学び!と美術

2026.07.10 <Vol.167>

学級担任に聞く「特別支援学級と通常の学級の図工の時間」 第2回:子どもも教師も見通しをもてるように

横浜市立緑小学校 大谷幸子先生・小坂美月先生

学級担任に聞く「特別支援学級と通常の学級の図工の時間」 第2回:子どもも教師も見通しをもてるように

特別支援学級と通常の学級の図工の時間。先生は何を見て、どのように働きかけながら、困っている子どもを支援しているのでしょうか。第2回は、子どもや教師が見通しをもって取り組むための工夫や机間指導について話をうかがいました。

第1回:支援の考え方は似ている
第2回:子どもも教師も見通しをもてるように
第3回:「自由にやってごらん」を成り立たせるには(9月10日公開予定)

現在地を可視化する

――子どもたちが見通しをもって取り組むための工夫はありますか。

大谷:一般学級では最初からすべての手順を説明してしまうと、題材の世界観に入り込みにくくなったり、ワクワク感が薄れてしまったりするので、段階的に説明していくことが多いと思います。個別支援学級においては、特に見通しが持てないことに不安を感じやすいクラスの場合、活動の手順を最初にすべて説明します。例えば「1.やり方を知る 2.やってみる 3.貼る 4.絵をかきたす」のように大まかな工程を提示した上で、その日のゴールとやり方を伝えていきます。それでも不安が強い子どもには、活動の前に題材について話して、「表したいもの」をあらかじめ決めておきます。

小坂:5年生の個別支援学級のときは、黒板に授業全体の流れを提示した上で、名前入りのマグネットを貼ったり、タブレット端末の共有機能を使ったりして、「名前の移動で活動の現在地を可視化する」手立てを取りました。子どもは、全体の流れと現在地がわかることで安心感を得られますし、子どもと教師それぞれがもっている見通しのずれをなくすことができます。図工の場合、どんどん先に進んでしまう子がいますが、個別支援学級では「この構成でいくのであれば今日はここまでね」と時間ごとに明確なゴールを設定し、指導が行き届かなくなることを防いでいます。

特別支援の観点から最終的には子ども自身が予定を見て、不安なことがあれば自分で聞きにくることができる状態を目指して支援を行っています。

ここを見ている

子どもたちが見通しをもって取り組めているか。
子どもたちが活動中に自分の現在地を把握しているか。
子どもと教師の見通しにずれがないか。

一緒に写真で「活動の変化を確認」する

――活動中の机間指導はどのようにされていますか。

大谷:個別支援学級の場合はこだわりが強く、つくったものを変えていくことを嫌がる子どももいます。今はまだ、こちらからの声かけで前に進む力がないと思ったらいったんやめます。逆に、アドバイスを受けて子どもが表現を広げた瞬間は見逃さずにほめるようにして、そうした行動が学級に広がっていくようにしています。

子どもたちに活動中の変化を視覚的に伝えるためにタブレットを活用しています。例えば、「カラフルいろみず」(『ずがこうさく』1・2上p.20-21)や粘土の活動では、全員分のシートを用意して作品の写真をこまめに撮っていきます。

タブレットを活用して子どもたちに「活動中の変化」を視覚的に伝える

次に回ったときに「さっきより色が増えているね」とか、粘土であれば、「これがつけてあるとよくわかるね」など以前の状態からの変化を子どもに見せてあげます。すると、子ども自身が「手を加えるとよくなるんだ」という実感をもつため、教師のアドバイスも聞き入れやすくなります。また、写真の数が少ない子には声をかけていないことに気付くなど、教師自身の振り返りにも役立っています。

小坂:一般学級では、活動が始まった瞬間に声をかけたほうがいい子、途中で軌道修正が必要な子など、声をかける「順番とタイミング」を決めてから机間指導に入っています。手が止まっている子に対してすぐに話かけたくなるのですが、そこは堪えて、どのタイミングで動き出すのかを観察します。

大谷:活動中は個別の支援のほかに、必ず全員を見渡せる位置で3分ほど立ち止まって「今どんな感じか」「だれに声かけが必要か」など全体を把握するようにしています。作品を集めた際に、「この子にどんな声をかけたか」を思い出せない場合は指導ができていない証拠だととらえて、次の時間はその子から優先的に声をかけるようにしています。

ここを見ている

今、この子はアドバイスを受け入れられる状態か。
表現が変わっていることに本人が気付いているか。
何をきっかけに子どもが動き出したのか。
今、声かけが必要なのはだれか。

●次回は、イメージを広げていくための手立てや技能面の指導、評価についてお聞きします。9月10日に公開予定です。

大谷幸子(おおたに・さちこ)
横浜市立緑小学校 主幹教諭。緑小学校に異動してからは、個別支援学級の1年生を担当し、今年で8年目。子どもの特性を踏まえ、支援の手立てを考え、子どもの思いが広がるような材の研究を行っている。

小坂美月(こさか・みづき)
横浜市立緑小学校 教諭。3年間、個別支援学級を担当。昨年度から一般学級を担当する。材との出合いを大事にし、子どもの思いを引き出せるように日々の実践を通して研究している。