小学校 図画工作

小学校 図画工作

「板にかく」(第6学年)
2025.06.18
小学校 図画工作 <No.069>
「板にかく」(第6学年)
東京都品川区立立会小学校 田中明美

1.題材名

板にかく

2.学年

第6学年

3.分野

絵に表す

4.時間数

全8時間扱い

5.準備物

児童:水彩絵の具一式、新聞紙、酢酸ビニル樹脂エマルジョン系接着剤、定規、仕事着、ネームペン、鉛筆
教師:しなベニヤ版 450×300mm(4mm厚)、アクリル絵の具、凧染料、軽量粘土(比較的、絵の具の色を生かして使用可能なもの。美術出版サービスセンター「ペタペタフワフワ」、ジェッソ(地塗り剤)など)、ペインティングナイフ、刷毛、スポンジ、皿、細筆、竹串など

※きっかけとなる中心共通材料・用具は、ペインティングナイフ、軽量粘土。それ以外の材料、用具などについては、児童が選択して自分のテーマと重ねながら使用する。

6.題材設定の理由

(1)題材観
 日常の図工の時間。いろいろな描画材を使いながら、自分の世界を表そうとしている中で、水彩絵の具をチューブからそのまま紙に出した形が気に入ったのか、うれしそうにこっそり絵の具が紙の上で固まっていく様子を見ている子どもがいたり、指先に全神経を集中させて染料の水滴を筆で丸くポタっと紙の上に並べて見ている子どもがいたり。
 図工室では、どの学年でも子どもが自分の色に対して、水をたっぷりと入れた薄い色の重なりやにじみに喜んでいたり、たっぷりとねっとりとした絵の具の質感・量感を好んで表したりする姿に出会う。その上、筆洗の中の水に混ざり合おうとする絵の具の色の変化にさえ喜びの声を上げている。また、納得いくまで表したい気持ちから体のスイッチが入り、画用紙に穴が開くまで何度も筆を動かす姿さえある。
 本題材は、日頃やってはいけない、やりたくてもできないことを絵の具で実現でき、自分が納得いくまで何度も表せることにより、子どもの心が動きだし、いつも抱いている絵に表す概念からイメージが広がるのではないかと考え設定した。
 本題材では、6年生が今までの経験から想定できる紙の上で表すことはせず、基底材は紙よりも堅い手ごたえがある木材とした。軽量粘土を使用することで、絵の具を薄く伸ばしたり盛り上げたりすることもできることから、自分が試しながら表し変化していく形や色を目の前で実感することができ、やってみたいことやイメージの幅が広がり、子どもの思いと重なる表現活動の幅も広がるのではないかと考えた。

(2)児童観
 本学級の児童は、ペインティングナイフで軽量粘土を扱う経験は初めてであったため、使いながら、少しずつ、どのように手を動かすとその変化が形につながるかなど気付きの上でまた手を動かす時間を取っている。今まで、共通の大テーマと材料(様々な紙・液体粘土・絵の具など)・行為の中で、自分でテーマを決めて表したり、自分の体と同じくらいの大きな作品を表したりと、作品の中に常に自分のテーマを織り込むことを指導の重点としている。高学年でもあるので、今までの思いをもつ経験や自分で考えて生み出す実感を基に、今を生きる自分の思いと程よく力を加えられる対象と表現を重ね、つくりだす喜びを感じながら、体全体の諸感覚からの心地よさを感じ、心地よく自分と向き合える時間となることを大切に確保していきたいと考えている。

7.題材の目標

 絵の具を厚く立体的に表してできる形や、色の混ざる様子を見て感じたことや、自分の感覚、行為を通して感じたことを基に表したいことを見付け、自分の思いと重なるように、画面の構成の面白さや美しさなどの感じを考えながら、材料や用具などを活用して、自分の主題を楽しみながら工夫して表し、自分や友人の表したもののよさや美しさについて感じ取る。

