読み物プラス
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~アートで元気のおすそ分け~
被災地の高校生にできることを、無理なく楽しく
人間が芸術=表現活動を行う意味やきっかけを震災後、よく考えるようになりました。一般に「芸術」と呼ばれる営みは、捉えがたいものを何らかの感覚や方法で生みかえるものです。私の認識では、芸術は決して特別なものではなく、生きる中で自然発生する行動のわかりやすい言い換えです。「あれ?いいな」と感じることに気付いた時点でそこに芸術が生まれる。それでいいと思うのです。
芸術について偉そうに語れる立場ではありませんが、表現の仕方を「自分のもの」と意識した時、それがリンクした先が、私の場合は美術であったのだと思います。描く・つくる、という行為は、私の人生の中で大きな意味と多くの時間を占めてきました。「芸術」はいつの間にか生まれてくるもの。嬉しいから絵を描き、楽しいから粘土をこね、悲しくて絵具を画面にぶちまけ…生きながら呼吸をするように、自然と美術に関わってきたように感じます。
校舎が壊れ不便な学校生活、放射能の不安があるこの土地で暮らすこと、将来のこと…とにかく二重にも三重にも困難を抱えた生徒たちに「がれきに花を咲かせようプロジェクト」を提案したのは2011年の4月。受け入れてくれた生徒と共に、今まで様々な美術的活動を繰り返してきました。今思えば、初めは自分自身も必死で、思いついたことを半ば勢いでやった、というのが正直なところです。重苦しい現実と対面した生徒が、それを飲み込んで自己表現できるような状況はあの時、全く存在しなかったと思います。私自身は震災翌日に、澱んだ心境を絵にして心が落ち着いた、という経験をしたわけですが、生徒たちに花を描く行為を勧めたのは、自己表現ではなく、美術の側面の一つ、「表現は活力を生む」というものに賭けたかったからと言えます。
![]() 東電へ応援の絵手紙を贈る |
![]() 仮設訪問ワークショップ |
プロジェクト活動を通して少しずつ、笑顔の花が咲きました。今では多くの方々に応援していただけるような大きな花畑となり嬉しいです。このプロジェクトをここまでに発展させた美術部員たちに昨年、活動を振り返る機会を与えたときの回答を一部、ご紹介します。美術によって生きる力を得た生徒たちの、成長した姿がそこにあります。
![]() 仮設訪問ワークショップ |
![]() 壁画プロジェクト |
![]() 大林宣彦監督とAKB48「So long!」試写会 |
「活動に参加し、どんな心境の変化があった?どんなことを考えた?」
- 自分が被災者だからといって支援してもらうだけじゃなく、助け合っていくことが大事だと思いました。そして、今できることは精一杯やりたいと感じるようになりました。
- どう表現すれば、傷を負った方々の傷をえぐらずに元気づけられるのかというのをすごく考えさせられました。相手の気持ちを考えることの大切さを知りました。
- すべてがすべて、すんなりいったわけじゃないけど、避難してきた人々を自分たちの作品で元気づけたり、笑顔に変えられるとわかった時、「役に立てた!」とすごく嬉しく思いました。これからもこの活動がある限り、「役に立ちたい」という気持ちを忘れずに頑張りたいと思います!
- 人とのコミュニケーション能力がつきました。自分自身の性格(人見知り)などが緩和された気がしました。
- 感謝されることへの喜びや、自分の特技を活かして他人の力になれたことがとても嬉しいです。
- 人に喜んでもらえるのが嬉しかった。誰かのためになにかをしたいと思った。
- 今までボランティアなどに参加したことがなかったのですが、これまでの活動を通して自分も何かしら役に立つことができるんだなと思いました。
- 人のために何かをする、ということがあまりなかったので、すごくやりがいがあります。
「今後の抱負は?」
- 今、自分にできることを精一杯やる。
- 放射能汚染されていない瓦礫を受け入れて処理してくれている県の人たちも、風評で困っていると思うので、自信を持ってもらえるように、この活動を知ってもらう。
- これからも仮設住宅に出かけ、人のために活動したい。
- 少しでも多くの人に元気になってもらえるよう笑顔で頑張る。
- 今後も活動を継続し、今まで以上に積極的に関わりたい。
- この活動を新入生にも伝えていきたい。
番匠あつみ(ばんしょう・あつみ) |