学び!とシネマ
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ボクたちの、想像力と友情が世界をちょっとだけ変えるんだ

(C)Hammer&Tongs,Celluloid Dream,Arte France,Network Movie, Reason Pictures
映画に憧れた少年時代だった。時代劇が好きで、悪役が斬られたときは、必死に拍手をした。そんな思い出が、ふとよみがえる映画が「リトル・ランボーズ」(スタイルジャム配給)である。
小学生のころである。古本屋で、なぜか、東映の時代劇映画のシナリオを売っていた。なんとか入手して、撮影ごっこをした。近所の仲間を集めて、おもちゃの刀で、チャンバラのふりをして、撮影のふりをする。理解できる部分のセリフを言ったりもした。べったん(めんこ)やビー玉遊びなど、いろんな遊びを提案したが、この撮影ごっこは、受けた。
もちろん、アニメーションは大好きだった。パラパラ漫画といって、少しずつ、人物や動物の動きをずらして、描く。パラパラめくると、動いて見える。まあ、アニメーションの原型だろうが、拙い絵ながら、一時、のめりこんで遊んだものである。
映画は、1982年、イギリスの田舎町が舞台。11歳の少年ウィル(ビル・ミルナー)は、母親と妹、おばあちゃんと暮らしている。家は、厳格なプリマス同胞教会に所属しているために、テレビや映画、音楽などの娯楽は禁じられている。
想像力豊かなウィルの楽しみは、ノートや聖書のはしっこに、いろんなイラストやパラパラ漫画を描くこと。
そんなウィルは、ふとしたきっかけで、不良少年リー(ウィル・ポールター)と仲良くなる。
リーは、ウィルと同じ母子家庭、母親は不在がちで、乱暴な兄がいる。そのような事情もあって、リーは、家事をこなし、食事も作る。いわば、自立した少年だ。
ウィルは、リーの広い家の片隅にある小屋で、ビデオで「ランボー」を見る。初めて見る映画にウィルは大感激。すっかり、ランボーに魅せられてしまう。
そこで、ウィルとリーは、リーの兄のビデオカメラを拝借して、なんと、自分たちだけの「ランボー」製作を思いつく。そこに、フランスからの交換生徒がやってくる。リーダー格の少年ディディエ(ジュール・シュトリク)が、この「ランボー」製作に多大な興味を抱き、仲間となる。
さあ、どうなるか。
紆余曲折、上級生たちの世界に足を踏み入れながら、ウィルたちの「ランボー」製作が続く。ところが、ある日、思いがけない事故が起こる。
少年時代の夢や、その夢を実現しようとする行動が、うまく描かれて、なんとも、ほのぼの、郷愁を誘う。
少年たちが成長し、世に一歩を踏み出す結構は「スタンド・バイ・ミー」でもある。ラストは、たとえば「ニューシネマ・パラダイス」を見たときのような、「映画」というメディアをめぐる爽やかな余韻に、おもわず涙する。
二度と戻らない、少年時代への郷愁をあざやかに切り取った監督・脚本は、ガース・ジェニングス。やはり、シルベスター・スタローンの「ランボー」に、限りない憧れを抱いた世代である。
2010年11月6日(土)より、渋谷シネクイント
ほか全国順次ロードショー!
■「リトル・ランボーズ」公式Webサイト
監督・脚本:ガース・ジェニングス
撮影技術:ジェス・ホール
美術:ジョエル・コリンズ
音楽 : ジョビィ・タルボット
プロデューサー:ニック・ゴールドスミス
2007年/イギリス・フランス/94分/