学び!と共生社会

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「新しい時代の特別支援教育の在り方に関する有識者会議」報告に示されている小・中学校への期待
2021.02.25
学び!と共生社会 <Vol.13>
「新しい時代の特別支援教育の在り方に関する有識者会議」報告に示されている小・中学校への期待
大内 進(おおうち・すすむ)

 前回、文部科学省「新しい時代の特別支援教育の在り方に関する有識者会議」の報告素案を紹介しましたが、パブリックコメントを経て、最終の報告がこの1月にまとめられました(*1)

 報告は「Ⅰ.特別支援教育をめぐる状況と基本的な考え方」「Ⅱ.障害のある子供の学びの場の整備・連携強化」「Ⅲ.特別支援教育を担う教師の専門性の向上」「Ⅳ.ICT利活用等による特別支援教育の質の向上」「Ⅴ.関係機関の連携強化による切れ目ない支援の充実」の5部で構成されています。
 前回は報告素案全体を俯瞰して、小・中学校の先生方に是非とも知っておいていただきたい内容として「これからの特別支援教育の方向性」と「全ての教師に求められる特別支援教育に関する専門性」について紹介しました。
 今回は最終的にまとめられた報告において、障害のある児童生徒とない児童生徒が可能な限り共に教育を受けられる条件整備としてどのようなことが示されているかを確認していきたいと思います。小・中学校におけるインクルーシブ教育システムの構築については、「Ⅱ」の「2.」に「小中学校における障害のある子供の学びの充実」として示されています。報告の概要(*2)にその骨子が整理されていますので、それに即してまとめていきたいと思います。

特別支援学級と通常の学級の子どもが共に学ぶ活動の充実

 ここでは、通常の学級の対応として、「交流及び共同学習」の一層の充実を求めています。さらに、特別支援学級の児童生徒が、在籍する学校の通常の学級の一員としても活動するような取組が重要であるとして、「ホームルーム等の学級活動や給食等について、可能な限り共に活動する」ことや、「教科学習についても、児童生徒の障害の状態等を踏まえ、通常の学級と特別支援学級が共同で実施することが可能なものは、年間を通じて計画的に実施すること」が必要だとしています。そのためには、両学級の教育内容の関連を図っていくこと、ユニバーサルデザインや合理的配慮の提供を前提とした通常学級の学級経営・授業づくりを進める必要があり、管理職のリーダーシップの発揮が望まれるということになります。

自校で専門性の高い通級による指導を受けるための環境整備

 障害のある児童生徒が在籍する小学校等で専門性の高い通級による指導を受けられるようにすることが大事で、その方策としては、他校の担当教師が巡回して指導を行う仕組みや担当者がICT・遠隔技術を活用して専門的な指導を受けられるような仕組みを整える事が大事だとしています。これらは行政面の課題であり、先生方の努力だけでは実現しないことですが、こうした方向性が示されていることをしっかり認識しておきたいものです。

通級による指導等の多様で柔軟な学びの場の在り方の更なる検討

 この項では、知的障害単一の児童生徒(*3)への対応について取り上げています。知的障害単一の児童生徒は、現状では通級による指導の対象となっていません。障害のある子どもと障害のない子どもが可能な限り共に教育を受けられるようにするという「障害者の権利条約」の精神からは、「知的障害があったとしてもその程度が軽度で、通常の学級での学習活動に概ね参加している者は通級による指導の対象に加えることも考えられる」わけですが、会議ではそうした意見に対して「知的障害のあるものは特別支援学級での指導が効果的」という反論もあったようで、報告では両立併記にとどまっています。
 また、この報告では、小学校等において、障害のある児童生徒と障害のない児童生徒が共に学ぶ取組を更に進めるための方策の一つとして「特別支援教室構想」にも言及しています。この構想は「全ての児童生徒が通常の学級に在籍し、教師が一人一人の障害の状態等に応じた合理的配慮の提供やティームティーチング等による多様な学習形態での指導を行ったり、必要に応じて特別の場で障害に応じた指導を行ったりする」というもので、平成17年の中央教育審議会「特別支援教育を推進するための制度の在り方について(答申)」などにも盛り込まれていたのですが、強い反対があり日の目を見ることがなかったものです。すでにいくつかの自治体では、特別支援教室を導入したり(*4)、障害の有無に関わらず全ての児童生徒ができる限り通常の学級に在籍して必要な時間に特別な指導を受ける取組を行ったりしています(*5)。今後の展開を注視したいと思います。

 今次の報告では検討課題にとどまっているものも多いのですが、具体化に向けた取組が進んでいくことを期待したいと思います。詳細は「報告」本文でご確認ください。

*1:新しい時代の特別支援教育の在り方に関する有識者会議 報告【本文】
https://www.mext.go.jp/content/20210208-mxt_tokubetu02-000012615_2.pdf
*2:新しい時代の特別支援教育の在り方に関する有識者会議 報告【概要】
https://www.mext.go.jp/content/20210208-mxt_tokubetu02-000012615_1.pdf
*3:「知的障害単一の児童生徒」とは、知的障害があるが、それ以外の障害を合わせ有していない児童生徒のことを表しています。
*4:東京都の取組
https://www.kyoiku.metro.tokyo.lg.jp/school/primary_and_junior_high/special_class/
*5:神奈川県の取組(時事ドットコムニュース【連載】インクルーシブ教育最前線)
https://www.jiji.com/jc/v7?id=2019inkk

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