学び!と共生社会

2026.08.27 <Vol.79>

幼稚園教育要領の改訂に向けた特別な配慮を必要とする子どもへの対応

大内 進(おおうち・すすむ)

幼稚園教育要領の改訂に向けた特別な配慮を必要とする子どもへの対応

1.はじめに

 前回まで、共生社会への対応という観点から学習指導要領の改訂に関連する中央教育審議会における議論やその取りまとめの内容について取り上げてきました。小中学校、高校の学習指導要領に当たる「幼稚園教育要領」についても、2027年改訂を目指してその作業が進められています。
 日本では就学前(未就学児)の教育・保育の場について、幼稚園、保育所、認定こども園と管轄の異なる機関が併存しており、それぞれの要領及び指針として、「幼稚園教育要領」、「保育所保育方針」、「幼保連携型認定こども園教育・保育要領」が定められています。
 そのため、「幼稚園教育要領」は、「保育所保育指針」「幼保連携型認定こども園教育・保育要領」と一体的に見直され改訂されるということになります(*1)。次期幼稚園教育要領の改訂に当たっても、文部科学省所管の「中央教育審議会初等中等教育分科会教育課程部会 幼児教育ワーキンググループ」及びこども家庭庁所管の「こども家庭審議会幼児期までのこどもの育ち部会 保育専門委員会」の合同会議を経て取りまとめ作業が進められ、この8月4日に「幼児教育ワーキンググループ取りまとめ(案)」が公表されました(*2)
 そこで、今回は幼稚園教育要領の改訂に向けての対応状況について取り上げることにしました。

2.日本の幼児教育・保育の特徴

 前述しましたが、日本の幼児教育・保育の施設には、幼稚園、保育所、認定こども園という三つの形態があります。かつては、「幼稚園」と「保育園」の2形態でしたが、2006年に、幼稚園と保育所のよいところを合わせ、教育と保育を一体的に提供し、地域の子育て支援を行う「認定こども園」の制度が新たに設けられたことによります。
 そのため、文部科学省管轄の幼稚園については「幼稚園教育要領」(学校教育法)、厚生労働省管轄の保育所については「保育所保育指針」(児童福祉法)、こども家庭庁管轄の認定こども園については「幼保連携型こども園教育・保育要領」(就学前の子どもに関する教育、保育等の総合的な提供の推進に関する法律に基づく告示)とそれぞれ要領・指針が異なっています。これら「幼稚園教育要領」、「保育所保育方針」、「幼保連携型認定こども園教育・保育要領」は「3要領・指針」と呼ばれています。今回の改訂において、「3要領・指針」を一体的・同時に改訂する作業が進められています。
 国際的に見ると、この分野では主にヨーロッパを中心に教育格差の縮減やスタートラインの平等を目的として就学前段階からの義務化や無償化の動きが認められます。日本ではその動きはあるものの、現時点では義務化に至っていません。
 また、幼児教育や保育施設の運営主体について、日本では、諸外国に比べ体の民営の割合が高くなっていて、「OECD国際幼児教育・保育従事者調査」(*3)によると私立及び公設民営が全体の73.1%となっています。

OECD国際幼児教育・保育従事者調査(TALIS Starting Strong)2024結果のポイント
出典:国立教育政策研究所ホームページ(https://www.nier.go.jp/youji_kyouiku_kenkyuu_center/_uploads/2026/08/oecd2026_08_point.pdf)

 文部科学省が公表した令和7年度学校基本統計速報値によると、国立公立私立別に見た幼稚園及び幼保連携型認定こども園の園数及び園児数は次の表のようになっています(*4)

<幼稚園>

園数

前年度比

園児数

前年度比

国公私立全体

8225園

305園減

68万9609人

6万8359人減

国立

47園

3916人

154人減

公立

2354園

180園減

7万5525人

9234人減

私立

5824園

125園減

61万0168人

5万8971人減

<幼保連携型認定こども園>

園数

前年度比

園児数

前年度比

国公私立全体

7673園

352園増

87万5976人

1万7726人増

国立

1園

92人

1人減

公立

1067園

53園増

10万3764人

2348人増

私立

6605園

299園増

77万2120人

1万5379人増

 さらに、「OECD国際幼児教育・保育従事者調査」(*3)から見ると、ばらつきは大きいものの諸外国に比べて1園当たりの在園幼児数の平均値が高いというところにも特徴が認められます。

OECD国際幼児教育・保育従事者調査(TALIS Starting Strong)2024結果のポイント
出典:国立教育政策研究所ホームページ(https://www.nier.go.jp/youji_kyouiku_kenkyuu_center/_uploads/2026/08/oecd2026_08_point.pdf

3.幼稚園における特別な配慮を要する幼児への対応の現状

 障害があるなど特別な配慮を要する幼児への指導について、現行の幼稚園教育要領では第1章第5の1に次のように示されています。

障害のある幼児などへの指導
障害のある幼児などへの指導に当たっては,集団の中で生活することを通して全体的な発達を促していくことに配慮し,特別支援学校などの助言又は援助を活用しつつ,個々の幼児の障害の状態などに応じた指導内容や指導方法の工夫を組織的かつ計画的に行うものとする。また, 家庭,地域及び医療や福祉,保健等の業務を行う関係機関との連携を図り,長期的な視点で幼児への教育的支援を行うために,個別の教育支援計画を作成し活用することに努めるとともに,個々の幼児の実態を的確に把握し,個別の指導計画を作成し活用することに努めるものとする。

