小学校 図画工作
小学校 図画工作

1.題材名
「○○SIRIUS BOM」~今年の自分や学級をイメージしながら、紙の形や色の組合せを考えて、自分だけの「○○BOM」(学級目標)を表そう~
2.学年
第6学年
3.分野
絵に表す・鑑賞する
4.時間数
5時間
5.準備物
6.題材設定の理由
6年生の4月は、「最高学年になった」という緊張感の中、やる気が高まっている時期である。5年生とのつながりを考え、実行委員を中心に話し合い、学年目標は学校を照らす「輝(ひかり)」と決まった。
学年目標の要素を取り入れつつ、学級らしさを大切にした6年2組の学級目標をいよいよつくっていくことになり、学級で大切にしたいキーワードを決める学級会を開いた。「自分たちが一番光っている感じにしたいからSIRIUSを入れたいな」「一人ひとりの明るさも大事にしたいよね」「それなら、みんなの個性をバーンと爆発させる感じ」「じゃあ、BOMなんてどうかな」と意見が交わされ、学級目標の合言葉は「個性大爆発」と決まった。そして、学級目標は「SIRIUS BOM!」に決定した。
学級目標が決まった翌日の朝、「今年の学級目標の掲示はこんな感じにしたい」と、掲示物の案を自主学習ノートにかき、提出した児童が数名いた。流れ星のように爆発したものが星となって散りばめられたもの、光の線をかいて爆発しているもの、あちらこちらで小さな爆発が起きているもの。それぞれの爆発のイメージがとても素敵だったそのイラストを見て、これを図工の題材にし、一人ひとりのイメージする「個性大爆発」を表して欲しいと考えた。爆発という「動き」の表現は、まさに高学年で身に付けさせたい力である。形や色の組み合わせ、前後の配置、動きやバランス、奥行きを実際に動かしながら考えるために、切り紙で表現することにした。思いを形や色で表現し、爆発という「動き」のイメージを考えながら、効果的に表す姿を目指す題材を設定した。
7.指導のポイント
自分の思いや願いを抽象的な形に表す活動は、これまでに何度か経験している。しかし、形を組み合わせて、バランスや前後感、動きを考えることについては経験が少ない。今回の題材では、言葉から形や色がイメージできること、抽象的な形や言葉から動きや気持ちも想像できることに気付かせたい。
そこで、アンリ・マティスのジャズシリーズを鑑賞することから始めることにした。感じ方の違いも味わってほしいと考え、アートカードを自作し、かるたのように楽しみながら鑑賞することにした。鑑賞での気付きを自分の表現に生かすことができるよう、掲示物に残し、いつでも見返すことができるようにした。
この題材で一番大事にしたいところは、第3・4時のどのように爆発させるか考える場面である。爆発という「動き」のイメージをもつことができるように、爆発のさせ方のイメージ図と、裏にテープのりを付け、貼ったりはがしたりできる四角や三角等の簡単な形のパーツ(大中小)を用意した。
矢印の向きに爆発しているように表すには、大きさをだんだんと大きくしたり、小さくしたりすることや、小さいものは狭く、大きいものは広く間隔を取ると、より動きが出ることに気付かせたい。全体で共有してから、一人ひとりの活動に移し、それぞれが「動き」のイメージについて考えることができるようにした。
8.題材の目標
親しみのある美術作品を鑑賞したり、紙を切って並べたり構成したりして表すときの感覚や行為を通して、動きや奥行き、バランス、色の鮮やかさなどの造形的な特徴を理解するとともに、紙を折って切る経験や技能を総合的に生かしたり、表現に適した方法などを組み合わせたりするなどして、表したいことに合わせて表し方を工夫して表す。
形や色などの造形的な特徴を基に、感じたこと、想像したこと、伝え合いたいことから、表したい最高学年として目指したい自分の姿、思いや願いの形や色を見付け、材料の特徴、構成の美しさの感じを考えながら、どのように主題を表すかについて考えるとともに、造形的なよさや美しさ、表現の意図や特徴、表し方の変化などについて、感じ取ったり考えたりし、自分の見方や感じ方を深める。
主体的に表現したり鑑賞したりする活動に取り組み、つくりだす喜びを味わうとともに、最高学年として目指したい自分の姿、思いや願いの形や色、組み合わせなどに関わり、楽しく豊かな生活を創造しようとする。
9.評価規準
- 親しみのある美術作品を鑑賞したり、紙を切って並べたり構成したりして表すときの感覚や行為を通して、動きや奥行き、バランス、色の鮮やかさなどの造形的な特徴を理解している。
- 紙を折って切る経験や技能を総合的に生かしたり、表現に適した方法などを組み合わせたりするなどして、表したいことに合わせて表し方を工夫して表している。
