中学校 美術
2026.03.03 <No.020>
想いを込めて ~つくって使って味わう工芸~(第3学年)
1.題材名
「想いを込めて ~つくって使って味わう工芸~」(第3学年/10時間)
2.題材設定の理由
対象学年の生徒たちは、地道な努力を積み重ね、粘り強く表現活動に取り組む態度が身に付いている。自分の表現したいものを明確にもっている生徒が多い反面、何を表現すればよいかを悩み、主題を曖昧にする生徒も見られる。他者の見方や感じ方を知りながら、自分の想いを表現する力を身に付けさせたいと考えた。
福島県中学校教育研究会美術部会の研究主題である「造形活動における自己実現を通して、豊かな心を育む美術教育はどうすればよいか」をふまえ、自分の想いを形にすることで、表現する喜びを感じるとともに、相手のことを考えて工夫する中で、思いやりや感謝の気持ちを育める授業にしたいと考えた。そこで、装飾品として活用でき、また飾って楽しむこともできるブローチ制作に取り組むことにした。義務教育最後の3年生がこれまで身に付けた知識や技能を活用しながら、贈る相手へ想いを馳せ、その人への想いを形や色彩で表現するのに効果的であると考えた。
完成したブローチを贈ることで、自分の表現が他者に喜ばれるという経験をし、自己実現を通して豊かな心を育めるようにと題材設定をした。
3.準備(材料・用具)
教師:学習プリント、石粉粘土、プラ板シート、粘土ベラ、伸ばし棒、竹串、カッターナイフ、はさみ、はかり、UV硬化樹脂、UVライト、ブローチピン、針金、ペンチ
生徒:筆記用具、アクリルガッシュ、面相筆、彩色筆、記録用タブレット端末
4.学びの目標
【知識及び技能】
形や色彩、材料の質感などに着目し、意図や効果などをとらえ、材料や用具の特性を生かし、見通しをもって表す。
【思考力・判断力・表現力等】
使う場面や飾る場所、贈る相手への想いなどを基に、形や色彩、材料の効果を考え、構想を練ったり鑑賞したりする。
【学びに向かう力・人間性等】
調和のとれた装飾をすることに関心をもち、意欲的に取り組む。
5.評価規準
【知識・技能】
知 形や色彩、材料の質感などが感情にもたらす効果や、造形的な特徴などを基に、意図や効果を全体のイメージで捉えることを理解している。
技 材料や用具の特性を生かし、意図に応じて自分の表現方法を追求して、制作の順序などを総合的に考えながら、見通しをもって創造的に表している。
【思考・判断・表現】
発 構成や装飾の目的や条件を基に、使う場面や飾る場所、贈る相手への想いなどから主題を生み出し、美的感覚を働かせて調和のとれた洗練された美しさを総合的に考え、表現する構想を練っている。
鑑 使う場面や飾る場所、思いなどとの調和のとれた洗練された美しさを感じ取り、表現の意図と創造的な工夫について考え美意識を高め、見方や感じ方を深めている。
【主体的に学習に取り組む態度】
態表 美術の創造活動の喜びを味わい、主体的に調和のとれた装飾を考え構想を練ったり、意図に応じて自分の表現方法を追求して見通しをもって創造的に表したりする表現の学習活動に取り組もうとしている。
態鑑 美術の創造活動の喜びを味わい、主体的に使う場面や飾る場所、贈る相手への想いなどとの調和のとれた洗練された美しさなどを感じ取り、表現の意図と創造的な工夫について考え、見方や感じ方を深める鑑賞の学習活動に取り組もうとしている。
6.指導のポイント
本題材では、ブローチ制作を通して、自分の想いを形にすることで表現する喜びを感じるとともに、相手のことを考えて工夫する中で、思いやりや感謝の気持ちを育むことをねらいとしている。導入では、ルネ・ラリックの装飾品や市販のブローチを提示し、形や色彩、素材の違いによる印象の変化や身に付ける位置・場面との関わりに気付かせる。単なる装飾としてではなく、「誰が、どのような場面で身に付けるか」という視点を持たせることで、制作への目的意識を高めたい。構想段階では、アイデアスケッチやメモを活用し、自分の想いやイメージを具体化させる。形や色彩、材料の組み合わせについて試行錯誤する時間を十分に確保し、友人同士で意見を交流する活動を取り入れることで、多様な見方や考え方に触れさせる。
造形の工程では、丁寧さや根気強さの大切さを意識させ、失敗を恐れずにやり直す経験を積ませたい。また、毎時間作品の写真記録を取り、表したいイメージと制作の進み具合を照らし合わせながら改善を促した。完成後は、鑑賞活動を行い、互いの作品の工夫やよさを言葉で伝え合う時間を設けた。
7.題材の指導計画
8.授業を終えて
美術という教科は、自分の思いや考えを形や色彩、素材を通して表現できる大切な学びの場であると考える。うまく言葉にできない気持ちも手を動かし、試行錯誤を重ねる中で少しずつ形になり、自分自身を見直すきっかけにもなる。
本授業では、ただ作品を完成させることを目的とするのではなく、思いやりや感謝の気持ちを込めて制作することの価値を大切にしたいと考えた。誰かを思い浮かべながらつくることで、表現は自己満足にとどまらず、人と人とのつながりを生み出すものになる。また、自分の表現によって他者が喜んでくれる経験は、生徒にとっても大きな自信となり、自己肯定感を高めることにつながる。美術の学びを通して、自分の思いを大切にしながら、他者と関わり、社会とつながっていく力をこれからも育んでいきたい。




