学び!とシネマ

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イーディ、83歳 はじめての山登り
2020.01.23
学び!とシネマ <Vol.166>
イーディ、83歳 はじめての山登り
二井 康雄(ふたい・やすお)

© 2017 Cape Wrath Films Ltd.

 「人生、なにをするにも、遅すぎることはない」。また、「人間、死ぬまで勉強」。そんなことが、じっくりと伝わってくる映画が「イーディ、83歳 はじめての山登り」(アット エンタテインメント配給)だ。
 タイトル通り、長年、ロンドンに住むイーディ(シーラ・ハンコック)は83歳の老女。もう30年間、夫の介護を続けている。その夫が亡くなる。ふと、イーディは、父親の書いた古い絵はがきを見つける。そこには「この変な山に登ろう」とある。変な山とは、スコットランドにあるスイルベンという山だ。
 長年の介護を続けたイーディの苦労は、娘のナンシー(ウェンディ・モーガン)には、なかなか理解できない。3年後、ナンシーは、イーディを施設に入れようとする。豪華な設備の施設だが、そこに住む人たちを見て、イーディは愕然とする。まるで、ただ死を待つだけなのか……。
 イーディが家のなかを整理していても、つい口論ばかりで、母と娘の関係はギクシャクしたままだ。
© 2017 Cape Wrath Films Ltd. そんなある日、イーディはなじみのフィッシュ&チップスの店で、いつもの食事をする。ふと、イーディは、「追加注文をしてもいいか」と尋ねる。「なにも遅すぎることはないさ」と店員。突然、イーディははっと気付く。すでに諦めていたけれど、父との約束だったスイルベン山に登ろう、と。
 「しばらく留守にする」と、ナンシーに留守電を入れたイーディは、ひとり、夜行列車のカレドニアン・スリーパーに乗り、インバネス駅に到着する。
 ユーモアのセンスはあるものの、イーディは気弱なのに頑固で、やや偏屈な女性だ。駅で偶然知り合った青年のジョニー(ケヴィン・ガスリー)は、たまたま登山用品店を営んでいる。イーディは、ジョニーに、いろいろと助けてもらいながらも、その都度、口論になる。それでも、ジョニーは友人のマクローリン(ポール・ブラニガン)とともに、イーディのいろんな事情を知るうちに、キャンプの基礎知識や、登山道具の使い方、登山ルートの確認などを、イーディに指導していくことになる。やがて、イーディは、他人に頼ることの重要さに気付いていく。
© 2017 Cape Wrath Films Ltd. スイルベン山は、731mの低い山だが、頂上に登るには、2kmもの急勾配の尾根がある。元気とはいえ、イーディは、83歳の老女である。果たして……。
 スコットランドの絶景が続く。老女と青年の、ほんわかとなる心のふれあいがある。なにより、何歳になっても謙虚に学ぼうとするイーディの心意気に感心する。
 イーディを演じた女優シーラ・ハンコックは、1933年生まれで、映画の撮影当時は、イーディとほぼ同じ年齢だ。長年の構想を実現させた監督は、CM業界のキャリア豊富なサイモン・ハンター。イーディに寄り添うジョニー役は、「サンシャイン/歌声が響く街」や「ダンケルク」に出ていたケヴィン・ガスリーで、大ベテラン女優を相手に、互角に渡り合う。
 ニュージーランドの有名な登山家、エドモンド・ヒラリーは言っている。「私たちが征服するのは、山ではなく私たち自身だ」と。ラストの30分ほどは、ほとんど、セリフのない映画である。イーディの行動と、胸の内に去来する「想い」は、きっと見る者に勇気を与えてくれるはずだ。「Never Too Late」(遅すぎることは決してない)なのだから。

2020年1月24日(金)、シネスイッチ銀座ほか全国順次ロードショー

『イーディ、83歳 はじめての山登り』公式Webサイト

監督・脚本:サイモン・ハンター
出演:シーラ・ハンコック、ケヴィン・ガスリー、ポール・ブラニガン、エイミー・マンソン、ウェンディ・モーガン
2017年/イギリス/英語/102分/シネスコサイズ/原題:Edie
後援:(公社)日本山岳・スポーツクライミング協会、ブリティッシュ・カウンシル
配給:アット エンタテインメント

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