 これを踏まえてさまざまな対応がなされているわけですが、障害がある幼児への対応状況については、文部科学省が実施した「特別支援教育体制整備状況調査」(*5)で確かめることができます。

令和5年度 特別支援教育体制整備状況調査結果
出典:文部科学省ホームページ(https://www.mext.go.jp/content/20240906mxt_tokubetu02-000037861-02rr.pdf

 令和5年度の調査結果によると、令和4年度と比較し、国公私立・全学校種の合計では、①校内委員会の設置率、②実態把握の実施率、③特別支援教育コーディネーターの指名率のすべての項目の達成率が前回値を上回っていて、特に小・中学校においては、いずれの項目も9割以上の達成率であることが示されています。
 他方、「幼保連携型認定こども園や幼稚園、高等学校では、取組が十分でない項目も見られるという」という記述があるように、幼稚園や認定こども園では、校内委員会(園内委員会)の設置が約5〜6割に留まっていること、特別支援教育コーディネーターの指名率も他校種に比べて低いことなど、小中学校に比べて専門的な体制整備に遅れていることが認められます。
 また、文部科学省初等中等教育局幼児教育課が公表している「令和7年度 幼児教育実態調査」(*6)によると、全国の幼稚園全体で41,854人の障害がある幼児が、5212の園に在籍していることがわかります。在園率で見ると幼稚園全体の74.8%の園に障害がある幼児が在籍していることになります。公立私立別に見ると公立幼稚園は77.6%、私立幼稚園は73.7%となっていました。日本では私立幼稚園が圧倒的に多いことから、圧倒的に数の多い私立における障害児の在園率が公立よりも低くなっている点は気になるところです。
 さらに、「OECD国際幼児教育・保育従事者調査」(*3)によると、日本では、82.0%の園に特別な教育支援を要する子どもが在籍していること、その内訳を見ると、特別な教育支援を必要とする子どもの割合が在籍する子ども全体の10%未満である園が62.9%で圧倒的に多く、10%以上の園は19.1%になっていることが示されています。在籍する子どもが10%の園については、民営よりも公営の方が多いことも示されていますが、これは文部科学省の「令和7年度 幼児教育実態調査」の結果と合致しています。

OECD国際幼児教育・保育従事者調査(TALIS Starting Strong)2024結果のポイント
出典:国立教育政策研究所ホームページ(https://www.nier.go.jp/youji_kyouiku_kenkyuu_center/_uploads/2026/08/oecd2026_08_point.pdf)

4.次期幼稚園教育要領の取りまとめの状況

 幼稚園教育要領の次期改訂に向けてまとめられた「幼児教育ワーキンググループ取りまとめ(案)」(*2)には、特別な配慮を必要とする乳幼児への指導や支援の改善充実の在り方が一つの章(6章)で記述されています。そこには、障害がある乳幼児への指導や支援の充実という観点から「基礎的環境整備」の充実と「合理的配慮」の確実な提供を重視すべきであり、個別の支援計画や指導計画の作成や活用を一層推進することの必要性が記されています。既述の内容は以下のとおりです。

6.特別な配慮を必要とする乳幼児への指導や支援の改善充実の在り方
障害のある乳幼児への指導や支援の充実

障害のある乳幼児への指導や支援の充実を図るに当たっては、「基礎的環境整備」の充実を促すとともに、「合理的配慮」の提供が確実に行われるよう規定すべき。「基礎的環境整備」の充実に当たっては、全ての乳幼児一人一人の発達の特性や興味・関心等に応じる幼児教育の基本を大切にしているか、といった視点も重視すべき。
障害のある乳幼児に対する個別の支援計画や指導計画の作成や活用を一層推進するとともに、個別の支援計画に「合理的配慮」の内容を記載することにより、園内での共通理解と小学校への確実な引継ぎを図ることが必要。

外国人乳幼児等への指導や支援の充実

外国人の乳幼児や海外から帰国した乳幼児など外国人乳幼児等への指導や支援の充実に当たっては、母語での声掛けや母文化の遊びを取り入れるなど、乳幼児が安心して自己を発揮できる環境の下、一人一人の日本語の習得状況や生活習慣などの実態に応じ、指導の工夫を組織的・計画的に行うとともに、園内での共通理解と小学校への引継ぎを図ることが必要。
乳幼児の発達を踏まえ、体系的な語学指導を行わない幼児教育においては、外国人乳幼児等との日常的な関わりや言葉掛けにおいて、“日本語の力を育む視点”をもち、一人一人の実態に応じた指導の工夫を行うことを重視すべき。また、こうした工夫は、他の乳幼児にとっても言葉を豊かに育むことにつながる観点から重要である。

