高等学校 情報

2026.10.21 <No.013>

情報Ⅰ「データサイエンス講座」(第3学年)

玉川聖学院高等部 大沼祐太

情報Ⅰ「データサイエンス講座」(第3学年)

1.はじめに

 近年注目されている「データサイエンス」をどのように高校生に教えるべきかは、多くの学校にとって課題の一つである。
 本校の「情報Ⅰ」の授業においては、教科書の内容を網羅的に学習するとともに、タイピングをはじめ、WordやExcel等のofficeソフトの基本操作や、基本的な情報リテラシーの習得に取り組んでいる。また、IllustratorやPhotoshopを用いたポスター制作、HTMLやCSSによるWebデザイン、ヤマハのVOCALOIDを活用した音源制作、MetasequoiaやSketchUPを用いた3DGSモデリングなど、多様な実習を設けている。
 これらの活動を通して、来るべき新しいデジタル社会で必要となる実践的な知識・技能や創造的な表現力を生徒が身につけることを目指している。
 最近では、韓国の姉妹校における情報教育を参考に、本校オリジナルで作り上げたPythonとSHARPのRoBoHoNを活用したプログラミング教育にも取り組んでいる。

 本稿では、高校3年生を対象とし、東京女子大学との高大連携事業の一環として実施しているデータサイエンス講座の実践を紹介する。

2.単元名

データの活用
データサイエンス講座(第3学年)

3.単元の目標

【知識及び技能】

  • データ分析の考え方や手法を理解するとともに、分析結果を適切に表現する技能を身につける。
  • 表計算ソフトを用い、実際のデータを分析する活動を通して、データサイエンスの有用性を実感する。
  • データサイエンスとAIの社会的な役割、および利用に伴う懸念事項(リスク)を正しく理解できる。

【思考力・判断力・表現力等】

  • データ分析の考え方や手法に基づいて分析結果を表現・評価し、その結果を問題解決の改善に生かすことができる。
  • データの背景にある事象を推察し、分析結果を予想する。また、その分析結果を考察し、その内容を他者に分かりやすくプレゼンテーションすることができる。

【学びに向かう力・人間性等】

  • データ分析の取り組みを振り返り、評価・改善を行うことを通して、社会の課題解決に主体的に参画しようとしている。
  • 他者と協働して課題解決に向き合い、専門的講評をふまえて自らの学びを振り返り改善しようとしている。

4.単元の評価規準

ア 知識・技能

イ 思考・判断・表現

ウ 主体的に学習に取り組む態度

  • データ分析の考え方や手法を理解するとともに、分析結果を適切に表現する技能を身につけている。
  • 表計算ソフトを用いて実際のデータを分析する活動を通して、データサイエンスの有用性を理解している。
  • 社会における身近なデータサイエンスやAIの活用事例を理解している。
  • AIを利用する上での懸念事項の具体的な内容やリスクを正しく理解している。
  • データ分析の考え方や手法に基づいて分析結果を表現・評価し、その結果を問題解決の改善に生かしている。
  • データの背景にある事象を推察し、分析結果を予想している。また、その分析結果を考察し、その内容を他者に分かりやすくプレゼンテーションしている。
  • データ分析の取り組みを振り返り、評価・改善を行うことを通して、社会の課題解決に主体的に参画しようとしている。
  • データサイエンスやAIの有用性を実感し、活用しようとしている。

5.単元の指導と評価の計画

時

学習活動・内容

評価の観点

評価の方法

確認事項

ア

イ

ウ

1
(2コマ100分)

【データサイエンスとは】
オンライン会議システム(Webex)を用いて、東京女子大学の小田浩一教授によるデータサイエンスに関する講義を受講する。講義内容は以下のとおりである。

  • データサイエンスとは(ここ数年間の生成AIの出力結果の比較、「データサイエンスの神様」の紹介、本校の事例)
  • AIとデータサイエンス
  • 最近のAIサービス
  • Teachable Machineを用いた認識技術の体験
  • データサイエンスの実例(アンケートのクロス集計分析、重回帰分析、統計とAI)
  • 今後のAI活用における6つの懸念事項

講義終了後、質疑応答を行い、生徒は学んだことや感想、追加の質問をGoogleフォームで提出する。

○

○

○

  • 行動観察(口頭で理解度を確認)
  • ワークシート(Googleフォーム)
  • 天気予報、新薬の開発、コンビニ弁当の販売、顔認証技術など、データサイエンスの活用事例を理解しているか。
  • AI(機械学習)がデータサイエンスの一手法であることを理解しているか。
  • 指紋・顔認証、音声入力、DeepL翻訳、ChatGPT、語学のAIチューター、Gemini NotebookなどがAIを活用したサービスであることを理解しているか。
  • データサイエンスは、数学的知識だけでなく、目的に応じてデータを組み合わせて活用する、料理に近い考え方であることを実感しているか。
  • AIを利用する上での6つの懸念事項(①思考力への影響、②著作権・盗作の問題、③心のつながりを作る危険、④雇用への影響、⑤AIによる誤情報(ハルシネーション)、⑥軍事利用への問題)について理解しているか。