【知識及び技能】

  •  軽量粘土の特徴を生かしながら、ペインティングナイフや筆などで板に絵の具で表すときの感覚や行為を通して、その変化していく形や色、バランスの感じなどを理解する。
  •  自分が表したい感じに合わせてペインティングナイフや筆などを使って表し、前年度までの材料や用具の経験や技能を活用し、表現に適した方法を組み合わせて自分の表したいことに合わせて表し方を工夫して表す。

【思考力、判断力、表現力等】

  •  軽量粘土とペインティングナイフや筆などで変化していく表面の形やその色、その組合せ、バランスの感じを基に、自分のイメージをもつ。軽量粘土とペインティングナイフや筆などで表面の形や色を変えながら、画面の変化の痕跡を見て感じたこと、想像したこと、見たことから、表したいことを見付け、形や色、材料の特徴、構成の美しさなどの感じなどから主題をどう表すかを考える。
  •  自分や友人が板に表した作品の造形的なよさや美しさ、表現の意図や特徴、表し方の変化などについて感じ取ったり考えたりし、作品などから自分の見方や感じ方を深めたりする。

【学びに向かう力、人間性等】

  • 主体的に描画材(絵の具や材料、用具など)に関わり、形や色のもつ面白さを感じ、自分の思い付いたことを表現することや鑑賞したりする学習活動に取り組み、つくりだす喜びを味わうとともに、楽しく豊かな生活を創造しようとする。

8.題材の評価規準(◎は本題材で重点をおく観点)

知識・技能

  •  軽量粘土の特徴を生かしながら、ペインティングナイフや筆などで板に絵の具で表すときの感覚や行為を通して、その変化していく形や色、バランスの感じなどを理解している。
  •  自分が表したい感じに合わせてペインティングナイフや筆などを使って表し、前年度までの材料や用具の経験や技能を活用し、表現に適した方法を組み合わせて自分の表したいことに合わせて表し方を工夫して表している。

思考・判断・表現(◎)

  •  軽量粘土とペインティングナイフや筆などで変化していく表面の形やその色、その組合せ、バランスの感じを基に、自分のイメージをもっている。軽量粘土とペインティングナイフや筆などで表面の形や色を変えながら、画面の変化の痕跡を見て感じたこと、想像したこと、見たことから、表したいことを見付け、形や色、材料の特徴、構成の美しさなどの感じなどから主題をどう表すかを考えている。
  •  自分や友人が板に表した作品の造形的なよさや美しさ、表現の意図や特徴、表し方の変化などについて感じ取ったり考えたりし、作品などから自分の見方や感じ方を深めたりしている。

主体的に学習に取り組む態度

  •  つくりだす喜びを味わい、主体的に描画材(絵の具や材料、用具など)に関わり、形や色のもつ面白さを感じ、自分の思い付いたことを表現することや鑑賞したりする学習活動に取り組もうとしている。

9.題材の指導計画と評価計画(全8時間扱い)

ねらい

学習内容・学習活動

評価規準(評価方法)


1

2

・ペインティングナイフで絵の具と混ぜた軽量粘土を実際に触り、関わりながらその特徴を知る。
・この表現の行為から発想し、表してみたい自分のイメージをもつ

・本題材の内容や表す時間を知る。
・ペインティングナイフで絵の具と混ぜた軽量粘土を扱いながら、その活動の表れの観察・変化や痕跡を見ながら、自分が表したい形の方向性を考える。
・自分の表したいことが表せる板の形を構想する。

 ◎
(活動の表れの観察・表情)


(活動の表れの観察・つぶやきを聞き取る)


3

4

・基底材となる板の形を決め、自分のイメージに近づくように表す。
・形や色などの造形的な特徴を理解し、表したいこと(主題)や表し方に応じて用具などを活用し、表したいことに合わせて工夫して表す。