- 形や色などの造形的な特徴を基に、感じたこと、想像したこと、伝え合いたいことから、表したい最高学年として目指したい自分の姿、思いや願いの形や色を見付け、材料の特徴、構成の美しさの感じを考えながら、どのように主題を表すかについて考えている。
- 親しみのある美術作品や、自分たちの作品の造形的なよさや美しさ、表現の意図や特徴、表し方の変化などについて、感じ取ったり考えたりし、自分の見方や感じ方を深めている。
- つくりだす喜びを味わい、最高学年として目指したい自分の姿、思いや願いの形や色などを主体的に表現したり鑑賞したりする活動に取り組もうとしている。
10.指導計画
時 間 |
児童:学習活動の流れ |
教師:指導上の留意点、評価方法 |
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1 |
マティスのアートカードで遊ぼう。 |
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○3~4人の班になり、お題に合うアートカードを取る。 お題 ・青い色の部分が空に見えたよ。 |
▽マティスの切り紙絵の作品を、カードに小さく印刷したものを班の数分用意する。 ルール |
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○どの言葉でどのカードを取ったのか全体で共有する。 |
▽言葉とカードにかかれた形や色を結び付けてイメージしたことを友人に伝えているか、活動の様子を見ながら声を掛ける。 |
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○題材名と題材のめあてを知る。 |
▽自分がどんな「SIRIUS BOM」(学級目標)にしていきたいのか書けるように、「○○SIRIUS BOM」の○○の言葉を、理想の自分の姿や思いや願いから考えるよう促す。 |
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2 |
最高学年として目指したい自分の姿、思いや願いを形や色を工夫して表そう。 |
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○クラゲチャートを見ながら、自分の表したい気持ちの色を決めて、切っていく。 |
●思いや願いに合う色をまず選ぼう。どんな形にするか考えて切ろう。 |
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○どんな思いや願いを形や色に表したのか全体で共有する。 |
▽形や色に着目して工夫している児童にはあらかじめ声を掛けておき、発表してもらうようにする。 |
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○切ったパーツの色となるべく重ならない色やイメージに合う色の台紙を選ぶ。 |
●自分の思いや願いがなるべく引き立つ色はどれかな。「○○SIRIUS BOM」の雰囲気に合う色を選んでもいいね。 |
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○片付け。 |
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3 |
最高学年として目指したい自分の姿、思いや願いを「どのように爆発させるか」考えて工夫して表そう。 |
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○全体で切った紙をどのように置いたら爆発している感じになるか考える。 ・小さいパーツは間が狭い方がいいんじゃないかな。 |
●どんな感じに置いたら、爆発している感じになるかな。 |
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○自分の爆発させたい感じに合わせて工夫して表す。 |
▽だんだん大きくする、遠くに行くほど小さくするなど、見ていた児童に気付いたことを言ってもらい、全体で爆発している感じの動きが何か確認できるようにする。 |
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○爆発させたい感じになるように組み合わせていく。 |
▽今持っているパーツだけでできそうか確認し、新しくもっと切りたいという意欲を高める。 ◆思考・判断・表現 |