2
(2コマ100分)

【Excelを使った統計の基礎1】

  • データの整理(FREQUENCY関数、度数分布)
  • データの代表値(最頻値、平均値、中央値、ヒストグラム)
  • 四分位数(QUARTILE関数、箱ひげ図、データの散らばり)
  • 分散と標準偏差(偏差、偏差平方、分散、標準偏差、偏差値)
  • 相関係数(STDEVP関数、共分散、相関係数、散布図の見方)
  • 単回帰分析(気温からアイスの売り上げを予測)
  • 重回帰分析(気温と湿度からアイスの売上を予測)

○

○

  • ワークシート
  • 演習ファイル
  • 行動観察(口頭によるフィードバック)
  • 講義を聞きながらワークシート「データサイエンス講座note.docx」の空欄を穴埋めし、講義内容を正確に理解できているか。
  • ワークブック「大学へのデータサイエンス.xlsx」を活用して各自で演習を行い、統計の基礎を習得できているか(Vidcast(*1)にて復習用に解説動画を閲覧可能)。
  • 例示に沿って行う操作実習や、自力で取り組む演習問題を通して、各項目の知識や技能が段階的に定着しているか。

3
(2コマ100分)

【Excelを使った統計の基礎2】

  • t検定(ダイエットの効果、有意差、P値)、F検定(等分散・不等分散の判定)
  • 𝜒2検定(クロス集計表、独立性、自由度、理論値、カイ二乗値)

【「タイタニックデータ」を用いた分析】

  • タイタニック号沈没事故の乗客データ(1,317人分の氏名、生死、乗船港、性別、客室等級など)から、分析に必要な項目を抽出し、データクレンジングを行う。
  • 実践実習1:性別による生存率の差を分析する(F検定→t検定)。
  • 実践実習2:客室等級による生存率の差を分析する(𝜒2検定)。

○

○

○

  • 行動観察(演習中の相談、分析の考察など取り組みの様子)
  • 成果物(各検定の分析結果)

【Excelを使った統計の基礎2】
統計的仮説検定の考え方を理解し、手法を習得しているか。

  • t検定(一対の標本による平均の検定)の手順を習得し、「有意差」について説明できているか。
  • F検定を用いて等分散・不等分散を判定し、有意水準5%を基に適切に判断することができているか。
  • 𝜒2検定を用いて、クロス集計表からカテゴリ間の独立性を検証することができているか。

【「タイタニックデータ」を用いた分析】

  • タイタニック号の乗客データを用いて、データクレンジングを行い、分析に必要なデータを適切に整理することができているか。
  • 実践実習1:データを男女別に並べ替え、F検定で等分散性を調べた上で、t検定により生存確率の男女間の有意差を統計的に求められているか。
  • 実践実習2:𝜒2検定により、生存確率に船室の等級(1st、2nd、3rd)による有意差があるかを統計的に求められているか。

4
(2コマ100分)

  • 高校3年生を対象に授業内で実施した「スマホ依存度アンケート」の実データを用いて、2人1組のグループで有意差が生じそうなカテゴリを予想する。
  • 予想したカテゴリについて、適切な統計的手法を用いて検定を行い、その結果について考察する。

○

○

○

  • 成果物(Excelファイルやレポートなど)
  • Googleフォームで収集した実データを、分析しやすい形にデータクレンジングすることができているか。
  • 予測したカテゴリ間の差を検定するために、適切な検定を選択することができているか。
  • 表計算ソフト(Excel)を適切に操作できているか。
  • 検定結果から有意差の有無を適切に判断し、その結果を根拠をもって考察することができているか。

5
(2コマ100分)

  • 自分の学年を対象に実施した「スマホ依存度アンケート」の結果を分析・考察し、Googleスライドにまとめる。
  • グループごとに分析結果を5分間で発表し、小田教授から講評を受ける。

○

○

  • 成果物(Googleスライド)
  • 行動観察(発表時の態度)
  • グループで協力してGoogleスライドを活用し、1コマ(50分)の時間内に、分析結果を分かりやすくまとめたプレゼンテーション資料を作成できているか。
  • 分析や考察の結果が聞き手に的確に伝わるよう、分かりやすく発表できているか。
  • 小田教授からの講評やアドバイスを理解し、今後の分析や発表の改善点として受け止めることができているか。

6.本時の目標 ※「本時」は上表の太枠部分を示します。

  • 統計的仮設検定について学び、「有意差」の意味を理解する。
  • 表計算ソフト(Excel)を用いて、実データに対してt検定、F検定、𝜒2検定を行うことができる。
  • タイタニック号沈没事故の生存者名簿データを使用し、分析に適した形式へと整理するデータクレンジングを行うことができる。
  • 目的に応じた的確な分析手法を選択し、適切な検定を行うことができる。

