小学校 生活

小学校 生活

生活科内容(3)の単元構成と授業づくりのポイント(第1学年)
2020.01.07
小学校 生活 <No.010>
生活科内容(3)の単元構成と授業づくりのポイント(第1学年)
佐賀県認定こども園すみれ幼稚園 教頭 麻生秀樹

 生活科の内容(3)「地域と生活」は,2年生の町探検で扱うイメージがありますが,1年生でも単元として行うことができます。
 A小学校のすぐ近くにある保健福祉センター(以後,センターと記す)。1年生の大半が通っていたこども園に隣接しているとあって,子どもたちはセンターの存在を知っているようです。
 しかし,センターの中に何があって,どんな人が利用しているのかまでは知らない子どもが多いようです。
 そこで,1学期に行ってきた学校探検の発展として,2学期にセンターを探検し,センターを利用している高齢者の人たちと関わる学習を実施することにしました。

※本実践は,A小学校T教諭が計画をたてて行い,筆者がT教諭の授業を参観してまとめたものです。

生活科内容(3)「地域と生活」の単元構成

 生活科の内容(3)について,小学校学習指導要領(平成29年告示)解説 生活編には,
「地域に関わる活動を通して,地域の場所やそこで生活したり働いたりしている人々について考えることができ,自分たちの生活は様々な人や場所と関わっていることが分かり,それらに親しみや愛着をもち,適切に接したり安全に生活したりしようとする」
と記されています。

 以上の内容を踏まえて,生活科内容(3)の単元を次のように構成しました。

時数

内容

1

センターについて,どんなところで誰がいるか等を話し合う

2・3

センターのひみつを見つけに探検に行く(1回目の探検)

4

センターを利用する高齢者の人たちと仲良くなれる方法を考える

5・6

センターを利用する高齢者の人たちにインタビューする探検に行く(2回目の探検)

7

インタビューした情報をもとに,
・センターを利用する高齢者の人たちともっと仲良くなる方法
・高齢者の人たちが笑顔になる方法
を考え,準備をする

8・9

準備してきたものを持ってセンターへ行き,高齢者の人たちと交流する探検に行く(3回目の探検)

10

3回の探検を振り返り,これからの関わりや自分の祖父母等との関わりを考える

 この単元構成では,1回目の探検で出会ったセンターの高齢者の人たちと仲良くなりたい,高齢者の人たちを笑顔にしたいという子どもの思いや願いの実現をめざしています。

授業づくりのポイント

 子どもの思いや願いを実現していくための授業づくりのポイントを三つ述べてみたいと思います。

1回目の探検で高齢者のおじいちゃんに関わっている様子 2回目の探検で高齢者のおばあちゃんにインタビューしている様子

①繰り返しの活動を計画しておきましょう
 繰り返しの活動は,教師の単元構成には存在しますが,繰り返すことは子どもの思いや願いを実現させていくためです。ですから,「先生,もう一回探検に行こう!」「うまくできなかったから,もう一回行きたいなあ」という子どもたちからの発言やつぶやきがあってこその活動です。

②振り返りの時間を設定しましょう
 探検に行った後,探検を振り返る話し合いの時間を十分設定して,1回目(あるいは2回目)の探検での気付きや困ったこと,もっとしたいこと等を引き出しましょう。その中で,子どもたちがもう一度行きたいと思う理由を出させましょう。
 しかし,もう一回行こうと子どもたちから言われても,教師は簡単に「わかりました。行きましょうか」と許可してはいけません。「どうして2回(あるいは3回)行くの?」「この前行ったから,もう行かなくてもいいのではないの?」と子どもに問いかけることが大切です。ここで,子どもたちが何のために,何をしにもう一回行くのかを答えることができるかが重要です。

③目的意識や相手意識をはっきりもたせてから活動をさせましょう
 「センターのおじいちゃんと仲良くなりたいから」「センターのおばあちゃんを笑顔にしたいから」等,もう一回探検に行く目的を明確にすることが大切です。
 1回目の探検で出会ったおじいちゃんやおばあちゃんの名前を教えてもらっていたら,もう一回行くときに,「○○のおじいちゃん」「○○のおばあちゃん」等と,その人に次も関われるようにして,相手意識をはっきりさせていくと,その人に喜んでもらえるように,その人を笑顔にできるようにするためにと,さらに目的がはっきりしてきて意欲も高まってくるでしょう。

 これら三つのポイントは,本単元の構成であれば,探検後(3時目の終末での振り返りから4時目,及び6時目の終末での振り返りから7時目)の時間の学習が重要になってきます。

