高等学校 情報
高等学校 情報

1.はじめに
本校では,平成28~29年度の2年間に渡り,国立教育政策研究所より,教育政策研究所教育課程研究指定校事業(共通教科「情報」)の指定を受けた。この指定を受け,情報科での問題解決に対する学習者の意欲を向上させるための題材の工夫を行うとともに,思考力・判断力・表現力を育成するための方法を検討した。
高校入学直後に生徒たちが直面する問題のひとつにSNS関連のトラブルがある。そこで,新学習指導要領「情報Ⅰ」の学習内容も意識し,情報社会の問題を,情報デザインの考え方で解決する手立てを考えるという授業を考えた。この実践では,生徒たちに身近なSNSの問題点を発見させ,その問題を解決するための手立てをピクトグラムで分かりやすく提案できるようになることをねらいとしている。ピクトグラムを採用したのは,誰でも比較的簡単に作成できるからである。
また,情報の残存性・複製性・伝播性など,情報がもつ特性を理解した上でSNSを活用できるようになることもねらいとしている。情報科でのしっかりとした学びが,情報社会でのトラブル回避に役立つことを気づかせたい。
2.単元名
情報の活用と表現
「ピクトグラムでSNSのよりよい使い方を提案しよう」(実施学年:第1学年)
3.単元の目標
・情報通信ネットワークなどを適切に活用するために,情報の特性とメディアの意味を理解させる。
・情報を分かりやすく的確に伝えるための,表現や伝達の工夫について考えさせる。
4.単元の評価規準
ア 関心・意欲・態度 |
イ 思考・判断・表現 |
ウ 技能 |
エ 知識・理解 |
---|---|---|---|
・情報の特性について関心を持つ。 |
・目的や対象を明確にして,表現や伝達の工夫をし,表現している。 |
・分かりやすくなるようなデザインを効果的に取り入れている。 |
・情報の特性とメディアの意味を理解している。 |
5.単元の指導と評価の計画
(ア:関心・意欲・態度/イ:思考・判断・表現/ウ:技能/エ:知識・理解)
時 |
学習内容・学習活動 |
評価の観点 |
評価の方法 |
|||
---|---|---|---|---|---|---|
ア |
イ |
ウ |
エ |
|||
1 |
・情報メディア・表現メディア・伝達メディアについて興味を持つ。 |
○ |
ワークシート1 |
|||
2 |
・情報の特性について関心を持つ。 |
○ |
○ |
ワークシート2 |
||
3 |
・自分の考えを分かりやすく伝えるスライドを制作する。 |
○ |
ワークシート3・4 |
|||
4 |
・引用のルールを理解する。 |
○ |
ワークシート3・4 |
|||
5 |
・メラビアンの実験の内容をもとに,ノンバーバルコミュニケーションを意識したリハーサルを行う。 |
○ |
ワークシート5 |
|||
6 |
・発表と相互評価に主体的に取り組む。 |
○ |
○ |
ワークシート6 |
6.本時の目標【2限目】
前述のように,本単元は6時間で構成される。今回は2限目の内容について紹介する。2限目の目標は以下である。
情報の特性を理解した上でSNSの問題点について考え,ピクトグラムを効果的に使って,相手に情報を分かりやすく伝えられるようになる。
7.本時の流れ【2限目】
時間 |
学習内容・学習活動 |
指導上の留意点 |
評価 |
---|---|---|---|
導入 |
・情報の特性である,情報の残存性・複製性・伝播性について理解する。 |
・情報の3つの特性については,身近な事例を交えながら説明を行う。 |
ア:行動観察 |
展開1 |
・身近なSNSのトラブルをベースに,SNSの問題点について考え,その問題点をピクトグラムで表現する。 |
・ピクトグラムを制作するときのルールを確認しておく。 |
イ:成果物(ピクトグラムのスライド) |
展開2 |
・ピクトグラムの相互評価を行う。 |
・生徒を移動させ,周りの人のピクトグラムが何を伝えていると思うかをワークシートに書かせる。 |
イ:ワークシート |
まとめ |
・自分の制作したピクトグラムが相手に正しく伝わったか,振り返りを行う。 |
・ルーブリックを用い,もらったコメントをもとに自分のピクトグラムを評価させる。 |
イ:ワークシート |
8.今回の実践のまとめ
今回の実践では,情報社会の問題(SNSのトラブル)を題材にしつつ,情報デザイン(ピクトグラム)の概念を組み込んだ授業を行うことができた。生徒たちにとって,身近で切実な問題であるSNSのトラブルを題材に取り上げることで,学習意欲が高まった。
また,発表にPREP法や引用を組み込むことで,簡潔で分かりやすい発表資料を,生徒たちに簡単に制作させることができた。リハーサルでも,ペアをつくって本番と同じルーブリックによる相互評価を行うことで緊張感が増し,発表前のリハーサルの重要性を認識させることができた。
評価については,単元のひとつひとつのルーブリックを積み上げたものが,単元最後の発表時のルーブリックとなっている。これまでの授業で積み上げてきた評価がそのまま単元全体の評価となるので,単元全体でねらい・方法・評価の一体化を行うことができた。
9.「情報Ⅰ」に向けて
新学習指導要領「情報Ⅰ」では,図1に示すように(1)「情報社会の問題解決」,(2)「コミュニケーションと情報デザイン」,(3)「コンピュータとプログラミング」,(4)「情報通信ネットワークとデータの活用」の4つの内容を学習することになっている。
「情報Ⅰ」はこれらの項目を個別に学習するのではなく,たとえば今回の実践のように(1)の「情報社会の問題解決」の中に,(2)の「情報デザイン」の内容を取り入れるというような授業設計が必要だと考える。図2に示すように,全体の項目を関連付けながら「情報Ⅰ」の授業をつくっていきたい。