自治体の関係部局や関係機関との連携促進

幼稚園・保育所・認定こども園が有する幼児教育の専門性と自治体の関係部局や関係機関が有する障害や日本語指導等の専門性が相まって、一人一人の実態に応じた指導の充実が図られるよう、一層の連携促進を図るべき。

 「基礎的環境整備」は、「障害ある乳幼児」や「外国人乳幼児」などを含めて、すべての子どもたちが共に学ぶためのベースとなる極めて重要な取り組みだといえます。一人一人の子どものニーズに応じた「合理的配慮」を行う前段階として施設のバリアフリー化や指導体制のより一層の整備の推進が期待されます。
 また、「合理的配慮」の確実な提供が示されたことは、圧倒的に私立の施設が多い幼稚園の体制整備を推進する上で大変意義深いとことだといえます。2024年4月の改正障害者差別解消法の施行により、私立幼稚園(学校法人や個人経営の園)を含むすべての民間事業者に対し、合理的配慮の提供がそれまでの努力義務から法的義務に格上げされました。公立に比べて私立幼稚園では、現場の体制整備において多くの課題があり、「合理的配慮」への対応が十分になされていたとは言い難い面があります。「幼稚園教育要領」でその対応が強調されることにより、改善の手立てが期待できます。
 また、これまでの実態調査から課題とされていた、校内委員会(園内委員会)の設置や特別支援教育コーディネーターの指名率などの課題への対応については具体的に示されていませんが、保育所及び幼保連携型認定こども園における体制整備に関しては、5章の「保育所及び幼保連携型認定こども園における養護等の改善充実の在り方」の中で、施設長・園長のリーダーシップとの関連で記されています。

5.保育所及び幼保連携型認定こども園における養護等の改善充実の在り方
特別な配慮を必要とする乳幼児及び保護者への個別の支援における専門職や専門機関との連携及び協働の充実

障害のある乳幼児や外国人乳幼児等のみならず、全ての乳幼児について、一人一人の育ちゆく過程全体を大切にし、周囲の様々な人との相互的な関わりを通して育つという基本的な考え方の下、援助の充実を図ることが重要。また、保護者に対しても、一人一人を尊重し、パートナーとしての相互の信頼関係を築いていくことを重視するとともに、保護者との連携を一層充実させ、乳幼児の育ちと学びを支えていくことが重要。
その上で、より個別的な支援が必要な場合には、施設長・園長のリーダーシップの下で体制を整えるとともに、園内外の専門職や専門機関との適切な連携及び協働を促進していくことが重要。

5.次期教育要領への期待

 特別な配慮を必要とする子どもへの対応という観点から、日本の就学前教育の特徴を踏まえてこれまでの幼児教育の取り組みの実態やインクルーシブ教育への対応について確認した上で、次期幼稚園教育要領に向けた取りまとめ案の内容について紹介しました。
 幼稚園教育要領の改訂に向けた取りまとめ案では、特別な配慮を必要とする子どもへの対応についてこれまでの課題の改善を目指すという方向がしっかり示されていました。日本の幼児教育は、「遊びを通した学び」と「環境を通した教育」を基本として、生涯にわたる人格形成の基礎を培うことを基本的な考え方に据えています。こうしたことから、これまでの課題の改善により、公私立を超えて、障害がない子どもと障害がある子どもが共に生活する環境整備がいっそう進んでいくことに注目していく必要があります。
 日本の幼児教育・保育施設は、諸外国に比べて圧倒的に私立が多いというところに特徴があります。私立幼稚園が公立幼稚園に比べてインクルーシブ教育に一律に消極的であるとは言い切れないものの、運営形態や財政的な仕組みの違いから、実際の受け入れ状況や対応力に差が出やすいということは否めません。報道などでも障害がある子どもの受け入れでのトラブルなどの報道も散見されます。こうした面でも「とりまとめ(案9)」に示された内容が、次期幼稚園教育要領にしっかり反映され、それが現場に反映されていくことが期待されます。

*1:独立行政法人福祉医療機構(2025)「文部科学省、こども家庭庁が連携し、幼児教育における3要領・指針の改定に取り組む」
https://www.wam.go.jp/content/wamnet/pcpub/top/watch/20251128_001.html
*2:教育課程部会 幼児教育ワーキンググループ(2026)「幼児教育ワーキンググループ取りまとめ(案)※会議後修正」
https://www.mext.go.jp/content/20260806-mxt_youji-000051254_1.pdf
*3:国立教育政策研究所(2025)「OECD国際幼児教育・保育従事者調査(TALIS Starting Strong)2024結果のポイント」
https://www.nier.go.jp/youji_kyouiku_kenkyuu_center/_uploads/2026/08/oecd2026_08_point.pdf
*4:文部科学省(2025)「令和7年度学校基本調査の公表について」
https://www.mext.go.jp/content/20251226-mxt_chousa01-000044291_01.pdf
*5:文部科学省(2024)「令和5年度 特別支援教育体制整備状況調査結果」
https://www.mext.go.jp/content/20240906mxt_tokubetu02-000037861-02rr.pdf
*6:文部科学省(2026)「令和7年度幼児教育実態調査」
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/youchien/20260703-ope_dev03-1.pdf