・450×300mm(4mm厚)の板から、表したい形を電動糸のこぎりで切り出す。
・自分のイメージを少しずつはっきりさせる。
・板を組み合わせながら、板の色とジエッソで塗り分けたいところを決めて着色する。
・深い学びにつながるよう、友人と見合う場をつくる。(※材料・用具を取に行くときに自然と見られるようにする)

 
(活動の表れの観察・つぶやきを聞き取る)

 ◎
(活動の表れの観察・つぶやきを聞き取る)


5

6

・手の動きで表した形や絵の具などの色、自分のイメージから表したいことを見付け、構成の面白さや美しさなどの感じを考える。
・形や色などの造形的な特徴を理解し、表したいこと(主題)、表現方法に応じて、描画材料や用具などを使って、表したいことに合わせて工夫して表す。
・意図的、偶然できた形から、表したい基の形を見付け、形の面白さや美しさなどの感じを考える。

・軽量粘土と絵の具を混ぜたものをペインティングナイフで表したり、筆で板の上に思い付いたことを表したりする。
・形や色を重ねたり、描き変えたりしながら、今のイメージに重なるように表す。
・少し離れて見る、ひとりで見るなど、作品と向き合う。(・友人と作品について話す)
・深い学びにつながるよう、友人と見合う場をつくる。(※材料・用具を取に行くときに自然と見られるようにする)

 ◎
(活動の表れの観察・つぶやきを聞き取る)

 ○
(活動の表れの観察・表情)


7

8

・形や色などの造形的な特徴を理解し、表したいこと、表現方法に応じて、描画材料や用具などを活用し、表したいこと(主題)や表し方に応じて用具などを活用し、表したいことに合わせて工夫して表す。

・自分の表したいことを、言葉(題名など)で表し、明確化する。
・全体と部分を見ながら、自分の表したいことと重ねる。
・友人の作品のよさや美しさや表現について感じたことを言葉で表す。

 ◎
(活動の表れの観察・表情・作品)

 ◎
(活動の表れの観察・つぶやきを聞き取る・鑑賞カードなど)

10.指導に当たって

(1)題材の手渡しは熱意をもって行い、言葉にならない感覚的な部分も伝えていくようにしていく。児童一人一人の表現の違いを認め、児童が分かりやすいように題材全体の見通しがもてるように、すぐに既成のものの写真や資料などは見せず、言葉で題材の全体像をつかめるように伝えていく。
 材料や用具については、経験とともに知識や技術として児童が選んで活用できるよう伝え、題材の核がぶれないように手渡しする。児童には、いつも、必ず主題に戻って来られるよう、思考と表現が行ったり来たりできる授業を行う。見る方向を多様にすることで、児童の気付きのきっかけをつくる機会とするとともに、常に児童からの目線を意識し、授業者のねらいと児童からの目線の2方向を考え題材を設定・工夫していく。

(2)「主体的・対話的で深い学び」の実現に向けて、工夫・改善したことについて
ア 授業形態の工夫……児童が題材の見通しをもてるよう一斉指導を行うが、停滞している児童にはその都度個別指導を行う。一人で自分の表現に向き合える環境をつくる。
イ 指導方法の工夫……授業者が決めていることと、児童が決めることを明確に伝え、今までの既習事項に触れながら、一人一人のイメージや表現が違ってよいということに気付けるように伝えていく。

(3)「造形的な見方・考え方」を働かせる活動の実現に向けて、工夫・改善したことについて
表現や鑑賞の活動を一体化して行い、自分のイメージを明確化させ、自分にとっての新しい意味や価値を、自分の変化として実感できる声かけをする。

11.作品

海の夕日(57×27cm)生まれて(40×30cm)

海と風(30×45cm)旅鳥(41×30cm)

月と夢が大きくなった日(45×30cm)海と砂漠(30×30cm)

人が食べる生き物は人と同じ命(45×56cm)冬の海辺(33×60cm)

※本題材は「みんなの図工ギャラリー」でも作品を掲載しています。
https://www21.nichibun-g.co.jp/zuko_gallery/5-6nen/44/