7.本時の流れ(3日目、2コマ連続100分)

時間

学習内容・学習活動

指導上の留意点

評価

演習の続き
40分

  • PCを起動し、「Excelを使った統計の基礎」を開く。
  • t検定:「ラーメンの大盛をやめるダイエットに効果があるのか」を題材として検定を行う。
  • F検定:「t検定」の手法を適切に選択するために必要な「F検定」を学び、実施する。
  • 𝜒2検定:クロス集計表を用いてカテゴリ間の独立性を検定し、自由度、理論値、へだたり度を算出する。

【指導手順】

①パワーポイントのスライドを提示し、理論を説明する。
②Excel実習

分散、P値、t値の境界値を関数で算出できるよう指導した後、分析ツールを用いたt検定(一対の標本による平均の検定)、F検定、𝜒2検定、𝜒2検定の手順を解説し、操作を習得させる。

ア:知識・技能
行動観察

展開1
10分

タイタニック沈没事故の生存者リストの実データを提示し、どのようなデータが収録されているのかを確認する。

【乗客1,317人分のデータ】
実際のデータを見ながら、どの項目で有意な差が出そうかを予測し、仮説を立てるよう促す。
《項目》
Surname(姓)、First Names(名)、Age(年齢)、Boarded(乗船港)、Survivor or Victim(生死)、Class(客室等級)など

ア:知識・技能
行動観察

展開2
40分

  • タイタニック号沈没事故の生存者リスト(1,317人分の乗客名簿データ)から、分析に必要な項目を抽出し、データクレンジングを行う。
  • 実践実習1:生存率と性別の関係を分析する(F検定→t検定)。
  • 実践実習2:生存率と船室等級の関係を分析する(𝜒2検定)。

分析したいデータを抽出させた後、次の手順で分析を進めるよう指導・支援する。

①カテゴリごとにデータを並び替える。
②F検定を行い、等分散かどうかを確認する。
③t検定を行い、有意水準5%で有意差があるかどうかを判定する。
④分析結果について、なぜその結果になったのかを考察する。

ア:知識・技能
行動観察

まとめ
10分

  • 実践実習1・2について、事前に求めたt検定と𝜒2検定の結果を提示し、各自の分析結果と比較する。
  • 分析結果について考察し、データサイエンスの有用性を実感する。

実践演習1:女性は男性よりも生存率が49.9%高く、その差は有意であった。
実践演習2:船室等級によって生存率に有意な差があった。

  • 上記、分析結果を提示し、生徒の分析結果と比較できるようにする。
  • なぜそのような結果になったのか背景や根拠に留意させ、データサイエンスの有用性を実感できるようまとめを行う。

イ.思考・判断・表現
成果物(各検定の分析結果)
行動観察(分析結果について発表できているか)

ウ.主体的に学習に取り組む態度
行動観察(分析結果について根拠を踏まえた考察ができているか)

8.まとめ

 本単元は、週1回100分の授業を全5回で実施した。
 初回の授業では、東京女子大学の小田浩一教授に「データサイエンスとは何か?」をテーマとしたオンライン講義を実施していただいた。講義では、データサイエンスの特徴や活用事例に加え、最新のAI技術についても紹介いただき、生徒は機械学習を体験的に学ぶことができた。
 2回目では、分散や偏差、多変量統計解析などの基礎を学び、Excelを操作しながら統計分析の手法を習得した。
 3回目では、タイタニック号沈没事故の実データを用いてデータクレンジングを行い、Excelのデータ分析機能を活用してt検定や𝜒2検定を実践した。
 4回目では、自身の学年の生徒を対象に実施した「スマホ依存度アンケート」のデータを用いて、2人1組のグループで分析と考察に取り組んだ。
 最終回では、分析結果をGoogleスライドにまとめ、5分間のプレゼンテーションを行った後、小田教授から講評をいただいた。

 以下は、講座終了後の生徒の感想である。これらの記述から、当初の目標をおおむね達成できたと考えられる。

  • AIの利便性と危険性をより深く知ることができました。
  • 初めて触れるデータサイエンスについての仕組みやどこに使われているのかなど新しい学びがたくさんありました。近年AIの進化によって、さまざまな問題が生じていることも分かり、また最新のAIによる影響について知ることができ、とても面白かったです。私自身も調べ物をするときに無意識のうちにAIを活用していることがあるので、AIのメリット・デメリットを考えながら上手く活用していきたいと思いました。
  • これからの時代、AIとどのように向き合っていくかが私たちに課された問題だと思いました。

 今後も、技術の発展に応じて教材や内容をアップデートしながら、体験的な学びを重視したデータサイエンス講座を継続して実施していきたい。

【関連資料】

《解説動画》

《授業用資料》

  • データサイエンス講座ver2025(PowerPointファイル) ダウンロード
  • 大学へのデータサイエンスver2025_配布用(Excelファイル) ダウンロード

*1:Cisco社が提供するビデオメッセージングサービス。