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○のりで貼る。 |
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5 |
未来の6-2へレッツゴー!友だちの○○SIRIUS BOMを楽しく見よう。 |
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○友人の作品を楽しく見て、どんな思いや願い、学級が想像できたかを付箋に書く。 |
▽爆発している様子や一つひとつのパーツに着目して見ることができるよう、声を掛ける。 ・題材全体の振り返りをする。ロイロノートのカードに自分の考えたことや工夫したことなどを書く。 |
11.児童の様子
最初の鑑賞では、初めて出合うアートカードを眺めながら、「カラフルできれい」「人や鳥がいる」「わかめみたいな形が多いね」等、つぶやいていた。ゲームが始まると熱心にカードを取り、友だちに理由を伝えていた。第1時の最後に題材名を伝えた際は、「学級目標をつくっていいの。やった」とうれしそうだった。ロイロノートのクラゲチャートに最高学年として目指したい自分の姿、思いや願いを書く際もすぐに書き終わり、それぞれの思いの色を考えている児童もいた。
それぞれの思いや願いの色を決めて、形を考えていく。「1年生のときに折り紙を折って、切って開く図工をやったよね」「やったね、懐かしい」と、1年生のときの経験を話しながら活動をしている児童もいた。折り紙を四つに折って同じ形を四つつくる児童もいれば、1年生のときの経験を思い出し、折った紙の中に穴を開けて細かい模様を入れる児童もいた。
全体での爆発のさせ方を共有したあと、どのように爆発させようか悩む姿が多く見られた。指でぐるぐるとなぞる姿、手を広げ、どこで爆発させるか考える姿も見られた。また、実際に切った紙を画用紙の上に置き、「こっちかな、いや、こっち」と動かしながら考え、いくつかのパターンをタブレット端末で撮影し、バランスや配置を考えている児童もいた。
友だちの作品を見て、熱心にコメントを書いて手渡していた。互いに目指している姿や、こんな学級にしたいという願いにじっくり向き合い、よさを感じることができていた。
12.作品
積極的、仲間、面白い、夢、笑顔、それぞれのパーツの形が変わるように工夫しました。
真ん中から爆発させるか、斜めから爆発させるか悩んだけれど、真ん中の方が周りにもっと付け足せると思ったから、真ん中に決めて爆発させました。最高な学級をイメージしていたらどんどんはみ出す感じになりました。枠に収まらない感じが自分のクラスらしくて気に入っています。
仲良く、男女関係なく他者尊重、メリハリ、楽しく騒ぐ、あいさつ、大事にしたいそれぞれ形を全て表しました。大きな円が渦を巻いている感じをイメージして爆発させました。光っている感じや動き、立体感を出すために黄色の紙を小さく切ってパラパラ散らしたら、イメージ通りになってうれしいです。
13.授業後の児童の様子
学級目標を図工の題材にして表したことで、学級目標が一人ひとりの心にしっかりとしみ込んでいるように感じる。図工の授業が終わったあと、学級目標の掲示物も投票で決定し、実行委員を中心に中休みに作成した。
学級会の名前を「SIRIUS BOM会議」とし、じゃんけんも、「SIRIUS じゃんけん」や「BOM BOMじゃんけん」と呼び、学級ならではの活動として楽しんでいる様子が多く見られる。SIRIUSとBOMの学級キャラもつくりたいという意見があり、学級みんなでマスコットを描き、総選挙をして決定した。今では、学級のマスコットキャラクターとなって教室のあちらこちらにいる。
「消しゴムはんこにして、ノートに押してほしい」という要望があり、夏休みに作成した。
ノートに押し、コメントを添えることでより意欲ややる気につながっている。また、学級で頑張ったときには、丸シールを貼り、学級の成長や頑張りを見えるようにしている。その丸シールにも学級キャラクターを自分でかくようになった。
前期の終わりには、成長した自分たちを励まし、後期も頑張るために、「SIRIUS BOMセレモニー」をした。
互いにメッセージを書き、今の自分の切り紙とシリウスの星も一緒に風船に入れた。風船を持ちながら、学級の好きなところを一人ひとり話していき、「SIRIUS BOM!」の合図で一斉に風船を割った。割った風船から出てきた自分あての手紙を読み、大切に特活ノートに貼っていた。自分の切り紙を学級目標に追加し、学級目標の掲示も子どもたちとともに成長した。
節目ごとに自分自身で成長を実感し、学級として高まっている。卒業までにあとどのくらい輝き、個性を爆発できるか楽しみだ。