学び!と公民
2026.10.19 <Vol.07>
初期社会科の「問い」に学ぶ
1.分野横断で社会科が変わる?
2024年に文部科学大臣から中央教育審議会に諮問された次期学習指導要領改訂に向けての審議が大詰めを迎えています。中学校社会科については、地理的分野、歴史的分野の学習の基礎のもとに公民的分野の学習を進めるという大枠は維持されるものの、「分野横断による統合・整理」が行われるようです。教育課程企画特別部会の「審議まとめ(案)」には、その趣旨が次のように示されています。
より系統性・体系性をもった学びを実現するため、中学校社会科に地理・歴史・公民の各分野を有機的に結び付ける分野横断の単元(A・B・C)を設け、小学校社会科や高等学校地理歴史科・公民科とより円滑な接続を図る。その際、分野横断のねらいを実現できるようにするため、現行の各分野の内容の一部あるいは全部を移行し、その上で各分野の内容の改善を図る。
(中央教育審議会初等中等教育分科会教育課程部会教育課程企画特別部会(第18回)【資料1】(2026.9.25)より)
より具体的に見てみると、中学校第1学年の最初に小学校社会科の学習を踏まえた中学校社会科への導入単元「A 社会へのまなざし(仮称)」を学習し、その後、地歴並行学習を進めることになります。続いて、公民的分野(現代社会)への接続単元「B 私たちと社会(仮称)」、公民的分野の学習と進み、第3学年の最後に中学校社会科のまとめ単元「C よりよい社会を目指して(仮称)」を学習して高等学校の学習へとバトンタッチしていく流れです。分野の固有性以上に教科としてのまとまりをより一層意識した改訂の方向性と言えるでしょう。
はじめにお断りしますが、本稿は分野横断単元の在り方そのものを提案するものではありません。分野横断単元が「地理・歴史・公民の各分野を有機的に結び付ける」単元であるとするならば、公民的分野における経済領域の学習でも、社会科としてのまとまりを意識した「学び!」が求められるはずです。言い換えれば経済学などの学問的基盤に依拠するだけではなく、社会の形成者としての「私」を自覚し、消費者、生産者、労働者、主権者などとしての「私たち」と「経済」との関わりをこれまで以上に自分ごととして考察、構想することのできる授業構成が求められるのではないでしょうか。そしてそれは、具体的にはどのような「問い」で構成されるのでしょうか。分野制が採られていなかった初期社会科の頃の学習指導要領(試案)を紐解いて、ヒントを得たいと思います。
2.経済領域の授業改善の参考に―初期社会科の「問い」―
「学習指導要領一般編(試案)」(1947)には、社会科が新設された目的が次のように示されています。
この社会科は、従来の修身・公民・地理・歴史を、ただ一括して社会科という名をつけたというのではない。社会科は、今日のわが国民の生活から見て、社会生活についての良識と性格とを養うことが極めて必要であるので、そういうことを目的として、新たに設けられたのである。ただ、この目的を達するには、これまでの修身・公民・地理・歴史などの教科の内容を融合して、一体として学ばれなくてはならないのでそれらの教科に代わって、社会科が設けられたわけである。
80年が過ぎた現在でも、「なるほど」と思わせる記述です。次いで、「学習指導要領社会科編(Ⅱ)(第七学年~第十学年)(試案)」(1947)には以下のような「問い」が例示されています。これらの「問い」を参考にして問題解決学習、現行教育課程の用語に換言すると「課題を追究したり解決したりする活動」を通した学習指導が構想できるのではないでしょうか。時代に合わなくなった表現があるのは織り込み済みですが、1950年代に3分野制が敷かれて以降、すっかり忘れ去られた「問い」が掘り出されるかもしれません。ぜひ、下掲以外の「問い」も探ってみてください。
〔第九学年〕
単元4
「職業を通じて、われわれの生活を、いかに社会全体のために役だたせることができるであろうか」
「自分に適した職業を選ぶために、社会はどのような配慮を行っているであろうか」など
単元5
「商品の値段は、どんな要因によって影響されるか」
「広告に対しては、どういう態度をとったらよいか」
「将来、われわれは、消費生活に対して、社会や政府に、どういうことを期待することができるか」など
〔第十学年〕
単元4
「貧困と生活難は、個人の福祉にいかなる影響を与えるか」
「貧困と生活難から生ずる問題を解決するために、外国において実行しているもので、日本に採用できるものには、どのようなものがあるだろうか」
「各個人は、この問題の解決に協力するために、いかなる責任を負うべきであろうか。現在、実際的に効果的にどうして協力すべきか」など
【参考文献】
- 文部科学省『学制百年史 資料編』帝国地方行政学会、1972年