1回目の探検では…

 1回目の探検は,「ひまわりたんけんたい」と子どもたちが名前を付け,センターに行きました。初めてセンターに行く子どもが多く,どんな人がいるのか不安で,戸惑っている子もいました。センターを利用している高齢者の人たちに,お話に行くように声を掛けましたが,お話するまでに時間を要しました。

1回目の探検の振り返り(3時目)と2回目の探検の準備(4時目)では…

 3時目の終末の振り返りをしたときに,高齢者の人たちと楽しく会話することができた子と,戸惑ってしまい関わることができなかった子の様々な思いが,発言の中から感じられました。子どもたちの様々な思いを学級全員で共有した後,これからどうしたいか子どもたちに尋ねました。
 すると,うまくお話ができなかった子どもたちから,「おじいちゃん,おばあちゃんたちと仲良しになりたい!」「もう一回探検に行って,お話したい」「○○のおじいちゃんに好きなものを聞きたい」等の意見が出て,もう一回探検に行くことになり,2回目の探検では「1の1インタビューたんけんたい」という探検隊の名前が決まりました。
 4時目は,インタビューする内容についての話し合いをして,2回目の探検に備えました。

2回目の探検では…

 2回目の探検では,高齢者の人たちへインタビューする活動が中心で,1回目に出会った高齢者の人たちへインタビューをしました。B児は,おばあちゃんに「ぼくはポケモンが好きだけど,おばあちゃんは何が好きですか?」と尋ねました。C児は,別のおばあちゃんとお話をして,そのおばあちゃんが好きなものがドレスだとわかったので,「どんな色のドレスが好きですか?」と尋ねました。
 子どもたちは,みんな高齢者の人たちに尋ねたいことをインタビューしました。

2回目の探検の振り返り(6時目)と3回目の探検の準備(7時目)では…

 このインタビュー探検は,インタビューでわかったことを,どのようにするかが重要になります。6時目の振り返りで,自分がインタビューしたりお話をしたりした高齢者の人たちが好きなことをもとに,どうしたいのかを子どもたちに尋ねました。すると,「何かをつくり,そのつくったものを持って3回目の探検に行きたい」と子どもたちの思いが膨らみました。
 そして,それをもっていくことで「○○のおじいちゃんを笑顔にしたい!」とか,「いっしょにお手玉をして,○○のおばあちゃんと仲良くなりたい!」等の願いをもちました。B児は,「おばあちゃんに恐竜の絵を描いて渡そう」,C児は,「ドレスを着たおばあちゃんの絵を描いて,ドレスの色をおばあちゃんが好きな紫色にしよう」と決めました。
 7時目は,その願いを実現するために決めたことをもとに,高齢者の人たちが笑顔になるように,そして仲良くなるように,自分が関わったおじいちゃんやおばあちゃんに渡す物をつくる時間でした。実際には,B児は恐竜からくじらに変更しましたが,色画用紙や色紙を使って,おばあちゃんが喜ぶようなくじらをつくりました。子どもたちは,それぞれが自分で高齢者の人たちにインタビューしたことをもとに,次に行く探検の準備をしました。

色画用紙や色紙を使ってくじらをつくっているB児 ドレスを着た若い頃のおばあちゃんの絵を描くC児

思いや願いの実現へ…(3回目の探検)

 3回目の探検は,いよいよ自分が作成したものを持ってセンターへ行きました。みんな当日の朝からわくわくしている様子。センターに到着すると,子どもたちはにこにこ笑顔。これまで関わってきた高齢者の人たちのところへ一目散。
3回目の探検で○○さんに30歳の頃の絵をプレゼントするC児 C児は,おばあちゃんの名前「○○さんへ」という言葉を絵の横に書き加え,プレゼントしました。「○○さんが,30さいくらいのときの絵だよ!」と言って渡しました。受け取ったおばあちゃんは,とっても嬉しそうで,C児以上のにこにこ笑顔でした。
 B児は,制作しているうちに,つくった「くじら」に愛着を持ち始め,おばあちゃんにプレゼントせずに見せるだけで喜んでもらうという方法にして,一生懸命つくった「くじら」をにこにこ笑顔で見せていました。おばあちゃんが好きと言っているトランプをもっていって,おばあちゃんとトランプで楽しく遊んでいました。

 高齢者の人たちと関わるどの子どももにこにこ笑顔で,高齢者の人たちも,子どもたちの思いの込もった行動に笑顔が溢れていました。
 授業づくりの三つのポイントである,①繰り返しの活動の計画,②振り返りの時間の設定,③目的意識や相手意識をもたせた生活科の活動 によって,高齢者の人たちと仲良くなりたい,高齢者の人たちを笑顔にしたいという子どもたちの思いや願いを実現させることができました。

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