学び!とICT

学び!とICT

特別なニーズのある児童生徒に対するデジタル教科書の活用
2020.10.02
学び!とICT <Vol.02>
特別なニーズのある児童生徒に対するデジタル教科書の活用
大阪教育大学・大学院連合教職実践研究科・准教授 庭山和貴

 現在、公立小中学校の通常学級には、行動面もしくは学習面において著しい困難を示す(発達障害の可能性のある)児童生徒が約6.5%在籍している(文部科学省, 2012)。この数値について、学校現場の実感としては、「もっと多いのでは?」というのが正直なところではないだろうか。実際、「著しい困難」とまではいかずとも、それに近い困難さのある児童生徒はかなりの割合いることが指摘されている(文部科学省, 2012)。また、特別支援学校や特別支援学級に在籍している児童生徒、また通級による指導を受けている児童生徒を合わせると、全体の約4%になる。特別なニーズのある児童生徒に対して教育的支援を行うことは、もはや学校現場において「特別なこと」ではないのである。
 これら特別なニーズのある児童生徒に対して効果的な学習指導を行うために、デジタル教科書は一つの有効な手段となり得る。文字の大きさや背景の色の変更、音声読み上げによって、視覚障害のある児童生徒に対するアクセシビリティを高めるのに役立つだけでなく、通常学級に在籍する発達障害のある児童生徒へも有効な支援となり得る機能が複数ある。以下では、特に通常学級において、学級全体と同時に発達障害のある児童生徒に対しても効果的な学習指導を展開するために、デジタル教科書をどのように活用できるのかについて述べる。
 活用できる機能の1つ目として、「拡大機能」が挙げられる。「教科書の○○を見て」などの口頭指示だけでは理解しにくい児童生徒も、教科書の見るべき箇所を拡大して提示されれば、どこに注目したら良いのか理解しやすくなる。教師からすると指示が通りやすくなり、児童生徒からすると指示が理解しやすくなることによって、どちらにとっても授業中の無駄なストレスを減らすことに繋がる。また、注目すべき箇所だけが表示されることで、普段は集中を保つのが難しい児童生徒も、気が散りにくくなるといった効果も期待できる。
 活用できる機能の2つ目として、「動画・アニメーション機能」が挙げられる。これも口頭での指示や説明に加えて、視覚情報を手軽に加えることができるのが利点である。特にデジタル教科書によって、児童生徒がこれから行う活動の「お手本」を示せる場合には、積極的に活用すると効果的である。「お手本」を示すことによって、児童生徒は具体的にどのように活動したら良いのか理解しやすくなる。また、教師が直接お手本を示すよりも、ビデオでお手本を示したほうが、発達障害のある児童生徒は真似しやすいことが研究によって示唆されている。
 活用できる機能の3つ目として、「ペン機能」が挙げられる。これは、教科書の注目すべき部分を強調するために使用したり、答えを書き込んだりするのにも活用できる。特に、児童生徒の発言・発表内容を書き込むことは、発言・発表したことに対するフィードバックとして機能し、学習意欲を高めることに繋がる可能性がある。このようなフィードバックは、児童生徒の積極的な授業参加を促すうえで重要であるが、発達障害のある児童生徒にとっては口頭でのフィードバックだけでなく、視覚的なフィードバックもあったほうがわかりやすくなる。
 以上述べてきた機能は、デジタル教科書の基本的な機能ばかりである。しかし、これらの機能を上手く活用することによって、学級全体はもちろんのこと、特別なニーズのある児童生徒にとっても、わかりやすい授業を展開できる可能性がある。デジタル教科書を効果的な学習指導のための手段の一つとして用いながら、子どもたちの「わかった!」「できた!」を引き出すにはどうしたらよいか、一人ひとりの授業中の様子をよく観察し、それに基づいて柔軟に指導・支援方法を改善し続けることが大切である。

庭山 和貴(にわやま かずき)
大阪教育大学・大学院連合教職実践研究科・准教授
専門分野は特別支援教育(特に応用行動分析的アプローチを用いて)。日本ポジティブ行動支援ネットワーク副会長。2016年関西心理学会研究奨励賞、2017年日本教育心理学会優秀論文賞受賞。

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