるが推測は困難,Dは1万通り,Eでは4桁~9桁で約39万通りを理由に,安全順をC・A・B・E・Dと並べることができそうである。生徒によっては,実生活でEを使う際は単純なパターンを用いる傾向があることを理由にEはDよりも安全性が低いと考えたり,Aでは3桁以下のパスワードも設定できることを理由にAはDやEよりも安全性が低いと考えたりする場合もある。

・問(b)について
 例えばパスワードの組み合わせ数が少ないほど(パスワードを記憶したり打ち込むのが楽なため)利便性が高いと考えた場合では,便利順にD・E・B・A・Cと並べることができそうである。生徒は利便性が高いものとしてDやEを挙げ,利便性が低いものとしてAやCを挙げる場合が多いようである。生徒によっては,BやDと比較してA・C・Eは自由にパスワードの桁数を設定できることを理由に,利便性が高いと考える場合もある。

・問(c)について
 例えば安全順をC・A・B・E・Dと並べ,便利順をD・E・B・A・Cと並べた場合,Bが安全と便利それぞれ中間にあるため,Bが安全と便利を兼ね備えたものであると考えることができそうである。生徒は安全と便利を兼ね備えたものとしてA,B,C,Eを挙げる場合が多く,Dを挙げる生徒は少ないようである。安全性と便利性のどちらを優先するのかによって結論が変わってくる。

【関連資料】

社会と情報 情報の活用と表現「選挙ポスター制作プロジェクト」~社会の問題点を発見し、解決策を提案する~(第1学年)

1.はじめに

 前任校の埼玉県立浦和高等学校ではPBL(課題解決型学習)を意識し、作品制作とプレゼンテーション、相互評価を繰り返しながら、生徒の主体性と問題解決能力、また批判的に情報を読み解く力の育成に取り組んできた。たとえば画像や音、映像等のメディアの特性を学習する場面では、基本的なメディアの特性について学ぶとともに、あえて「情報操作」を意図した作品をつくり、その作品を生徒同士で評価し合うなどの実践を展開してきた。
 平成27年公職選挙法改正により、選挙年齢が18歳に引き下げられ、高校生における主権者教育も求められており、政治・経済などの授業で本格的に取り上げられている。情報科でも何かできないかと考え、情報のディジタル化の単元で行うポスター制作のテーマを「選挙ポスターの制作」とし、プロジェクト型学習を意識した授業設計を行った。

2.単元名

情報の活用と表現
「選挙ポスター制作プロジェクト」~社会の問題点を発見し、解決策を提案する~
(実施学年:第1学年)

3.単元の目標

・情報のディジタル化の基礎的な知識を理解させるとともにディジタル化された情報が統合的に扱えることを理解させる。
・情報発信者の意図を的確かつ批判的に読み解く力を向上させる。
・問題解決の手法を理解させる。

4.単元の評価規準

ア 関心・意欲・態度

イ 思考・判断・表現

ウ 技能

エ 知識・理解

・表現し伝える活動に対して積極的に取り組むことができる。
・他者のコンテンツを適切に評価しようと努める。

・適切な情報手段で情報を集め、問題発見及び解決へ向けた提案を企画書にまとめることができる。

・コンテンツを作成するためにコンピュータを活用することができる。
・分かりやすく情報を表現することができる。

・情報のディジタル化の意味を理解できる。
・情報を統合したコンテンツは多様であり唯一の正解はないことを理解する。

5.単元の指導と評価の計画

 本単元は10時間構成である。本プロジェクトの概要を説明し、画像編集ソフトの使い方や情報のディジタル化の基本的な知識を抑えた上で、選挙ポスターを企画し、制作する。合わせてレポートも制作し、発表を行い、相互評価を行うことで、情報には発信者の意図が存在することなどに気付く場面を設けている。

(ア:関心・意欲・態度/イ:思考・判断・表現/ウ:技能/エ:知識・理解)

学習内容・学習活動

評価の観点

評価の方法

1

・プロジェクトの概要を理解する。
・過去の作品例を見る。
・問題発見/解決策の検討をする。

行動観察
ワークシート
リフレクションシート

2

・画像編集ソフトの練習をする。
・情報のディジタル化の基本的な知識を理解する。
・企画を検討する。

行動観察
リフレクションシート

3

・企画を検討する。(前時の続き)

行動観察
企画書
リフレクションシート

4
5
6

・ポスター/レポートを制作する。
・発表に向けて準備をする。

行動観察
作品
レポート
リフレクションシート

7

・発表/投票/相互評価(グループ)

行動観察
相互評価シート(班)
リフレクションシート

8
9

・発表/投票/相互評価(クラス)

行動観察
相互評価シート(クラス)
リフレクションシート

10

・振り返り

行動観察
プロジェクトのリフレクションシート
リフレクションシート

6.発表、質疑応答、相互評価で目指すこと

 10時間の単元のうち、8時間目と9時間目が作品の発表、質疑応答、相互評価などを通した生徒どうしの意見交換と気付きの時間になる。生徒は相互評価を通じて情報発信者の意図を的確かつ批判的に読み解き表現することや、質疑応答を通して情報発信者の考えを適切に引き出し、思考を深めることを経験する。本時の具体的な流れは、次項の表の通りである。

7.本時の流れ(8時間目)

時間

学習内容・学習活動

指導上の留意点

評価の方法

導入
10分

・前時の振り返り(リフレクションシートより)
・発表時の流れを確認する。

・質問することの意義を改めて説明し、積極的に質問することを促す。

・行動観察

展開
35分

・発表/質疑応答/相互評価を行う。(1~6班)
・具体的に記述する。

・質問に対して、誠実に、正対して答えるように促す。
・回答に納得いかない場合は、踏み込んで問い返すよう促す。
・必要に応じて、発表、作品、質疑応答についてコメントする。

・行動観察
・相互評価シート(クラス)

まとめ
5分

・本授業の振り返りをリフレクションシートに記入する。

・今日の授業の振り返りの中で、次回の発表、評価に向けて課題を記述させる。
・評価活動が創作活動へ繋がることに気付かせる。

・リフレクションシート

8.まとめ

 本プロジェクトは、情報のディジタル化の単元に問題解決とメディア・リテラシーの内容を組み合わせたものとも言える。選挙ポスターという題材は、問題の発見や解決策の提案を創造的かつ主体的に行う上で興味深いテーマとなった。生徒は常識にとらわれず自由な発想でストーリーを考え抜き、それを形にする楽しみ(苦しみ)も経験した様子である。相互評価や質疑応答を繰り返す中で、情報受信者は、情報発信者の意図を的確かつ批判的に読み解き、論理的に表現することで、情報受信者として成長することができる。また、情報を効果的に分かりやすく伝える情報発信者の成長にも繋がっていると考える。
 「情報Ⅰ」においても「問題解決」をあらゆる単元、場面において繰り返し実践していき、生徒たちの問題解決力の向上を図っていきたい。そして、情報の授業で学んだことを他教科や日常のあらゆる場面で活用できるよう授業設計/計画をしていきたい。

【関連資料】