学び!と美術
2026.05.11 <Vol.165>
学級担任に聞く「特別支援学級と通常の学級の図工の時間」 第1回:支援の考え方は似ている
特別支援学級と通常の学級の図工の時間。先生は何を見て、どのように働き掛けながら、困っている子どもを支援しているのでしょうか。それぞれの学級に携わる二人の先生に話をうかがいました。
第1回:支援の考え方は似ている
第2回:子どもも教師も見通しをもてるように(7月10日公開予定)
第3回:「自由にやってごらん」を成り立たせるには(9月10日公開予定)
横浜市立緑小学校は児童数が800名を超える大規模校で、現在、個別支援学級(横浜市では特別支援学級を「個別支援学級」と呼ぶ。以下、個別支援学級)に在籍する児童は全体の約1割。自閉症・情緒障害学級(以下、情緒級)と知的障害特別支援学級(以下、知的級)の割合は、およそ4対1となっている。
個別支援学級は1学級につき児童数8人が基準となるため他学年と合同でクラスを編成するケースも多いが、同校では現在、学年ごとに情緒級の単独クラスを編成できる強みを生かして、一般学級(横浜市では通常の学級を「一般学級」と呼ぶ。以下、一般学級)に準じたカリキュラムを一人ひとりの特性に合わせて調整し、実施している。
- 大谷幸子先生(写真左)
毎年1年生の個別支援学級を担当し、今年で8年目。学級の児童数は8人。体育のみ個別支援学級の他の学年と一緒に活動し、その他の教科については単独の学級として指導に当たる。 - 小坂美月先生(写真右)
3年間、個別支援学級を担当し、昨年度から1年生の一般学級を担当する。学級の児童数は29人。
心が納得できる手立て
――個別支援学級と一般学級の図画工作において支援方法にはどんな違いがありますか。
小坂:少人数の個別支援学級の場合は、一人ひとりがどこでつまずきそうかを授業前に細かく予想して、特性に合わせて声掛けのタイミングやサポートの先生の配置などを計画します。一般学級は人数が多いため、子どもがつまずきそうなポイントを全体指導の中でどう拾っていけるかを考えながら授業を組み立てています。
大谷:一般学級では子どもが「失敗した」と感じてから関わり、そこから立て直したり広げていったりする場面も多いと思うのですが、個別支援学級の場合は、「失敗したらもうやらない」と活動が止まってしまう子がいます。そのため例えば、「画用紙の表で失敗しちゃったら裏があるからね」「それでも失敗しちゃったときには先生に相談に来てね」と活動を始める前にいくつかの方法を伝えて、「失敗しても大丈夫」という安心感をもって取り組めるようにしています。
小坂:個別支援学級であっても一般学級であっても子どもたちにとって安心感は大事ですよね。1年生の一般学級で「せんのぼうけん」の活動をしようと考え、その前の週に子どもたちに「どんなせんがあるかな?」と投げ掛けて試しにペンで線をかいてみたんです。すると子どもたちが口々に「先生、間違えた!」って言ってきて・・・・・・。その反応から、この題材では子どもたちが間違いをすごく気にすることがわかったので、「冒険」という要素を強く打ち出すことにしました。
当日も「『ペンでかく』ということは消せないけれど、これは冒険なんだから大丈夫。冒険には失敗なんてありません!」と、失敗を恐れずに取り組めるように声を掛けました。それでもどうしようもないという場合には、切った紙を貼る方法を提案することもあります。その時は、全員にではなく状況によって個別に、という感じです。
大谷:個別支援学級では個に応じて柔軟な対応をしますが、将来的に一般学級に転籍することを踏まえて特別ルールは増やないようにしています。それよりも何でつまずいたのかを見て、その時にどういう支援だったら本人が納得できるのか。「心が納得できる手立て」のほうが大切です。個別支援学級も一般学級も図工での支援の根本的な考え方は似ていると思います。一般学級にも「苦手だからやりたくない」と言う子がいますが、それは想像できないからなのか、技能が追いつかないからなのか。そこが見えくると適切な支援ができますし、活動も広がっていきます。一人ひとりの子どもの実態を見取ることが欠かせません。
小坂:その点は他の教科にも通じますね。例えば、国語で作文を書くときに、この子が立ち止まっているのは、書くことが思いつかないからなのか、ひらがなが書けないからなのか。子どもの困りごとにあわせて支援していく。
大谷:1年生は困っていることを言葉にするのが難しい場合もあるので、その時は、選択肢を用意して子どもに聞くようにしていますね。「何をかいたらいいかわからなくて困っている?」「やりたいけれどうまくできなそうで止まっている?」「先生の説明がわからなかった?」と聞いて、「そうであればこういうお手伝いができるよ。どうする?」って。それを繰り返していくことで子どもは安心しますし、安心するとできることも増えていきます。
ここを見ている
☑ 安心感をもって活動をスタートできるか。
☑ この支援は子どもの「心が納得できる手立て」になっているか。
☑ 必要なのは構想面での支援か。技能面での支援か。
☑ 困っていることを言葉にできずにいないか。
●次回は、子どもや教師が見通しをもって取り組むための工夫や机間指導についてお聞きします。7月10日に公開予定です。
大谷幸子(おおたに・さちこ)
横浜市立緑小学校 主幹教諭。緑小学校に異動してからは、個別支援学級の1年生を担当し、今年で8年目。子どもの特性を踏まえ、支援の手立てを考え、子どもの思いが広がるような材の研究を行っている。
小坂美月(こさか・みづき)
横浜市立緑小学校 教諭。3年間、個別支援学級を担当。昨年度から一般学級を担当する。材との出合いを大事にし、子どもの思いを引き出せるように日々の実践を通して研究している。

