学び!とPBL
2026.07.21 <Vol.100>
進化するAIとの知恵比べ?
「人間にしかできないこと」って何だろう
これからの時代、「指示されたことを正確に」という従来の学校教育では機械に太刀打ちできない。AIやロボットに代替されない力を養うためにも、探究学習が重要だ。特に身近な地域課題をテーマとしたプロジェクト学修には大きな意義がある――。
多くの人たちと同様、私もそんなことを考えてきました。こうした思いを具現化しようと「ふくしま高校生社会貢献活動コンテスト」を2014年から実施してきたことは、以前本連載の <Vol.90>、<Vol.91> でご紹介したとおりです。
しかし、生成AIの進化のスピードには驚かされます。ちょっと実験してみましょう。ChatGPT でも Gemini でも Copilot でも、普段お使いの対話型AIに、次のプロンプト(指示文)を入れてみてください。
「あなたは○○県○○市の高校2年生です。地域の課題を発見し、自分たち高校生の力で少しでも解決しようとするプロジェクトを、総合的な探究の時間に行います。インパクトがあり、かつ実現可能なプロジェクト案を5つ考えてください」。
私も、いくつかの市で試してみました。「「公共交通の使いづらさ」見える化プロジェクト」「「孤立する高齢者」×「高校生の力」“お話し配達便”」など、それぞれの地域課題に応じたアイディアが、具体的な実施プランつきで続々と出てきます。
どれも高校生に実現可能ですし、一定の効果がありそうです。「どんな活動をして、何をスライドにまとめればよいか」までAIは丁寧に教えてくれます。あとは実行するだけです。長年コンテストを運営してきた者として感想を言うなら、いずれも審査員の先生から高く評価されること間違いなしのプロジェクトばかりです。わずか数秒でこれだけのアイディアがどんどん出力される時代、さて「探究」で養うべき「人間にしかできないこと」とは、いったい何なのでしょうか。
福島大学「むらの大学」の改革
私が福島大学で担当する授業「むらの大学」も、こうした課題に直面していました。「むらの大学」は全学部の1年生対象の選択授業で、川内村や南相馬市小高区、大熊町、飯舘村など、2011年に起きた東京電力福島第一原発事故による住民避難を経験した地域を訪れます。以前は農業や教育などテーマごとの小グループに分かれ、それぞれの地域の課題を考え、解決策を自分たちなりに探るというプロジェクト学修を行っていました。
しかしある時期から、果たしてこの形式でよいのだろうかと、私たち教員が悩むようになりました。そして、この連載を一緒に担当している千葉先生や久保田先生と相談し、2023年度から「むらの大学」の内容を、それまでの地域課題発見・解決型のプロジェクト学修から避難を経験した地域住民の方にじっくりお話を伺い記録する「住民インタビューとアーカイブ化」に変更したのです。
インタビューの内容も学生たちが考え、原稿の整理や、ご本人による確認と修正なども全て、学生たちの手で行っています。今年3月には、このインタビューをまとめた書籍『福島、語り継ぐ生活史:大学生が聞いた暮らしと原発事故』(青弓社)が出版されました。震災・原発事故以前の地域の暮らしや、3.11から現在までのことを、学生の手でまとめています。
地域課題の発見・解決ももちろん大切ですが、生成AIが「それっぽい」ことを瞬時に出力できる時代になり、また別の力の養成が必要になってきました。そこで私たちが選んだのが「自分の足で地域を歩き、住民の方からじっくりとお話を聞く」という原点に戻ることでした。シンプルですが、AIにはできないことです。
「何が最も学生・生徒の力を伸ばすか」を毎回考え、授業内容を臨機応変に、大胆に変革する。猛スピードで成長するAIとの知恵比べ(?)は大変ではありますが、教員にとっても楽しい時代になってきたと個人的にはワクワクしています。


