学び!とICT

学び!とICT

個別最適な学びや協働的な学びを創るために
2021.02.01
学び!とICT <Vol.03>
個別最適な学びや協働的な学びを創るために
兵庫県たつの市立新宮小学校 主幹教諭 石堂裕

令和の日本型教育が目指す学びとは

 新型コロナウイルス感染症の拡大によって,いっそう不確かで予測困難な時代になりました。そのような時代を生き抜くためには,身のまわりの出来事に目を向け,課題を見いだし,主体的・対話的に考えながら最適解や納得解を生み出せるような協働的な学びが求められています。一方,新型コロナウイルス感染症の拡大によって,社会全体におけるデジタル化の必要性も顕著になりました。もちろん学校教育も同様で,これからは,学習の目的に応じて,対面授業と遠隔・オンライン授業を組み合わせていくことが重要となります。図1の資料に示された「令和の日本型学校教育」の目指す『個別最適な学びと協働的な学びの往還』は,これからの時代に求められる学びなのです。

図1:「令和の日本型学校教育」中間まとめ概要 【引用】中教審特別部会資料

 図1左上「指導の個別化」や下部「子どもの学びや教職員を支える環境」等の記述にもあるように,これらの学びを支える学習の基盤ツールとしてICTが欠かせません。また,それを有効活用した授業の進め方も多様化すると想定されます。だからこそ,求められる授業実践を行うためには,学校全体での授業改善が必要なのです。ちなみに,私が勤務する新宮小学校のある兵庫県では,各校でのICT活用における先導的役割を担う教員の育成を目指した「HYOGOスクールエバンジェリスト」事業を実施しています。私もその一人ですが,これは,県立高校と市町立の小中学校から希望する教員を公募し,IT企業の専門家と連携した研修プログラムを受けたり,16チームに分かれて実践研究に取り組んだりしながら,「個別最適な学び」や「協働的な学び」を進める授業実践に必要なスキルを身に付けるというものです。

個別最適な学びを進めるために

図2:個別最適化学習 では,それらの学びを進めるための授業デザインをどのようにすればよいのでしょうか。例えば,学習者一人ひとりが「個別最適な学び」を進めようとする学習を「個別最適化学習」とします。この個別最適化学習には,パーソナライズド・ラーニングアダプティブ・ラーニングがあり,前者は,子どもたちの課題を明らかにし,子どもたち自身が興味・関心に応じて主体的に学習する方法を選択したり,解を導く際に子どもたち自身が選択した方法でアプローチしたりできるようなプロセスを重視した学習であり,後者は,子どもたち一人ひとりの学習の進捗や理解度に合わせて学習内容を調整し,その子に合った学ぶ機会を提供する学習です。図2に示す通り,縦軸を思考,横軸を学習内容として整理すると,これらの学習の関係が見えてきます。注目すべきは,ICTを活用すると,授業時間以外でもオンデマンド学習を実施できるということです。例えば,子どもたちが家庭にある端末を用いて,算数の苦手なところに取り組んで見たり,クラウド上にある同時編集が可能なシートに自分の考えを書き込みながら友だちとの協働的な学習を展開したりすることを想定すると,図2のピンクで示した部分のように,学習が広がります。(この点については次回紹介します。)

パーソナライズド・ラーニングから「主体的・対話的で深い学び」を生み出そう

写真1:遠隔授業とコラボノートを組み合わせた学習の流れ

 学習者主体の学習によって「主体的・対話的で深い学び」を生み出すことを目指すにあたっては,パーソナライズド・ラーニングが中心となると言えるでしょう。なぜなら,既存の知識を用いたり,既存の知識と新たな知識を結び付けたりする機会でもあるからです。写真1に示す遠隔・オンライン授業とクラウドを用いた協働学習ツール(以下コラボノート:ジェイアール四国コミュニケーションウエア)を組み合わせた理科学習(昆虫のつくり:3年生)を紹介します。子どもたちは,卵から飼育するアゲハチョウについて継続的に観察し,その過程での気付きや疑問を学習ノートや付箋に書き出していました。個々の疑問のうち,全体で共有すべき疑問については,問題解決のプロセスに基づいて,みんなで図鑑で調べたり,NHK for Schoolを視聴して調べたりしました。その調査の過程を経て,新たに高次の問いが生まれたので,専門家(今回は大学の研究者)との遠隔・オンライン授業を複数回仕組んだのです。子どもたちのチョウに関する既有の知識と好奇心の高まりは,初対面の専門家との対話をスムーズにします。そしてコラボノートには,その対話で理解したことが記述されます。新型コロナウイルス感染症拡大防止のための臨時休業中からコラボノートを用いたオンデマンド学習を実施していたこともあり,子どもたちは,放課後,自宅に帰ってからも,個別の考えや感想などをコラボノートに書き込みました。このような学びの連続性が,既有の知識と新たな知識を結び付け,さらに記述を通じて思考をアウトプットすることで確かな知識を獲得することにつながっているのです。特に自宅での記入は,体験活動から得た情報を整理し記述することになるため,このメタ認知的な営みによって,深い学びへと結び付くのだと判断できました。
 ICTの活用によって,子どもたちの学びの機会がどんどん広がります。その結果,個別最適な学びや協働的な学びへとつながっていくのだと思います。

石堂 裕(いしどう ひろし)
兵庫県たつの市立新宮小学校主幹教諭。
令和元年度文部科学大臣優秀教員、平成28年度兵庫県優秀教員、大阪教育大学大学院連合教職実践研究科 非常勤講師、NHK for school番組企画委員、ひょうごスクールエバンジェリスト、文科省消費者教育指導者用啓発資料作成部会委員、第28回全国生活科総合的な学習研究協議会兵庫大会研究部長、日本文教出版 生活科教科書編集委員。主な著書は、「総合的な学習の時間の指導法」、「アクティブ・ラーニングのABC」。その他、授業づくり、カリキュラム・マネジメント関連本に寄稿多数。

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